割と好き勝手にやっています。
駄文です。
それでも良いという方は第三十三話をお楽しみください。
メギッ!!
衝撃が私の頭を駆け抜ける。
「…っ……ぁぁ……!!?」
ブシュッ!
と頭部から大量の血が滲みだし、私の白い髪の毛が赤く染まっていく。
「…くそ!…人間のくせに!」
犬歯をむき出しにして女性の鬼が私の胸倉を乱暴に掴んでくる。私を棍棒で殴る気らしく、反対の手には棍棒が握られている。
手に持っている棍棒を私の頭に向けて振り下ろすが、その鬼の頭に後方から飛んできた小悪魔が拳を叩きこんだ。
それにより鬼の手元が狂い、振り下ろした棍棒のずれと私を掴んでいた手から私を放したことにより、振るった棍棒は掠りもしない。
「…くらえ……っ!」
私はゼロ距離から鬼に向けてレーザーをぶっ放す。
強い光が手から放たれ、鬼の体を包み込むと魔力で防御力が足りなかったのか、鬼の腹には大穴が開いている。
「がっ…!?」
鬼が怯みながらも棍棒を振るおうとするが、小悪魔に後頭部を蹴り飛ばされて今度こそ気絶したらしく、白目をむいて地面に向けて落下していく。他の奴らは永琳たちが倒してくれたらしく、こいつで最後だ。
「……。サンキュー…だぜ。小悪魔」
殴られすぎて頭がくらくらするが、私は頭を押さえながら小悪魔に礼をいう。
「…魔理沙さん!…なんでこんな無茶をしたんですか…!?」
頭が血まみれで、血が流れてきている。傷の状態以上に重症に見える怪我だ。
「私は大丈夫だ……見た目が派手に怪我しているように見えるだけで、たいしたことはない」
「…心配するな…って……心配しないはずがないでしょう!?…魔力を扱えるとは言え武器を持った鬼に何回殴られたと思ってるんですか…!?」
小悪魔が眉を吊り上げて怒っている。勝ったのだからいいじゃないかと思いながら私は言った。
「…だとしても……体調を気にしている暇はないんだ。罠か、敵の本拠地なのか…それはわからないがこんだけ厳重に守られてる。…異変の首謀者だっているかもしれない。早くレミリアやパチュリー、咲夜たちを助けたいなら、さっさと行くぞ」
私はそう言いながら地面に向かって降り始める。
今のは少しズルかったかもしれない。小悪魔にレミリアやパチュリーの名前を出せばそれ以上は何も言えなくなってしまう。でも、大丈夫か大丈夫ではないか。それをここで抗議している暇はないのだ。
「……」
指先にこびりついている血の一部を舌でなめとり、それを飲み込んだ。
この血のシステムについて実験を重ねて細かいところまでだいたいわかって来た。
まず、力の重複はできない。魔法の威力を上げたとしてさらに血を飲んで追加で攻撃力を上げることはできないのだ。血の力を使っている最中にもう一度血を飲むと、一回目に飲んでいた分の力はリセットされる。
それが意味することは防御と攻撃を一緒にすることはできないということにもつながることになる。
その場に応じてステータスを上げなければならないのだ。
血の能力は万能の力とかそういう事ではないらしい。使い始めは便利な能力だと思っていたが、使い始めるとそうでもない。使い勝手が悪いのだ。
頭部の傷を見えなかった眼球の傷も一緒に完治させた。
半分しか見えていなかった視界がいつも通りの広さに戻り、私は安心する。周りの情報のほとんどを視覚から得ている人間が約半分の視界を見るとこができなかっただけでこのざまだ。戦闘能力の減少もうなづける。
数百人はくだらない数の鬼を相手にして倒した。あれで全部だと嬉しいが、その可能性はなくはない。鬼は他の種と比べてなぜかあまり数は多くはないからだ。
洞窟の下側の地面にはたくさんの鬼が気絶していて、たくさん転がっているのが見えた。
ようやく洞窟が終わり、旧都に出た。
「……ついたか」
地面に着地して旧都を見回すと、いつもと変わらないようにも見えるが、鬼がいないこと以外にいつもと変わらない。
「…さっき、罠かもしれないって魔理沙さんは言いましたよね?」
小悪魔が遠くに見える地霊殿を見ながら呟く。
「……ああ、言ったが…それがどうかしたのか?」
「…もし罠なら…その確率はどのぐらいでしょうかね…」
無人で誰もいない旧都の大通りを周りを警戒しながら小悪魔は私に言った。
「…さあな……でも、私が思うに雑魚ばかりで意味のない罠に…これだけの人員を割くとは思えないぜ…別の何かかな?」
後方の洞窟の急な斜面に転がっている鬼たちを思い出しながら言う。
「…でも、もし罠なら信憑性を増させるためとも取れるわ」
永琳がとりあえず弓に矢をつがえながら言った。
「…確かにな…でも、どれも可能性という域をでない所詮は予測の範囲でしかない…なら自分の目で見て確かめるしかない」
私は紅魔館並みに大きくて薄暗い屋敷に向かってさらに歩を進める。
旧都には人は住んでない。しかし、それ以外の鬼に始まり、ろくでもない妖怪なんかも数多く住んでいるはずだ。
なのに今は見渡す私の視界にはどれも映らない。
「……」
でもなんなんだ。この旧都全体を埋め尽くす異質と言える殺気は、誰かが出していなければ私たちは感じることはないわけで、それが地霊殿から出ているのかそうでないのかがいまいちわからない。
だが、一つ言えるのは例の光を見ておかしくなった連中だという事だけだ。鬼たちの殺気はもっとまともに感じた。
光を見たやつがこの場所にいるとしたらかなりやばい事態だ。今私たちは相手に捕捉されている。でも、私たちは全く相手の位置が特定できていない。
「…っち…」
私は舌打ちを漏らしながら目を凝らして周りを見回す。
あれだけの騒ぎだ、見つからないわけがない。
どこから来るのかわからないため、私はいつも以上に周りを警戒してゆっくりと歩く。
「……近くにはいないわ…この殺気は…地霊殿の方向からしないかしら?」
永琳が遠くに見える地霊殿の屋上の方向に向けて引き絞った矢を放った。
私にもうっすらと見えた人物に向けて放たれた矢は山なりに飛んでいく。
「……。当たったのか?永琳」
私が聞いてみるが、遠すぎて小さな人とそれよりも一回りも二回りもそれ以上に小さい矢が当たったかは誰にも見えない。
だが、次の瞬間にオレンジ色の光が揺らめいたことで当たっていないのか、当たっているのかわからないがこちらに向けて何か攻撃を仕掛けてこようとしているのがわかる。
私たちが構えた時、大きく光りが揺らめいて、こちらに向かって何かが飛んできた。
しかし、飛んでくる何かのスピードが速すぎて私には炎のような物にしか見えなかった。それに加えて、永琳が私の真横から消えている。
「……永琳…!?」
私が後ろに吹き飛ばされてしまった永琳を見た時、ようやく飛んできたものの正体が分かった。
「……炎の……剣…」
小悪魔がゆっくりと消えてゆく小型のレーヴァテインを見つめながら呟く。
遅かれ早かれこうなることはわかっていたが、
「…やっぱり……こうなっちまうか……」
私は永琳の元に行き、大丈夫かどうかを確認しながら呟く。
レーヴァテインは永琳の腹部を貫いているようだが、炎の熱ですでに塞がっている。この程度で死ぬ永琳ではないが、かなりきつそうだ。
「…大丈夫か!?…永琳!」
私が倒れている永琳を起こそうとしたとき、大妖精の叫び声が聞こえてくる。
「魔理沙さん!!」
私が振り返ると赤く光る瞳が目の前にあった。
「…っ…!?」
炎で揺らめくレーヴァテインがこちらに向けて突き出された。
自分に刃物が入る瞬間を見るときほどの苦痛は他にはないだろう。私は、喉を震わせて絶叫していた。
たぶん明日も投稿すると思います。