なんとなくFate   作:銀鈴

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新年だし、チラ裏解除しようかなと思い始めるアホ作者。
それにしてもfgoのアニメ、ランサーが成長したアナだったのにも驚きだけど、ライダー……誰あれ?


始まる宴 そのに

 夢を、見ていました。

 夢の中の私は、心と身体、2つを襲う激しい痛みに耐えていました。

 こんな事したくない。逃げたい。死にたくない。みんなと笑って、楽しく過ごしたい。夢の中の私は、そんな考えでいっぱいでした。

 でも、その状況を打開できるのは自分しかいない事にも気づいたのです。

 たがらそんな自分の事は些事と押し殺し、自分が勝てる見込みもない◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎に刃を向けたのです。これを打倒しても次の、更に次の次の次の次のと続く困難へと立ち向かうのです。

 傷だらけになり、ボロボロになり、壊れる寸前まで達しているのいうのにその人は諦めません。その自分の望みが達成されるまで、神すらもその刃にかけるまで。

 そんな生き様を見せつけられて、私は、私はーー

 

 ・

 ・

 ・

 

「やっぱり英雄なんて、化物で狂人じゃん…」

 

 見慣れないホテルの天井に、片手を広げて伸ばしながら私は考える。カッコイイとは思うし尊敬だってできる。だけど決して、それに成りたいとは思わない。それが、目を覚ました私の正直な感想だった。

 キャスターが『特訓して、食べて、寝ればいいんだよ! 塵も積もれば山となる!』とか言って寝かしてくれた、雁夜おじさんのとったホテル。雁夜おじさん達が見当たらない第二のハイアットが秒読みなここは、変な夢を見るくらい寝心地は悪かった。気持ち的に。

 

「やっぱり、出るしかないのかなぁ…」

 

 愛用してるフワフワのスリッパを取り出して履き、洗面台に向かう。顔を洗ってサッパリしようと向かう途中も、さっき見た夢が頭にこびりついて離れない。

 詳しい事を思い出そうとすると酷い頭痛に襲われるけど、一度死を経験してる以上、英雄なんて存在は、概念はキチガイにしか思えないのだ。血反吐を吐いて戦い、祭り上げられ、程のいい道具として利用され、最後には不要也と味方に殺されるか、不条理に押しつぶされる。そんな物を目指す意味なんて一片たりともありはしないじゃないか。

 

「まあ、私みたいな一般人が言っていい事じゃないか」

 

 これ以上は度が過ぎる独り言になると判断して、踏み台に乗って顔を洗う。私はあくまで一般人。キャスターのせい(お陰)で逸般人になりかけてるけど、まだ一般人なのだ。本来なら何もかも傍観で満足する、凄くつまらない人間なのだ。

 思ったよりバサバサしてるタオルで顔を拭き、痛んでる…というか毛先が白くなってきてる髪の毛を、ママの使っていたヘアゴムで1つに縛る。

 

「キャスター、いる?」

「ん、いるよー。おはよ、マスター」

 

 ぺちぺちとほっぺを叩く私の隣に、キャスターが実体化する。ちょっと煤けた臭いがするのは気になるけどまあいいや。このキャスターに、常識なんて求めちゃいけないって私覚えた。

 

「昨日後回しにしたこれからの事、決めたよ」

「へぇ、どうするの?」

 

 途端にぽわぽわしていたキャスターの雰囲気が、戦人のそれに切り替わる。後で、どんな人生だったのか聞いて見るのもいいかな。今はそれは置いておくとして。

 

「ケリィがここを突き止めてハイアットする前に、雁夜おじさんにお礼を言って逃げる。行き先はあの貯水槽ね」

「うんうん、それで?」

「その後は、行き当たりバッタリで」

「へ?」

「だから、行き当たりバッタリで」

 

 これが悩んだ末私が出した結論だった。そもそも策士でも奇策士でもない、2回目の人生を歩んでるだけの小娘が作戦なんて考える方がおかしかったんだ。ちぇりお!

 既に原作からも外れているから、知識を過信は出来ない。なら、行き当たりバッタリしかやれる事はないと思う。幸い、サーヴァントの能力は覚えてるから対応できない事はないだろう。

 

「ぷっ、く、あはははは!」

「むぅ、何かダメな所あった? キャスター」

 

 結構一生懸命考えて出した答えなのに笑うなんて酷い。いや、出した答えが答えだから笑われてもおかしくない? でもとりあえずイラっときたので、ほっぺを膨らましながらキャスターを睨む。

 するとキャスターはお腹を抱えて、目に涙を溜めながら答えた。

 

「ううん、違う違う。つくづくマスターと私って、すっごい似てるなって思って。ああうん、愛鈴みたいなマスターは大好きだよ!」

「うわっ、ちょっ、キャスターやめ」

 

 何故かキャスターに抱きしめられた。率直に言って煙たい、なんか煤けた感じの臭いがする。だけど何か、全く違う筈なのにお母さんに包まれた様な気配がして……ハッ!

 キャスターの抱擁から逃げ出し、一歩私は後ろに下がる。危ない、まさかそういう事だったとは。してやられた。

 

「キャスターはやっぱりバーサーカーだったんだね」

「え、なんで?」

「サーヴァント、母、ゲンジバンザイ。胸は別物だけどね、分かるとも!」

 

 第1種戦闘配置だ。どっかの源さんと似た様な鯖だとは全く思ってなかった…そうかそうか、君はそういうやつだったのか(エーミール並感)

 

「ぐぬ、どこから突っ込めばいいんだろう…確かに私、バーサーカー地味てる実感はあるし、一児の母だったりするけど…」

「…へ? 一児の、母?」

 

 嘘、でしょ? 

 

「ううん、本当だよ? 流石にこの身体の歳じゃなくて、十年後くらい後になってからだけどね」

「なん……だと」

 

 ジャンジャジャーンと今明かされた衝撃の真実に、私はBLEACH的反応をする事しか出来ないのであった。このキャスターが、結婚?しかも子供?相手の人、一体どんな酔狂だったんだろう…

 

 

「さてと、それじゃあ行こうかキャスター!」

「実感するのは2回目だけど、その切り替えの早さは尊敬に値するよ…マスター」

 

 ホテルに『今まで短い間だったけどありがとうございます。ここが第二のハイアットになる前に私達はいなくなります』ってメモは残したし、私物は例の謎空間に仕舞ってある。別に必要な物はもうないね!

 という事で、私達は既に大通りに出ている。流石の私も、こんな真昼間でも幼女が2人大通りを歩いてたら、警察に補導されちゃうって事くらいは分かる。だけど、久々の日光の下で嗅いだジャンクなフードの臭いには逆らえなかったのだ。

 

「ねえねえキャスター。キャスターの作ってくれる神代の料理もすっごく美味しいんだけど、偶にはジャンクな食べ物も食べたいな!」

「ウチのマスターは自由だなぁ…でもどうするの? 保護者いないと多分買えないよ?」

 

 そうキャスターが首を傾げて聞いてくる。ふっ、今生におけるパパママと結構ここら辺は来てたし、多分問題ない。お金もあるから基本的には大丈夫だろう。あの頭文字Mなハンバーガーショップに突撃したって、問題ないに決まっているのだ。

 

「それに『お使い』って切り札もあるもん」

「いや、その前に隠蔽性とかそういうのを…はぁ。うん、まあいっか」

 

 そんなキャスターの愚痴を聞きながら、私は軽く幼女らしく駆け出す。全力で走ると変な目で見られるからセーブしてるけど、やっぱり日光を浴びるのはいいね!

 

「わぷっ」

 

 そんな感じて少し浮かれてたせいか、ボスンと誰かにぶつかってしまった。ちょっとはしゃぎ過ぎてたみたいだ、ケリィがいる以上気を引き締めないと。と、それはそれとして。

 

「ぶつかってごめんなさい」

 

 一先ずペコリと頭を下げる。相手が分からなくても、謝るのは大切な事、イイネ?

 

「おう、気にせんで良い。許す」

「ありがとうござい…ま……す」

 

 お辞儀から顔を上げた私の目に映ったのは、丸太の様な太さの足だった。見上げていくと、格好はピチピチのシャツにズボンで胸元には大きく大戦略の文字。大きく見上げるほど大柄で赤毛を持ち、彫りの深いその顔は……

 

「征服王、いす、かんだる?」

「おお、この時代で余を知る子がいるとは思わなんだ」

「さ、サインいいですか?」

「署名か? 宜しい」

 

 ポケットから引っ張り出したハンカチにサインして貰ってる間、私は足りない頭を必死に巡らせる。

 征服王がここにいるって事はウェイバーくんも一緒にいるだろうし、キャスターが出て来たらマズイ。できればこのまま、イスカンダルを知っていた謎の女の子って事で立ち去りたい。でも魔術を使ったら間違いなくバレるだろうし…

 

「ありがとうございました」

「礼節も弁えているとは、近頃の童は中々に立派よのぅ。ところで1つ質問なのだがーー」

 

 イスカンダルが次の言葉を発する前に、私が予想していた最悪の事が現実に起きた。起きてしまった。

 

「こら、ライダー! 勝手に彷徨くんじゃない!」

「マスター、好きに動くのは良いけど警察に見つかったら面倒な事になるんだから、ちょっとは気にしてよね…」

 

 そう言いつつ、人混みの中から現れるウェイバーくんとキャスター。それによってライダーとキャスター陣営、そのマスターとサーヴァントが揃ってしまい…

 

「げぇっ、キャスター!」

「あー…こうなっちゃうんだ。ハロー、ライダーにそのマスター」

 

 キャスターが一旦諦めた表示を浮かべ、次の瞬間にはニヤリとしながらそう言った。その後は勿論、キャスターにマスターと呼ばれた私に視線が集中するわけで…

 

「お察しの通り、私がそこのキャスターのマスターだよ。それはそれとしてお腹が空きました。日本円渡すから、適当にハンバーガー買ってきてよウェイバーくん」

 

 努めて無表情で、舌足らずな言葉だけどふてぶてしく私は言い放つのだった。はぁ…ここからどうしよう。

 




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