割と好き勝手にやっています。
それでもいいという方は第五十六話をお楽しみください。
「……じゃあ、私なら勝てるか?萃香」
私が言いながら放った光線が当たる寸前に萃香の体が塵となり、攻撃をよけて同じ場所に再生成した。
「…まあ、一番可能性があるのはお前だな…霧雨魔理沙」
萃香が聖から目線を外して後ろにいる私の方を向いた。
「…」
私は全身に魔力を巡らせて戦闘準備を完了させて、あとは戦うだけとなる。
「…実に残念だよ……今はお前とは戦えないんでね」
萃香がくたびれたように息を吐く。
「…?」
「少しくたびれた……少し休んでからまたあとで遊んでやる」
萃香が言いながら後ろに下がろうとするが、私は大きく前に出る。
「…お前が疲れているなら逃がす理由もない……萃香、お前をこの場所で殺す」
私は言いながら自分の親指を噛んで出血させ、鉄の味がする血を飲み込んだ。
「…確かに、今のお前なら私を殺すことはできなくはないだろうな……」
萃香は言いながら匂いを嗅ぎ、私に仲間たちの血の匂いがべっとりと付いているのをかぎ分け、そこから導いた答えを言った。
「…逃げるつもりかよ、萃香」
私が睨みつけると萃香は、はあっとため息をつきながら言った。
「戦いたいのは山々だが、私は楽しく戦いたい。だから万全の状態でお前と戦いたいわけだ……だから、今はこいつらと遊んでてくれよ」
萃香が言ったとき、萃香や鬼たちとは違う異質で気分が悪くなるような殺気が四方八方から私に向けられた。この殺気は何度も感じてきたからすぐに分かった。光を見ておかしくなった連中の殺気だ。
「…」
「もし、というかほぼ確実に生き残れるだろうし、そのうち決着をつけられる機会が来るだろう。そのときにやろうじゃないか」
萃香はそう言いながら塵となって消え、壁の隙間や床下からどこかへと飛んで行く。
「…っち…」
私は舌打ちしながらスペルを唱え始めた。対して長くもない詠唱は五秒ほどで終わり、私は座標を設定して魔法を発動させる。
「…umringen(囲め)」
魔法のスペルを詠唱し、倒れている聖を覆った。
これで聖が襲われる心配はなくなった。いくら実力があっても重症の傷を負ったままではさすがに分が悪いだろう。だから、傷が治るまではそこで大人しくしていてもらおう。
私がいる場所の真横の壁が破壊され、リグルが破壊した壁の木片と共に私に襲い掛かってくる。
瞳が赤いオーラで光っているのが確認できる。
「…」
こちらに向けて手を伸ばしているが私の手の方がわずかに長く、リグルの頭を掴むと同時に床に叩きつけた。
床の木が割れてリグルの頭が床にめり込み、床下の地面に頭をめり込むほどの威力で打ち付けさせた
「ぎぁっ……!?」
リグルが小さな悲鳴を上げ、すぐに動かなくなる。
近くまで走って来たミスティアに気絶しているリグルを投げつけ、リグルの対処をしているうちにミスティアの足をレーザーで撃ち抜いた。
足を撃ち抜かれたことによりガクッと移動速度が低下したミスティアの胸倉を掴み、背負い投げをするようにして後方にぶん投げる。
次にこちらに飛び込んできた妖怪の足を腕で薙ぎ払い、薙ぎ払われた妖怪の体が宙を舞う。そのうちに妖怪の腹に蹴りを叩きこんで他の妖怪や妖精に向けてぶっ飛ばす。
後ろから掴みかかってきた妖精が私の肩に食らいついてくる。だが、身体強化をした私の体を食いちぎることができないらしく、噛みついた体勢で硬直している妖精の足にレーザーを放ち、怯んでい噛む力が顎から抜けたのを見計らって妖精の膝を前を向いたまま私は後ろに足を向けて蹴り折り、座り込んだ妖精の足を掴んで襲い掛かって来たほかの妖精に叩きつける。
何度か掴んだ妖精で妖怪たちを薙ぎ払っていたが、ぐったりとして動かなくなってきたため、適当に妖怪たちがまとまっている場所に投げつけた。
ドゴォォッ!!
私が投げた妖精の体が破裂し、臓器や血肉がばらまかれた。
「……?」
そんな破裂するような威力ではなかったはずだと、思いながらそちらを見ると、妖精を破裂させた人物がこちらに向かって跳躍し、殴りかかって来る。
「……なるほど、華扇か」
私は呟きながら拳を握る手に自然と力が籠められる。
華扇が地霊殿のあの時のようにピンク色の髪の毛をなびかせ、赤いオーラが揺れる瞳で私をとらえ、包帯で形成された腕をこちらに飛び掛かりながら突き出す。
「……あの時のように、そう何度もうまくいくと思ってんのか?」
私はそう呟き、迎撃態勢をとるか取らないかと考える余裕すらあった。
私もあの時と同様に華扇に向けて拳を送り出す。
二つの拳が合わさった時、ぐしゃりと潰れてひしゃげたのは華扇の腕だった。
潰れた腕は包帯で形成されているため実体はない。本物の腕を潰すわけでもないため構うことはない。バランスを崩した華扇が地面に着地する前に、私は華扇がしたように手のひらを華扇の腹に叩き込む。
「かはっ…!?」
華扇の目が見開かれて後方に飛んでゆく。
すさまじい衝撃が発生したのだと華扇を殴ったときにできた衝撃波が腹から背中へ移り、空気中に衝撃が逃げた。その衝撃が空振となって空間をゆがめているのでわかった。
吹っ飛んでいく華扇に向けて私は跳躍する。
殴った華扇に追いついた私は、さらに華扇のことを後方に蹴り飛ばした。
私が蹴ったことにより殴った時よりも加速した華扇の体が、屋敷の壁を突き破って外に飛んでいく。
華扇を蹴った私は一度着地しながら近くにいた妖精と妖怪を殴って沈め、華扇の後を追って屋敷から出た。
庭の中心で倒れた華扇が実体のある方の腕で体を起こそうとしている。立ち上がられて襲い掛かってこられても困るため、私が彼女の胸の上に足を置いて体重をかけて地面に押さえ付けた。
「…華扇、少しの間だけ眠っててもらうぜ」
私は言いながらかがんで、強化した拳で華扇の顔を殴る。
私が殴った衝撃で意識を飛ばされた華扇がぐったりとして動かなくなった。
「…ふぅ……」
私は息を吐きながらその場から飛びのき、正面から襲い掛かって来た妖怪の攻撃を避ける。
こちらに来る前にレーザーをその妖怪の足に撃ち、動けないようにさせた。
いつもよりも感覚がさえているのか、後ろから何かが来ているのがすぐにわかる。
妖怪が何体かまとめてこちらに向かって走ってくるが、襲い掛かってきているのはそいつらだけではない。振り返って妖怪たちを見た私の後方から鬼が二体、こちらに走ってきているのだ。
「…っち」
どちらを先に片づけるか距離や速度から順位を決めようとしたが、すでに私の近くにいた鬼の一匹が私に向かって棍棒を振り下ろそうとしているため、移動を余儀なくされる。
棍棒の射程範囲から飛びのいて出て、バックに手を突っ込んで私がマジックアイテムとして開発した。とある種を三つ取り出した。
魔力を込めて後方から来ている妖精たちの方向の地面に一つを投げつける。
魔力で成長を促進させた種が急速に成長して妖怪たちがこちらに来るのを妨げる壁を作り出す。
これで妖怪たちが来るまでの時間を大幅に確保することができた。左右から走ってくるうちの右側の鬼が先に上から棍棒を振り下ろす。
私は体を横にずらしてそれをかわして二つのうち一つの種を手に取り、右側の鬼の体内に種を埋め込んだ。
左にいる鬼が私だけを叩き落とすように器用に棍棒を振るうが、私がレーザーを照射したことにより私に当たるはずだった棍棒の一部分が蒸発して、鬼の攻撃は空振りで終わってしまう。
上から振って地面に叩きつけられた一部が蒸発している棍棒に足を乗せ、右側にいた鬼と同様に左側にいる鬼に近づいて体内に種をぶち込んだ。
魔力をあらかじめ送っておいた種が発芽し、鬼の体内に根を下ろす。
本来はこういう使い方ではないが、うまくいってよかった。
鬼の体内で木の根が膨れ上がり、体の内から成長した木の根が突き破る。
「「ぎゃぁっぁぁぁぁっぁあああああああああああああああっ」」
鬼が叫び、地面に倒れ込む。
その間にも植物は成長を続け、足りなくなった分の養分を鬼から吸収し始めている。すぐに宿主であった鬼に巻き付いていた根が鬼を絞め殺し、養分を求めて地面に根を張って大きな木へと成長した。
「……」
完全に鬼が死んだことを確認し、私が周りを見ると進行を妨害していた妖精や妖怪に限らず、ここらへんにいる妖精や妖怪たちがこの場所に集まっているのが見える。
さすがに全方位をカバーすることはできないため、マジックアイテムでも使おうとしたとき、妖精たちの動きが急に止まった。
「…?」
私も周りを警戒して動きを止めると、今まで私を殺そうと襲い掛かって来た妖怪たちが飛びのき逃げていく。
「……?」
だが、逃げると表現すると少し違和感がある。まるで、誰かのために道を開けた。そんな気がしたのだ。
そう思った矢先、目の前に立っている木が二本とも丸ごと蒸発した。
「…は……?」
私がそう呟いた時、強化した私の右腕が強力な攻撃に丸ごと吹き飛んでしまう。
ドチャッ!
血を吹き出しながら腕が地面に転がり落ち、私の体が後方に吹っ飛んでしまう。私が作り出した木の壁に背中を打ち付けるが、それでも体は止まることを知らないように貫通して天狗の屋敷の壁に背中を衝突させた。
「がはっ……!!」
肺から空気が抜け、私は壁に背中を打ち付けた状態でようやく体が静止した。
「…くっ……!」
私が何が起こったか確認するために顔を上げると、私が生やした木どころか天狗の屋敷を囲う城壁の一部も蒸発しているのが見える。
「……っ……これは…?」
私が呟いた時、上空から誰かが勢いよく降りてきた。
地面に一定間隔で埋め込まれている岩のタイルを着地と同時に踏み砕き、その衝撃は少し離れた位置にいる私にまで届いている。
「…泣けるぜ……お前もかよ……」
私が呟きながら、降りてきた人物を見た。聖や紫に並ぶ幻想郷でも五本指に入るほどの実力者。
太陽の畑に住んでいる妖怪。
風見幽香。
弾幕を防ぐことすらできる傘を手に持ち、白色のブラウスに赤いチェックの上着とスカートを着ていて、襟元に黄色いリボンが結ばれている。
風見幽香は着地でしゃがんでいた状態から立ち上がり、赤いオーラが尾を引いて光る瞳を私に向け、ニコリと寒気すような笑顔で笑った。
たぶん明日も投稿すると思います。
その時はよろしくお願いします。