もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでも良いという方は第二十五話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第二十五話 信用

 破壊された天井から数年分の天井裏に積もっていた埃が舞い落ちてきて、床にゆっくろと落ちると周りに煙のように舞い上がって埃が広がっていく。

 私のレーザーによって焼かれた壁や床から水蒸気のような煙が上がっていて、かなり暴れたと分かるぐらい、タンスや置物が倒れている。

 そのうちの一つに霧雨の剣で切断された私の左足が転がっている。締め切られた障子には足と同じく切り飛ばされた私の右腕が突き破ってひっかがっていて、切断面からは巡っていた血の残りかすがチタチタと床に垂れている。

「……泣けるぜ…」

 私はそう呟くとせき込み、後ろに尻もちをついて壁にもたれる。さっき失神したふりをしていた香霖は前方で体のところどころから煙を上げて倒れている。

 口の中にたまった少量の血を嚥下すると、切断されてなくなった右足と左腕が再生を始めた。

 右側の視界が赤に染まっていてそちらから入ってくる情報が遮断され、どうなっているかわからない。だが、潰されているわけではない。右側の額を霧雨の剣で切り裂かれて流れ出てきた血が目に入っているのだ。

 ズグッ…!!

 肩から切断された右腕と膝から先の無い左足が急速に再生を始める。

 そうして足と腕が再生しているうちに左目で香霖を睨みつけた。

 ピクリと動いた香霖の腕を私はレーザーで撃ち抜く。

「ぐあっ…!?」

 香霖が撃ち抜かれた腕をかばいながら立ち上がって逃げようとしたとき、私は手短にあった重たい棍棒のような棒状のものを左手で持ち、それで香霖の頭をひっぱたいた。

 ガンッ!!

 人間だったら死んでしまうのではないだろうかと思う威力で殴ると、金属製だった棒状の物から重たい音がして、殴られた香霖は今度こそ気絶したらしく、受け身などを取らずに床に崩れ落ちた。

「…ようやくか……」

 真っ赤に染まる視界を右目を閉じて遮り、周りを見回しながら棍棒を捨てる。

 香霖と戦っているうちにいろいろなものを破壊して、中身の物が出てしまったのだろう。近くに転がっている棒付きの飴を拾い、周りを覆っているプラスチックのビニールを左手でうまく剥ぎ取り、中身の飴を取り出して口に放り込んだ。

 外の世界で作られた飴だということは、外装でわかったが思った以上に甘く。口の中が甘ったるくなる。

 少しして手がほとんど治りかけてきた時、物理的な結界の方に外からの刺激がある。

 小悪魔たちがようやく私が一人で何かをしていると結界でわかったらしく、結界を破ろうとドンドンと叩く音が聞こえる。

「……befreiung(解除)」

 私が結界の魔法を解除するスペルを唱えると、結界が解けて軽快に走る音が聞こえてくる。

「…どうしたんですか!?…魔理沙さん!!」

 部屋がボロボロになっているのが外から見てもわかったのだろう。小悪魔が心配そうな顔でドアを蹴り破る勢いで現れた。

「……大丈夫、…こっちの問題は解決したところだぜ」

 私が治りかけの右手で握りこぶしを作り、親指をぐっと立てながら言うと、小悪魔の表情に段々と怒りが含まれていく。

「…え?……なんだよ…?…どうしたっていうんだ?」

 小悪魔がなぜ起こっているのかが全く分からず、私は困惑する。

「…どうしたんだ?…じゃあないですよ!!」

 こちらに歩いてきた小悪魔に私はなぜか頬をひっぱたかれた。

「…何すんだよ」

 私は叩かれた頬を押さえながら、手にこびりついた血を舐めて足の再生を促進させる。

「……魔理沙さんは……なんで私たちを呼ばなかったんですか?」

 小悪魔が私の近くでしゃがみながら語り掛けてくる。

「………」

「…答えてください」

 無言を貫こうとした私に小悪魔が訳を話せと、回答を催促した。

「……香霖が起きて襲ってきてな……小悪魔たちの方向に行こうとしたからとっさに結界の魔法で閉じ込めたんだ」

 私は嘘をついた。

「…嘘をつかないでください」

 そっこうで小悪魔に見破られた。

「…とっさだったはずなのに……なんで防音の結界まで貼られているんですか?…そうやってかなり準備がいいということは、霖之助さんが失神してないことがわかってたんですね?」

 下手に嘘をつけばこうやって見破られる。どうしたものか。

「…」

 どう言い訳をするか考えていると、いつまでたっても答えない私に小悪魔が呟いた。

「…すみません…私のせいで…怪我をさせてしまって」

「…大丈夫だよ…それよりも…お前たちに怪我がなくてよかった」

 私はそう呟きながら、口の中で飴を転がした。

「……魔理沙さんは……私たちのことを…信用していないんですか…?」

 小悪魔が私に呟く。

「……いや、違う……別にそう言うわけじゃ……」

 私が呟くと、小悪魔が私の言葉を遮って言った。

「…違くないですよ……げんにこうやって一人で解決しようとしてるじゃあないですか」

 小悪魔は言いながら倒れている香霖に視線を向けて呟く。

「…そう感じていたなら……すまないな」

 私は曖昧な答えを返しながら舐めていた飴を噛み砕き、棒を口から取り出してゴミ箱に投げ捨てて言った。

「……はぁ……私たちもいるんですから…次がないことを願いますが、次は私たちだって頼ってください」

 小悪魔は何か私にも考えがあった。そう言うことにしてくれたのか今は許してくれたようだ。

「…善処するぜ」

「………それと、あまり自分のせいにしないでください」

 小悪魔の言葉に私はドキリとする。

「…」

「…大妖精さんが怪我を負ったのは何も魔理沙さん一人のせいじゃありません。私たちのせいでもあるんです」

 小悪魔はそう言いながら香霖に近づき、さっきよりも数倍厳重に香霖を縛り上げた。

「……ああ」

「だから、あまり一人で抱え込まないでください」

 小悪魔が言いながら香霖から視線を外して私を見る。

「……そう言ってくれるとありがたいぜ」

 私はそう言いながら自分の切断された足を拾い上げて、切断された足から靴下を取った。

「…それより、一人で霖之助さんと戦ったんですよね?…大丈夫なんですか?」

 小悪魔がそう聞いてくる。

「…ああ、大丈夫だぜ?」

「…切断された足を持っていうセリフじゃあないでしょうが!…腕と足を切り落とされたのに大丈夫なわけがないでしょう!?…霖之助さんの見張りは私がやりますから、魔理沙さんは休んでください!」

 小悪魔が早くこの部屋から出て行けと扉を指さして言った。

「…へいへい」

 私は下を見て、服に着いたほこりを払って部屋から歩いて出た。

「……」

 永琳たちがいる場所にゆっくりと歩いて向かいながら私は小悪魔との会話を思い出す。

「……」

 私は、自分はどうなってもいい。でも仲間が敵に襲われて傷つけられ、殺されるのを見るのは耐えられない。この先もしかしたら、私は小悪魔との約束は果たせないかもしれない。

 私はそう思いながら電気の供給がされずに、光らない電球が並ぶ真っ暗な廊下を歩いた。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

その時はよろしくお願いします。

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