もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでも良いという方は第四十三話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第四十三話 兆候 ①

 適当に削られてデコボコの岩で作られた洞窟に、少々頼りない電球が一定の感覚で薄暗い廊下を照らしている。私は首根っこを掴まれてズルズルと引きずられて運ばれているらしい。

「…………」

 意識がはっきりとせず、まるで眠っているかのように頭の中に霧がかかっていて、頭が働かない。いつもならば飛び起きていたかもしれないが今は起きるどころかまた眠りにつくように気絶してしまいそうだ。睡眠に近い方に意識が傾いてきたらしく、うっすらと開けていた目から入ってきていた視界の景色が外側から黒く染まっていく。

 ゆっくと、でも確実に私の体の機能が停止していき、完璧に意識が途切れた。

 

 どれだけの時間が経ったかはわからない。でも、運んでいた状況から大して時間は立ってはいないのだろう。

 体がまるで空を飛んでいる。そんな感覚がしたような直後、私は後頭部を強打した。

 岩に頭をぶつけたことで頭痛がするが意識がまた揺らぎ、ズキズキした痛みすらも麻痺させられているかのように和らいでいき、意識がなくなってしまう。

 

 また周りからの刺激を受けて意識がわずかに戻り、うっすらと目を開けると私は牢屋の中にいて、小悪魔が私のいる牢屋に投げ込まれたところだった。

 意識の無い小悪魔が私の上に転がり落ち、強い衝撃を受ける。

 何か行動を起こさないといけない。そう思うがまるで二日も三日も寝ていないような睡魔に襲われ、三度意識を失ってしまう。

「……」

 そのあとも何度か小悪魔に揺り起こされた気がしたが、だいぶ疲れていたのか機能停止に近いレベルで眠り続けた。

 十数回目、目が覚めた時に私はようやく意識をはっきりと保つことができるようになっていた。

「……魔理沙さん…起きましたか…」

 小悪魔が私に膝枕をしてくれていたのか、小悪魔に触れている後頭部に柔らかくて暖かい感覚を感じる。

「……ありがとう…小悪魔……」

 私は小悪魔の足から頭を上げて体を起こした。

「…私は…どのぐらい寝てたんだ…?」

 私が聞くと小悪魔はすぐに返答を返してくる。

「私の体内時計が狂っていなければ……だいたい一日ぐらいですね」

「…そうか……」

 私が呟くと、少しの間だけ間が開いた。

「…小悪魔……その、すまなかった…」

「…別に魔理沙さんが謝る事ではないですよ。あの数を相手にできる人物なんてそういません」

 小悪魔が言ったとき鉄の擦れるような、打ち合うような音をわずかに響かせながら鉄でできた柵の前に星熊勇儀が現れた。

 黄色い髪に腰まである長髪、手首には手枷に鎖がつながったものをつけており、大きな胸の胸元が露出した着物を着ている。ちょっと何かが当たっただけでボロンといきそうである。手には星熊盃は持っていないようすだ。

「…お前か…星熊勇儀」

 私が呟くとそれには答えず、牢屋の扉の鍵を開けて牢屋の中に入って来る。

「…よう。まだくたばってなかったみたいだな…」

 勇儀が狭い牢屋内で隅にだけは行かないようにして警戒をする小悪魔に言った。

「…ええ……」

 小悪魔が目元を鋭く細めて勇儀を睨みつけた。

「…そう怒るなよ…せっかくの楽しい楽しい異変なんだから洒落込もうじゃないか」

 勇儀が言い、嗤いながら自分を睨みつける小悪魔に近づく。

「……」

 小悪魔が警告もせずに射程圏内に歩いてきた勇儀に殴りかかった。

 ドガッ!!

 岩も粉砕しそうな打撃音を響かせるが、勇儀は特にダメージを負った様子はない。

 当たり前だろう。勇儀の魔力力は私は倍以上ある。もしかしたら霊夢かそれぐらい多いかもしれない。

 例外はあるが、魔力力は生まれつき持つというのがだいたい普通だ。

 それを上げるのは至難の業で、相当困難なことであるのは地霊殿で言った。

 しかし、逆に言えば魔力力さえ上げてしまえば力関係は簡単にひっくり返ってしまうということが言えてしまう。

 魔力力が自分よりも少し多いぐらいなら状況や立ち回り、経験や相性でどうにかなる。

 しかし、自分の二倍以上の差があるとすれば、二つの意味で勝負にならないはずだ。

「……っ…!」

 小悪魔が再度、自分と勇儀の力の差に驚愕を示す。

 そのうちに勇儀が小悪魔を掴み、持ち上げた。

「…っう……ぐぁ…っ……!!?」

 まるで赤子のように持ち上げられた小悪魔は勇儀に動けないように壁に押し付けられてなぶられ始める。

 殴られて小さく悲鳴を上げる小悪魔を見ていていてもたってもいられず、私は魔力を手先に集める。

「…小悪魔を放せ、勇儀!」

 私はレーザーの直径だけを極限まで細くして、光の魔法をそこに乗せてレーザーを放つ。

 レーザーに触れた小悪魔を掴む勇儀の腕に二センチ程度の穴が開く。

 骨を貫通して焼き切ったことにより、腕が折れ曲がって持ち上げられていた小悪魔が地面に落とされた。

 せっかく気分が乗っていたのに邪魔をされた勇儀がつまらないものを見るような目つきで私の方向を見る。

 たった数発で虫の息となっている小悪魔が壁に押し付けられていたため、ズルズルと壁にもたれるように倒れた。

 体を最大まで強化して私は勇儀を迎え撃つ。

 私がレーザーを放つとほぼ同時といえる時間差で勇儀が同時に動き出す。

 私のレーザーを紙一重できれいに避けてこちらに向かって接近してくる。

 持ち物は没収されているわけではなかったため、何かアイテムを使おうと思ったが、両腕を勇儀に掴まれ、壁に押し付けられた。

「…邪魔するならお前から先に片づけるぞ、魔理沙……お前も少しは長生きしたいだろう?」

 勇儀の額から生えている赤色で黄色の星のマークがあるツノが刺さりそうになり、顔を傾けながら私は呟く。

「…お前に私を殺すことはできやしない…」

 私が言うと、勇儀がニヤリと嗤う。

「…聞いたけど、なんだかお前…頑丈になったらしいじゃないか……私が耐久テストしてやるよ!」

 勇儀が足を上げ、私の腹に膝蹴りを叩きこんだ。

 腹が潰れたのではないかと錯覚するほどの衝撃に、私が押さえつけられていた壁に放射状のひびが入った。

「…かっ……あ……っ…!!」

 呼吸ができなくなり、痛みでずるりと力が抜けてしまう。体の中に異常な感覚がする。小腸が千切れたか潰されたのだろう。

「…魔理沙、この程度でへこたれてるなら…先にあっちから片付けることにするぞ」

 肩越しに後方で気絶している小悪魔を見ながら勇儀が言った。

「…やめ……ろ……小悪魔に……手を…出す……な…!」

 私は勇儀が掴んでいる勇儀に至近距離からレーザーを放つ。眩しい光を放ちながら勇儀に当たったレーザーは小さな穴をあけた。

「やらせない……小悪魔には……手は出させないぜ………勇儀…!」

 私はもう一度レーザーを放つが簡単に弾かれてしまい、勇儀は私の顔を横から殴る。

「あ……ぐっ……!」

 口の中から悲鳴にならに悲鳴が漏れ、勢いを逃がすことのできなかった私は床に倒れてしまう。

 殴られたことで口内で出血がおきてしまい、口の中でうっすらと鉄の味がする。その血を飲み込むと腹の鈍痛が収まっていく。

「…休んでる暇はないぞ?…もっと私を楽しませろ」

 勇儀が倒れている私を掴んで持ち上げた。

「ぐっ……!!」

 私は呻きながら胸倉を掴む勇儀の手を掴んで放させようとした。

「…さあ、楽しませてくれよ!魔理沙ぁ!」

 

 それから先のことはあまり覚えていない。でも、覚えていない方がよかったのかもしれない。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

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