もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでも良いという方は第四十八話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第四十八話 アリスを殺した人物

 

 萃香に殴られた、そう気が付いた時に私はすさまじい激痛と共に後方にある壁にめり込んでいた。魔力で逆方向に推進力を生み出す暇もなかった。

 数十メートルは後方に続く岩石の中を削岩機のように砕きながら私の体が進んでいく。

「ああああああああああああああっ!!」

 私は叫びながら全力で魔力を体を防御するのに回した。一瞬でも気を抜けばひき肉になってしまう。

 周りの岩の質感が土の質感に変わる。外に近いということだ。

 ドォッ!!

 地面が盛り上がり、大量の土と岩をまき散らしながら地面の中から外に投げ出された。私の体が地面で一度バウンドして、衝撃で木を根元から千切り取って倒れてしまう。

「…か………ぁ……ぁ…っ…!!」

 肋骨が砕けていて、息を吐いた私はさらに激痛を味わうことになる。

 すぐに魔力で砕けた全ての肋骨を修復させ、毒づく。

「………っ……くそ……!」

 かぶっていた帽子は奇跡的にどこかに飛ばされたわけではなく、ズレて上向けに倒れている私の顔の上に乗っている。

 帽子が顔の上に乗っていて周りが見えないため、帽子を手に取って持ち上げて胸の上に乗せた。殴られた激痛でまだ動くことはできず、木の上に寝転がったまま顔を上に傾けると、よく知るとある人物が視線の先に見えた。

「………………」

 その人物はおかしくなってしまった妖精たちを滑らかで月明かりに照らされて輝く刀で次々に切り捨てている。

 妖精たちは切られた断面から血を溢れ出させて切られた順番に倒れていき、動けなくなっていく。

 私は全身の痛みも忘れ、体を回転させて寝そべっていた状態から起き上がった。

「……」

 ザシュッ!

 この辺りにいる最後の妖精を切り捨てるとその女の剣士、魂魄妖夢は顔に飛び散った血を手の甲で拭う。

 手の甲で拭いきれなかった血が広がって妖夢の顔を汚した。

「……ふう…」

 専用の布で長い方の太刀、桜観剣にこびりついている妖精たちの血と油を綺麗にふき取って布を投げ捨てると月明かりに照らされた桜観剣が怪しく光った。

「………」

 桜観剣の棟を手元の鍔のあたりをさやの入り口に合わせ、剣先まで鞘の入り口に滑らせると、手首を曲げて剣の向きを変えて鞘に桜観剣を収めた。

「…妖夢……!」

 アリスの家での光景が私の頭の中にフラッシュバックして、記憶が掘り起こされる。

 アリスの頭部は首から切断されていた。その切断面から察するに、かなりの剣の熟練者だと分かった。小野塚小町のように鎌を使うものもいるが、形がいびつで切断面も安定はしないだろう。

 アリスに状況次第では勝つことができて剣術を使う奴など、この幻想郷には一人しかいない。

 親指に噛みつきながら私は走り出す。溢れてきた鉄臭い血液を舐めて嚥下して飲み込むと、魔力力を強化する。

「妖夢ぅぅぅっ!!」

 私は跳躍して妖夢に飛び掛かる。頭に血が上っている私は拳を握って妖夢に殴りかかった。先ほどまで戦っていた萃香のことなど、すでに頭の中にはない。

 妖夢は剣を抜いている暇はなかったのか、鞘に納められている桜観剣で私の拳をガードする。

「ま…魔理沙…!?」

 いきなり殴りかかって来た私に妖夢は驚いた様子で殴りかかった私を眺めた。

「…っち…」

 舌打ちした私は一度妖夢から距離を取った。

「…魔理沙、…これはいったいどういうつもりなのかしら?」

 妖夢がそう言いながら鞘からゆっくりと桜観剣を引き抜き、慣れた様子で構えを取る。

「…どういうつもりだって?……そんなこと、自分で考えやがれ……わからないなら…思い出させてやるよ…!」

 私はそう言いながら妖夢を睨みつけると、妖夢はやれやれと息を吐いて桜観剣を握りしめた。

「……」

 私のような血で赤く染まって一部ほんのりピンク色の白髪とは違い、手入れが行き届いたサラサラで純白の髪や少し返り血のついた緑色の服が風に揺られた。

「……」

 遅れて私の方にも風が吹き、帽子やスカートのリボンを揺らす。

「……」

 数十秒経つが、お互いに動く気配はない。血の能力が解除されてしまい、少々もったいない気がしたが戦っている最中に切れるのよりはいいだろう。

「……一つ質問良い?……魔理沙はおかしくなっているの?」

 妖夢がいまさらになって私に質問を投げかけてきた。

「……おかしくなってたら、こんなにまったりはしない…」

 私の容姿が変わっていて目も赤くなっているため、一応聞いたのだろう。

「……」

 これ以上、このままではらちが明かない。早くシバキ殺したくてたまらない。

「…ここでお前を殺してやるぜ…妖夢」

 この血の能力があればある程度の奴とは戦えるだろう。

「誤解があるようなのであなたをねじ伏せてからゆっくりと誤解を解くことにするわ」

 妖夢がそう言ったとき、私は動き出した。

 バックに手を突っ込むと同時に前方に向けてレーザーを放つ。

 妖夢はそれをギリギリでかわす、だが無駄のない動きであり、ギリギリというよりは必然的によけたとように見える。

 妖夢は姿勢を低くして地面を這うように走ってきた。

「さすがに…早いな…」

 私は呟きながら後方に向けて口の開いた瓶を妖夢に見えないように放り投げた。

「せぇい!」

 妖夢は最小限の動きで下から上に桜観剣を振り上げる。

 予想よりも来るのが早い妖夢に対して私は一歩下がるが、妖夢はその開いた間を走って埋めて桜観剣の刃先で私を切り裂こうとした。

 直後、真っ白な光と炸裂音が私の少し後方の真下から出現した。

 一歩下がったことにより予定していたよりも大きな音で鼓膜が破れてしまい、耳から出血する感覚がする。

 だが、それだけ。

 妖夢は光をほぼ直視したに等しい。これで少しの間、妖夢の視覚情報は遮断されたに等しい。

 もう一歩下がった私に桜観剣は掠ることもなく振り上げられた。

「くらえ!」

 魔力を手先に込めて私は妖夢に向けてレーザーを撃ちだした。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

その時はよろしくお願いします。

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