Vengeance For Pain   作:てんぞー

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ハロウィンチェイテ城は激闘しながら本能寺しちゃうの
地獄のインターバル - 1


「ガッチャアアアアアアア、ガチャアアア! ガチャガチャアア! ガッチャアアア!」

 

「ガッチャアアア!」

 

「ガチャチャチャアアア!」

 

「ガーチャ! ガーチャ! ガーチャ!」

 

「なんなんだこれは……」

 

『もはや邪教ってレベルに入り始めてるわねこれ……』

 

 寧ろ邪教そのものだろう、とガチャの儀とカルデアで呼ばれる儀式の準備をし始める姿を見ながら思っていた。さっきからセグウェイで乗り回したり、祈りの言葉を捧げたり、ひたすらトランプでシャッフルしたり、何度もトイレに行ったり戻ったり、挙句の果てにはマフィアっぽい男の写真を祭壇に飾っている。これが邪教じゃなかったら何が邪教なんだよって言えるレベルだった。やはり宗教とは邪悪、カミは滅ぼさなくてはならないな、と再度確信する。

 

 そう思っている間に、ドンドンガチャ―――つまりは英霊召喚の時間である。オケアノスと命名された第三特異点は、宝の山だった、と立香は目を輝かせながら言った。なんと聖晶石が全部90個も入手することができたのだから、大成果だと断言しても過言ではない。ただその結果がこの大発狂状態なのだからもう、なんというか、聖晶石を捨てたくなる。

 

『それを捨てるなんてとんでもない』

 

「呪いのアイテムか何かか」

 

 近づくと汚染されそうな気がするから、膝の上に丸まった妖精を乗せるようにしゃがみながら、邪教の儀式の進行を壁際から眺めていた。死んでもあの集団の仲間にはなりたくないよなぁ、なんて思いながら眺めていると、横に並ぶようにランスロットが座り、

 

「Stand by……I'm ready to die any time」

 

「もう死ぬ準備をしているのかお前……」

 

 ご褒美です、と言わんばかりにサムズアップを向けてくるからこいつはもう駄目だな、と確信した。ヘラクレス相手に無毀なる湖光(アロンダイト)一本で耐性があるのに二回殺害成功したという超絶技巧の持ち主の癖に、なんで日常生活はクズを通り越して憐れみを覚えるのだろうか。ギネヴィアがこれを見れば発狂して物見の塔からアイキャンフライでもしそうな姿だ。円卓、最初からこのノリだったら崩壊する以前の問題だから長続きしそうだ。

 

 そんなことを考えながらもう帰ろうかなぁ、と思っている邪教部屋に入り込んでくる新たな姿が見えた。アルトリアの姿だった。ちーっす、と挨拶しながらランスロットを串刺しにするとそのまま横に座り込んでくる。

 

「あ、アヴェンジャーも見学ですか? 私も新たなアルトリア顔の気配を感じて殺害スタンバイしに来ました」

 

『ナチュラルサイコパス……!』

 

「ランスロット卿、凄いいい笑顔で逝ったな……」

 

 無論、顔が見えるわけじゃないのだが突き刺される瞬間にアピールするようにサムズアップを向けてくるのだから、もはやプロフェッショナルの領域にある。そして息を吸うようにランスロットを始末するアルトリアもなんかもうプロフェッショナルの領域にある―――あんまり褒められない事の。今日、この時、これでさえまだカオスの入り口であるカルデアにまた新たな住人が増える予定なのである。

 

 地獄の最前線へようこそ、と言いたくなる状況だ。

 

「部屋に帰って寝ようかなぁ……」

 

『駄目よ。なんか今日は物凄いカオス力を感じるわ。今この瞬間も召喚陣の向こう側から出待ちの気配を感じるわよ! そう……私が出る! って感じのものすごい気合いの気配をね!!』

 

 それ、出待ちできるレベルの介入能力を持ったサーヴァントなんて神性に限定される、というか現在縁を紡いだガチ神性が約一名なので、なんというか、もうというか、この時点でオチが見えてしまった。そうだなー、やっぱ帰るかなー、と心の中で決心を固めていると、半裸になった立香がいつの間にか聖晶石を天に掲げていた。

 

「これよりガチャの儀を開始する―――!」

 

「オォォォオオオ―――!!」

 

「グランドオーダーの時よりも士気が高いんですけど」

 

「バカしかいねぇ」

 

 オサ、オサ、と叫びながらドンドコとドラムが鳴り始める。えらい本格的になってきたなこれ、と思っている間に聖晶石、最初の30個が投げ込まれた。10連ガッチャァ、という叫び声が響き、英霊召喚プログラムが開始される。この場にマシュがいたら気絶するだろうから、今回は場にいなくてよかったなぁ、と思いながら本格的に逃げ出す事を考え始めた。そうしている間にも召喚は続行され、最初に概念抽出が行われた。

 

「Foo……Foo……まだだ、まだ平気」

 

「見てるこっちが平気じゃない」

 

 そう言っている間にも続くガチャ(召喚)。概念抽出が行われるたびにスタッフが発狂しながらカレスコ、と意味不明な言葉を叫び始める。ついに脳にまで達したか、明日から少しだけ優しくしようと思っていたところで、虹色に召喚システムが輝き始める。それは間違いなく一級のサーヴァントが召喚される反応ではあったのだが、既に妖精の言葉から誰が出待ちしているのかは見えていた。なので心境は寧ろ、

 

 ―――あーあ……来ちゃったかぁ……。

 

 というものだった。そう思っている間に、召喚システムの中央に人の形が形成され、

 

「はーい! アルテミじゃなかった! オリオンでーす!」

 

「人権を失い家畜と化したオリべえでぇぇぇぇぇす―――」

 

 召喚されたときに謎の因果的衝撃が発生し、オリオ―――オリべえがアルテミスの頭の上から滑るように射出された。一瞬だけ見えたその表情はもうすでに泣いていた。哀れなやつだと思った直後、それはまっすぐに飛翔し―――アルトリアのジャージ、胸の上の部分に着地した。その表情は涙から一瞬満面の笑みへと変貌した。もうその時点でコイツの運命はさようならオリべえ、心の中でそう呟いた。

 

「―――あら、ダーリ(女神:権能:転移)ン?」

 

「みんな! カルデアのみんな! オリべえはここに来れてよかったと思ったよ! こんな俺のことだけど忘れないでくれよ! 来世でアアアアオオオォォォォ―――……」

 

 時を超えてオリべえを掴んだオリオン(仮)がオリべえの顔面を壁に叩き付け、それを削るように引きずりながら音速でカルデア内を爆走し始めた。あぁ、知ってた。そうだよな、お前ならそうなるよな。なんとなくそんなオチになるんじゃないかと思っていた。

 

 カルデアが増々これから、悲鳴で賑やかになるな、これは。そう思っているとオリオン&オリべえ―――つまりアルテミスとオリオンと入れ違いで、ブーディカが入ってきた。カルデアを爆走した二人が消えていった方向へ指さして何かを言おうとして、しかし発狂し出したカルデアのスタッフとガチャ中毒となった藤丸・ガチャ香の姿を見て、完全に動きを停止させた。

 

「……来るところ間違えた?」

 

「ウェルカム・トゥ・狂気の最前線へ。我々は貴女という新たな犠牲者を歓迎しましょう」

 

「ブーディカも壁際に座ってろ。関わらなければ被害はない―――比較的に」

 

「あぁ、大なり小なり逃げられはしないんだね……」

 

 正解である。そう思っている間に再び、召喚システムが新たなサーヴァントの召喚を知らせるために輝きだした。英霊三人、壁に揃って召喚の光を眺めている。すると再び光が人の姿を形成し始め、そこに緑髪の男の姿を見せる。

 

「―――アーチャー、ダビデ。うん、僕はやるよ。かなりやる。あと契約の箱が来るからちょっと退いてー」

 

 そういった直後、余った光が契約の箱へと変形し、オリべえが射出された時のような速度で一気に射出された。目の前に立っていた立香が叫びながらブリッジ姿で倒れることで回避する。直後、契約の箱が召喚室の外へと飛んで行く。

 

「おーい、お前らアーチャーの野郎がおやつを作ぐわああああ―――!!」

 

「ランサーが死んだ!」

 

「このひとでなし! とか言ってる場合じゃない! 契約の箱を邪魔にならないように運ばなきゃ……あ、先生頼んでいい?」

 

「あいよ」

 

 シェイプシフターを作業用ロボットに変形させ、それを自分と切り離して半自動的に動かさせる。生物が触れた場合、問答無用で昇華してしまうらしいので、こうやって制約の裏をかいてロボットに作業を任せれば契約の箱の影響を受けることはない。とりあえずランサーの死を悼むこともなく、契約の箱を封印処理する為に一時的に倉庫の中へと運ばせる。

 

 さて、ダビデに挨拶するか、

 

 と思ったらすでにサンソンがその場でダビデを処刑してた。

 

「あぁ、人妻に手を出しそうなクソ野郎の気配を感じただけですので、お気遣いなく。マリーの来訪に備えてカルデア内での人妻の人権と安全は私が守ります。そう、すべてはマリーの為に……マリー……マリー、マリーマリーマリー! マリア! 僕のマリアァァァァ―――!」

 

「ブーディカ、アレを治せませんか?」

 

「馬鹿に付ける薬はないよ」

 

「目を離した隙にまた発狂者増えてる……」

 

 ドルヲタ・サンソンがガチャの儀に急遽参戦した。再びシステム・フェイトのカオス濃度が一気に上昇した。ここにいるのは少し前までオケアノスで全力で頑張っていた勇士達なんだよな? と、記憶を軽く探ってその姿を思い出そうとするが、残念ながら完全に同一人物だった。

 

『次の特異点までにキャラが戻るといいわね』

 

 そうだな、切実にそう祈ってる。じゃなきゃ俺もあちら側へと飛んで現実から逃げる必要がある。

 

『そっちは一度落ちたら一生ヨゴレを背負わなきゃいけないからおすすめしないわよ』

 

「ラストガッチャアアアアア―――!!」

 

 最後の聖晶石30個が投入され、輝き始めた。最初のころは召喚の光はどこか美しく、きっと希望を意味する光なんじゃないかと思っていたりもしたのだが、今はあの光を見るたびに醜い人の欲望と絶望と、そして発狂者の顔しか思い出せなくなってきている。何故かこの光景を見ていると人類悪という言葉を思い浮かべるのはなぜだろうか。

 

『……うん。その……部屋に戻る?』

 

 もうここまで来たら最後まで覚悟しようと思う。さすがにこれ以上ひどくなるなんて事はないだろう―――たぶん。もはや半ば、自分の心に祈りを捧げていた。いいから、頼むから平和に終わってくれ。ダビデなんて自己紹介しただけで死んだんだぞ……!

 

 祈りながら概念摘出の連続にドンドンガチャ教徒が倒れて行くのが見える。そう、そのままだ。そのまま平和に終わるんだ―――その願いは次の瞬間、虹色に輝く光に絶望という答えで終わりを告げられた。またカルデアに新たな犠牲者がエントリーするのか、そんなことを考えながら思っていると、アルトリアが立ち上がった。

 

「む……新たなアルトリア顔(≪アルトリア顔殺すべし≫)の気配がします」

 

「えっ」

 

 迷いのないロンゴミニアドの抜刀にブーディカが軽く困惑しているので、さらに部屋の隅へと移動し、こっちへ、こっちへと手招きをする。それに従ってブーディカも逃げるように近づいてくる。

 

「なにあれ」

 

「キャラ性の再確認、かな……」

 

『あー。ネロの時は空気読んで我慢しちゃったからねー。どう見ても根が真面目だもの、あの子。そろそろ本気でアルトリアスレイにかからないとキャラが危ないって感じなんでしょうね』

 

 そんなキャラ、誰も求めてないからさっさと捨てろと言いたい。

 

「この感覚、期間限定サバを打ち抜いたと感じるッ!」

 

 その裏では立香が変な進化を遂げていた。誰か俺をこの地獄から助けてくれ、そう呟いていると、英霊の姿が生み出された。それは桜色の袴姿にブーツを履いた、アンバランスな格好をした、東洋人のサーヴァントであり―――その顔はアルトリアに酷似したものだった。

 

「新選組一番隊隊長―――」

 

アルトリア顔殺すべし(≪気配遮断≫)

 

沖田総司推参ッ(≪心眼+縮地+無明≫)!」

 

 気配遮断で背後に回り込んだアルトリアに対して心眼で回避した桜色のセイバーは縮地で加速しながら逆に背後を取り、その斬閃を見せない鮮やかな突きをアルトリアへと放つも、それを直感とも呼べるものでアルトリアはカウンターを繰り出しつつ切り払いながら返しにロンゴミニアドを開放して放とうとしていた。これ、止めないとこの部屋消し飛ぶな、と悟った瞬間、新たな乱入者が邪教の館へと侵入した。

 

「ほ、報告!! 新たな特異点が三つ生み出されました!!」

 

「な、なんだって!」

 

「そして融合しました!!」

 

「……ん?」

 

「チェイテ城でハロウィンよ! と叫んでいたエリちゃん! ローマアピールで闘技大会を開こうとしたネロちゃま! そしてなんか見慣れないクソサバが本能寺をそれぞれ特異点に形成させようとしました!」

 

「はい」

 

「その結果融合しました!!」

 

「融合」

 

「ハロウィンでローマな本能寺! チェイテ城は炎上しながらコロセウムな感じになっています!!」

 

 飛び込んできたスタッフの正気を疑うような発言。しかしスタッフの表情は真顔であり、特異点が融合して言葉では表現できない特大のカオスが今、歴史の外側に形成されつつあったのは確かな真実だった。これはもうヤバイとかそういう概念を超越している。

 

「チェイテで!! ローマな!! 本能寺です!!」

 

「聞こえてるよチクショウがあ!! 誰が繰り返せつった!! 夢であってよお願いだから!!」

 

 直訳すると地獄という意味である。

 

 その瞬間、誰もが思っただろう―――絶対、関わりたくないわこれ、と……。




 ちなみに私は基本的に単発をするときは全裸になって踊って祈祷してからガチャる。

 イベントが大量あるんご……。ハロウィンやり忘れたんご……。せや! 融合させればええんや!!

 (オーバーレイしてしまったローマとチェイテと本能寺を見て

 魔城ガッデム……?(出来上がったものを見ながら

 次回! 英霊たちはかつてないカオスという絶望に挑む……! 比較的にカオスな連中でさえ胃が痛くなるような中、融合してしまったイベント特異点が容赦なく(腹筋)に襲い掛かる……!

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