もう一つの東方鬼狂郷ですが、前作ともあまり関係はありません。
駄文です。
割と無理な設定などが存在します。
それでも良い方は第二話をお楽しみください。
私を押したルーミアは、助けてくれたというわけでもなさそうである。ルーミアをどかそうとしたが、ルーミアは押さえ付けたまま私を見下ろす。
「どけよ…ルーミア…!」
私はルーミアを突き飛ばそうと手を伸ばした。だが、ルーミアはそれを受け止めて私の右手を捻り上げた。
「いづっ…!?」
右手に激痛が走り、私は魔力を操作して握りつぶされる直前に体を強化して手を振りほどく。
「どけって言ってんだろ!」
私は左手をルーミアにかざし、レーザーを放つ。
胸にかざした手から放たれたレーザーはルーミアを貫く。ルーミアの体にぽっかりと穴が開く。
ルーミアは弱い部類の妖怪だ。だから、妖精たちのように簡単に倒せるはずだ。だが、すでにルーミアの胸の穴が再生を始めている。
「なっ…!?」
私は驚きながらも狙いを変えてルーミアの頭を吹き飛ばそうとしたとき、ルーミアが私の左手を殴って軌道をそらし、右手と右肩を掴まれて押さえつけられた。
「ルーミア…何を…!?」
私が振りほどこうとしながら叫ぶが、ルーミアはそれを無視して私の二の腕に顔を寄せた。
「………」
ルーミアは無言で口を開け、私の二の腕に食いついた。
「……っ!?」
ルーミアの歯が皮膚に食い込み、すさまじい咬筋力で魔力で強化した皮膚が引き裂かれる。筋肉の繊維をも切断し、ルーミアは私の肉を食いちぎった。
あまりの激痛に目の前に星がちらつき、私は悲鳴を上げる。
嚙み切れなかった肉の繊維がルーミアが顔を離したことにより、ブチブチと千切られる。またしてもその痛みに私は絶叫していた。
「ふぅ…」
ルーミアが口から私の血を流しながら私の一部を咀嚼し、飲み込むと嬉しそうに吐息を漏らした。
「あぁぁぁぁぁっ………!!」
私は雄叫びを上げながらルーミアの頬を殴った。
「!?」
私の反撃にルーミアは対処できずに当たり、横に倒れた。そのすきに私はルーミアから転がって離れる。
ルーミアが食いちぎった二の腕から血が絶えず流れ、服を紅く濡らした。
わずかに白い骨が食いちぎられた肉の間から見えた気がしたが、考えないようにした。
傷より上の部分を強く押さえ、できるだけ出血を抑える。
「…何すんだよ…ルーミア…!」
私はゆったりと起き上がりルーミアに言いながらポーチから布を取り出して、左手と口を使って傷を強く結んだ。
ルーミアが残念そうな顔をしながらこちらを見た。
いつもと様子が違う。なんだか、目が変だ。目の動きに赤い光が尾を引いているように見えるのだ。
「……ルーミア…!」
私はそう呟きながら、ルーミアに手のひらを向けた。
「…魔理沙ぁ」
ルーミアが楽しそうに笑いながら呟き、左右にゆらゆらと揺れながら私に近づいてくる。
「…お腹すいたの…だから、私に…食べさせてよ…!」
ルーミアが血で汚れた口元を血で汚れた袖で拭った。
ドンッ!
ルーミアが地面に土をまき散らして私に向かって跳躍してくる。
「くらえ!!」
私はこちらに向かってくるルーミアにレーザーを放って撃ち落とそうとした。
だが、ルーミアは空中で体を捻ると私のレーザーをすり抜ける。
「なっ…!?」
かわすと思っていなかった私はルーミアの接近を簡単に許してしまう。ルーミアが私がかざした右手に噛みついた。
ガリッ!!
ルーミアが噛みつくと、その部分から鮮血が流れ出す。
「くっそ…!」
私はもう片方の手でポーチから一つの瓶を取り出してそれに魔力を込めながら、噛みつくルーミアを身体を強化して振り払った。
「わっ…!」
ルーミアが私に振り払われたことにより、隙が生まれる。ルーミアに瓶を押し付け、それを蹴り壊しながらルーミアを吹っ飛ばす。
私はその場に伏せた。
ルーミアに押し付け、蹴り壊した瓶の中身が空気に触れることで化学反応を起こし、青白い光を放ちながら大爆発を起こす。
魔力を込めたため、普段の数倍の爆発に私も吹っ飛ばされることとなる。
爆発の炎に少し焼かれ、爆風に煽られて地面を転がった。
爆発の衝撃と爆風で地面の土が舞い上がっていて視界が悪いが、ルーミアは周りにいる様子はない。あの爆発をまともに食らったんだ。少なくともしばらくは動けなくなるだろう。
「……。いてぇ…」
ポーチから瓶を出した方の左手を見ると、ルーミアに噛みつかれて牙で引き裂かれた裂傷ができている。
「………!!」
私が蹴り飛ばして爆発するまでの間に私の手に噛みついたのだ。
「…なんてやつだよ…」
私は魔力で応急処置をしばらくした。ある程度血が止まったところで移動を開始することにした。
「……」
ルーミアなら、放っておいても大丈夫だろう。血が足りなくてクラクラするため、私は魔力で血を少し生産して貧血を治す。
箒にまたがり、今度こそ空を飛んだ。
「……とりあえず…いくか……」
こんなことが起きているんだ。霊夢は既に動いているだろう。私はそう考えながら情報収集のために村に向かった。
町の半分は既に火事で燃えていたり家が倒壊して壊れている。
「……いったい…なんなんだ…?」
私はそう呟いた。しばらく飛ぶと、森のあたりで嗅いだ匂いが強くなってくる。すぐに村につき、私は降下を始める。
火の少ない地域に私は降り立つ。
本当に戦争でもあったのか。村に降りた私の最初の印象がそれだ。遠くで見ても思ったが、かなり村の損壊が激しそうだ。
「……」
周りの景色とは違ってこの辺りは物凄く静かだ。人間の死体がごろごろ転がっている。
妖怪の仕業なのか、全員が食い殺されている。肉片や内臓が周りに散らばっていて、五体満足な死体などほとんど存在しない。
「…う……っ」
気分が悪くなるような光景に口を押えた。
これ以上みていたら吐きそうになるため、私は死体から視線を外した。
「……」
この場所に誰かがいる感じがしない。場所を移動することにしよう。私は下をできるだけ見ないようにしながら移動を開始した。
少し歩くと、通りの向こう側に人がしゃがんでいるのが見えた。
「…助かった人間がいるのか…?」
私はそのしゃがんでいる人の方向に向かった。
「…なあ、あんた…いったい何があったのかわかるか?」
私が言いながらしゃがんでいる女性に近づいた。
「……?………っ!!」
私が近づいても反応しない女性が何をしているのかのぞき込む。
私は驚き、声も出なかった。その女性はさっきのルーミアのように人間を食っているのだ。
「あんた…何してんだ!?」
私は女性の肩を掴むと、今まで一心不乱に男か女かわからないほど損傷の激しい死体をむさぼっていたが、女性は私に気が付いたようだ。
「……」
女性が咥えていた血で真っ赤に染まる臓器を落とし、赤黒く染まる口をゆがめてこちらを向いた。
「ひっ……!」
私は女性から飛びのいて離れ、構えを取った。
「…きゃあああああああああああああああああああああああああっ!!」
十メートル以上も離れたのに、鼓膜が破れるのではないかと思うほどの声に私は耳を塞いだ。
「ぐっ…!?」
こいつは何でこんなことをするんだ。
そう思った直後、私は周りに今までにない気配を感じた。
倒壊した家の木々の下から、残っている家の中から女性と同じように人間とは思えない血まみれの格好で出てきた。
十数人の人間が私に向かって歩いてくる。
どんなに頭の悪いやつでもわかるだろう。この場所にいたらやばい。
私が箒に乗って逃げようとしたとき一番初めに話しかけた女性に飛びつかれた。
「うわっ…!?」
背中を地面に打ち付けてしまい、その衝撃で箒を手放してしまう。少し離れた地面に箒が転がった。
私の顔の上にある女性が口を開けると、血生臭い息が私に吹きかかる。
「っひ!」
背中につららでも突っ込まれたように寒気が生じ、私は魔力で体を強化して女性を殴り飛ばした。
普通の人間と大差ないため、私から引きはがしたりするのは簡単だろう。と思っていたが、私は女性を引きはがすことができなかった。
脳のリミッターが外れているのか、普通の人間が魔力で強化した私が痛いと思うほどに握力が強い。
だが、体の耐久性がない女性の手の骨が折れて肉と皮膚を突き破って出てくる。
「くそっ!」
私は罵りながら女性を押し出すようにして蹴り飛ばした。
「がぁぁぁあぁぁっ!!」
男性が後ろから私に叫びながら突っ込んでくる。
私はギリギリまで細くしたレーザーで男性の足を撃ち抜き、動きに制限を加えて簡単には飛びつけないようにした。
「このっ!」
そのうちに腕に噛みついてきたほかの女性を引きはがし、ぶん投げた。
「…せい!」
ポーチに入っている閃光手榴弾の瓶を人間たちがギリギリ集まるまで待ち、地面に向かって叩きつけた。
私はすぐさま耳と目を塞ぎ、視覚と聴覚を遮断した。
空気と化学反応を起こした瓶の中身は、目や耳を塞いでいても何も見えなく聞こえなくなるほどの光と音をまき散らしながら爆発した。
光と音にまぎれて私はその場から離れる。
だれがどの方向から来ていたかなんとなくわかっていたため、私は誰も来ていなかった方向に駆け出した。
私も閃光瓶の影響で視界が絵具で塗りつぶしたようになり、耳は耳鳴りがして何も聞こえなくなっている。
何度も実験で閃光瓶の光や音を自分で受けたことがあるが、見えなくなったり聞こえなくなった時間は平均して約二十秒。それと同じだけの時間奴らの動きを封じることができれば、十分だ。
普通、閃光手榴弾をまじかで受ければ動けなくなってしまうが、何度も受けているうちに多少ならば動くことができるようになっていたのだ。でも訓練していない者であれば動くことはまず不可能だろう。
今のうちに走り、私は考えていた通りのルートを走った。
「…」
視界が真っ白で手探りで走っていたため家の壁に鼻先をぶつけてしまい、ヨタヨタと後ろに下がりそうになるが時間は無駄にはできない。私は少し迂回することにした。
家の陰に隠れて閃光瓶の効果が切れるまでじっと待つ、しばらくしてからさっきまで私がいたところを見た。
「……」
奴らは私を見失ったらしく、見回すことで私のことを探している。奴らの足元に箒が落ちていて、取りに行くには奴らを遠くに行かせるか戦わなくてはならないだろう。
しかし、どっちにしろやるなら早くやった方がよさそうだ。私が一番初めに近づいた女性が上げた叫び声。あれにつられて続々と村人たちが集まってきている。
この場所にいれば、時期に見つかってしまう。
そう思っていたが、奴らを見ていて私は考え込む。ルーミアに引き続きこいつらは何なんだろうか。ゾンビのような奴らとはちょっと違う。
情報が少なすぎて結論を出すことはできない。どの仮説も仮設の域を出ることができない。
「……」
ポーチの中を確認した。
ルーミアに使った爆弾が二つ。閃光瓶が三つ。特殊爆発瓶が二つ。それとその他のマジックアイテムなどが適当に投げ込まれている。
どうする。箒を諦めるという手もある。しかしそれは私の移動はすべて徒歩となることを意味する。
私の家から霊夢の家まで軽く二キロと少しある。箒がなければ移動がしんどくもなるし、時間もかかる。それに、常に私の二歩先を行く霊夢に会うことなどできないだろう。
機動力を失えばいくら魔力を扱えるとはいえ数で押されれば私など簡単にひねりつぶされてしまう。
今回の異変はいつもとは違う。大規模でかなり異常だ。だから、霊夢も今回の異変を解決するのに時間がかかっているのだろう。死体などから死んでからどれだけ時間が経っているか、ある程度はわかる。軽く一日は時間が経っているだろう。
こんな異変。霊夢一人じゃあ心配だ。霊夢は私などがいなくても一人で異変など解決できるだろう。でも、どんなに強くても純粋に心配なのだ。こんな異変を起こした奴らと霊夢は現在進行形で戦っているのだから。
早く霊夢のところに行かなければならない。そうと決まればさっさと箒を回収しよう。
ところで、皆思ったことだろう。私がなぜこんなに箒に執着するのか。
私は霊夢たちのように補助無しで飛ぶことが苦手なのだ。苦手なだけで飛べないことはない。でも、長い間箒で飛んできたことで箒がなければ飛べなくなってしまったのだ。
私はポーチのファスナーを閉め、地面に転がっている木の棒を一本拾った。
自分とは正反対の方向を向かせるため、思いっきり投擲して向こう側に気の棒を落とした。
カランと木と木がぶつかった乾いた音がし、おかしくなった人間たちの視線を集める。
今のうちだ。
足音を立てないように私は魔力を使って飛行した。
箒がないため、私は空中をふらふらと飛んだ。その安定しない跳び方のせいで地面との距離が短くなり、地面に散らばっている民家の残骸に足を躓かせてしまった。
木が折れる音が響き渡る。人間たちのぎょろぎょろと見開かれた目がこちらを見た。
「っ…!」
そして私は走り、奴らも走って向かってくる。
私は近くに落ちているできるだけまっすぐな木の棒を拾い、魔力で強化した。
筋力なども同時に強化して、私は普通の人間では到底あり得ない跳躍力を見せた男性を弾き飛ばした。
接近戦は不得手だが、相手も素人ならいけるかもしれない。このまま押し切る。
二人目も叩き落とし、三人目は胸ぐらを掴み遠くに投げ飛ばした。
しかし、一つ一つの動作で私に遅れが生じ、迎撃が追い付かずに男性に頭を殴られた。
殴った本人の腕が半ばから折れるほどの衝撃に、私の意識が朦朧として霧がかったようにぼやけたものとなる。
私は倒れそうになったが、歯を食いしばって耐えた。
私を殴った男を他の人間たちの方向に殴り飛ばして道を開かせる。
開いた道を進もうとしたとき、後ろから近付いていたやつがいたらしく、後ろから蹴りを受けて私は転んでしまう。
足場が悪く、簡単に起き上がることができない。
「うぐっ!?」
奴らが私をとらえるようにして一斉に上にのしかかってくる。
十数人の重量は魔力で強化している私でさえ、押しつぶす重さとなっていた。
肺が膨らまず、呼吸することができなくなって息が苦しい。でも、気を抜けば一気に押しつぶされてしまう。
「あ……がっ……!!」
私は悲鳴さえ上げられずに悶絶した。
人間が自分が押し潰れるのも構わずに次々と私にのしかかってくるなか、上から何か降ってくるのが人の合間から見えた。
その人型の人物は、私の近くに落ちると魔力で浮力を得て減速しなかったのか、地面に放射状にひびが入り、衝撃で周りの物が浮き上がる。
その衝撃で人の山が崩れ、私を押しつぶそうとしていた重量が消え、私はせき込んだ。
着地した人物がゆっくりと立ち上がった。
彼女が何かをしたのか、すさまじい突風が起こる。私と私の上に乗っていたやつらもまとめて吹き飛ばされた。
「うっ!?」
竜巻に巻き込まれたのか、私の体は円を描くようにしてずいぶんと高い場所にまで舞い上げられている。いい景色だ、なんてきれいな景色を楽しんでいる暇はない。
竜巻がいきなり消失し、私の体はすでに弧を描いて落ち始めているのだ。
「これは……やばい!!」
丘の上にある博麗神社よりも高い位置にいて、落ちたら確実に即死。
落ちる際に、魔力を使って階段のように減速しながら落ちる。何度かそれを繰り返し、足で着地とはいかなかったが地面に着地することはできた。
「…ぐっ……!」
私が着地の際に強く打った肩を押さえながら立ち上がろうとしたとき、上からさっき私にのしかかってきた人間が雨のように落ちてくるのが見えた。
数十メートルもの高さ。落とされれば否応なしに人間は死ぬ。
バギャッ!
一人、また一人と地面に血肉をまき散らして赤い花を咲かせる。
私は動くことができなかった。私が動けば何人かの人間は助けることができたのかもしれない。でも、この現実味の無い地獄のような光景に、私は足がすくんで動けなかった。
最後の一人が頭を地面に叩きつけて爆発させたとき、すでに私の周りは血の海だった。私にも少なからず返り血が飛び散り、黒い服がわずかに赤く染まる。
「……ふふっ」
私はこの惨劇を作り出した人物をゆっくりと見た。
相手も私を見つめていた。私一人だけ生き残っているということに興味を示したらしく、こちらを眺めている。
「何なんだよ…!……何してるんだよ…文…!」
クスクスと笑っている彼女に私はか細い声で怒鳴った。
たぶん明日は投稿すると思います。