もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでも良いという方は第三十一話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第三十一話 降りる

 

 魔法でこの辺り一帯だけが昼間のような明るさとなり、その原因となっている光源の魔法に私から送る魔力供給が無くなったことで光や熱を失って魔法陣が消え去った。

「……これは…驚いた」

 あれだけの魔法を浴びせたのに、まだ早苗はその場を飛んでいる。

 かなり手加減したとはいえ、まだ飛ぶことができているとは思わなかった。

 だが、今にも倒れてしまうのではないかというほど弱っている。少し押したりしたらそのまま後ろに倒れてしまうだろう。

「早苗…終わりだ……大人しくしてくれ」

 私が早苗に近づき、ゆっくりと語りかけると下を向き、息を切らしていた早苗がギリッと歯を食いしばると、顔を上げて私を睨みつけながら早苗は言った。

「…負けるわけには…いかないんですよ………私には……やらないといけないことがあるんですよ!!」

 早苗が感情をむき出しにして私に襲い掛かってくる。

 そんな早苗に私は冷静に言い返した。

「…そうか。…お前の置かれてる状況なんか容易に想像できる……だがな、早苗…お前はそれの解決方法を間違ったんだよ」

 私は言いながら、早苗の振りぬこうとする拳を対処するのではなく、手先に魔力を集める。

 早苗の拳は私の顔にめり込む、そう思われた。だが、私のわきをすり抜けてきた永琳の矢が今まさに振り切ろうとした早苗の拳を正面から貫いた。

「…なっ……!?」

 早苗が右手を押さえながらよろめき、後ろに下がろうとしたところで私は早苗の胸倉を掴むのではなく、手のひらをその場所に触れさせた。

 ドンッ!

 魔力を放出し、早苗に衝撃を与える。

 地面に激突する寸前にやっていたものをかなり弱くしたものだ。

 普段なら軽くあしらわれて終わりだが、今の早苗には効果は絶大であり、何とか意識を保とうとするがすぐに目を閉じて眠るようにして気絶した。

「……」

 魔力で空を飛んでいたため、それの供給が無くなったことにより早苗の体が地面に向かって落ち始めるが、私は早苗の体が落ちる前に受け止める。

「……一度、下に降りよう」

 私はそう提案すると永琳たちがうなづき、下に向かった。

 そのころになると、私の目も自然治癒で完全にとは言わないが治ってきている。だが、眼球は他の組織と比べても再生が遅いらしく、まだ目は見えない。

 血の力を使うほどのではない。しばらく瞼を閉じた状態で過ごせばそのうち私の目は治ってくれるだろう。

「……魔理沙さん…早苗さんからは話を聞くんですか?」

 遅れてやってきた大妖精が私に聞いてきた。

「…いや…話は聞かない……聞いてみてもいいが、意味はないだろうからな」

 私は早苗を抱えたまま地面に降りた。

「…なんでですか?何か聞けることもあるかもしれないですよ?」

「……こいつは、自分の大事な人を人質に取られてるんだ……おそらくしゃべらん」

 早苗を木にもたれるようにして寝かせ、私は後ろを振り返る。

「……そうですか…。…それなら仕方ないですね……でも、正邪さんはどうですか?」

 残念そうに大妖精が呟き、気絶している早苗と正邪を見下ろした。

「起きて、あの能力をまたつかわれたら面倒だ……できればこいつが起きる前に異変を解決したいぜ」

 私は言いながら箒を持ち直す。

「……三人とも……地霊殿に向かうぜ」

 私が言うと、永琳たちは倒れている二人から視線を外し、地霊殿及び旧都に続く洞窟に向かった。

 

「…で、どうするよ?」

 真っ暗な穴が続く洞窟を見下ろしながら私は呟く。

 旧都に続く洞窟はかなり急な九十度に近い坂道が下に続いていてかなり広く、洞窟の表面は大きな岩が露出してたり、崩れてへこんでいたり、洞窟自体が曲がっていて死角がかなり多い。

「…これ、待ち伏せるんならこんなに好条件な場所はないですよね……」

 小悪魔がシンクホールのような洞窟を覗き込みながら呟く。

「相手の奇襲のタイミング……初手を外させるのが目的なら、私の光の魔法があればできないことはない……屈折なんかを利用して敵の私を認識している位置をずらせることができる……ただし、音は聞こえると範囲外に出れば敵に本当の位置がバレてしまう……それだけは気を付けてくれ……まあ、私が魔法を解除しない限りは安全だ」

 私が言うと、大妖精が目を輝かせる。

「でも、それがあれば敵に攻撃されてもこちらの居る位置はわかりませんね!」

 大妖精が言った。

「…でも、裏を返せば見つかってしまうことが前提になりますよね……それに、魔理沙さんの魔力の量も心配ですし」

 小悪魔がこちらに視線を向けてくるようなしぐさをするが、右方向にいる小悪魔の表情はわからない。

 魔法は使うには継続して魔力を供給しなければならない。それによって私の魔力が尽きないのかが心配なのだろう。

「…大丈夫だよ……とりあえず……私からあまり離れすぎなきゃいいってことだよ」

 私は説明を終え、私が使おうとしている魔法の呪文を詠唱して魔法を発動させた。

「……魔理沙が魔力を使い切る前にさっさと行きましょ」

 永琳がそう言いながら先導を始める。

「…だな、私が干からびる前に行こうぜ」

「え?…魔力って使い切ると私たち干からびちゃうんですか!?」

 大妖精が私の言葉を聞き、驚きの声を上げる。

「…いや、比喩だよ…比喩」

 私が言うと、大妖精は少し恥ずかしそうにうつむく。

「……小悪魔、周りはどうよ」

 しばらく進み、三分の一ほど洞窟を進んだ時に私が聞くと小悪魔が呟く。

「……そろそろ気を付けた方がいいかもしれませんね……まだまだ続く洞窟から、私たちに向けてのかはわかりませんが…何か悪意を感じます」

 小悪魔が洞窟の下の方を注意深く見降ろしていった。

「……永琳……敵が来た時には頼むぜ」

 私が頼むと、永琳は矢を弓につがえた。

 永琳に頼んだのは私たちのような光で周りを照らす弾幕はあまりにも目立つが、永琳の光を出したりしない弓矢ならば見つかりにくいのではないかと考えたのだ。

「……敵はまだ見えないわね…」

 永琳が小さな声で呟き、さらに下に降りる。洞窟を半分程度過ぎたところで大妖精が呟いた。

「……なんだか……順調に行き過ぎて気味が悪いですね」

 大妖精が残り半分程度になっている洞窟を見下ろして言った。

「…いやなこと言うなよ…大妖精」

 私が呟くと小悪魔が周りを警戒し始め、私も感じ始める。

「……感じるなぁ」

 私が呟くと、小悪魔がうなづきながら呟く。

「…はい……完璧な…悪意…」

 すると、大量の弾幕が発射されて照らされて辺りがかなり明るく光り始める。初めは私が魔法で屈折させて別の場所に作っていた偽物に向かって撃ちこんでいたが、私が魔法を解いたわけではないのにすぐにこちらに向けて弾幕の角度が変わる。

「なっ…!?」

 私たちは上下左右にばらけて弾幕を避けた。

「…魔理沙さん!?…これどうなってるんですか…!?……思いっきりこっちを狙ってきてますけど……魔法は解いたんですか!?」

 小悪魔は大量に飛んでくる弾幕の合間を縫ってかわしながら言ってくる。

「……いや、解いてないぜ!?…なんでやつらが私たちのことが見え………あ……」

 私は重要なことを思い出し、無意識のうちに声を漏らしていた。

「…あ?……いま、あって言いました!?」

 大妖精が少しひきつった顔で私に叫ぶ。

「……忘れてた……強い光を当てられるとこの魔法は解けるんだった…」

 私が呟くと、小悪魔の怒鳴り声が聞こえてくる。

「そういう事は、きちんと覚えておいてください!!」

 こちらに向かってくる弾幕を眺め、私は小悪魔に叱咤されながら戦闘を開始した。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

その時はよろしくお願いします。

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