もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません

割と好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第五十四話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第五十四話 狂気の鱗片

私と幽々子様が向かう先、三十メートルほど先の部屋から、返り血まみれの鬼が腰を抜かした様子で這いずりながら顔をのぞかせた。逃げたいらしいがうまく進むことができていない様子だ。

「…だ…誰か…!助け…!」

 その鬼が叫んでいる最中に足でも掴まれたのか、部屋の中に引きずり込まれるとさっき廊下で聞いたような叫び声が聞こえてきて、肉が引き裂かれて血が飛び散る音がその部屋の中から聞こえてくる。

 途中から叫んでいた鬼の声が途絶え、それが止まって少ししてから今度は肉を潰すような音と、わずかな衝撃を感じる。

 だが、その音もすぐに収まって消えた。

「…ゆ……幽々子様…」

 私が呟くと幽々子様はしっと口に人差し指を持ってきて呟き、その部屋の方向に向かっう。

 鬼たちを攻撃しているということは、私たちの味方である可能性は高い。鬼をこれだけ一方的に倒せるなら戦力的には申し分ないだろう。しかし、こんなふうに殺して回るようなやつとは仲間にはなりたくはない。でも、誰なのかを確認するぐらいならいいだろう。

 ドアの位置まで足とを立てずに近づき、壁に背中を付けた。

 鬼がいたころとは打って変わって全くの無音。生命の呼吸音や動いた時に生じる服が擦れるような音や足音すらも聞こえない。

 不気味、一言で表すならそれがぴったりだろう。

 見たくないという考えが頭をよぎるが、その邪念を頭から振り払って剣を握りなおして、隣にいる幽々子様に行きますとジェスチャーで伝え、私は部屋の中に突撃した。

「…うっ……!!?」

 どんな光景が広がっていても大丈夫、そういう意志を持て突撃したはずなのに、足を止めてしまうほどに虐殺された鬼たちの死体は酷すぎる物だった。

「…うっ……!!」

 体内の胃が動いて少し前に食べた食べ物、それを食堂に押し出そうとする感覚が体の中で起こる。

 口を押えて何とか押さえ込むが、これ以上直視していいたら本当に吐いてしまう。

 目を閉じて後ずさりして廊下に飛び出した私は、さっき背中をつけていた位置に戻り視線を遮った。

「…中に……生きている者はいません……幽々子様…」

 私が吐き気をこらえながら言うと、その様子に幽々子様がだらしないと呟きながら、体を浮き上がらせて部屋の中に移動していく。

「…これは、確かに酷いわね」

 幽々子様はそう言いながら平然とした顔で部屋の中に入っていってしまう。

「幽々子様……すみません…」

「…さすがのあなたにもこの光景はきついでしょう?…少し休んでなさい」

 私が言うと幽々子様は休めと言ってくれた。正直なところ、次その部屋に入ったら吐く自信しかなかったため助かった。

 あの光景、思い出しただけでも吐き気がこみあげてくる。

 一度あの光景を見たら、そう簡単には忘れることはできないだろう。

 自分の臓器を体から出されて口の中に押し込まれている鬼、両手の橈骨が腕から引き抜かれ、左右から側頭部に突っ込まれている鬼、顔のパーツが一つも残っていない鬼、強い力でねじ切られたのか上半身と下半身が分かれている鬼、上半身が強い力でつぶされている鬼、自らの内臓で首をつるされている鬼、頭が上からの衝撃で胴体に埋まってしまっている鬼、背骨を肋骨ごと引き抜かれている鬼。

 どれも無残にできるだけ残虐に殺されている。

「これをやったやつは…反対側にある扉、そこから出て行ったようね」

 幽々子様はそう言いながらこちら側に戻ってくる。

「…幽々子様、この鬼たちを殺した人を追うんですか?」

 私の質問に幽々子様は横に首を振った。

「追わないわ…いや、追いたくないっていうのが本音かしらね」

 幽々子様はそう言いながら今来た方向を戻り始め、私もそれに続く。

「…わかりました……それではこれからどこに向かいますか?…幽々子様」

「…そうねぇ……聖と萃香の戦いに巻き込まれたくはないし……天狗の屋敷から一度出ようかしら」

「…では、白玉桜に戻られるのですか?」

 私が聞くと幽々子様は再度顔を横に振る。

「せっかく地上に来たわけだから、もう少し地上にいるわ……聖があれだけ怒ってるってことは、命蓮寺は潰されはずよ。紅魔館は降りてくるときに破壊されているのは見た……天狗の屋敷はこの通りだから……地霊殿に行こうかしら……小悪魔の話から、襲撃をうけたみたいだけど、たぶん引き続き地霊殿に監禁されてるはずだから」

「…理由はわかりましたけど、なんでまた地霊殿に?」

 私が聞くと出口に向けて移動を始めた幽々子様が私に説明を始めた。

「…地霊殿に行けばとりあえず、なんで魔理沙がああなっているかわかるんじゃないかと思ってね…さとりは心が読めるはずだし」

「…わかりました」

 私は持っている桜観剣を持ち直して、幽々子様と進み始めた。

「…でも、あんな風になるなんて……どれだけショックなことがあったんですね…?」

「さあ、たぶん行ってみればわかるわ」

 

「……はぁ…はぁ…」

 屋敷中を走り回ったが、お嬢様やパチュリー様の姿は見えない。正邪さんの情報は嘘だったのだろうかと思い始めたころ、正邪さんはパチュリー様たちが地下に監禁されていると言っていたのを思い出した。ずいぶんと無駄な時間を過ごしてしまていたのを思い知り、私は一度呼吸を整えるために立ち止まった。

「…小悪魔!」

 息を切らしていた私に後ろから誰かが声をかけてくる。赤と青色の特徴的な服装は永琳さん以外いないだろう。

「永琳さん!無事でしたか!」

「ええ、何とかこっちは抜け出すことはできたわ……魔理沙と大妖精はどうしたの?もしかして掴まているのかしら?」

 永琳さんが言いながら助けるための算段を考え始めるが、私は遮って言った。

「魔理沙さんとは別行動中です……大妖精さんは…ちょっとわからないです……永琳さんと一緒だと思いましたけど、違うようですね」

「…そうね、でも大妖精の能力ならすぐに抜け出せるでしょうし、放っておいても大丈夫だと思うわ」

 永琳さんがそう言いながら弓をつがえ、弓矢を自分が来た方向とは逆の向かって行く方向に向けた。

 戦意喪失していない鬼たちがこちらに向かって来ようとしている。

「…小悪魔、やるわよ……手伝ってちょうだい」

 永琳さんはそう言いながら矢を放つ。

 矢が空気を切り裂き、鬼の足に命中して床に鬼を縫い付けた。

 私も永琳さんに続いて弾幕を放とうとしたとき、強い地震のような揺れを私たちやこちらに向かって来ようとする鬼たちを襲う。

 それにより、大きくバランスを崩した私は倒れそうになってしまう。

 だが、すぐにわかった。これは地震ではない。この屋敷で現在進行形で暴れている誰かが近くを戦闘しながら通り過ぎていたらしく、その余波を食らって鬼たちがバラバラになって吹き飛んだ。

「…っ!?」

 反射的に魔力を全力で防御に回した直後、距離が離れていることにより鬼が食らった余波の威力が半減している物を食らった。しかし、それでもただの人間や力の弱い妖怪や妖精が食らえば同様にバラバラになって破裂してしまうだろう。

「ごふっ…!?」

 通った萃香さんたちとの距離は五十メートルは離れていたはずなのに、私の体はまるで小石のように持ち上がり、何十メートルも後方にある壁に背中を打ち付けた。

 衝撃で肋骨にひびが入ったらしい。肺が潰れなかっただけマシとするが、それでも予想以上の威力を持っていた。

 ほんの一瞬だけ見えたが、伊吹萃香さんと戦っているのは命蓮寺の聖さんだったように見えた。魔理沙さんはどこかで聖さんと入れ替わったのだろう。

 あの二人の戦いは次元が違いすぎる。力のないものが近寄ろうとすると、余波で吹き飛んでしまう。

 起き上がろうとしたが、意識が揺らいでしまう。体から力が抜けてしまう。

 あの衝撃波を食らっただけで脳震盪でも起こしたのか体が脱力してしまい、私は意識が途切れた。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

今回、最高に駄文で申し訳ございません。

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