もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

わりといろいろと好き勝手にやっています。

それでも良いという方は第二十二話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第二十二話 本性その②

 更に五分ほどして、ようやく香霖がいくつか服を抱えて店にやってくる。

「…てこずったけど、見つけてきたよ……これでいいかな?」

 香霖が小悪魔が着ている司書の服とだいたい同じものを持ってきて、デスクにいくつか置いた。

「…サイズがわからないから、あった司書の服を全部持って来てみたよ…着替えるなら、奥の部屋を使ってもらっていい。案内するから来てくれ」

 香霖が小悪魔を店の奥に案内するために歩いてゆく。

「…じゃあ、お願いします」

 小悪魔が香霖の後について行って、廊下のかどを曲がると見えなくなった。

「…さてと、待ってる間どうするよ」

 頑丈な商品に腰かけながら私が言うと永琳が近くに置いてある椅子に座り、言った。

「そうね……着替えには時間がかかるだろうし……昼寝でもしてたら?」

 永琳がそう提案してくる。

「…確かに寝れるときに寝ておいた方がいいかもしれないが、一ついいか?」

 少しして、私は時間を確認しながら永琳にとあることを聞いてみることにした。

「…?…どうしたの?」

「…大妖精。水を飲みに行ってから戻ってくるのが遅すぎないか?」

「「……」」

 私がそう呟くと、今までくつろいでいて気が向けていた私たちに緊張が走る。

 すぐさま立ち上がり、私は魔力を手先に集中させて大妖精が歩いて行った台所に向き直り、永琳が弓に魔力で作り出した矢をつがえて香霖と小悪魔が歩いて行った方向を見た。

 お互いにじりっと下がると永琳の背中が私の背中に当たった。

 いくら弱い香霖が相手でも、この狭い店の中では永琳の弓矢は私以上に不利になる。

「…永琳、大妖精の方を任せられるか?」

 私が聞くと、永琳がうなづいて肩越しに私をちらりと見た。

「…わかったわ。じゃああなたに霖之助は任せたわ」

 自分と永琳の位置を入れ替え、店の奥に進んだ。スライド式の開けられたドアをくぐって小悪魔と香霖が歩いて行った廊下に出た。

 廊下は奥に五メートルほど進むと90度曲がっていて、そこから奥はこちらからは見えない。

 窓は全て木の板で塞がれており、現在は裸電球の光だけが廊下を照らしていて、それだけが頼りだ。

 廊下にはたくさんの物が置いてあり、死角が多い。

 おいてあるものなどに注意して五メートルほど進んだ時に、廊下が続いている方向の壁に背中をつけて顔だけ左側に曲がっている廊下を確認するためにだした。廊下を眺めると、ぱっと見は誰も待ち構えていないのが分かった。

 確認が終了してから廊下の曲がり角からでて奥に十メートルほど続く廊下に自分の身をさらした。

 いつでも迎撃できる体勢で用心深く一歩前に進んだ時、建てつけの悪い床の板がわずかに歪んでギィッと音を立てる。

 静かな状況では隠れている側も探している側も音というのは視覚から得られる情報よりも、もっとも重要な情報と言えるだろう。

 音の情報はかなり重要で、霊夢やそこらのレベルになれば、発信源から場所、個数で人数、声色から質量と質感がとっさにわかるらしい。

 今ので私の位置と人数はバレたと思っていいだろう。だが、きちんと固定されている物の上で鳴らした音でないため、質量と質感はバレてはいないはずであるため、誰が来ているのかはわからないだろう。

 一つ一つのおいてある物の死角を潰して十メートルはある廊下の半分を進んだころ、電気を消されたらだいぶやばいなと思ったとき、廊下にあるすべての電球がパチッと消された。

「…っ……くそが………さとりでもきてんのかよ……」

 私は呟きながら耳に意識を集中させる。

「……」

 人間の息遣いや歩く音はまったく聞こえてこない。

「……」

 目が暗闇になれるまで待つ時間はない。

 球状の弾幕を手のひらに作り出すと小さな豆電球ぐらいには光を放ち始める。しかし、光を放っても焼け石に水で全く意味をなしていない。一メートルでも照らしていればいい方である。

 だが、その弾幕にも使い道はある。飛ばして廊下を照らせばよいのだ。弾幕は形を作り出してしまうと撃たなければ否応なしに消えてしまうため、私は超低速で弾幕を飛ばした。

 蛍が飛ぶようなノロノロのスピードで飛んでいく弾幕が廊下の途中でいつから立っていたと言いたくなるほど、歩いてくる気配がしなかった香霖が立っていた。

「……っ…!!」

 お化け屋敷だったら驚いて悲鳴を上げていた自信がある。

「…魔理沙、こんなところでどうしたんだい?こんな暗いところにいたら歩くときに危険だよ」

 香霖がこちらに向かって歩み寄ろ追うとしたとき、私は手のひらを向けて香霖を威嚇する。

「…そばに寄るんじゃあねえ」

 私が始めに放った弾幕が壁に当たって込めた魔力分のエネルギーを使い果たすと、供給される電気というエネルギーが無くなった懐中電灯のように光が収まっていき、また暗闇があたりを支配するが、私が香霖に向けている手に魔力を込めて迎撃態勢をとると手の平が光を帯び始め、私と私に近づいていた香霖を照らすことができるぐらいには光った。

「…冗談はやめてくれ、僕が敵だと思ってるのかい?」

 香霖がそう言ってくる。

「…ああ、電球の光を消したのはお前だろう?」

「…なんで電球が消えているのかは僕にもわからないんだ……敵が来たと考えるのが普通だろう?」

 香霖が誤解だと訴えてくるが、私は聞く耳を持たない。

「…電気をつけるスイッチはこの廊下の奥にある部屋に出たところにもあるだろう?なぜ電球をつけない……だから、もうくそ下手な芝居はいらないぜ…香霖」

 疑っているだけで根拠はどこにもない。廊下を歩いてくる途中で電気が切れた可能性だってある。だが、こうやってかまをかければ尻尾を出すのではないかと思ったが、大成功のようだ。

「…うまく騙せてると思ったんだけど……駄目みたいだね」

 さっきまで正常だった香霖の瞳が赤いオーラで光はじめ、オーラの光が香霖の頭の動きに合わせてユラユラと尾を引く。

「…いや、わからなかったぜ。…でも、たった今お前がへまをしてくれたおかげでわかった……誰かに会ったらまずはそいつを疑え、異変の基本だぜ」

 私が言うと香霖の目が細まり、私のことを睨みつけた。

 普段の温厚な光琳とは無縁の殺気。百獣の王と呼ばれるライオンですら服従のポーズをとってしまうだろう。

「…っ…」

 私は香霖があまり強くないことを知っている。でも、それを感じさせないほどの押しつぶされるのではないかと思うほどの殺気の重圧。手の震えを押さえるのがやっとだ。

 でも、やらなければやられる。レーザーを絞って威力を落とし、香霖を殺してしまわぬようにしてレーザーを放つ。

 香霖は飛んできたレーザを軽く横に動いて射線上からいなくなり、青白く輝くレーザーが空を切る。

「っち…!」

 私は舌打ちしながらもう一度レーザーを撃とうとするが、いつもは見せない俊敏な動きで暗闇に隠れられて、すぐに香霖の姿を見失ってしまった。

「…くそっ…!」

 私は小さく罵りながら暗闇に消えて行った香霖を追おうとするが、自分の役割である小悪魔の安否を確認するため、小悪魔がいるであろう。今私の居る廊下の奥の壁にある部屋のドアに手をかけた。

 一人で着替えることができる部屋など、香霖堂にはここしかない。

「小悪魔っ!!…大丈夫か!?」

 この部屋の電球の光は消されていないのか、ドアを開けると眩しい光で回りが見えなくなる。

 小悪魔の無事を願い、叫びながら部屋に飛び込んだ瞬間、私は困惑する。

 何者かの手で光を遮られたことにより、目の前いっぱいに肌色の拳が見えたのだ。この部屋に来るのだろうと香霖に先読みされたのだろうか。

 そう考える間もなく、拳が私の顔を直撃した。




今回はいつも以上に低クオリティですすみません。

たぶん明日も投稿すると思います。

その時はよろしくお願いします。

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