Vengeance For Pain   作:てんぞー

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最愛を求めて - 7

「―――まぁ、という訳でこっちは(グル)と合流出来たよ。と、いう訳で此方が俺の師匠に当たる人物でインドの大英雄の生みの親とも言えるお方、パラシュラーマ師だ」

 

「やあ、やあ。クシャトリヤはいるかなー? んー? そっかー、いないかー。じゃあ殺さなくていいね。という訳で弟子の紹介に預かったパラシュラーマだ。別にクシャトリヤ以外は怯える必要はないんだぜ? まぁ、人理を何とかしようとするよしみ、仲良くやろうぜ」

 

「凄いですよマスター、あの栄二さんが先ほどから滅茶苦茶ビクビクしてます」

 

「その気持ちはなんとなく解るけどね……」

 

 喋っている間、ずっとパラシュラーマに肩を組まれていれば誰だってそうなる。アレだ、サラリーマンの平社員が社長と一緒にいるような、そんな気分だきっと。助けてラーマ、と視線を(ラーマ)に向けるが、あのショタ王は此方へと視線を向けずに、違う方向へと視線を向けて此方の助けを無視しやがっていた。それとは別の話になるが、スカサハの話を報告してからクー・フーリンが顔と胃を抑えながら蹲ってた。ナイチンゲールが先ほどから大丈夫? 切除する? とアピールしてきているがアイツも大丈夫だろうか。いや、大丈夫じゃないな。

 

「まぁ、僕が来たからには安心すると良い。今は調子が良いし気分も良い。だから大サービスしてこの大地に存在するケルトを根こそぎ薙ぎ払ってやろう―――と言いたい所だけど、僕も僕で少々相手をしなきゃいけない奴がいるからね、今回は大っぴらに動けるとは思わないでくれ。精々軽く支援したり、相手の大物が一人動けなくなる程度だと思ってくれ。お前たちと一緒にケルト側のクー・フーリンやメイヴ、スカサハとは戦えないよ。残念ながらね」

 

「残念に思う反面、ほっとするのは何故だろうか……」

 

 ―――現在、パラシュラーマと合流する事にした為にレジスタンス拠点に戻った。

 

 丁度立香の方も仲間集めと情報収集を終わらせた所らしく、ネロを味方に引き入れる他、エミヤとロビンが最前線でチーズをばら撒きまくってひたすらメイヴに嫌がらせ、そして交戦してフェルグス、そしてクー・フーリンの親友であった男、フェルディアと交戦し、その果てで西の果てにあるアルカトラズの情報について入手する事に成功した。その為、エミヤとロビンは現在引き続き潜伏中でここにはおらず、それ以外の味方サーヴァントが揃っているという形だった。

 

 正直、戦力としてはかなり整ってきたのも事実だ。

 

「―――ただやはり、大統王陣営との共闘、そしてラーマの奥方の救出は必要だろう。相手の戦力をマスターらが計ってくれた事と、此方で戦力を確認した事で解る。限界まで戦力を集めてからぶつからないと一気に押し負ける」

 

「お前の女だろクー・フーリン!! どうにかしろよ!!」

 

「うるせぇんだよ!! 俺はまた親友殺さなきゃならねぇことに頭抱えてんだよ! しかもアイツオイフェも来てるぞとか言ってるんだぞ!! これコンラいるじゃねーか! お師匠の相手してる余裕とかねーよ! お前にくれてやるから!」

 

「不良品は求めてねぇんだよクソが!! 見た目は良くても中身がダークマター化してるじゃねぇかあのババア!!」

 

「お前解る? 俺の気持ち解る? セタンタ、お前あの美人に惚れそうだから先回りして殺しておいたぞ、どうだ? って首級見せられた時の俺の気持ち解る? なぁ!」

 

 クー・フーリンに近づき、腕を取って握手を交わした。お前、アレと何年間も一緒に生活して修行してたのか。良く無事―――じゃなかったな、心の底から同情しつつ、自分の師匠がパラシュラーマという凄まじい人格者である事に今更ながら感謝する。見た目はいいのだ、見た目は―――だけど中身がダメすぎる。やっぱりケルト女は駄目だ。邪悪か蛮族かのどちらかしかいない。クー・フーリンとガッツリ握手を交わし、友情を確かめ合っている裏では話が進んでいた。

 

「現状、パラシュラーマ殿を交えて此方で観察した追加戦力はアルジュナ、クリシュナ……」

 

「そしてこっちでケルト側に確実にメイヴがいる事と、フェルグスとフェルディアを確認した。後、話ではオイフェもいるとか。こうなると、やっぱり最終的には総力戦による中央突破での決戦勝負に持ち込むのが一番だと思うんだけど……」

 

「というか現状、勝ち筋がそれしかないね。或いは逸話再現による敗北を狙ってもいいけど、そんな解り切った事は向こうでも間違いなく対策するだろう。確か女王メイヴはチーズの投擲によって死んだんだろう? だったら優秀な弓兵を周りに設置して、チーズが飛んできたらそれを射撃して迎撃すれば万が一の時はどうにかなるだろう」

 

「ギャグの様だけれどガチガチの対策なんだよなぁ、これ……」

 

 戦場でチーズが勝敗を握るとかバカみたいな話だが、現実としてメイヴを殺すのに一番有用な手段である以上、馬鹿にする事は出来ないのだ。それはともかく、一つずつ問題を片付ければ大体だがやらなくてはならない事も見えてくる。やはり戦力の補充だ。パラシュラーマという超越級の存在が加入したのはいいが、同じ様にスカサハも向こう側にいるのが発覚している。そしてそれは別に、メイヴが行う自分の能力での召喚は()()()()()()()()()()である為、聖杯がカウンター召喚を行わない。

 

 その為、発覚している以上の戦力を相手が用意している可能性が非常に高い事がここで判明する。

 

 となるとやはり、戦力の向上と用意が一番大事になって来る。

 

「……次も二方面作戦か?」

 

「大統王エジソンの説得、そしてシータの救出だな」

 

(クシャトリヤ)を名乗る奴にロクな奴がいる訳ないんだ、んなのぶっ殺せばいいのに」

 

 パラシュラーマの過激発言に関しては笑える要素が欠片もない上に立香からお前の師匠だろ? 何とかしろよ、的な視線を向けられる。だが数千年間生きてきて、現代のクシャトリヤを問答無用で殺さないだけかなり進歩だし、それ以上の譲歩を引き出すのは無駄と言うか無理なので、俺にSOSサインを向けるのは切実に止めて欲しい。

 

「まぁ、(グル)の過激発言はさておき、大統王と組んだってのがバレればアルカトラズの警備も増えるだろうから、アルカトラズの攻略と並行して大統王の説得だな」

 

「殺せばいいのに……」

 

「エジソンの! 治療を! お願いします婦長!!」

 

「強引に押し切ってる」

 

 にこり、とパラシュラーマが此方へと向けて笑みを浮かべている辺り、解っていて発言しているのだろう。ほんと止めて欲しい、先ほどからずっと胃壁がゴリゴリ削れているのだから。ゴータマとかいう苦行大好きなのとは違い、自分は楽であればそれはそれでよいというタイプなのだから、本当に止めて欲しい。というか愛歌とアースが逃げ出しているから俺が一人で全ての被害を請け負っているのがまた辛い。お前ら帰って来い。

 

「とりあえず組み分けするとして―――アルカトラズ行きとエジソン行き、どう分ける?」

 

「余は絶対にアルカトラズへと向かわせて貰おう」

 

「おぉっと、僕もそっちに向かいたい所だけど、カルナの奴が王を名乗る馬鹿の所にいるんだって? じゃあちょっとそのツラを拝ませて貰おうかな」

 

 静かに心の中でカルナに対して合掌を向ける。(グル)の相手はカルナに任せた。なんだかんだで(グル)はカルナの事を非常に気に入っていたし、悪い事にはならないだろう―――たぶん。まぁ、この場合、

 

「俺がアルカトラズに回るか。シータと近づいて離別の呪いが蘇った時はえんがちょできるし」

 

「交渉の時に責任者が居なければ話にならんし、私とマスターは大統王との会談だな」

 

「治療します」

 

「えーと、ナイチンゲールさんはどうやらエジソン大統王で固定の様ですね。エミヤ先輩はチーズ祭でストレス発散中ですし―――」

 

「では余は救出の方へと回ろう! なんと囚われ、会えない妻を念願叶って救出すると言うではないか! これぞまさにローマ(ロマン)である!」

 

「んじゃ、僕もアルカトラズに回して貰おうかな。アウトロー的にお姫様の脱出には興味あるしねぇ」

 

「あ、はい。ネロさんとビリーさんはアルカトラズ、と。ではクー・フーリンさんは……」

 

「ん? 俺は大統王の方に回してもらうかね。戦力的にもそっちの方が安定するだろ」

 

「私は今回もマスターの方に付かせて貰うね。足は必要だろうし」

 

「では私はアルカトラズの方へ。医術が必要な場合も考えられますから」

 

 ―――という事で、次の行動が決定した。まずは、範囲攻撃と移動砲台を兼ね備えた自分に弱体化が狙える固有結界を保有するネロ、早打ちでの妨害が非常に優秀なビリー、治療要員のサンソン、そしてメインであり宿願を果たす時がきたラーマのアルカトラズ突入チーム。次に、パラシュラーマ、クー・フーリン、ブーディカ、マシュ、ナイチンゲールそしてジェロニモと幅広い状況に対応しつつ現人神の暴力で大体なんでもぶち殺せるエジソン説得チーム。と、二手に分かれて行動する。

 

 戦力的には今までの特異点と比べてもトップクラスに入る暴力になっている。パラシュラーマ一人がそれを一気に天井突破まで引き上げているのだが。それでもまだ相手側の戦力の方が大きいと考えると、第四特異点と比べて物凄いインフレが発生していると考えられる。正直、ここまで特異点の難易度が上昇するとは考えていなかった。

 

「そんじゃ、出発前に一旦解散しよう。前線ではエミヤとロビンがテロしまくってるおかげで時間に少し余裕がある。ならそれだけちゃんと休んで、絶対に作戦を成功させよう」

 

 立香の言葉に返答を返しながら、いったん休憩に入る。スカサハの遭遇、そしてパラシュラーマとの再会と色々あったため、精神的に疲れている事は否定できなかった。アルカトラズに向かうまでに少し仮眠でも取って休むかなぁ、と思っていると、

 

 パラシュラーマに肩を掴まれた。

 

「さて、休憩と行きたい所だろうけど―――駄目だ、この先の戦い、お前がちゃんと戦っていける様に久々に稽古をつけてやる。その新しい体のスペックに慣れてないだろ? 動きにズレが見えるから致命的なミスになる前に修正するぞ」

 

「そんなー……もうちょっと手加減してくださいよ(グル)……」

 

「手加減ならもう十分にしてるさ。だけどそれより僕の弟子が未熟を晒して恥をかくってのが許せないのさ。ほら、弟子の恥ってのはつまりそれを教えた僕の恥だろ? お前が無様を晒して困るのはお前だけじゃなく僕もそうなんだよ。という訳でお前の失敗が大きな失敗へと繋がる前に稽古をつけてやる。あの時は理解も何もなかったから骨組だけで我慢してやったが……あぁ、こうなると時間が足りないのが困るな。止めてやろうか」

 

「ほんと勘弁してください―――おい、立香、お前なに無言でスマホでビデオ撮ってるんだ。待て、逃げるな! 逃げるな立香!」

 

 追いかけたいが、既にパラシュラーマが此方の首の襟を掴んで離さない。そのまま街の外へと鍛錬を付ける為にズルズルと引きずられて行く。その姿をラーマが可哀想なものを見るような目で送って来る。そんな視線はいらないから助けてくれとしか言えない。

 

「いってらっしゃーい」

 

「頑張るが良い」

 

「お前ら覚悟しておけよー……」

 

 いつの間にか避難を完了させていた愛歌とアースと、そして見ないふりをするラーマへと向けて中指を突き立てながらずるずると、数十年ぶりの鍛錬の為にパラシュラーマに引きずられて行く。




 作戦会議pt2と戦力振り分け。仲間の数が多いと自然と部隊分けが出来るのが良い所。

 なおこれには描写による負担軽減という身も蓋もない理由もある!

 さとみーとグルは仲良し。

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