なんとなくFate   作:銀鈴

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次に何か書くとしたら、何も考えないパーっとしたやつがいいなぁ…

あ、銀城ちゃん版キャスターのステータス、頼まれてもないのに書きました。


zeroに至ってほしい物語 其之拾

 ガリガリガリガリと何かの削れる音と、次々に物体が砕け散っていく音が連続して響いていた。そして、死力を振り絞ってはいるお陰で、未だ私には何も到達していない。

 

「ーーーーッ!!!!」

 

 最早自分でも何を言っている分からない程絶叫しながら、自分を燃やし尽くす勢いで魔力を流し続ける。それによる奇跡的な拮抗のおかげで、ギリギリ自分の身だけは守れている。けれど最初の数瞬から、すでにこの黄金の世界は破綻に向かってゲイボルカー並の速度で突き進んでいた。

 

 自動修復の効果を超えて世界が削れ、ヒビ割れ、見上げた天には夜空が広がっていた。そして夜空が見えると言う事は、破綻まで秒読みのこの世界にアレな流れ込んでくる事を意味している。

 

『炎による自律防御実行。でも、大マスター、そうは保たない。生存可能時間は、推定17秒』

 

 この世界を汚染する様に、上空からこの世全ての悪(アンリ・マユ)に染まった泥…全ての生命を焼き裁く破滅の力が、滝の如き怒濤となって降り注いでくる。

 

「わか、た!」

 

 だけどそれらの泥は私たちにも、英雄王にも近寄る事さえ出来ていない。天の理か地の理かは知らないけど『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』によって英雄王に寄る泥は大部分が消滅させられ、私に近寄る泥は数億度の炎によって完全に蒸発している。

 だけどこれは、私の狙っていた泥で押し流すという勝ち筋が潰えた事も意味していた。

 

「でも、まだ、まだァッ!」

 

 そう都合良く覚醒なんて起きなかった。けれど、気を抜いた瞬間死ぬ事になるからだろうか? 頭の回転だけは早くなる。文字通り1秒が1分に引き伸ばされた時間の中で、さらに頭の回転が早まっていく。

 魔術…防御に精一杯で不可。

 宝具…既に全開、不可。

 体術…論外

 それらの相乗効果…防御で精一杯だっつってんだろコンニャロー。

 なら、作った物ならば…?

 1つだけ、勝てるかもしれない手を思いついた。

 

「キャスター、どう思う?」

『不可能じゃ…ないかも。でも、時間もマスターの負荷も…』

「なんとか、する、から!」

 

 私が張った7枚+3枚の次元断層が完全に消滅した。防御系宝具も、攻勢宝具も、過負荷で段々と融解を始めていて長くはない。このまま削り負けて死ぬよりは、乾坤一擲の大勝負に出て生きる希望に賭けたい。

 

『分かった。10…いや、7秒で作るから、私の抜けた穴を保たせてね?』

「りょう、かいっ!」

 

 キャスターが離脱した瞬間、私への負荷が信じられないほど増大した。頭が壊れそうな程の情報量が、私を押し流さんと暴れ回る。

 

「あは、はハはは、あヒはハははッ!!」

 

 次元断層がヒビ割れるその被害を相転移で分散する紅い旋風を魔術で中和する第十二肋骨が抜きとられた銃弾が分解される宝具が融解した抜きとられた肋骨部分に何かが転移したくっ付いたもう1つの世界内で作業開始乖離剣の回転速度が低下した黄金の世界が崩壊していく破壊力は変わらない泥が溢れる英雄王が嗤っているアンリマユ冬木の空が見える呪い星が見える呪い燃えている呪い燃えている呪い壊れた街衛宮切嗣ここに建てたちくわが逃げた!ポウッ!つまりはニンジンだ、ますたぁが和菓子の餡子で殺菌しなきゃいけない!アッセイ者には叛逆の時ダァッ!いあ!アァサァァァ!いあ!ネロォォォォッ!!

 

『む、マズイ。精神分析』

「っはぁ!」

 

 ティアさんの声のおかげで、意識が混沌とした空間から帰還した。危ない…三途の川の向こうで、旧支配者がフォークダンスしてた。しかもその上で、ニャル様を足場にして外なる神がマイムマイムしてた。全くもって意味不明である。そんな私はSANチェック。

 

『大丈夫。それはただの、同窓会』

「ノンフィクション!?」

 

 口では驚きを表しつつも、さっきの負荷に耐えられるようになってしまった頭で全てを処理していく。鼻血が出て血涙が流れて、まあ絶唱しちゃった感じの顔になってるけど今は気にする事じゃないだろう。でも過負荷で頭がフットーしそうだよぉっっ(物理)アタシいま体温何度あるのかなーッ!?(物理)

 そしてこの時点で、展開していた対抗策の6割が消滅。キャスターが約束して離脱してから、5秒程しか経過していなかった。例のブツが完成するまで残り2秒、生き残れる時間はたったの10秒。

 

「っ、ハアァァァァッ!!」

 

 全てを削り取らんとする紅い旋風によって、55の次元の断層が全て粉砕された。それによって負荷が増大、製作者権限で真名開放していた宝具の半数が消し飛んだ。

 よって、私を護るものは残り2つの宝具と多数の魔術。製作者権限によって強制発動させた大盾の宝具『蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)』による極小の世界そのもの。そしてその背後に控える『叡智の福王の棺桶(コフィン・オブ・ヨグソトース)』によるダメージの吸収・放出結界。底が見え始めた魔力を更に注ぎ込み、1秒でもいいから時間を稼ぐ。

 

 そして、ようやくその瞬間がやってきた。

 

『マスター準備できたよ…って女の子がしちゃダメな顔してる!?』

「そんなの、いい。はやく!」

『そんなじゃ、良い人見つけられないよマスター…』

 

 そんなのキャスターに心配させる事じゃない。私だって、ロイド君と同じくらい素敵な人見つけてやるし。

 

『はいはい。マスター、この魔弾はたった2発しかないからね。失敗したら、死ぬよ』

「もんだ、ない!」

 

 キャスターが作り出した切り札の情報が頭の中に入ってくる。キャスターが復帰した事によって、一気に自由に使えるようになったリソースをそっちに回す。

 私が取り出したのは、調整が終わったらしい第一宝具と()()()()()()()()起源弾。それを銃形態の大鎌に装填、片手で笑みを浮かべる英雄王に照準する。残り7秒。

 

 キャスターの起源も私の起源も、そこら辺の知識に明るくない私/キャスターには詳しくは分からない。それでも神代の魔術師であるキャスターには、何となく察する事は出来ていたた。

 自分のは多分「書き換え」かな?とか言ってたキャスターが識別した私の起源は、「スイッチ」やそれに類するナニカ。日常生活に支障はあんまりないとの事だったけど、これを起源弾として使うならそれなりの効果が発生する。

 これらの素材は、回収してあったキャスターの右足と、ついさっき摘出された私の第十二肋骨。道具作成EXのお陰で即座に起源弾に加工され、起死回生の一手となっていた。

 

「我、ここにあり」

 

 勿論、これらの弾が英雄王に届かなければ何の意味もない。

 だから、また他人(ヒト)貴い幻想(ノウブル・ファンタズム)を再現して使う。それが、この霊基(キャスター)の1番得意な事だから。

 

『「(とも)に天を(いただ)かざる智の銃先(つつさき)を受けてみよ」』

 

 詠唱の声がキャスターと重なった。

 英雄王も乖離剣を使用している以上、起源弾の効果は最大限に発揮される。そして、私たちも英雄王も共に未来を視ている。つまり未来が見たいという思いを抱いている。

 ここに強制協力の条件は整った。型に嵌った以上、如何な英雄王と言えども、自身の力すら利用されたこの魔弾からはもう逃れられない。

 

「『急段・現象ーー犬坂毛野胤智』」

 

 そこまでカッコよくはない術名を唱え、引き金を引く。

 刹那、時間を跳躍し過去から飛来した魔弾が、英雄の心臓を貫いた。同時に私を護っていた大盾が溶けて消え去り、結界が乖離剣と張り合い始めた。というか、今更だけど何で私の魔術は起源弾の効果受けなかったし。

 

「ぬうっ、小癪な!」

 

 キャスターの起源弾によって、英雄王の耐性が書き換えられその防御性能が著しく低下する。そして乖離剣の出力が上昇、黄金の世界が完全に崩壊した。私の生存可能限界まで、後4秒。

 

「『行っけぇぇぇっ!!』」

 

 そして放たれた2発目。私の起源弾が再び時間を跳躍し英雄王の心臓を貫いた瞬間、全てが切り替わった。

 そんな中、英雄王から溢れ出していた魔力が、まるでスイッチが切れたかの様に消滅した。それによって、起動していたエアが急速にその勢いを衰えさせていき…

 

「う、ぐぅぅぅっ!!」

 

 『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』の残滓が結界を突き破り、遂に私に到達した。防御も回避も意味をなさず、私という存在を削り斬り裂き滅茶苦茶にして、それを私の魔術と宝具が無理矢理に再生させる。

 そして固有結界擬きから弾き出された私達は、聖杯の穴付近に現出した。

 

「貴様、我に何をした!!」

「乙女の秘密だよ、慢心王!」

 

 地表へと落下しつつそう捨て台詞を残し、もはや搾りかすの様な力で炎を球形に操作する。身体のダメージは酷いけど、その中に私は逃げ込む事くらいなら簡単だ。

 

 そして最後に見えた視界では、閉じつつある聖杯の穴から、この世全ての悪(アンリ・マユ)が未だ滝のように溢れていた。つまり…

 

「私たちの、勝ちだ!」

 

 散々実感した運命の強制力と、この世全ての悪こそが私の切り札。

 ギリギリの防御が間に合った私たちと違い、英雄王は原作と同じように泥を被り…即座に分解吸収され消滅したのだった。









明日も投稿するよ!

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