割と好き勝手にやっています。
それでも良いという方は第四十九話をお楽しみください。
感、というのは本当にすごいものだ。霊夢もそうだが、いつも私の予想の斜め上を行く。
閃光瓶の影響で目と耳が見えず、聞こえない。そんな状態で私が放ったレーザーをものの見事にかわして見せた。
今撃ったレーザーは撃つための動作があったため、タイミングはつかめないがとりあえず何となくで横に飛べばかわすことはできるだろう。だから妖夢も私が爆弾を使うとは思わないだろう。
爆発瓶をバックから取り出し、瓶の蓋を緩めて飛んで行っているときに蓋が取れるように私は投げた。
私が爆発瓶を投げると同時にそれの爆発範囲から逃れるために後方に下がる。私の予測通りに目が見えない妖夢の顔に向けて蓋が取れながら瓶が飛んでいく。
妖夢はあたりの空気の流れから瓶の位置を特定したのか、桜観剣を振り上げて爆発瓶を叩き切る。
剣で砕けると思っていたガラス製の瓶が綺麗に切断され、中身の特殊な加工をした物質が空気と触れ合うことで燃焼し、青白い炎を四方にまき散らしながら拡散させて大爆発を起こさせた。
「あ…ぐっ……!?」
爆発の爆風を顔のすぐ近くで受けたため、意識がはっきりとしないのだろう。片膝を地面につけて頭を振って意識をはっきりさせた妖夢は、爆発瓶と閃光瓶の影響から回復した闘志に燃える目で私を見る。
閃光瓶を続いて投げようとしたが、正邪の時のようにうまくいかないだろう。妖夢は感もいい方だし、なにより用心深い。
爆発瓶の焼けた物質の燃えカスの煤が少し頬についていて、妖夢は頬を拭う。
「…すこし、手荒に行くことにするわ……魔理沙…」
わずかに殺気の含まれる闘志を感じる。異変が起きていろいろな体験をしなかったらここでビビッて私は逃げ出していただろう。
妖夢はカードを取り出し、魔力を流したカードを妖夢が桜観剣で切り裂いた。光り輝いたスペルカードの紙の部分が形状を維持できずに塵となって消え去り、腰を低くして妖夢が戦闘態勢に入る。
「……」
何のスペルカードかはわからない。だが、妖夢のスペルカードはほとんどが剣でぶった切るようなものだったはずだ。当たり所が悪ければいくら私でも血で回復させる前に絶命するだろう。
「断命剣『瞑想剣』」
「…このスペルカードは……!」
私が呟くと、妖夢の持つ桜観剣の周りを覆うように緑色のオーラが纏い、鍔から剣先に向けてオーラが流れている。
以前このスペルカードを遠目から見た時は、岩石を豆腐のようにやすやすと切り裂いていて、真っ二つにしていた光景を思い出す。
ただし、あれの効果は一撃だけだ。
一撃さえ外してしまえば、あとは普通の桜観剣に戻るため何とかして何かを切らせなければならない。だが、私は退く気もない。
桜観剣を構えた妖夢が素早いスピードで一直線に私に走り寄り、桜観剣を振りかぶる。
それと同時期に私の妖夢に向かって動き出す。
妖夢よりも圧倒的に足が遅いが、頑張って足を回転させて走る。走りながら親指に噛みついて出血させて血を飲み込み、魔力力を強化させる。
「りゃあっ!!」
ゆったりと桜観剣を纏っていたオーラが妖夢の斬るタイミングに合わせてジェットのようにオーラが噴き出し、それが剣の形を成して射程が倍以上に伸びる。
「…っ!?」
まっすぐ直覚に振り下ろされた桜観剣のオーラが私の右腕の肘を右足ごと切断し、地面すれすれで刃を止めた。
「…が…っ…ああああっ!!?」
右腕と右足を同時に失ったことにより体を支えることができなくなり、走っていた体勢もあって体を投げ出すように妖夢の前に倒れ込んだ。
「勝負ありよ……私に接近戦を挑むなんて……無謀にも程があるわ、魔理沙」
そう言って不用心に妖夢は桜観剣を鞘に納めて私に近づいてくる。
「…めでたいな、妖夢」
魔力を腕と足にそそぐとほんの数秒で手足が治り、私は素早く立ち上がる。
「…え…?……なんで……腕が……?」
妖夢が今起こったことの処理ができないのだろう。私の切断したはずの右腕を眺める。
「…腕だけじゃないぜ」
私はそう言いながら目の前に立っている妖夢に手が届く距離まで移動する。
「ま…魔理沙は……本当にただの魔法使いなの……!?」
妖夢が目を見開き、後ずさりながら私に言った。
「…ああ、ただの魔法使いだ……いや、だった…だな……正確に言えば」
私が言うと、はっと我に返った妖夢頭を切り替えてすぐ近くにいる私に向けて剣を鞘から抜きながら切り付ける、いわゆる抜刀術で私に横から薙ぎ払う形で左から右に振りぬいた。
だが、
「…もう遅いぜ」
近づいた私は足に魔力を集中させ、妖夢の持つ桜観剣よりも内側。つまり、腕の位置にまで走り寄る。
これで今回の斬撃での桜観剣の脅威はほとんどない。
ほぼ密着しているに近いほど妖夢に近寄り、私は妖夢が下がってさらに斬撃をこちらに食らわせる前に妖夢の顔に右手を伸ばしながら呟いた。
「…おっと、手が滑った」
妖夢の桜観剣が振り切られる前に私は妖夢が剣を振っている方向とは逆の右側からすり抜けるようにして離れる。
「あ…っ………っ…!!!!?」
妖夢は初めは何をされたのか全く理解できなかった。もしかしたら、理解することを脳が無意識のうちに拒んでいたのかは知らないが、一泊の間をあけて妖夢はようやく状況を理解し始める。
「あ…っ……ああああああああああああああっ!!!」
右目を押さえながら妖夢が叫び声をあげた。
「…片目を潰されたぐらいでピーピーわめくな…妖夢……これからまだまだ苦しんでもらう予定なんだからなぁ」
後ろから近づいて目を押さえてうずくまっている妖夢の白髪を掴み、近くの木に顔を押し付けさせる。
「う……あ……っ…!?」
右目から出血している血が妖夢を押さえ付けている木の幹にへばりついた。
「……妖夢、お前が殺したアリスと同じように殺してやるよ」
私が木に押し付けて妖夢にささやくと、妖夢が右目を押さえながら叫んだ。
「アリス……?……私は…殺してない…!アリスのことは……殺してない!」
「…そんなウソ誰が信じると思ってんだぁ!?」
髪の毛を見ちあげながら妖夢の胸倉に手を伸ばして掴み、後方に向かって妖夢を投げつける。
なかなか大きい木の幹が大きく湾曲する勢いで木に突っ込んだ妖夢は、宙がえりをしていて木の幹に着地すると湾曲した木が形を治そうとする力を利用してこちらに高速で突っ込んでくる。
「…妖夢…こうやって私に立ち向かってくるがな……お前は私に勝てやしない」
私が言うと同時に親指に噛みついた。
「させない!!」
この親指をかむ行為が何かの引き金になっている、と妖夢は感じたのだろう。私に切りかかってくる。
妖夢が桜観剣を振り下ろす。私よりも一歩だけ妖夢の方が早かった。
斬られた部分から鮮血がにじみ出る。
「……」
妖夢の桜観剣は私の肩を少し切る程度であとは地面を切り裂いただけで終わった。
「な……んで……!?」
自分が私に向かって振り下ろした桜観剣が、ちゃんと当たらなかったのが信じられないのだろう。目を見開いて呟く。
妖夢の右目は私が潰した。それにより私の自分の距離感を見誤り、桜観剣を掠る程度で外してしまったのだ。
「…くらえ」
私がレーザーを放つと同時に妖夢の姿が縮まり、真っ白な球体型の尾を引く妖夢の半霊になって私のレーザーを避ける。
流石にこれは驚いた。いつも妖夢の周りとをんでいたが、こんなこともできるとは思わなかった。
「魔理沙、少し大人しくしてもらうわよ…!」
右目がきちんと潰れている妖夢が私の首筋に桜観剣を構える。木に着地したときに入れ替わっていて、本物が後ろに回って来たということだろう。
「…ふん。…それで私の動きを封じたつもりか?」
私がそう呟くと妖夢は油断なく桜観剣を私に向けていたが、私は既に詠唱を終了させておいた。
「…妖夢、大人しくするのはお前だよ」
大量の魔法陣が空中に形成されて妖夢の周りを覆っていき、簡単な檻を作り出す。
魔法陣の向いている方向を調節して妖夢にだけ当たるようにした。私を撃ち抜くように配置するほど私は間抜けではない。
「…っ……これは…!?」
妖夢が驚きの声を上げるのが大量の魔法陣の中から聞こえた。私は動くこともなく口を開いた。
「…私を切ればそれと同時にレーザーを発射させる。…私を一瞬で殺すことができても私から魔法陣への魔力供給が途絶えても爆発するように設定してある」
私がそう伝えると妖夢が歯を食いしばる気配がする。
「なら、これをすべて破壊するまで!」
妖夢が桜観剣を振りあげて数十個もあるうちの一つの魔法陣に向かい、ぶった切る。
「…それも対策済みだ…umringen(囲め)」
私が呟くと私を囲わないように地面の下に這わせていた結界の線に魔力を送り、物理結界を完成させた。
全ての魔法陣と妖夢だけを囲うようにして結界が形成され、妖夢が桜観剣で切り裂いて損傷させて白く光っていた魔法陣の色が切り替わり、黄色く光りながら膨れ上がって大爆発を起こす。
魔法陣に手段は問わないが危害が咥えられたら溜めて置いた魔力分の爆発をしろと命令しておいた。
そうなれば、一つ爆発すればその周辺にある魔法陣にも爆発が伝わり、連鎖的に爆発するのは目に見えてる。
「なっ……!?」
物理的な結界だけだったため、妖夢の声が聞こえた。だが、すぐに数十個の魔法陣の爆発音に妖夢の声は聞こえなくなった。
たぶん明日も投稿すると思います。
その時はよろしくお願いします。