もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでも良いという方は第二十八話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第二十八話 鬼人正邪 ②

「…………」

 落ちてからわかる。人間は頭部が結構重いため、私は頭から地面に向かって落ちていく。

 加速していくごとに空気が私の頬を叩く強さも強くなる。空気をかき分けながら落ちる現在の私の耳には雑音以外の音は何も聞こえない。

 心臓に矢が刺さり、それによって心臓にある心筋の一定のリズムをとっていた活動がおかしくなるが、辛うじて動いてはいる。血の力を使わなくても生命力やその他諸々も上がっているためだ。

 だが、この高さで地面に叩きつけられればさすがに死んでしまうだろう。

 強い台風の強風に匹敵するような風を手でかき分けて地面に向けて左手をかざす。

 地面に落ちる寸前。正邪にやろうとしていたように、私は手から爆発的に魔力を放出した。バックブラストを後方に出さずに前方にだけ出した魔力のロケットのような推進力で私の体は浮き上がる。

 だが、その代償に私の左肩が前方に出した魔力の衝撃をもろに受けて肩と接合している骨が砕けた。ちぎれ飛ばなかっただけマシともいえるが、絶叫するほどに痛い。

「あああああああああああああっ!!」

 歯を食いしばって激痛に耐える。

 浮き上がった体はすぐに地面に向かって降下をはじめ、数秒後には地面に落ちた。落ちた時にうまく受け身をとれず、胸に刺さった矢がさらに深くに突き刺さり、背中側の肋骨を砕いて背中の皮膚を突き破って鏃のついた矢が飛び出した。

「~~~~~~~~~っ!!」

 気絶しそうな意識の中、頭を地面に叩きつけて目を覚まさせる。私は少しの間だけ間をおいて体を起こした。

「ぐっ……くそ……!」

 私は殴られて、地面に叩きつけたせいでクラクラする頭を押さえながら起き上がり、近くの木に背中を預けて上を見上げた。

 木の枝や葉っぱの隙間から小悪魔と早苗が上空で戦闘を続けているのが見える。そこに正邪が入れば状況はよろしくない方向に向かっていく。

「……」

 しかし、加勢しようにも私が血の力で体を再生させようとしてもこの胸にぶっ刺さった矢を抜かなければならない。

 しかも、生命力が上がっていると言ってもそろそろやばい。

 だが、勝つにはやるしかない。やらないで時間を無駄にすればその分だけ私の生き残れる可能性は低くなってしまう。

 腹をくくれ。自分にそう言い聞かせて私は胸に刺さった矢の羽が付いている部分を両手で握った。

 深呼吸して引き抜こうとしたとき、木の枝をへし折りながら正邪が降りてくる。さっきの魔力の放出を見ていたのだろう。私が生きていると判断してこちらに来たのだ。

「……しつこいぜ……正邪…」

 私が吐き捨てるように言うと近づいてくる正邪が私の近くでしゃがみ込みながら言う。

「…ははっ……胸に矢が刺さってるやつが何言ってるんだ?…お前がさっさと死ねばいいだけだろう?」

 正邪が言いながら箒の上でしたように私の右目付近に触れた。

 私は右手で掴もうとしたがつかめず、魔力で回復させていた左手で正邪の手を掴んだ。

「…お前……!いったい何をするつもりだ……!」

 そう言ったとき、正邪の爪が私の瞼などの皮膚にめり込み、切り裂いた。

「……ぐっ……やめ…ろ……!」

 目に血が入って赤く染まる視界から意識を外して正邪の手を押し返そうとしたが、それ以上の力で押し返され、頬骨と呼ばれる頬の一部の骨と額の目に近い前頭骨の一部を砕かれた。

「止め……!!……ああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!?」

 右目の視界が赤色以外の色が無くなる。

 大量の血が目から流れ出ているのが頬を伝わって流れる液体でわかった。

「ほらほら!初めの威勢はどうしたんだ?…頭に来てるんだろう?さっさと私を倒してみろよ!」

 左目から見える視界から、正邪の指が第二関節まで私の中に入っているのが分かる。

「~~~~~っ!」

 痛みで頭がおかしくなりそうだ。

 少しずつ治り始めている手や足で正邪を蹴るが、正邪のいやらしく笑う顔は離れてくれない。

「…や……め……!」

 私がようやく呟くことができた時、正邪が言った。

「おう、お前のお望み通りに止めてやるよ」

 正邪が言うと、私の目から手を引き抜いた。

 ブチッ!!

 正邪がそれと同時に掴んでいた私の眼球を引き抜く。

「うああああああああああああああっ!!?」

「へえ、人間の目ってこうなってんのか……見た目は妖怪とあんまり変わらないんだな」

 正邪が言いながら、右目を押さえて悶えている私にそこに入っていた真っ赤な眼球を見せびらかせた。

「…っ……おま……え……!!」

 血で赤く染まる眼球と瞳がある方向とは逆方向から出ている視神経が地面に向かってだらしなく垂れている。

「そう怒るなよ。…せっかく今殺してやろうとしてるのに」

 笑う正邪がそう言いながら、私の右目を押さえている手を無理やり引きはがさせ、空洞となり血を垂れ流す私の目に真っ赤に染まる手を滑り込ませた。

「いっ…!?……止めろ…!!」

 私は再度正邪の手を掴んで目から指を引き出させようとするが、正邪の私の脳を引き裂こうとする指は止まらない。

「…抵抗しさんな。抵抗すると余計な痛みを感じることになる」

 私が出そうとする正邪の指がズブッ脳に向かってまた進む。

「…く……」

 手に力が入らない。私はここまでなのか。そんなのは嫌だ。でも、もう血を飲んでいる暇もない。

「……っ!」

 もうだめだ。

 私がそう思ったとき私の正面、正邪の後方に大妖精が小さな破裂音を発しながら出現する。

 ボッ!

「魔理沙さん!!」

 大妖精が叫びながら正邪に向かって飛び掛かる。

「!!」

 正邪が瞬きする程度のほんの少しの時間で大妖精の声に反応し、私の目から指を引き抜きながら後ろの大妖精に向けて拳を薙ぎ払う。

 大妖精に拳が当たる寸前に大妖精がもう一度瞬間移動でほんの少しの白色の煙を残して消え去る。

 大妖精の居なくなった空間を正邪の腕が通った。

 その隙に大妖精が私の隣に現れて私に触れると瞬間移動をすぐさま使い、意識が一瞬だけ途切れると場所が切り替わっていた。

 周りが木で覆われているせいで正邪がどこにいるのか全く分からない。

「…魔理沙さん。胸の矢を抜くので押さえてもらえますか?」

 大妖精が私から手を放し、矢に手を触れた。

「すまないが……頼む…」

 私は言いながら矢が刺さっているあたりに手を添える。

「いきますよ」

 大妖精が言うと、私の胸から矢が消え失せた。

 大妖精の頭の隣に矢が出現し、地面に木の乾いた音を出しながら落ちる。

「っ…!」

 私はすぐに胸の傷を押さえるが、背中側の傷からも血が流れ出し、大妖精がそちらを押さえた。

「う…っ…!」

 まだ再生が終わっていない手にこびりついている血を舐めて飲み込むと、すぐに傷が再生して血が止まった。

「……ふう……」

 ようやく息をつくことができて私は息を吐く。

「……助かったよ……本当に…」

 私は言いながら物凄い速さで再生を始めた右手を見てからゆっくりと周りに左目だけの視線を移した。

「……魔理沙さん。正邪さんはあっちの方向にいます」

 大妖精が正面の方向に向けて指を指す。

「了解だぜ」

 私はそちらを警戒しながらバックの中に手を突っ込んだ。爆発を意味するラベルが張られている瓶を取り出した。

「…大妖精。これを正邪の体内とかには送れないのか?」

「……えーと。無理です。私の能力は生物を移動させることはできるんですが、生きている生物や生物ではない無機物を生物の体内に送ることはできないんです」

「…そうか……わかった」

 私は言いながらとりあえず進みだした。

「…魔理沙さん。それよりも目の治療をしないと…」

 大妖精が心配そうに私のことを見つめてくる。血の効果時間内に目を治すことはできなかったのだ。

「今は私のことはいい、早く正邪を倒さなきゃならん……小悪魔も早苗に勝てるかどうかわからないからな」

 私が上を見上げながら言うと、大妖精も上を見上げる。小悪魔と早苗の戦いは小悪魔が押され気味になっているのが見て取れた。

「…。わかりました……一緒に倒しましょう!」

 大妖精が言いながら正邪がいる方向に目を向けると、矢を落とした時の音を聞きつけた正邪がこちらにゆっくりと歩いてきているのが分かった。

 正邪は楽しそうに笑いながらこちらにやってくる。

「ほんとう。お前は性格悪いな」

 私はそう吐き捨てた。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

その時はよろしくお願いします。

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