割と好き勝手にやっています。
それでもいいという方は第五十三話をお楽しみください。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!?」
悪者の叫び声と断末魔を聞くのは気分が良い。
私は嗤いながらたった今、逃げることができないように足を切断した鬼の両手を掴むと足を鬼の胸に添え、腕を思いっきり引っ張り、それと同時に蹴飛ばして腕を千切り取った。
やはり、血での強化は凄い。魔力なんか比較できないほどの威力を発揮する。
すでに部屋の中は私の血ではなく、私がへし折ったり、千切ったりした鬼たちの死体から漏れ出した血で赤く染まっている。殴り殺したり、首を切断していたせいか天井や壁にまで血が飛び散っている。
ぎゃあぎゃあと喚き散らす鬼の両目に近くに落ちていた五寸釘を突き刺し、踏みつけると長さ約十五センチの釘が脳を貫通して後頭部の方の頭蓋骨に当たって突き刺さった感覚がした。そのころになると鬼は既に息絶えていて、さっきまで叫んでいた鬼はもう叫ぶこともなくなる。
そいつの片足に頑丈なフックを深く突き刺し、他の連中と同じように天井からつるした。
「…ずいぶんといい眺めだな」
つるしたばかりの鬼の死体が左右に揺れて縄がきしむ音が聞こえてくる。
私はそれを見てクスリと笑い、次の獲物を求めて歩き出した。
歩いていると鬼が襲い掛かってきてとても面倒くさい。だから私は戦法を変えることにしてみた。
「そろそろ、効果があってもいいころだよな…」
私は軽く歌を口づさみながらつるされている死体の中を歩く。
「……」
魔理沙さんと離れてからだいぶ時間が過ぎた。だいぶ前に大きな爆発音が聞こえてきて、それからずっと戦っている音が聞こえてきて、魔理沙さんが萃香と戦っているのだと分かった。
そのうちにできるだけお嬢様やパチュリー様、咲夜さんを見つけたいが、どこにいるかわからない。
地下は魔理沙さんと歩いていた時にほとんど探していたため、地上にある屋敷以外にはもう探す場所はない。
地上に閉じ込められる個室のような場所があり、部屋の扉を開けてみるが狭い部屋の中には怯え切った鬼が数人膝を抱えて震えて座り込んでいるだけだ。
「…また…?」
こうして戦意喪失している鬼が段々と増えてきているのだ。何かを訪ねてもその鬼たちは震えるばかりで何も話そうとはしない。
「…いったい……なんだっていうんですか……これは………」
この異様と言える状態に訳が分からず、私は状況を整理し始めるが自分が考えている以上の何かが、何かをしているとしか考えられない。あの鬼たちがここまでなるということは私の脳では答えを導き出せるレベルではないと判断し、パチュリー様たちの救出を最重要事項として私は走り出す。
鬼を攻撃しているということは、私たちの味方ということだろうか、もしかしたらどちらにも属さないということもあり得るかもしれないが、それはないだろう。
でも、これだけの鬼が戦意を喪失させてしまうほどの人物に思い当たる者はいない。
くまなく一階を探し回っていると、誰かの話す声が聞こえてきた。
「……?」
鬼たちのような荒々しい話し方ではない。
私が息をひそめようとすると、あちらもこちらの存在に気が付いたのか、気配を消した。
この戦い方、今までの鬼とは戦い方も雰囲気も全く違う。でも、お嬢様やパチュリー様ではないことだけはわかる。
「そこにいるのは…誰ですか…?」
私が呟くと、曲がり角から剣を構えたおかっぱの髪形をしている魂魄妖夢さんが現れた。
「…たしか、妖夢さん…ですよね?」
私が呟くと鞘から抜いていた桜観剣を鞘に納めた妖夢さんは少し怪我をしているように見える。片目を閉じていて、ふき取ってはいるが血が流れていた跡はそう簡単に消えないものだ。
「…あなたは、紅魔館の小悪魔ね?」
妖夢さんが私に近づきながら言う。
「…はい、妖夢さん…いきなりで悪いんですが……パチュリー様やお嬢様を見ませんでしたか?…」
私が聞くと、妖夢さんは少しの間をあけて私に返答を返す。
「申し訳ないけど…見てないわ……。こちらからも質問をいいかしら?」
「…はい、私に答えられる範囲でもよろしいなら」
私が聞くと妖夢さんは少し考えるそぶりを見せてから私に質問をしてくる。
「…魔理沙のことで聞きたいことがあるの」
「…魔理沙さんがどうかしたんですか?」
私が聞くと妖夢さんは片目を閉じたまま話始める。
「……異変が始まる前に会ったときと、今では全然雰囲気が違っていて……あれじゃあ……まるで…」
「…伊吹萃香さんたちと変わらない……ですか?」
私が聞くと妖夢さんはうなづく。
「…なにがあったらあんな風に変わってしまうの…?」
妖夢さんが言ったとき、妖夢さんが曲がって来た廊下から幽々子さんが曲がってこちらに歩いてくる。
「…幽々子さん、こんにちは」
私が頭を下げると幽々子さんはニッコリとわらってこちらに近づいてくる。
「妖夢、何を話していたの?」
「…幽々子様、魔理沙のことですよ」
妖夢さんが言うと、幽々子さんは私を見ながら言った。
「確かに気になるわね…何かきっかけは知らないかしら?」
幽々子さんは私に向かって言う。
「…きっかけ……ですか…それが、私にもよくわからないんです……地霊殿で襲撃されてこの場所の地下に連れてこられてから、様子がおかしくて……私が気絶している間に何かがあったらしいんです…」
私が言うと、幽々子さんは少しだけ間をあけてから言った。
「…たぶん…地霊殿と天狗の屋敷のどちらかであった出来事は、引き金に過ぎないわ……こんな異常な状況だもの、精神に異常をきたさないわけがないわ……そう言った外環境がストレスとなって積み重なり爆薬になっていったわけね……少し前から様子がおかしかったと感じたことはないかしら?」
幽々子さんが言ったとき遠くから大きな地響きが響いてくる。
「…っと……様子がおかしい…ですか……なんだか…一緒にいる私たちのことばかり気にかけて、自分のことがおろそかになっているように感じました……何というか、不安定に回るコマみたいに、時々見ていられない時がありました…」
私が言うと幽々子さんがなるほどねと呟いた。
「……そう言えば、妖夢さんは目は大丈夫なんですか?」
私が言うと妖夢さんは少し力なく大丈夫とと呟いく。
「…魔理沙さんと会ってそのままということは……魔理沙さんと戦ったんですか?」
私が聞くと二人は顔を見合わせてうなづいた。
「…なんだか、私たちを他の誰かと勘違いしてたみたいで、うちの庭師が頑張ってくれたわ」
「幽々子様になんとか誤解を解いていただいたんですが……戦っているときに魔理沙の腕とかを切断したら、すぐに再生していた……それについては何か知っている?」
妖夢さんに聞かれ、血の能力のことを言っていると分かり、私はそのことについて話すことにした。
「…本当のことは知りませんが、魔理沙さんは一度殺されているらしいです…。そこで誰かに会ってきて……そしたら、よくわからないけどそういうことができるようになっていたそうです」
私が説明するとかなり疑わしい目を向けられると思っていたが、妖夢さんたちは少し合点が言った様子だ。
「かなり疑わしい内容だけど、あんなの見せられたあとじゃあ、信じるしかないわよね…」
幽々子さんが扇子を開いて自分を扇ぎながら呟く。
「…そうですね……私も初めは半信半疑でしたし……」
でも、あんな血の能力は聞いたことも見たこともない、あんな強力な能力、否応なしに信じるしかないだろう。
私が呟いた時、鬼の絶叫が廊下にいる私たちの耳に届いた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!」
聞こえてきた方向は、妖夢さんが曲がってきた方向を曲がらずにさらに進んだ奥の通路からだ。
一人の叫び声ではない。複数人の叫び声が重なって訳が分からないことになっている。
「…!?」
即座に反応した妖夢さんが桜観剣を鞘から抜き放ち、私が追い付けないほどの速さで走っていき、幽々子さんは浮き上がって走っていく妖夢さんにぴたりと付いて行っていった。
「…早い…」
私はあの速さに追いつくことはできなさそうだ。そっちはあの二人に任せることにしよう。
「…」
妖夢さんが来た方向はまだ探していないため、パチュリー様を探すためにそちらに向かた。
たぶん明日も投稿すると思います。
その時はよろしくお願いします。