もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでも良いという方は第四十七話をお楽しみください。

先日は諸事情により投稿できずにすみません。


もう一つの東方鬼狂郷 第四十七話 酒吞童子との戦い

「なっ……!?牢から出たのか!?」

 姿を見せた萃香が驚きの声を上げてすぐさま戦闘態勢へと移行する。

「…なぜこの場所にいる!」

 萃香が私たちに向けて至近距離から拳を振りぬく。

「…が……あぐっ……!?」

 誰かが来ていて、戦う準備はできていたが萃香のパンチの威力は想像を絶する威力を持っていて、私は小悪魔ごと後方に吹っ飛ばされることとなる。

 階段のでっぱりに背中を打ち付けてしまい、背中に鈍い痛みが走った。

「…驚いた……聞いてはいたが、本当に生きているなんてな」

 そう言いながら萃香は私に歩み寄り、胸倉を掴んでくる。

「…う……っ」

「……あたしに会いに来たってわけじゃあないだろう?…何しに来たんだ?」

 萃香が胸倉を掴んだ私をゆっくりと持ち上げる。

「…くっ……」

 小悪魔の話からだいたいは予想できる程度に強い。だが、予想はできてもうまくいかないのが世の常である。

「まあ、どっちにしろ…遅かれ早かれ死ぬことには変わらないんだ……苦しむか、苦しまないか…それだけだ……せっかくだから選ばせてやる」

 スカがずいぶんと余裕の笑みを浮かべて私に語り掛ける。

「…死に方か……私の答えは………お前を殺すだ…」

 私がそう言いながらニヤリと笑うと、上に上がった口角から血がタラリと垂れた。

「……?」

 萃香が疑問符を上げる。喀血もしくは吐血するような怪我はしていないからだ。私から何かを感じ取ったのか、萃香は私の顔を吹き飛ばそうと拳を握ってこちらに繰り出そうとする。

 だが、それができないことに気が付くのは萃香が吹っ飛ばされて天井に背中を打ち付けてからだ。

 私が蹴り飛ばしたことにより、斜めになっている天井に以前の私だったらできないほどに飛んで行った萃香が天井に背中をぶつけた。

「…お前……この力はいったいなんだ……!?」

 床に落ちた萃香が特にダメージを負ったわけでもない様子で体を起こして立ち上がりながら私に言った。

「…教えると思ってんのか?」

「まあ、普通はそうだな」

 私がそう答えると萃香は言いながら笑う。

「…」

 私は手先に魔力を集中して構える。

「…小悪魔、退路の確保を頼む…後ろから敵が来てる」

 萃香を警戒したまま私が言うと後方の階段に入る前の廊下から声が聞こえてきているため、小悪魔はうなづくと今降りてきた階段を駆け上がっていく。

「……くく…匂うなぁ…お前から匂う。殺しをやったやつの匂いがする」

 私に言いながら萃香は嗤う。

「…」

「どうだ?人とは言わないが…殺しをした気分は」

 萃香の口が三日月のように裂け、嗤いながら私に近づいてくる。

「…そうだなあ」

 私はそこで一度言葉を切り、こちらに歩み寄ってくる萃香に向かってこちらこらも歩み寄る。

「…ゴミ掃除をした気分だよ」

 私は言うと同時にレーザーを放つ。放ったレーザーは萃香の左肩を貫通し、お返しとばかりに私の胸に拳を叩きこんでくる。

「…がっ……!!?」

 再度後方に吹っ飛ばされ、階段の上に倒れると、倒れた私の胸の上に萃香が足を乗せた。

 至近距離で萃香に挑もうとしていたのはさすがに無謀だったと少し反省する。

「ゴミ掃除か…そいつは結構なことだ…」

「…お前も…そのごみの一人になるんだよ……萃香…」

 私が言うと、萃香ははっと鼻を鳴らした。

「…何もなくてつまらなかったんだ。少しでも私を楽しませてくれよ」

 萃香はそう言いながらカードを取り出し、魔力を回路に流すとカードが淡く光り輝く。

「四天王奥義『三歩壊廃』」

 萃香がカードを握りつぶすとぐしゃりと潰されたカードが魔力の粒子となって消えて行く。

「…それをここでやるのかよ……しかも、いきなり…」

 萃香の私の上に乗せいている足をレーザーで消し飛ばし、起き上がりながら私は言った。

「こっちは戦争ができなくて暇なんだ……簡単に死んでくれるなよ?」

 消し飛ばされた足を早々に再生させた萃香はいいながら拳を握る。

「……」

私が黙って身構えた時、

 ドンッ!!

 萃香の踏み込みで強い衝撃が発生、私のいるところの階段までひびが入る。

 ひびが入るのと同じぐらいのスピードで萃香が飛び掛かってきて、人間を一撃で粉砕することのできる拳を私に振りぬいた。

「…っ…!」

 私は魔力で体を強化すると足に魔力を込め、上に跳躍する。

 紙一重で拳には当たらなかったが、こちらに飛び込んできた萃香に足がひっかがってしまい、バランスを少々崩してしまう。

 バランスを崩しながら無理な体の体勢で下にいる萃香に向けてレーザーを放つ。

 放ったレーザーを萃香はもろに浴びるが、少し怯む様子が見られた。だがそれだけだ。

 血を少量しか飲んでいないとはいえ、私の最高出力は萃香にとって少し怯む程度の物でしかないというわけだ。

 魔力を足から放出して、その場で硬化させて固定させ、足場にして階段の小悪魔が向かっていた方と同じ方向にジャンプして下がった。

「あ?…何逃げてんだ?」

 萃香が苛立ったように自分の拳でボロボロになった床の上に着地した私に言う。

「…真正面から鬼に立ち向かうほど、馬鹿じゃないんでね……」

 私は言いながら階段を一歩後ろに下がった。

 後方からは何か騒がしい声が聞こえる。私たちを捕まえに鬼が来たのだろう。小悪魔がそれらと交戦する音がわずかに聞こえる。

「…まあいいや…」

 小悪魔が奴らに後れを取るとは思えない。私はごちゃごちゃと考えるのをやめた。

 萃香に意識を向けると魔力力が星熊勇儀の比ではないぐらいの質があるということがわかった。

 三歩壊廃の作用により、萃香の低い身長が三倍程度の大きさになって見上げるのが萃香から私に変わった。

 天井スレスレの萃香の身長。その分腕が伸びて射程が二倍以上も伸びたことになる。こいつはとにかく強いということは聞いているため、これ以上こいつの攻撃を食らうわけにはいかないだろう。

「……」

 歩幅も伸びて、現在は数メートルの距離が萃香とあるが、こんな距離は一歩で詰められてしまうだろう。

「…そら、二回目だ!」

 萃香が一歩歩み出すと同時にそれ以上の距離を私は後ろに下がる。

 だが、私は歩幅や腕の長さが伸びていたことを甘く見ていたらしい、萃香の腕が余裕で届く距離しか下がることができず、私の手のひらよりも大きな大砲のような拳が私の体を容易く吹き飛ばした。

「…ぎっ……ぁがっ……!!?」

 下から振りあげるような一撃に私の体が浮き上がり、一直線に小悪魔がいる通路まで吹き飛んだ。

 何十メートルもあった通路に瞬きする時間よりも早くに到達していた。

 私は吐血して血を吐き出してしまう。

 口から出てしまったのは無理だったが、口の中に残った少量の血を飲み込んで魔力力をさらに強化した。

 ドォォォォォォッ!!

 通路の壁に背中が当たる。防御を強化した私の体は岩の壁を砕いて粉砕した。壁が陥没して二メートルほど押し込まれるがそこで何とか耐えきった。魔力で防御力を上げていなければ、おそらく私は壁にへばりついてシミになっていただろう。

 魔力を使って吹っ飛ばされた方向とは逆方向に推進力を働かせていたのも大きい、被害がそれだけで済んだのはこれのおかげでもある。

 一撃の痛みが始めに殴られた時の二倍や三倍の比じゃない。

「ぐっ……!!」

 殴られた腹を押さえながら横にいる鬼たちと戦っている小悪魔と目が合った。

 私が突っ込んできたことによって唖然としているうちに、何も言わずに小悪魔に走り寄って抱き上げて出口に向けて今来た道を戻り始めた。

「ちょっ…!?魔理沙さん!?」

「逃げるぞ!!」

 小悪魔の意見を聞いている暇もないため、鬼の横をすり抜けて全速力で走り出す。

「ま…魔理沙さん!なにをするんですか!?」

「…すまないが、手段を選んでい暇がなかったんでな!」

 私は言いながら肩越しに後ろを振り返ると、さらに巨大化した萃香が狭い通路の天井を破壊しながら現れる。

「…ちっくしょう!……もうきやがった…!」

 この牢屋の並ぶ通路は縦にも横にも広い、萃香が走るのにも支障はない広さだ。

「魔理沙ぁ!…逃げるなぁ!」

 萃香はそう叫びながら小悪魔と戦っていた鬼たちを薙ぎ払ってこちらに向かって走ってくる。

「…魔理沙さん!私を下ろしてください、これではスピードが出ません」

 小悪魔が言い、私が走りながら小悪魔を下ろすと地面につくと同時に走り始め、私は小悪魔を下したことにより、わずかに走るスピードが上がった。

 小悪魔が私に並走する。

「…小悪魔、私に合わせなくてもいい…先に行け」

 私が走りながら途切れ途切れに言うと、小悪魔が私にすみませんと呟いて足の回転を速めて走っていく。

 全力で走る私を小悪魔はぐんぐん引き離していく。

「…あとで合流するから…先にレミリアたちを探していてくれ」

 私は言うと小悪魔は正面に向かって走りながらわかりましたと返事をして、約六十メートルは先にある階段を駆け上がっていく。

 私が振り返ると、五メートルほど後方にいる萃香が拳を振り上げて私に殴りかかってくる。

 想像以上に近く、射程や速さが今までの攻撃を凌駕するほど速い、つまり、ただでさえ接近戦が不得手の私には手に負えないということだ。

 悲鳴を上げる暇もなかった。

 




たぶん明日も投稿すると思います。その時はよろしくお願いします。

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