割と好き勝手にやっています。
自分の嫁が敵でも文句は無しです。
それでも良いという方は第二十六話をお楽しみください。
「…永琳、大妖精の様子は?」
香霖堂の茶の間に勝手にお邪魔している永琳に、私は大妖精の容体を聞いた。
「…まあ、大丈夫よ……傷もほとんど塞がったし…2,30分ぐらいで目が覚めると思うわ」
永琳が大妖精の怪我がどれだけ治っているか確認をしながら、私に言ってくれた。
「…わかった……大妖精が起きるまで私も少し寝る……大妖精が起きたら私も起こしてくれ」
永琳がうなづくのを確認し、私は壁に背を預けて眠りにつくために目を閉じた。
常に気を周りに張り巡らせ、何かがあればすぐに起きれるような状態の浅い睡眠で大妖精が起きるのを待つ。
「……」
寝ようと思ったが、緊張で眠られるはずもなくただただ時間が経過していく。しばらく時間が経過したとき、寝ている大妖精が体をもぞもぞと動かして起き上がった。
「……んあ…?…」
かなり深く眠っていたのか、半目で眠たそうに眼をこすった後にこちらを見る。
「……?……。…あっ!」
頭が回っていなかった大妖精が私たちのことを待たせているということが分かったのか。慌てて頭を下げて謝罪する。
「…ま…待たせてしまってすみません!」
「こっちは大丈夫よ…魔理沙も寝てたみたいだからね」
永琳が言いながら大妖精のお腹、手首、首の切り傷を順々に確認しながら大妖精に告げた。
「…そうですか……」
大妖精が呟いてからしばらくして、怪我を見終わった永琳が大丈夫そうよと呟くと、大妖精はうなづいた。
「次は足を引っ張らないように頑張ります!」
大妖精が気合を入れて意気込みを表す。
「…おう、頼りにしてるぜ」
私が言ったとき、大妖精が起きた声を聞きつけたのか、小悪魔が茶の間に入ってくる。
「…あ、大妖精さん…大丈夫そうですね」
大妖精の様子を見た小悪魔がよかったと安堵した。
「……なあ、そろそろ出るか?」
私がそう切り出すとだれも異論はないようで全員がすぐに支度をはじめ、私たちは香霖堂を後にした。
香霖堂に入るときは少しだけ空がオレンジがかって来ただけだと思っていたが、今は既にオレンジ色から夜の薄暗い色に変わってきていて、当たりも暗くなってきている。
「……すぐに暗くなるし、さっさと行こう。幸い……地霊殿に行くための洞窟はそう遠くない」
私は箒にまたがりながら空を飛び、安定した速度になってきてから言った。
「…魔理沙」
私の後ろから永琳の呼ぶ声がして、私は前に向かって飛びながら肩越しに後ろを振り返る。
「なんだ?永琳」
「……あなたは、いわば主戦力なんだからあまり無理はしないで頂戴……あなたを失えば著しい戦力不足で状況がひっくり返ることはなくなるわ」
香霖を倒した時、一人で戦うという無理な状況で戦った。それについて永琳は言いたいのだろう。
「…ああ、わかってるよ……善処するぜ」
私が言うと、永琳がすぐに後ろに下がった。
しばらく地霊殿に続く洞窟に向かって飛ぶと、後ろから大妖精の声が聞こえてくる。
「…右から誰かが来ます!」
視線を大妖精が言っていた右方向に向けると、彼女が言った通りに妖怪か人間かわからないが、二人分の人影がこちらに一直線に向かってくるのが見えた。
「……あれは…」
私は目を凝らしてその人物を眺めると、誰なのかというのが段々とわかって来た。
緑の髪に白色を基本とした巫女の服、それにお祓い棒を持った人物など早苗以外いないだろう。
もう一人は黒い髪を主としているが、ところどころ白と赤色のメッシュが入っている髪の毛で、小さな角が二本頭から生えていて、ワンピースのような服を着た人物など、鬼人正邪以外ないだろう。
「…あれは、早苗さんと正邪さんですか…?」
近づいて来る早苗を見て小悪魔は言った。
早苗と正邪が一緒にいるのは珍しい。が、あいつも生き残りの一人なのだろう。
「…だな」
私たちに気が付いていたのか、こちらに向けてまっすぐに進んでくる二人を見て、私は地霊殿に進むのをやめてその場で動きを止めた。
「…早苗さん!大丈夫でしたか?」
ある程度近づいた早苗が速度を緩めてこちらにやってくる。その早苗に小悪魔が始めに声をかけた。
「…はい。何とか!」
話し始めた早苗はあまり目立った外傷はないようだ。
「…魔理沙さんも、大丈夫ですか?」
そう言って話しかけてきた早苗の言葉を聞き終わってから私は言った。
「…正邪はどうしたんだ?…お前が人と一緒にいるなんて珍しいな」
私が聞くと、正邪は答えるのが面倒くさそうな表情をしてから、言う。
「…まあ、今回の異変は私もだいぶ被害を受けてるからな…人手が足りないらしいから手伝ってやろうと思ってな」
「…なるほどね」
私は曖昧に返事をしながら早苗に近づこうとした永琳の肩を掴み、行かせないように止めさせる。
「…大妖精さんも大丈夫ですか?」
普段、あまり面識のない早苗に声をかけられたことにより、大妖精が少しおどおどして噛み噛みになりながらも大丈夫ですと言った。
「……」
私はまた早苗と話し始めた小悪魔の手を掴んで自分の方に引き寄せた。
「…全員、二人から離れてくれ」
私が言うと早苗と正邪だけでなく、永琳、大妖精、小悪魔全員が呆気にとられて動きを止める。
「い…いきなりどうしたっていうんですか?」
小悪魔が困惑したように私から離れた。
「…それは、そのまんまの意味だぜ……」
私が言っても小悪魔は納得がいっていないようだ。何の説明もないのだから当たり前か。
「…いくら早苗さんでも、そんな態度をされたら傷つきますよ、魔理沙さん」
小悪魔が私に言ってくるがそれを遮って私は呟く。
「…胡散臭すぎるんだよ。お前ら二人とも…」
私が言いながら、警告もせずに手のひらを早苗に向けると同時に、高出力でレーザーをぶっ放す。
青白い光が小悪魔のギリギリ真横を突き進み、射線上の早苗の腹に向けて直進した。
だが、当たる直前で火花に似た魔力のかけらが飛び散り始める。早苗が張った結界を私の放ったレーザが削っているのだ。
だが、その鍔迫り合いも私がレーザーを途切れさせたことにより収束する。
「…とっさでそんなことができるわけがない……ということは、やっぱりお前もやる気満々だった。そう言うことだろ?早苗」
私が言うと、早苗は鋭い目つきで結界に使った札を捨てた。
「ど…どういうことですか…!?」
状況がよく理解できていない大妖精が私に聞いてくる。
「それについては……あちらさんの質問と一緒に答えようかな」
私が言うと、早苗は自分を裏切り者だとなぜばれたか腑に落ちないらしく、私に言って来た。
「…聞いておきたいんですが……魔理沙さんはなぜ私が敵だと分かったんですか」
早苗が持っているお祓い棒を握りしめ、それをこちらに向けて呟く。
「……怪しいと思い始めていたのは、異変が始まってから初めて会ったときからだ」
私がそう伝えると、早苗は驚きを隠せないらしく目を見開いた。
「…まあ、初めからって言っても何度か会話をしてからだけどな……早苗…お前は紅魔館に行く途中で諏訪子と加奈子と戦ったって言ってたよな」
「…ええ……確かに言いました」
早苗がうなづいてからわたしはゆっくりと言った。
「…半分神が混じっていて巫女とはいえ、お前が二人の神とそれに近い存在を相手にできるわけがないぜ……霊夢でもあるまいし、もっとましな嘘をつくんだったな早苗」
私はそう言いながらさらに口を開いた。
「…それに、お前はあの二人をだいぶ好いていた。それなのに少し落ち込むだけっていうのも違和感の一つだった」
私は言いながら次に正邪を見る。
「それと、正邪を連れてきたのは間違いだったな……さっきの異変の解決を手伝うという正邪の回答は…あまりにも正邪らしくない……他人の嫌がることを好き好んでする奴が解決のために動くわけがないだろう。むしろ逆だ」
「…っち」
図星をつかれて面白くないのか、騙せなくて楽しくないかは知らないが、正邪が舌打ちを漏らす。
「それと、きっかけは早苗と小悪魔の会話だ」
私が言うと、小悪魔と早苗がクエッションマークを頭の上に浮かべている。
「…早苗、レミリアのことは聞かないんだな」
私が言うと、早苗ははっとした表情になる。
「……お前は時々調子に乗ったことを言うこともあるが、お世話になった人やそう言ったことに関してはキチンと挨拶する。そう言う奴だ。…いつものお前なら小悪魔に対して…レミリアさんは大丈夫ですか?…そう聞くだろうな………でも、なぜ聞かなかったか……お前は知ってたんだろう?レミリアたちが連れていかれたってことを」
私が言うと、早苗は驚いた表情で私に言った。
「…驚きました。あなたは、意外と周りのことをちゃんと見てるんですね」
「…意外とは余計だ。異変中に起きたことならそれぐらい記憶できないならやっていけない。表情。話した会話。会話の流れ。それらから矛盾を拾い上げて敵を割り出すことだってできる。誰が異変を起こしたのかわからないなら、今回のように一つ一つの会話から求めるしかない。霊夢なら紅魔館に着くまでにお前はぶちのめされてたよ」
私が言うと、早苗が何かを言おうとしたが正邪が割り込んできて言う。
「面倒くさい、バレたんだったら…サクッと殺っちゃうか……それで不安分子は消える」
正邪がさっきのしずかな雰囲気とは一変して、攻撃的な表情をして私たちに向き直った。
たぶん明日も投稿すると思います。
その時はよろしくお願いします。