もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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この作品は原作とは一切関係がございません。

この能力を持っているならばこんなことも出るんじゃないかという感じで割と無理な設定などが存在します。

駄文です。

それでも良い方は第一話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第一話 異変の始まり

 前後、上下左右がコンクリートの壁で覆われている高さと奥行き、幅が共に約四メートルずつの狭い空間。出入り口は正面の階段を上がり、上方向に開く天窓のような鉄の扉を開く必要があり、鍵がなければこの部屋から出ることはまず不可能だろう。

 裸電球がチカチカと瞬き、私を照らす。

 ブゥゥゥン…。

 古くて小さな換気扇が部屋の端で部屋の空気を入れ替えようと働いている。しかし、このねばりつくような血の匂いは一向に晴れることはない。

 私の周りにとどまらず酸化して茶色くなった血や新しく流れる動脈血の明るい赤色の血。それが部屋中の床にまき散らされているのだ、小さな換気扇でどうにかなるようなものでもない。それに、元を絶たなければ電気代の無駄にしかなっていないだろう。

 だが、床に散らばっている血だけが匂っているわけではない。私の血ではないが、返り血が胸のあたりにこびりついていて更に鉄臭い。

 私はなぜ逃げずにこんな場所にいるか。

 否、逃げられない。

 私の両手は太い針金で縛られていて背中側に回されている。背中と縛られた手の間の空間に私の腰と同じぐらいの太さの鉄の棒があり、その鉄の棒が天井と床に溶接されている。

 四六時中裸電球が付いていて、始めは正しかったはずの体内時計は既に狂っている。何日この場所にいて現在何時かもわからない。

 時々彼女たちが飲ませる薬のせいだろうか。ここしばらく用を足したという覚えがない。垂れ流すよりはましだが、得体のしれない物など飲みたくないというのが正直な感想であり、体内時計がさらに狂っていく要因でもある。

 現実逃避をしていた私は現実に目を向ける。

 前回からどれだけ時間が経ったかわからない。終わった後にすぐに気を失ってしまったからだ。

 でも、今はただその時が来ないことをただひたすら願い続ける。

 もう、あんな地獄は味わいたくない。

 私はそう思いながらある少女を思い浮かべる。

 笑顔が素敵な彼女を心の弱い私は、狂ってしまわぬように心の支えにしてきた。

 彼女の笑顔、声、香り、昨日のことのように思い出せる。

 早く彼女に会いたい。会ってお喋りをしたい。会って手をつなぎたい。会って抱きしめたい。自分の好きだという気持ちをあって伝えたい。

 投げ出された足の太ももの上に私の涙の雫がこぼれ落ちた。涙なんて、枯れたと思っていた。でも、生命の体は不思議なもので、どんなに泣いた後でも悲しければ涙が出る。

 でも、こうやって涙を流して感情を吐き出さなければ、いくら彼女のことを心の支えにしていても、私は壊れていたかもしれない。

「………早く……………会…いたい」

 私は掠れた声で呟く。

 呟いた際の反響した私の声がゆっくりと小さくなって消えて行く。その合間に、コツコツとコンクリートを歩む音が聞こえてきた。あいつらが来た。

 隣に倒れている血まみれの女性を見た。体はほとんど再生して治っている。

 嗚呼、彼女にとっても私にとっても地獄の時間がやってきたようだ。

 ガチャッと鍵をカギ穴に差し込んで回した音がした。

 ギィィィィィィィッ…

 まるでホラー映画の古い家の建てつけの悪い扉のような音を出しながらドアが開かれ、いつものようにあいつらが姿を見せた。

「さあ、続きをしましょうか」

 私は、どうなってしまうんだろう。

 頬を伝う涙を拭うこともできずに私は見上げた。

 

 私は閉じていた目を開けた。六方向すべてをコンクリートの壁で覆われている地下室。

「……」

 いつのまにかうたた寝してしまっていたらしい。

 ブオーンとやかましい換気扇の音が耳に響く。

 前かがみになっていた体を起こして、頭を振って眠気を吹き飛ばす。

 透明な液体が入っているビーカーを持ち上げ、スポイトで少量だけ取り出し、別の液体を取り出してスポイトの中身をそこに入れた。

「…変化なし…か」

 振ったりしてみても変化はない。ジャバジャバと振っていたせいで白い気泡がたくさんできている。

 しばらく放置しても温度の上昇、低下。もしくは気体の発生もない。色の変化もなし。それらを全てノートに書き記して私はスポイトを机の上に置いた。

「……」

 私、霧雨魔理沙は変化のない液体を憎たらしく見つめながら嘆息を漏らす。

 新しいマジックアイテムを作り出そうとしたわけだが、三日ほど時間が立っていた。私は調理のいらない携帯食料をかじりながら壁に立てかけてある時計を見た。現在はちょうど十二時。

 博麗神社にも顔を出していない。それどころか外に出ていない。だから、気分転換にそろそろ外に出たかった。

「はぁ…」

 体の節々が痛くてストレッチをして体をほぐした。

 実験道具が散らかる机から離れ、上の階に行くための梯子を上る。

 この三日間、この地下室で缶詰め状態で研究していたため、霊夢と弾幕ごっこがしたい。いろいろと道具を持っていくことにした。

 新しく作り出したものもあるため、霊夢にそれをお見舞いしてやろう。

「今回は勝てる自信しかないな」

 私は独り言で冗談を言いながら歯を磨き、髪なども櫛で解かしていつも通りに片方だけ髪の毛を結んだ。

 出かける直前にポーチを肩にかけ、そのなかに様々な瓶やミニ八卦炉、マジックアイテムを突っ込む。

 ドアを開けて外に出て鍵を閉めた。

「……」

 薄暗い。私は上を見上げる。

 いつも薄暗い魔法の森がいつにもまして暗いのは、天気が良くないのとこのねっとりと纏わりつくような濃霧だろう。魔法の森ではよく見る光景だ。

 視界がほとんど塞がれていて、飛びなれた森でも気を付けた方がいいだろう。

 重くなったポーチを肩にかけなおし、私は箒を手に取った。

「……歩いて行くか…」

 久しぶりの外だしフルスピードで飛んでいきたいが、霧の中は危ないから霧が晴れるまでは歩いて行こう。

 それに、たまにはこういうのもいいもんだ。私は箒を肩に担いで歩く。

 ザリッ…ザリッ…

 私が歩く音が響き、周りの木々に反響して人が何人も歩いているように聞こえる。

 まあ、いつものことだが。

 しかし、研究は疲れた。ずっと座りっぱなしだったせいで腰が痛い。

「……ん?」

 なんだか、嗅いだことのある臭いがする。

「なんだ?」

 匂いがうっすらすぎてわからない。まあ、たいしたものでもないだろうし、別にいいか。

 そう思っていると、村で飼われているであろう豚が私の前を走っていく。

「…豚…?…なんでこんなところに?」

 柵が壊れたとかだろうか、柵が壊れた家は散々だろう。

「…ん?…あれは…」

 しばらく歩くと、地面に何かが倒れているのが見えた。

 近づいてわかった。豚が死んでいる。

 狼にやれたのかと思ったが違う。溶けて小さくなり始めた氷の刃に貫かれて死んでいるのだ。

 首がないと思ったが、近くに半分食いちぎられている豚の頭部が転がっている。

 内臓も引きずり出され、食い散らかされている。

「……ひでぇ……」

 殺してからしばらくたっているのだろうか、少し血液の色が変色してきている。

「……いくらイタズラ好きといっても、ここまでのことはしないよな」

 青色の小さく、イタズラ好きの妖精、チルノのことが思い浮かぶが、ここまで酷いイタズラと呼べないようなことはしたことがない。たぶん、別の妖怪だろう。

 妖怪が人間や動物を襲うことは別に珍しいことじゃない。割と頻繁に聞く。

 でも、ここまで食い散らかす現場は見たことがない。

 豚の死体にはいくつか違和感を感じる。

 妖怪は豚や牛などの動物を襲うことはほとんどない。なぜならば、人間の逃げ惑い絶望する表情などを楽しむためだという。そんな話を聞いた。

 それに、妖怪は人間の骨まで食い尽くす。あまり妖怪が人間を襲いすぎると博麗の巫女が動き、消されてしまう。だから妖怪は時々しか人間を襲わず、食える時に食うと言わんばかりに骨まで食い尽くすのだ。

「……」

 家からだいぶ離れているとはいえ、このまま死体があるのは気分が悪い。近いうちに処理をしなければいけないだろう。

 私はこの場から離れた。

 魔法の森の奥地にわざわざくるもの好きなんていない。だから、今まで放置されていたのだろう。

 ようやく魔法の森を抜けるころ、霧が晴れ始めて周りが見えるようになってきた。

「…え…!?」

 さっきとは違う変な匂いが風に交じってくる。私は歩を早めて霧を抜けたとき、無意識のうちに声を出していた。

 数百メートル先にある村のあちこちから煙が上がっている。

 まるで戦争でもしているのかと思ってしまうぐらいに遠くにある家などが燃えていたり倒壊している。

「…どうなってるっていうんだ!?」

 私はすぐに箒にまたがり、空を飛ぼうとした。

 その時、横から何かが飛んでくる。人型をしているそれは、空を飛び始めようとしていた私にぶつかる。空中で浮いていた私は、バランスを大きく崩すと地面に倒れこんだ。

 押し倒すようにして、飛んで来た奴が私を地面に押さえつけた。意味が分からず、されるがままになっていたせいで後頭部を地面に打ち付けて頭が痛みでジンジンする。

「…なに…すんだよ…!ルーミア!」

 私は自分の上にいる金髪の少女に怒鳴りつけていた。

 




第二話は、明後日に投稿すると思います。

駄文ですがよろしくお願いします。

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