もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでも良いという方は第四十四話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第四十四話 兆候 ②

 顔を殴られた、腹を蹴られた、肉を引き裂かれた、腕をねじ切られた。

 目が見えなくなっていたり、腕や足が無くなっている記憶も、穴が開いた腹から内臓が床にこぼれている記憶も朧げににあった。

「う…………くっ……」

 しかし、朧気であってもそれは真実であったらしく、治ってるはずなのにズキズキと古傷が痛むように、なくなった腕が無くなった足が目が内臓が痛み続ける。

 目が覚めた私は身動きが取れないのに気が付いた。

「魔理沙さん!気が付きましたか…!?」

 小悪魔の声がすぐ近くから聞こえる。

 何だろうか、ものすごく……温かい。

 人肌に温かい感覚が私を包んでいて、石鹸のとても良い香りが漂っている。

 目を開くと、小悪魔が心配そうな表情を私に向けていた。私を小悪魔は抱きしめていたため、身動きが取れなったのだ。

「……ああ…」

 私が呟くと小悪魔が安堵して、胸をなでおろして息を吐く。

「…小悪魔は大丈夫なのか…?」

「…私なんかよりも、魔理沙さんは大丈夫なんですか…!?」

 小悪魔が言った。

「…私はもう何でもない。治ってるよ」

 私が言うと小悪魔が呟く。

「…何でもないわけないですよ……なんでこんなに無茶なことばかりするんですか…?」

 小悪魔が私のことを抱きしめながら呟く。

「……私にも、わかんないぜ」

 私がそう呟くと、小悪魔が言った。

「…魔理沙さん……あなたは、なんだか死について過剰に敏感になってませんか?確かに怖いものですが、誰かが傷ついたりすることに異常に敏感になっている気がします」

 そう言う小悪魔から私は離れながら話に耳を傾ける。

「……小悪魔、お前は…死んだことがあるか?」

 私の質問にそこに生きて存在する小悪魔は当然首を横に振った。

「……まあ、当然だよな……死の予感や死にそう……死んだらこうなるんじゃないか……そういうことは体験したことはあっても、本当の死は体験したことはないだろう?」

「…はい……」

 私が一度死んでいることを知っている小悪魔は消え入りそうな声で呟いた。

「…あの……恐怖、孤独、絶望、悲しみ……あんなのはできるならば体験しないことに越したことはない。どんなくそ野郎でもな…」

 私はそう呟く。

「…だから……魔理沙さんはどんな相手も殺したりすることはないんですね…」

「………ああ、……だが、もうやめだ」

 私がそう呟くと、その言葉に小悪魔が聞き返してきた。

「…え…?……止めってどういうことですか……?」

 私に小悪魔が聞き返そうとしたとき、勇儀が歩いてくる下駄の音が薄暗い通路や牢屋に響き渡ってくる。

「……楽しい楽しい時間が来たぜ、魔理沙」

 勇儀が牢屋の扉の鍵を解除して扉を開けて牢屋の中に入ってきながら言った。

どれだけ壊そうとしても壊れない私をなぶるので味を占めたらしく、早く始めたそうだ。

「…早苗から聞いたぞ、私たちのことを殺さずに異変を解決したいらしいな。でも、この状況から私を殺さずにどうやって脱出するんだ?やって見せてくれよ、魔理沙」

 今の私たちの会話を聞いていたのか、そう言いながら勇儀が拳を握り、襲い掛かってくる。

 小悪魔がこちらに来ようとするが、私が目線で来るなと伝えると小悪魔は歩みを止めた。

「……」

 バギッ!!

 顔を殴られてしまうが、私は身じろぎ一つしない。

 唇をかんで毛細血管を切れさせて出血させ、その血を飲み込んだ。

「…………………………めだ」

 身じろぎしないで呟く私に勇儀が聞き返してくる。

「…ん?…なんだって?」

「そんなくだらない信念を貫くのは、もうやめだって…そう言ったんだよ!!」

 私は叫びながら目の前にいる勇儀に殴りかかった。

 接近戦慣れしていないぎこちなく突き出された拳に脅威はないと判断した勇儀はかわしも手で受け止めもせず、私の攻撃を受けた。

 ベギャッ!!

 私の拳の当たった勇儀の左肩がはじけ飛ぶ、弾けた左肩から切り離された左腕が地面に落ち、肺の一部や肋骨の骨片、筋肉や脂肪などの血肉を後方にまき散らしながら勇儀が牢屋の柵に背中を打ち付ける。

「……な……んだ……この………力は…!?」

 死んでいてもおかしくはない状況で、勇儀が驚愕して私に震える声で途切れ途切れに言った。

「……お前は知らなくてもいいことだよ」

 私が冷ややかに言い放つと、勇儀が笑い始める。

「…私にはわかるぞ…!私は死ぬ!……でも、私を殺した時点でお前は私たちと何も変わらないただの殺人鬼に成り下がる!」

 勇儀が喀血と吐血を混じらせて血反吐を吐きながら叫び散らす。

「…で?…だからなんだ」

 私が勇儀に近づきながら言い放つと、勇儀の顔が硬直した。

「…確かに、お前を殺せば私は異変を起こしたお前らとは何も変わらないだろう……でもな、そんなのはどうでもいいんだよ……異変を解決するため、霊夢を助けるために私は手段を選ばないことにした」

 私はそう言ってから一呼吸間をあけてから再度話を始めた。

「…精神攻撃を狙いたいなら言わせてもらうが、今の私には意味はない。なんでゴミ掃除をしたのにゴチャゴチャと余計なことを考えないといけないんだ?」

 勇儀の飛び散った血がかかった手で勇儀の顔を掴む。

「…なんだと…!?」

 息絶えそうな勇儀が言うが、私はそれを遮って言った。

「…楽に死ねると思うなよ」

 私が言いながら勇儀がいる場所の周囲に魔法をかけるために、とある魔法のスペルを素早く詠唱し、その魔法をかけた。

 大量の熱を発生させて勇儀に流し込む。

「が……あああああああああああああああああっ!!!?」

 大量の熱を流された勇儀が叫び始める。肉が焼け、血液が沸騰するため血管を破ってところどころから沸騰した血が噴き出し、肉が焼けて勇儀の体の色が変色していく。

「…魔理沙さん…!?いったい何をしてるんですか!!?」

 勇儀の頭を掴んでいた私の手を小悪魔が掴んで、勇儀から放させた。

 それにより、勇儀にかけていた熱の魔法が解除されてしまい、勇儀の絶叫が止まる。

「…何って、殺すんだよ……生かしておいても何になる……回復したらまた襲ってくるのは確実だ……だったら生かしておく必要もないだろう……無駄な犠牲を生みたくはない」

 体から蒸気を上げる勇儀を見下ろしながら私は呟く。

「…魔理沙さん!……あなた…!」

「……なんでこんなことするんだって?そう言いたいんだろう?…お前も見たはずだ…さとりのペットたちが殺されてた。……殺していたやつらは全員、私が殺さずに逃がしていたやつらだった……小悪魔たちが怪我をしたのも、掴まったのも、全部私のせいなんだよ」

「…そんなことないです…!…魔理沙さん!なんで全て自分のせいにするんですか!」

「……例えば、戦争していて…負傷兵を見つけたとしよう。でももう死ぬだろうと放っておいたら仲間が殺された。放っておいた奴に同じことを言えんのか?……私が片付けていれば生きることができたかもしれない…、私がさとりのペットたちの人生を奪ったんだ……私が殺したのと何ら変わらない」

 私がそう呟いた時、勇儀の悲鳴を聞きつけた下っ端の鬼たちが私たちの方向に走ってくる音が聞こえる。

 効果が切れてしまった血の能力を指をかじることによって出血させ、血を飲み込んで発動させる。

 魔力力を強化したため、比例して様々なステータスが上昇する。

 手先に魔力を集中、牢屋の中から鬼たちを視認できると同時に頭を撃ち抜く。

 魔法を混ぜたレーザーを複数放ったことにより走って来た鬼たちは全員頭部が丸ごと蒸発して首なし死体となる。

「……いくぞ小悪魔、レミリアやさとりたちを見つけるために情報収取するぞ」

 私が言うと、小悪魔は私に畏怖の念を抱いた目線をこちらに向けた。

 こうなることはわかっていた。だから別にショックでもない。

「…。私が言ってることが綺麗ごとだというのは、自覚しています……でも、霊夢さんがいるあなたは……それ以上はやってはいけません!…だから…」

 小悪魔が私に必死に懇願してくる。

「……。もう、遅いぜ…一人殺した時点でただの人殺し、それをやめてもやめなくてもそれだけは変わらない。……いくら罪を償ってもな……こっち側からは抜け出すことはできない」

 牢屋から出た私はそう言った。

「…あなたは……!」

 小悪魔が何かを言おうとした。だが、

「霧雨魔理沙ぁぁっぁぁっ!!」

 私は後方から飛び掛かって来た何かに突き飛ばされて何十メートルも宙を舞い、おうとつがあってごつごつする岩の床を転がった。

 私は床を転がるスピードが落ちて、止まってからゆっくりと起き上がった。

「……」

「こんなに早く再戦できるとは思わなかったよ…」

 爆発瓶などの傷は既に治っている正邪が私に向けて言葉を発する。

 小悪魔が牢屋から飛び出して正邪の後ろに立ち、ちょうど私と小悪魔で挟み撃ちの形となる。

「……魔理沙!早く続きをやろうじゃないか…今回は、あんな爆弾なんかで私を倒せると思うなよ!」

 ごちゃごちゃとやかましい正邪の言葉を遮って私は言った。

「…口の減らない雑魚臭のする三流だな……遊んであるから早く来い」

 




たぶん明日も投稿すると思います。

その時はよろしくお願いします。

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