なんとなくFate   作:銀鈴

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あートリニティ買いたい…PCない…
あ、活動報告の方にサーヴァントのステータスは纏めておきました。


王の覇道、人の覇道 そのし

 理解不能意味不明、訳がわからないどうしてこうなった。

 それが安全地帯(キャスターの異界)から放り出されて、最早条件反射的に仮装宝具を展開した私の頭を占める全てだった。

 

「何するのさキャスター!!」

「アッハハハ、なにぃ? 聞こえなーい!」

 

 少しは小さくなったけれど鳴り止まない鬨の声の中、私という小さな子どもが張り上げた声は掻き消されてしまったようだった。意図的に無視してたんだとしても、そういう事にしておいてあげる。

 

「ああもう! ひっ」

 

 軽くキャスターにキレていた私に向かって、親衛隊(ヘタイロイ)の1人が向かってきていた。多分私が仮装宝具なんで物を纏っているせいだろう、今私は確実に敵と認識されている。

 嫌だ嫌だ怖い怖い怖い。キャスターもティアさんも訓練の時は私に全力の殺気を向けてくるけど、今迫ってきている()はレベルが違う。身体は私の倍はあるし顔は怖いし殺気だって本物だ。

 リューノスケの時はどうしたって?あれは事前に起きる事を知ってたし、殺気は向けられなかったからどうにか平常心だったの!

 だけど今は予想を外れた唐突な実戦。怪我が怖い、治らないかもしれない、助けなんて間に合わない、嫌だ、私はまだ死にたくない。

 

「神火清明、急々如律令ーー唵!」

 

 自分の中で何かがカチリと嵌り、動揺する私の内心とは別に身体が勝手に動いた。魔術で作り出した空間の中に手を突っ込み、呪符を片手に10枚程度ずつ挟み取り出しそのまま魔術を併用し投擲、その全てが1人に殺到し過剰な火力で爆殺した。

 

「はぁ…はぁ…」

 

 キャスターの異世界式教育のおかげでどうにか身体は動いてくれた。次からもこう動いてくれるとは思うけど、慢心はいけない。

 それに英霊だけど、今私は人を1人花火にしてしまっている。その事を受け止めると、流石に手足が震えてくる。だけどそう考える頭の中で別に、敵陣のど真ん中でこれはマズイと冷静に考えてる私もいる。私、どうすればいいの…?

 

「大マスター、やるじゃん」

 

 混乱してスイッチが切れたように動きを止めていた私に、そんな声がかけられた。そしてそのまま、軽く抱きしめられ頭を撫でられる。花の香りが私を包み、なんだかすごく安心する。薔薇の匂い…かな?

 

「ティア、さん?」

「まあ、今回はマスターが悪い。けど、貴方にも実戦経験が必要だった。許して」

 

 とりあえず震えが落ち着いてきた。確かにこんなんじゃ、いつかいざって時に私は動けなくなって死んでただろう。視界の端に映る神話生物さえいなければ、すごく安心でした。キャスターと違ってティアさんは凄く良い人かもしれない。

 

「落ち着いた?」

「うん、まあ、なんとか」

「それじゃあ、続けられる?」

 

 そう思った私がバカだった。ティアさんも、私に平然と戦闘の続行を要求してきた。でもまあ、問答無用で放り出して放置するキャスターよりは確実に優しいのは確かだ。

 気合を入れよう。気を引き締めよう。今ここは私が成長できるかもしれない数少ない場になっているのだから。

 

「うん。頑張る」

「護衛は付けておく。存分に腕を磨くといい。幸い、ここなら相手には事欠かない」

 

 私の視界外に、何かが現れたのを感じる。テケリ・リなんて声は知らぬ知らぬ聞こえぬ見えん。

 全身に魔力を巡らし、宝具への魔力供給を強化する。そのお陰で燃え上がる雷炎に更に白くなってきた髪が靡き、今度こそ自分の意思で攻撃の為に呪符を掴み取る。

 

「神火清明、唵!」

 

 またも迫って来ていた数名の敵に、炎の尾を引く呪符が襲いかかる。そして私の命じに従い、大輪の炎の花が咲き乱れた。

 さっきと違い一体に大量の呪符を使っている訳ではないので倒せはしないが、爆発時の衝撃だけは十二分な効果を発揮してくれる。有効打にはなり得なかったけど、吹き荒れる焔の烈風が迫っていた数名を吹き飛ばした。

 

「火神招来!」

 

 そして私は追撃として呪符を数十枚展開し、手元にそのまま留まらせる。そして頭の中にクトゥグアがコンニチハ-してるイメージで呪符に魔力を流し込み、私の身の丈を大きく超えた大剣状になった焔を形成。それを持って私は、敵を射程圏内に収める為に距離を詰める。

 

「我が剣は緋炎! フランブレイブ!」

 

 何故か重いこの大剣状の焔を、回転しながら遠心力に任せて振り切る。そして一切の抵抗なく剣は振り抜かれ、大爆発を引き起こした。ただ記憶にある技を再現しただけだけど、火力的には十分だったらしい。

 

「ふぅ…よし! 力尽きるまでやってやらぁ!」

 

 幸い呪符の在庫はまだまだある。キャスターが勝つにしろ負けるにしろ、運が良ければ戦いの終わりまで生き残っていられると思う。

 そう思って私は、強化魔術を全身に限界まで掛けながら軍勢から逃げ出した。うん、逃げ出した。戦うとは言ったけど、さっきみたいなギリギリのまぐれはもうやりたくないんだもん!!

 

 

「ひゅー、マスターも中々やるぅ!」

 

 そんな事を言いながら、あえて通常モードに戻した大鎌で私はライダーに斬りかかる。空中からの斬撃をさも当たり前のように逸らされたのは不満だけど、そもそも武器を壊すのは気が引けるからね仕方ない。

 まあそんな事は置いておいて、放り出したマスターも中々上手くやってるみたいだね。魔力の吸われ具合とチラッと見えた炎から察するに、とりあえず親衛隊(ヘタイロイ)の人達とはやりあえてるみたいだし心配は要らないかな。

 

「うちのマスター、どう思う征服王?」

「あやつ、本当に人間か? 生身で余の精鋭らと敵対しておきながら、生き残るどころか返り討ちにしておるとか、そうでもなければ信じられないのだが」

「人間だけど、私の弟子だからね!」

 

 そんな事を言いつつ、至近距離で取り出したショットガンを放つが、湧き出た雷で全部防がれてしまって効果が無かった。雷の征服者かな?残念。

 あと今更だけど、マスターが私にとって初めての弟子だったりする。愛する我が子…アヤメにはずっとお母さんとして接してたから弟子じゃないし…うん、一番弟子になるのか。ふふ、そっか。一番弟子だし愛弟子かぁ…

 

「ソイヤッ!」

「ぬぅっ!」

 

 少しにやけていた私に突進してきたブケファラスを受け流し、そのまま回転しつつ大鎌を振り抜く。予想はしていたけど、クラス補正と相性もあってかダメージは通らず、簡単に弾かれてしまった。

 つまんなくなるからキラーを乗せてないとは言え、ちょっとこれはヤバイかも…

 

「どうしようライダー、私マスターに託せる奥義とかないんだけど!?」

「いや、英霊の奥義なんて物、現代の人間が使える様になるとは思えんのだが…」

「あれを見てもそう言える?」

 

 私は一旦ライダーから距離を取って、先程からチラチラ見えていたマスターを大鎌で指し示す。いやぁ、マスターがここまではっちゃけるとは思ってなかった。嬉しいけどね。

 

「いやぁぁぁ! 炎よ、舞い踊れ、踊れ、踊れ!」

 

 下級の英霊に迫る程の速さで地表を駆けるマスターが、振り向きざまに巨大な炎の龍を迫る親衛隊(ヘタイロイ)に放つ。しかしそれらは盾で受け止められ、十分な効果を発揮できていない。

 

「ああもうやだぁ! 炎よ、乱れて爆ぜよ!」

 

 それを見たマスターは、半泣きで呪符を投擲して魔術を発動させた。瞬間、親衛隊(ヘタイロイ)の足元で巨大な火球が発生して大爆発を起こした。漫画の様に人が吹っ飛び、またマスターが逃走を開始する。

 

「ああ、うむ。あれなら出来んこともなさそうだな」

 

 ライダーが呆れたように私に言ってくる。ライダーにすら呆れられるってなにそれ悲しい。でも折角の固有結界なんだから、マスターにはもっと成長してほしいんよなぁ…まあ、もう時間切れだけど。

 

「さて、長々話したけどライダー。この固有結界、そろそろ限界じゃない? 見た所召喚した全員で支えてる世界みたいだけど、半分くらい私達が薙ぎ払ったから出力が足りないと思うけど」

「むぅ、キャスターというのはそこまで見抜けるものなのか。厄介な」

「多分キャスターじゃなくて、私のスキルが原因だと思うよ?」

 

 半分嘘で半分本当だ。知識として覚えてるってのもあるし、魔眼が思いっきり性能を暴いてもいる。

 

「まあそれは置いといて。一つ提案なんだけどさ、次の一撃で決着にしない? ダラダラ戦うのは嫌だし、それで恨みっこなしで」

 

 大鎌を担いで、私はライダーに提案する。実を言えばもっとこの現実に被害を出さない空間で、隕石やらなんやらで遊びたかったけどジリ貧だしね。あと何よりクラス相性が予想以上に問題だった。だからこれは、結構賭けになるんだけど…

 

「よかろう。戦の最後に一騎打ちを望むとは、中々風情があるではないかキャスターよ」

「正直、物量で圧殺されるのは2度とゴメンだからね。後はまあ、決着を付けるのはタイマンが一番だもん!」

 

 ライダーが乗ってくれて助かった。

 私とライダーの距離は十分。ライダーが私を斬るのが先か、私の諸々がライダーを捉えるのが先か。いやぁ、後先気にしないでできる戦いって楽しいね!

 




マスターが戦えてる理由
敵方
親衛隊(ヘタイロイ)の鯖+キャスターのお陰で弱体化
マスター
キャスターによる魔改造+道具作成EXの呪符+キャスターからの魔力逆流+ティア様の保険


そして漸く決まったイオリンの娘の名前をちゃっかり出す人

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