割と好き勝手にやっています。
それでも良いという方は第四十一話をお楽しみください。
「…いただきます」
私は手を合わせて呟き、近くの皿に盛り付けられてあるパンを手に取って齧った。
十数回咀嚼して飲み込むが、著しい魔力不足で食べ物は全て魔力回復に当てられ、空腹感が収まることはない。
「……」
様々な食べ物を味などを味わうこともなく皿にとって口の中に放り込む。
少しの間、夢中になって食べていると正面に座っているさとりに声をかけられた。
「……魔理沙……ちょっといいかしら?」
「…ん?ああ…なんだ?」
私が言いながら顔を上げると、さとりがスープを飲みながらこちらに視線を向けている。
「……魔理沙はどこまで異変についてわかって来たの?」
さとりが始めに言った。
「……あんまりわかってないな…鬼がかかわってるということはわかってるんだが……」
私は言いながらさとりに質問を投げかけてみることにする。
「…さとり、外にあんだけ鬼がいたのはなぜだ?」
私はそう質問し、肉や野菜を頬張る。
「……私たちを見張るためよ」
「……。たしかに、それならつじつまが合う」
「…え?なんでですか?」
大妖精が隣で口に含んでいたパンを飲み込み、私に言ってくる。
「…。さとりの能力だよ…例えば、さとりたちの中から誰かを人質に取って脅したとしよう。ひとまずはさとりたちはしたがっていたとしても、絶対服従とはいかない……絶対にここぞというところで裏切られる。…それでも異変の計画の内容が流出するのを恐れたんだろう……なんせ、さとりは考えていることが読めちまう」
私が言うと大妖精はなるほどとうなづき、大妖精とは反対側の私の隣に座っている小悪魔が質問をさとりに投げかけた。
「…確かに、それならこの場所に異変、それとその首謀者に深くかかわっていた人物がいないという説明が付きますが……一つ解せないのは、これだけの実力者と人数がいて、妹様を早くに倒さなかったのはなぜですか?…さとりさん」
小悪魔が出された料理には手を付けずにさとりに質問をした。
「……小悪魔…だったわね?」
視線を持っているコップに落としているさとりが視線を小悪魔に向けて呟く。
「はい…そうです」
「……私は一応地霊殿の主としているわ。だから、自分のペットの安全を守るのも私の仕事なのよ……いざという時には戦ったもらうけどね」
さとりが言うと、小悪魔は少し驚いたような顔をする。
「……そんなに意外だったかしら?」
「…いいえ、思っていた以上に…イメージ通りの方だったので…」
「それは嬉しいわね」
さとりが少し笑いながら言った。
「…そうりゃあそうだぜ。小悪魔……さとりにとってペットたちは大切な存在だからな…」
私は口に料理を運び、さらに言った。
「…食える時に食っておいた方がいいぜ……いざってときに力が出ない」
私は言いながら器に分けたスープを飲み干す。
「…ええ、わかってます」
そう言いながら小悪魔はこちらをちらりと見た。
「それよりも、魔理沙さん…食べすぎじゃあないですか?」
自分の前に置いてある食べ物をほとんど食べつくして、大妖精や小悪魔の方の皿にも手を出し始めた私に小悪魔は言う。
「…食ったもん全部魔力に変換してるんだ。まだまだ食い足りないんだぜ」
私はそう言いながら皿にわけた野菜を食べ始めた。
小悪魔は司書という立場上、主人と一緒に食事をとるということはないのだろう。だから、こういうふうに食事をするのに慣れていないのだ。
「…。…紅魔館じゃあ、司書だが…こっちでは客人だ。遠慮は逆に失礼だぜ」
「…そうですよね…」
小悪魔がそう呟くと食事を皿に分けて食べ始める。
「……それで、魔理沙は私から何を聞きたいの?」
さとりが言いながら食べ終えた皿をほかのペットに下げてもらう。
「…異変を起こした奴らの中でも下っ端じゃなくて中枢に食い込んでいる奴を知りたかったんだが、この状況じゃあ無理だよな……」
「……割と、そうでもないらしいわよ」
私が言うと、さとりはそれを否定した。
「……誰かはわからない。でも、裏で手を引いている奴がいるわ」
さとりが言う。
「…裏で手を引いているやつ?」
「……ええ、鬼たちに私たちが外に出ないようにと命令したのは伊吹萃香と星熊勇儀……でも、そこらの鬼たちは詳しい人物かは知らないみたいだけど、たしか、あと二人は手を貸している者がいて、その他にこの異変を計画した奴が一人いるみたい」
「…異変を計画した奴が黒幕なのは明らかだとして、萃香と勇儀以外の奴で誰が手を貸してるんだ?……おそらく、そのうちの一人が正邪だと思うんだが……どうだ?」
私が聞くとさとりは少し驚いたようだ。
「……戦ったの?」
「ああ、旧都に降りてくる少し前にな」
私は言いながらさらに分けた肉を一口齧った。
「……となると、黒幕以外の残りの一人が不明というわけね」
「…今のところ、可能性があるのは聖じゃないかとにらんでる」
私は肉を咀嚼して飲み込んでからさとりに言う。
「…聖って…命蓮寺のよね?……一度会ったことあるけど、こんなことに手を貸す人物とは思えないわ……」
「…それはわからんぞ、元人間で今は魔法使いで何年も生きているとは言え…聖の精神は人間が基本だろう……何かにショックを受けたり、何かからの影響を受けることで考え方が変わるなんてこともある……精神が不安定な時なんか特にな……これはないと思うが、宗教がらみは、間違った方向に行くこともなくはない……可能性の一つではあるがな」
私は言い終わり、ガラスのコップに注がれた水を飲み干した。
「…この中で異変の首謀者たちに直接的に会って戦ったことがある奴は、小悪魔以外にいない……。小悪魔は何か私たちに話していないこととか、思い出したことはないか?」
私が聞くと、いきなり話を振られた小悪魔が口に運びかけていたスプーンを器に戻しながら話し始める。
「…気になることと言ったら……鬼は凄く強いと聞いたことがあるのですが……お嬢様やパチュリー様がまったく歯が立たないほど強いとは知りませんでした」
小悪魔が言うと、さとりが思い出したように話を始めた。あの二人が歯もたたないとなると相当強い。もしかしたら霊夢並みに強いのではないだろうか。
「……鬼の一人から情報を抜き出したのだけど……どうやら、伊吹萃香や星熊勇儀は自分の魔力の魔力力を上げてる…とある方法をやっているらしいわ」
そうさとりがいうと全員の視線がさとりに移る。
魔力力とは、いわゆる魔力の質だ。膨大な魔力を保持していたとしても、それが戦闘力にイコールではつながらない。
魔力力はイメージで言うならば、車のエンジンなどに近いかもしれない。重さなどの関係は考えないものとして、馬力の強いエンジンほど速く走る。馬力が弱ければいくらガソリンを積んでも遅いままだ。
それと同じで、馬力の強い魔力力ほど力関係にイコールでつながるのだ。
だが、それ故に魔力力を上げるのは相当困難なことなのだ。
「…もしかして……それって…」
魔法の研究や魔力の研究をしている者ならば、魔力力を効率的に上げる方法はないかと誰もが模索し始める。魔法は弾幕や物に魔力を流して強化するのとはわけが違う。大量の魔力を消費しなければならないのだ。だから、できるだけ強い魔法を撃つには高い魔力力が不可欠というわけだ。
そして、そのうち誰もがたどり着く答えがある。
「……さえてるわね…魔理沙」
さとりは言うと、一呼吸間をあけて呟いた。
「……それは、同種喰らいよ」
さとりの言葉にそれを予測できた私でさえも息をのんでいた。
たぶん明日も投稿すると思います。
その時はよろしくお願いします。