もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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第二話をお楽しみください。

誤字脱字や言葉足らずなどはできるだけ治していこうと思います。

私の想像が先走った作品です。


もう一つの東方鬼狂郷 第三話 襲って来る者たち その②

 文は私を助けるためでなく、殺すために竜巻に巻き込んだ。こんな状況だ。考えられるのはこいつもおかしくなってるということがわかる。

 文の戦闘能力は未知数。やられる前に先手を打たなければならない。

 文が動き出す前に、文に向けてレーザーを放つ。

 だが、文には当たるどころかかすりもしない。気が付けば文は私のすぐ隣に立って笑っている。

 まるで咲夜の能力でも使われたんじゃないかと錯覚した。文の瞳が怪しく光るのが視界の端に映る。

 でも、それが単純な文の速さだと気が付いたのは、文に蹴りを腹に入れられた時だ。

「がっ…!?」

 早すぎる文の動きに反応できなかった私は宙を舞い、血の海を越えてまだ無事だった家屋の壁を破壊して家の中に転がり込んだ。

「ふふっ…」

 倒れた私の目の前に既に文がしゃがんでおり、笑いながら私の頭を掴んだ。

 頭が握りつぶされるような握力で握られた。

「ああああああああああああっ!!」

 私は文の手から逃れようともがくが、振りほどくことができない。目の前に星がちらつき始めた時、

「魔理沙さん……覚悟してくださいね」

 文が楽しそうに言いながら、私を壁に投げつけた。

「ぐうっ…!?」

 背中を強く壁に打ち付け、私は壁にもたれかかる。

 覚悟しろとはいったい何のことかわからず、私はズキズキと痛む頭を押さえながら壁を支えにして立ち上がった。

 文が台所の方向から光に反射して鈍く光る大きな包丁を持ってきた。

 ゾッと血の気が引く感覚がわかる。

 普通の人間にナイフを向けられても同じ感覚になるだろう。でも、人間ならば全力で逃げれば私は助かる可能性もゼロではない。しかし、現在私がナイフを向けられている相手は瞬間移動ではないかと疑うほどの速度を持つ天狗だ。逃げ切れる確率は絶望的、背を見せて逃げても逃げなくても私はここで殺されてしまう。

「くふふ…」

 文の嗤う声がいつの間にか横から聞こえている。

「!?」

 私はレーザーを横に狙いなどつけずに時間稼ぎ程度でぶっ放す。

 だが、大きく狙いがそれ、的外れな場所にレーザーが命中し、床を焦がした。文に向けた右腕を文に掴まれ背中側に回される。

「いっ…!?」

 文が私の腕を折れる寸前の場所で押さえた。

「…文……なんで…こんな意味のないことをするんだよ…!」

 私が言うと文は笑い、呟く。

「私は見たいんですよ…本当のあなたを」

「…本当の…私……?」

 私が呟いた時、文の右手に握られるナイフが後ろから回されてきて腹部の位置に添えられた。

「さてと」

 文はそのままの体勢で呟き、私にナイフをゆっくりと突き立てる。

 皮膚をナイフの先が切り裂き、チクリとした刃先の痛みが脳に伝わり、私が苦悶の表情を浮かべたところで、文は動きを止めた。

「文……お願いだ……止めてくれ…!」

 血がにじんできた腹部が見える。いつナイフが根元まで突き刺されるかわからない恐怖に、うまく舌が回らないが聞こえるようにはっきりと呟いた。

「いやですよ……私はあなたの本心が見たいんですから…」

 文が興奮気味に言った。

「…そんなくだらないことはやめろ…異変に加担すれば霊夢だって黙っちゃいない……消されちまうぞ…」

 私がそう言ったとき、ナイフが一センチほど私の中に潜り込んだ。

「あが………っ!!」

 今まで味わったことのない激痛に私は絶叫することもできない。呼吸の仕方も忘れてしまい、私は酸欠になりかけている。

「ほらほら、命乞いをしないと死んじゃいますよ…?」

 私を刺して興奮しているのか、文が顔を高揚させて耳元で囁いた。

「…や…め……!」

 私がようやく絞り出したような声を出した時、文がさらにナイフを私の中に押し込む。

 刺された部分の周りの服が血で濡れて皮膚に張り付く感覚が気持ちが悪い。

 こんな激痛。耐え切れない。

 既に私の意識は遠のき始めている。

「………」

「魔理沙さん……人間に限らず妖怪、妖精たちはみんな常に嘘をついています」

 文がぐったりとしている私の顔を持ち上げて耳元に唇を這わせ、呟いた。

「…?」

「周りに合わせ、面白くもないのに笑い、悲しくもないのに泣く。長年記事などを書くために様々な人間と妖怪とあってきましたが、全員仮面を被って偽りの自分を周りに見せているというのが私にはわかりました」

「そして、私は思いました。誰もが死の瞬間になれば仮面を外して自らの自分をさらけ出すのではないかと…試してみて、大成功でしたよ。とても勇敢な男が恥を捨てて命乞いをし、とても優しくおしとやかな女性が鬼のような形相で罵倒を吐きかけ、とても仲の良い夫婦がどちらかが助かるためにどちらかを切り捨てようとし、滑稽な男が死を受け入れたり。周りに見せている物とは全く違う一面を見せてくれました」

「だから……なんだよ……」

「だから、私は魔理沙さんの本心も見てみたいと思ったんですよ」

 私の顔の横にある文の目が赤く光る。

「さあ、あなたも偽りの仮面を外して、本心をさらけ出してくださいよ」

 そう言いながら文は私にナイフをさらにずぶりと差し込んだ。

「っ……あああああああああっ!!」

 飛びかけた意識をなんとか繋ぎ止めるが、胃から上がって来た血を吐き出し、足元の地面を紅く濡らした。ナイフは内臓を傷つけていたらしい。

「ほら早く仮面を外して命乞いの一つでもしてみたらどうですか?…私を楽しませてくださいよ、魔理沙さん」

 文が笑いながら私に刺さったナイフをゆっくりと押し込む。

「~~~~っ!!」

 私は歯をくいしばって耐える。アドレナリンが分泌されて痛覚が麻痺して痛みが和らぎ始める。

「ごぼっ……」

 私は再度真っ赤な液体を吐き出した。下に顔が傾き、文のナイフが腹部に根元まで刺さっているのが見えた。

「魔理沙さん。わかりますか…?ちゃんと根元まで刺さっていますよ?いくら魔力を扱えても、そのうち出血多量で死にますよ」

 文が楽しそうに笑みを浮かべながらささやく。

「か……あ……」

 私は喋ることもできず、後ろの文にもたれる状態で辛うじて立つことができていた。

「……魔理沙さんは頑固でつまらないですね。…じゃあご協力感謝します。死んでください」

 文が言いながらナイフを引き抜こうとしたが、私は文のナイフを掴む手を上から掴んだ。

「…?今更何のつもりですか?あなたにもうようはありません」

 文が苛立ったような声を私に浴びせた。

「…そんな、酷いことを言うなよ」

 私は自由な方の手でポーチから取り出していたマジックアイテムを耳元でささやく文の口にねじ込んだ。

「んぐっ!?」

 文は目を白黒させて吐き出そうとしたが、私は文の口を押えたまま言った。

「爆発しろ」

 文の口の中で小さな爆発が起こり、文は私から手を放して後ろにヨタヨタと下がる。

「あがっああああああああああっ!?」

 文の悲痛な絶叫が響き渡った。

「悪いな、文」

 私は息を止めて謝罪しながら文から遠ざかる。こちらに一歩か二歩転びそうな歩み方で歩いていたが、文はすぐに倒れた。

 私は文から一定の距離を開けてから息を吸い込む。

 文に使ったのは毒だ。

 普通は煙を出すわけだが、その煙が毒であってそれを吸うと体が痺れたりする。本来は煙として空気に混じる分効果は薄い。

 だが、今の文はそれが口の中にあり、さらに大量に発生した煙を吸い込んだ。人間用で作ったため効果はあまりないだろうが、直接あれだけ吸い込めばいくら天狗であろうとも効果の一つはあるだろう。

 私は念のため、解読罪が練りこんである飴を口に含んだ。

「…かはっ……!!?いぎゃあああああああああああああああああっ!!」

 文が地面で砂やほこりにまみれてのたうち回る。

「…ぐっ…!」

 私は足から力が抜けて膝から崩れ落ちた。

 まずい…。

 私は自作の傷の修復を促進する回復薬を取り出し、傷に振りかけた。強い睡眠作用があって使えば眠ってしまい、殺してくれと言っているとしか思えない状況になってしまうが、四の五の言っている暇はない。本当に死んでしまう。

 傷が煙を上げながら修復を始めた。

 ナイフを抜かないとそのまま刺さったまま再生してしまうため、ナイフを引き抜き、血がこびりつきナイフを投げ捨てた。

 人間の血や油などがこびりついたあの刃物は早く洗わなけれ錆びて使い物にならなくなるだろう。

 液体の回復薬を布にしみこませて止血の代わりに傷を押さえた。

 背中を壁に預けて座り込む。早く文から離れないといけないのに、体が動かない。回復薬の副作用のせいだ。

 できるだけ離れることができないかと動こうとしているとき、毒に苦しみ、青白い顔をした文がこちらに体を引きずりながらこちらに来るのが見える。

「…まだ…やる…き…なの…かよ……」

 私が捨てた赤いナイフを持った文が笑いながら私の足に触れた。

「く……くるな…!」

 私は足に触れた文を蹴飛ばすと、脳を揺らしたのか力尽きたように突っ伏して動かなくなる。

「く……そ…」

 立ち上がろうとしても足が言うことを聞かない。

 血を流しすぎたのと、回復薬の副作用で意識が遠のいていた。

「……」

 私はいつの間にか眠るように気を失っていた。

 

「………うっ……」

 かすれた声が自分の物だと気が付くのに約二十秒はかかった。その秒数も合っているか定かではないが、わかっていることは私はまだ生きているということだ。

「………」

 私は目を開けると、文はまだ青い顔をして私の目の前に倒れている。

 手で押さえていた布が乾いて皮膚に張り付いているのを剥がすと、べっとりと血がこびりついて茶色く変色を始めている。

 腹の傷は回復薬の作用できれいさっぱりとは言わないが、応急処置程度にはなったらしく、塞がってはいる。

「……」

 薬の副作用でまだ重い体を持ち上げて文の首に手を当てた。少し弱いが鼓動は感じる。生きてはいるらしい。

 とりあえず安心して周りを見た。あたりは暗くなっていて、かなり時間が経っているのがわかる。

「……」

 まだよろける体を引きずるようにして私は箒があった場所に歩く。村人は文の風で全員死んでしまったらしく、人ひとりっ子いない。

 文の起こした風を直接的に受けなかったらしく、箒は昼と同じ場所に落ちている。

 箒を拾い上げ、この場所からは暗くて見えないが遠くにある博麗神社に向かうために箒にまたがった。

 この異変、単独で動こうかと思ったが無理だ。私には手に負えない。

 死人が出ている時点で単独行動などはしない方がよかったわけだが、前の自分のことを批判しても意味はない。

 箒に魔力を流して推進力を得て浮き上がり、博麗神社に向けて飛び立った。

 今回の異変、天狗が大きくかかわっているのだろうか。とりあえずそれを霊夢に伝えよう。異変が起こってからしばらくたっているため、霊夢はもう知っているだろう。なら私が知らないことを聞き、状況が理解できるだけの情報を得よう。

 私は闇にまぎれて空を飛んだ。黒い服を着ていてよかったと今更だが思った。

「……」

 人間があんなに狂っているとしか言いようのない状況、何があった。

 能力を使えばできないことはないやつは何人かは知っている。

 人と人が争っているのならば、パルスィの能力ではないかと思うが嫉妬心でああはならないだろう。

 奏こころもできないことはないかもしれないが、そもそもあいつはそんなやつじゃない。自分が起こしてしまった異変をどうにかしようとする奴だ。

 能力がかかった状態から一番当てはまるのが鈴仙であるため疑ったが、あいつの能力は個人に対してだけだ。まとまっていれば複数人もいけるが時間がかかるし、その間に霊夢が動くだろう。現実的ではない。

 ここまで考えて私は思った。そもそも、異変を起こした連中の動機が分からない。

 昼に幻想郷を見回した際、さっき私がいた村がかなりの被害を受けていること以外変わらないように見えた。

 紅魔郷の時などは目に見えて変化があり、わかりやすかった。

 しかし、わかりにくい異変だとしても最低でも一週間前程度から異変なのでは?という変化がある。

 私が地下にこもったのは三日前、地下にこもる前日も一週間前も異変の前兆のようなものは感じられなかった。

 だとすれば、幻想郷入りした新参者が異変を起こしたということだろうか。

 その新しく入って来た奴の能力だとすれば、この不可解な現象もある程度は納得がいくだろう。

「……」

 だとしたら、ずいぶんと交戦的な奴だ。

 考えていた時、胃の筋肉の収縮を感じた。胃にまだ残っていた血があったらしく、それを胃から押し出そうと筋肉が収縮した。

「…うっ…!」

 私は顔をそらして自分にかからないようにして血を吐き出した。

 口元が血で汚れ、私は手の甲で拭う。

 今まで正面しか見ておらず、わきを見ていなかったせいでそいつらの接近に気が付くことができなった。

 リグルとミスティアだ。私が二人に気が付いたことをミスティアが感づいたらしく、口を開いた。

「…?」

 お前たちは大丈夫かと私が声をかけようとしたとき、ミスティアが聞き入ってしまうような美しい歌声で私を惑わし、狂わせようとする。

「うあっ…!?」

 音が波となって空気を振動して伝わり、私の鼓膜を揺らして脳に音としてその情報を伝える。

 ガクンと私がまたがっている箒の角度が傾き、誰かが箒に乗ったということがわかる。だが、それすらも分析することができない。

 ドン!

 背中を誰かが蹴った。

「がっ…!?」

 耳を押さえようとした私をリグルは箒から蹴り落す。

 私は加速しながら地面に向かう、文に風邪で吹き飛ばされた時のように風の雑音で何も聞こえなくなる。

 そのころになって私はようやく自分の状況を理解する。

 真っ暗な地面が凶器となって私に迫ってきていた。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

駄文ですがよろしくお願いします。

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