なんとなくFate   作:銀鈴

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よく考えると、私ハーメルンにいるの2年目か…そのくせこの駄文とは。
あ、エドモンさん呼び符単発でお迎えしました


王の覇道、人の覇道 そのご

「ケイネス殿! ソラウ殿!」

 

 ランサーの叫びが夜の廃墟に木霊する。ランサーが焦燥の顔で見つめる廃工場には、2つの倒れている人影があった。片方は赤系統の髪の女性、もう一方は横転した車椅子のすぐ隣で倒れる金髪の男性。ランサーのマスターであったその2人組は血の海に沈み、どこから見ても既に生き絶えていた。

 2人の遺体がある場所に落ちている空薬莢、先程の銃声、騎士の信念を踏み躙る悪辣な手段となれば、情報のある者ならばすぐにでも犯人に辿り着く。

 

「おのれ、衛宮切嗣ーー」

 

 その端麗な顔を悪鬼の様に歪め、既に人の気配が消え去った廃工場を見つめるランサーであったが刹那の後、踵を返し茫然自失の状態にあるセイバーに向かいなおった。

 

「ラン、サー?」

「安心したぞセイバー。どうやらその反応を見るに、我が主を討った者とは関係が…いや、この行動は予想外だった様だな」

 

 そう言うランサーの身体からは金色の粒子が立ち上り、徐々に空気に解けていく。現世との繋がりが途切れ、魔力が急速に減少しているが故の現象だ。

 

「2度も主を御守りする事が出来ず、主を害したキャスターを討伐する事も聖杯を献上する事も出来なかった俺が言って良いのか分からないが…セイバー、お前に頼みがある」

 

 自身の宝具たる『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』を折り砕きながら、ランサーいたって真剣な表情でセイバーに告げる。

 

「このまま自然消滅するなど、屈辱の極みだ。この死合い、最後まで付き合ってくれ」

「だがランサー、貴方のその身体では…」

 

 そう逡巡するセイバーの目の前で、折り砕いた黄色の単槍から溢れ出る膨大な呪力がランサーへと吸収されていく。1人の英霊が築き上げた伝説の象徴は、一時の間ランサーの消滅を引き留めた。

 

「問題ない。我が宝槍を1つ犠牲にしたのだ、一合程度ならば難なく保つだろうよ」

「請け合おうランサー。我が最高の一刀で決着をつける。風よ!」

 

 秒刻みで崩壊し続けるランサーと相対したセイバーが、風圧の護りから自らの宝剣を解き放った。轟風を巻き上げて姿を現わす黄金の剣。それは例え担い手が絶望に塗れていようとも、勝利を言祝ぐかの様に燦然と闇を照らしていた。

 

「感謝するぞセイバー。フィオナ騎士団が一番槍、ディルムッド・オディナーー推して参る!」

「応とも。ブリテン王アルトリア・ペンドラゴンが受けて立つ!」

 

 振り上げられたセイバーの剣に光が集う。

 ランサーが瞬時に間合いを詰めてくるが、貴き宝剣の柄がその手の中にある限りセイバーは自らの必勝に迷いはない。振りかざす黄金の輝きに、謳うべき真名はただ1つ。

 

約束された(エクス)ーー勝利の剣(カリバー)ッ!」

「見事なり」

 

 光が解き放たれ、咆哮し迸った。加速された魔力の奔流は閃光と化し、短い賞賛の言葉を残してランサーを飲み込んだ。そしてそれだけに留まらず、閃光は廃工場を僅かに逸れはしたが、道中にある廃墟を悉く蒸発せしめた。

 そして、宝具の発動が終わり全てを消し去った聖剣の光が収まった時、セイバーが膝から崩れ落ち手から宝剣が零れ落ちた。

 

「あ、あぁ、ぁああぁああ!!」

 

 ここに1つの決着が訪れた。

 ランサーは脱落し、セイバーは勝ち抜き駒を進めた。

 だがその勝利は望みからは程遠く、誰もいなくなった廃墟にセイバーの慟哭が悲しく響く。そんな状態であったためか、車の中にいたアイリスフィールの急変にも、視界の端に踊る黄金の痕跡にも気づく事はなかった。

 

 

 ジリジリと場の緊張感が高まってゆく。不思議と私とライダーの付近だけ誰も近寄って来ない中、私は無駄にある魔力を門の中で色々な物に分配する。今のこの身(霊基)はキャスターなんだから、やっぱり最後は遠距離で決めるのが一番だろう。

 

彼方にこそ栄え在り(ト・フィロティモ)ーー征くぞブケファラス!」

「ははっ!」

 

 それに合わせて、私は背負った棺桶をパージして砂の地面にめり込ませる。そして全ての棺桶に付いてる窓の内、一つだけ開いて光が溢れ出て私が生前作った中でもとびきりヤバイ装備の一つを形作っていく。

 パージした棺桶の代わりに顕現したのは、サブアームなどの付いたバックパック。左肩付近に私の背と両手を広げた既に展開済みの巨大な円柱型のジェネレーター。右肩付近からは、こちらも展開済みの銀色のタンクが沢山付いている長大な主砲が出現した。

 

「私に見せてよ、征服王の力をさぁっ!」

 

 詰まる所、展開したのは主任砲。遠距離で決めるって言ったから魔術オンリーだと思った? 残念! 近未来兵器でした!

 

「ファイヤー!」

 

 ハイテンションで私は引き金を引く。瞬間、多薬室砲塔から相変わらず核ではない弾頭が打ち出され、衝撃波が拡散する。反動で私自身もダメージを負ったが、ガバガバエイムの筈の弾頭は征服王に向かって光となって直進して行く。が、

 

「こりゃ流石に、無茶が過ぎるわ!」

「ふぁっ!?」

 

 私の身長からくる射線の低さが災いして、軽くブケファラスに飛び越えられてしまった。訳がわからない。けれどその跳んだ巨体は勿論着地が必要で、その着地点には衝撃で固まってる私。あ、これいつかゲームで見たモーション。

 

「歯を食い縛れい!」

 

 そんな言葉と稲妻を纏う蹄が、今回の現界で私が見た最後の光景となった。

 

 

 私の耳に、何か巨大な爆発音が聞こえた。と言っても、さっきから自分でも爆発させなりなんだりはしてるせいで、特に気にならない。今はウェイバーちゃんの所まで逃げ切るのが最優先!

 無論逃げ切る為には反撃による足止めが必須で…

 

「そろそろネタが…いいやもうメラゾーマ!」

 

 呪符が小さな火球に変化し、追っ手の部隊に向かい発射される。そして、今までと比べてとても小さな爆発を起こして消滅した。え、嘘ナニコレ。

 

「い、今のはメラゾーマではない。め、メラだ!」

 

 絶望的な筈なセリフだったものを捨て台詞にして、私は余りの低火力に固まってくれた親衛隊(ヘタイロイ)から距離を取るべく逃走を再開する。

 そして自分に強化魔術を掛けたところで気づいた。自分が扱える魔力が目に見えて激減してる事に。よくよく辿ってみれば、キャスターとの繋がりも無くなってるように感じる。え、もしかしてキャスター負けた? クラス相性的に不利とは思ってたけど、あんなに自信満々で?

 

「キャスターのばかぁぁぁぁっ!!」

 

 青空で笑顔でサムズアップしているキャスターの幻影に、単純な罵倒を飛ばす。

 無尽蔵な魔力が無くなったから、さっきみたいに魔術回路を限界まで酷使した攻撃は数回しかできなくなるし、身体強化も肉体の限界まで強化してダメになったら即再生って強行手段が使えなくなる。

 こうなった上に停滞から解放された人達が集結し始めてる今、100mくらい先のウェイバーくんちゃんに辿り着くのは至難の技だろう。そして滅多刺しの戦死エンドへ。

 

「ええい、ままよ!」

 

 もうどうにでもな〜れという気分で、キャスターが『やっちゃった。テヘペロ☆』って言ってた私の身体を弄って付けてくれやがった能力を使う。因みにその後、キャスターの事は全力で殴ったからこれ以上文句は言わない。

 

重反応加速(アクセル)ッ!」

 

 まだ上手く制御できない能力を発動させた瞬間、景色が凄い速度で流れ始めた。人体改造とかいう魔術に拠らない力は嬉しいけど、これを私に施した本人が消えた以上何がある分からないから地味に怖い。

 話が難しくて半分以上理解でなかったけど、原理は『ATP(アデノシン三リン酸)』の極大生成による運動能力の向上と、全神経系における神経衝撃(インパルス)の伝導加速による認識・対応能力向上とか言っていた。

 まとめると『マスターはスーパーモードをゲットしたけど、集中しないと事故るし、終わったらすっごくお腹が空くよ!』って事らしい。

 

「はぁっ!」

 

 駆け出してから1秒。今までの強化魔術がなんだったのかと思う速度で、私は空気を切り裂きウェイバーくんちゃんのいる(多分)安全地帯に直進する。

 駆け出してから2秒。踏み込んだ足が砂の地面を爆発させ、もう一度加速する。けど、目の前に集結し始めてる親衛隊(ヘタイロイ)に気を取られ、完全に踏みきる事が出来ず躓いて姿勢を崩してしまう。

 そして、駆け出してから3秒。

 

「へぶっ」

 

 躓いてバランスが取れなくなった私は、ウェイバーくんちゃんの手前の地面に着弾した。胸があったら即死だった…例え宝具があっても、胸のせいで綺麗に砂に埋まれなかったら首がポキッといってたと思う。でも100m3秒、グレートですよこいつはァ…

 そんな事を思ってる間にも、砂の中にいるせいで息が出来ないせいで苦しくなってくる。流石にこんなので死ぬのは馬鹿らしいし、自分の身体の周りで小さな爆発を起こす。

 

「けほっけほっ、うぅ…酷い目にあった…」

 

 パンパンと砂を払いながら、宝具を展開したまま立ち上がる。ウェイバー君が呆気にとられてるけど、投げ槍が怖いもん解く気はない。うわっ、服の中に結構砂入ってる…

 

「酷いよライダーのマスター…私みたいな女の子を虐めて楽しい!? すっごく、すっごく痛いんだよ!?」

 

 主にずっと酷使してた魔術回路とか、肉体的な限界まで強化して血が出ようがなんだろうが回復させながら使ってた両足とか。後は普通に頭も痛い。

 

「ぐすっ、ひっく、ふえぇぇぇん」

「ちょっ、泣くなよ。お前あんなに凄い魔術、楽しそうに撃ってたじゃないか!」

「あんなの、好きで、やる訳ないじゃん…ぐすん」

 

 身体の任せるがままに私は大泣きする。そんな私を目の前にウェイバー君はオロオロし始め、歪んだ視界に映る私を追っていた親衛隊(ヘタイロイ)の人達にもなんだか気まずそうな雰囲気が漂い始める。

 やっぱり、困った時はこの手に限る。

 

「大マスター、何を泣いてる? まだ、何も終わってはいない」

「ふぇ?」

 

 内心勝ったと思っていた私のすぐ隣に、空気から溶け出てきたかの様にティアさんが出現した。途端に、ティアさんごと私も殺気に晒される。

 

「全く、マスターも何を簡単に、負けて退場してるのやら」

 

 やれやれといった感じでティアさんがため息を吐いた瞬間、固有結界内に瞬く間に霧が発生した。心音の様な音が何処からか発生し、空間が絶叫する様に軋む怖気の走る音まで聞こえ始めた。

 

「お、おおおいお前! 何がどうなってるのか知らないのか? こいつのマスターなんだろ?!」

「し、知らないよぅ…」

 

 今度は演技じゃなく本当に怖くて涙が出てきた。いや正体知ってるからコズミックなホラー的サムシングだろうって予想はできるけどさぁ!

 口を噤み首を振り内心恐怖で動転してる私の眼の前で、ティアさんの目の前に門が出現した。それは銀色で精緻な細工が施されており、完全に実体化出来ていないのかノイズが走る様に揺らめいている。

 

Acta est fabula(芝居は終わりだ)。さあ、逆襲(ヴェンデッタ)を始めよう」

 

 その台詞を聞いた瞬間、今のティアさんが纏う魔王然とした雰囲気も、おどろおどろしい周囲の気配も一気にバカらしくなった。

 もうオープニングで変なダンスしてたり、お酒に入り浸ってればいいと思うよ、うん。覚醒したらカッコよくなっちゃうからダメね。

 




果たして、またもや大量に詰め込んだネタの元が分かる人はいるのだろうか…

【吉報】
ランサー、満足して逝く
銀城ちゃん、イキキル
【悲報】
ケリィ、無事離脱
アイリ、中身が溢れる…高まる…
【速報】
ギル様、愉悦
ティア様、愉悦

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