割と好き勝手にやっています。
それでも良いという方は第二十七話をお楽しみください。
「殺すか……お前にそんなことできるのか?ちょっと能力に恵まれただけの天邪鬼がよ」
私は言いながら正邪を睨みつける。
「…早苗さん。一つよろしいですか?」
小悪魔はうつむいているため表情は読み取れないが、早苗に一つ質問をした。
「…なんですか?」
早苗が短く受け答えをする。
「……紅魔館に伊吹萃香と星熊勇儀を呼んだのはあなたですか?」
小悪魔は怒りをじっと抑えているのか、隠しきれていない殺気をひしひしと私にまで伝わってくる。
「……。少し前から襲おうという計画はされていたようですが、引き金となったのは私で間違いないです」
小悪魔のさっきまでの優しい雰囲気などどこにもない。あるのは圧倒的な、怒り。
「……正邪は私がやろう」
私が小悪魔に言うと、まだ怒りに飲み込まれてはいないのか、ゆっくりとうなづいて早苗の方に向かっていく。
「…二人は状況に応じて援護を頼む」
私が後ろの二人にそう告げながら正邪と対峙する。
「……っち」
正邪は面倒くさそうに首をコキコキと鳴らしながら舌打ちをした。
「……今、私も頭に来てるんだ。さっさとおまえを倒して、小悪魔の加勢に行かせてもらう」
私がそう言うと、正邪はクスクスと笑い始める。
「…?」
「…私が起こした異変。覚えてるかい?」
唐突に正邪が質問を私に投げかけてくる。
「…ああ、覚えてる……強いものが弱く、弱いものが強くそうやって幻想郷のバランスを崩そうとしたんだろう?」
「そう、それでだ…私が起こした異変。なぜ失敗したんだと思う?」
また私にしつこく質問を投げかけてきた。
「霊夢と戦ったからだ」
私が即座に言うと、正邪は求めていた答えと違うなと呟きながら自分の問いかけの答えを語りだした。
「…私は自分の能力で現在の力関係をひっくり返そうとした」
細かい内容まではよく覚えていないが、少名針妙丸を利用して幻想郷のバランスを崩そうとしたということがあった気がする。
「…敗因はそれだ」
正邪が言わんとしようとしていることが、ようやく私にもわかって来た。もっとよくわかるように説明できないのかこいつは、
「つまり、そもそも異変を起こさなければよかったと」
「幻想郷全体のバランスを崩そうとしていたのが、そもそも間違いなんだよ!!」
私の言葉を遮って正邪が怒鳴り散らす。
「お前、本当に同一人物かよ…さっきまでの感の良さはどうしたんだよ」
十秒程度で言い切れる言葉なのに、正邪は息切れを起こしそうな勢いで呼吸を乱す。
「感じゃない、ひらめきだ」
私が言うと、正邪はまあいいと話をつづけた。
「私は力の弱い妖怪だからな、幻想郷全体のバランスを崩すとなると小人なんかに頼らなければならなかったわけだ。でも、そんなことはしなくてもいいことが分かった」
正邪が言いながら、正邪が持つ能力の何でもひっくり返す程度の能力を使ったのか、力が倍増した。
「…おっと」
私を取り巻く重圧が増す。
「…何のためにこんなに長ったらしく話しているのかと思えば、そう言うことか……自分ひとりの力関係だけをひっくり返すことは、わけないと」
「そう……。あの異変であの時は負けた、だが今ならこの力でお前を殺すことができる。霧雨魔理沙!お前はここで死ね!!」
力が増幅して私を圧倒している正邪が私に突っ込んでくる。
「…っ!」
私が体術が苦手というのを前回の異変の戦いでわかっているのだろう。私に接近戦を持ちかけてくる。
私から見ても素人のものだとわかる回し蹴りだ。だが、私はそれを綺麗によけたり、受け流したり、はたき落として反撃する技術を持ち合わせていないため、右側からくる回し蹴りを私はガードをするしかない。
重い蹴りに、私は箒から投げ飛ばされそうになり、後ろに箒で飛んで慌てて体勢を立て直しながら手先に魔力を込め、箒にまたがっていた状態から箒の上に足をかけて立ち上がり、スケートボードをするようにして私は箒に乗る。
迎撃しようとしていた正邪にレーザーをぶっ放し、肩に風穴を開けたつもりだったが、正邪は腕を私のレーザーに当たるように振ると、レーザーは呆気なく掻き消される。
生半可なものではこうやって打ち消されてしまう。最大出力で撃たなければダメージが入ることはないだろう。
私に攻撃しようと接近してくる正邪の目の前をものすごいスピードで矢が通り過ぎた。
「っ…!?」
正邪は住んでのところで静止すると、飛んできた矢を見送る。
「…永琳か……」
正邪が矢を放ち、弾丸を中に込めるように矢を再装填する永琳を眺める。
「止まってると当たるわよ」
永琳が矢をつがえた弓を弾き絞り、再度正邪に向けて放つが正邪はそれを手で簡単につかみ取ると魔力で形成されている矢を握りつぶすと、魔力の粒子となって矢は消え去ってしまう。
「…永琳ばっかり見てると怪我するぜ!」
私は正邪の後ろに回り込んでレーザーを最大出力でぶっ放したが、正邪がさっきのように腕を振ると、レーザーは掻き消されてしまう。
「…おまえ、どんだけ弱かったんだよ」
弱ければ弱いほど、ひっくり返した時の力の強さは反比例する。
「まあ、その分この能力に恵まれていたわけだがな」
正邪が言いながら私に急速に接近してきた。
「っち…!」
私は右手を突き出し、魔力を手先から爆発的に放出し、チルノに使ったときのように正邪を吹き飛ばそうとした。
だが、その右腕から魔力が放出される寸前に正邪が掴むと、そのまま握りつぶされてしまう。
「かっ…ああああっ!?」
正邪は私の右手に左手を絡ませるようにして掴み、右手の中手骨、手首と指の骨の間の骨を砕き、爪で皮膚と肉を切り裂くと容赦なく力任せに手をちぎり取る。
「…がっ…!?……ぁぁっ…!?」
魔力をうまく放出することができず、魔力が右手の皮膚のところどころを突き破って噴き出してきた。
「…が…ぁっ……!?」
激痛に動けなくなっていた私の箒の上に正邪がトンっと軽く乗ってくる。
「さっき、お前は私のことを弱いと言ったな?なあ、教えてくれよ。この状況で弱いのはどっちだ?人間」
正邪が私の手を切断したことにより、血でまみれている左手を私の顔の方向に延ばしてくる。
ヌルッとした血で覆われている正邪の手が私の右目辺りに触れた。
「や……やめ……!」
正邪がしようとしていることを私は何となく感じ取り、正邪の左手を掴んで抵抗しようとしたが、正邪が右手の拳を振るった。
「あぐ…!?」
頬を殴られたことにより、私がよろけているうちに正邪は何かに気が付き、私の箒から飛びのいた。
「……っ?」
なぜ、私を殺せたのに殺さなかったのだ。と意味の分からなかった正邪の行為の意味をすぐに私は理解した。
私を助けようと放った永琳の矢が秒速60メートルという速度で突き進んできた矢が、私の胸に突き刺さる。
皮膚を肉を貫き、胸骨を鏃が削り砕き、肋骨で囲われて保護されている心臓を貫かれてしまう。
「かっ……はっ……!?」
ずるりと私は箒からずり落ち、百十数メートルはしたにある地面に向けて私は落ちた。
ぼんやりとした意識の中、大妖精と永琳の絶叫が私の耳に届いた気がした。
たぶん明日も投稿すると思います。
その時はよろしくお願いします。