Alternative Ending Final Fantasy XV   作:ナタタク

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Last Episode グラディオ

「…来たぞ、グラディオ」

王都の復興が始まり、つい最近になって再建が終わったアミシティア邸。

ノックなしの家に入り、庭に来たノクトの腰の鞘には父王の剣が差してある。

一方、グラディオは庭で腰を下ろし、膝に大剣を置いて瞑想している。

「おお、待ってたぜ。ノクティス国王陛下」

目を開けたグラディオは立ち上がり、大剣の先をノクトに向ける。

彼が握っているそれは黒い分厚さの目立つ刀身で、持ち手にはルシス王家の紋章が刻まれている。

それはアミシティア家の当主が代々受け継ぐ大剣、ラグナロク。

王都襲撃の際、グラディオの父であるクレイラスが所持していたと思われるが、彼の死と同時に行方不明となっていた。

アーデン戦役終結後の王都再建の際にタルコットによって発見され、10数年ぶりにアミシティア家のもとへ帰ってきた。

「なら、さっさと始めようぜ。おそらく、これが最終試験だ」

「ああ。始めようぜ…グラディオ」

庭で対峙したノクトとグラディオが互いにじっと相手の目を見る。

最初に動き出したのはノクトだった。

抜いた父王の剣の剣先を足元へ下げ、体をかがめて接近する。

そして、剣を上へ上げるようにしてグラディオに切りかかる。

グラディオはそれを真正面から、大剣で受け止めにかかる。

「お…。力が増してきたな、ノクト」

「おかげさまでな」

旅を終え、ルシス再建を始めてからは機会が減ったものの、ノクトはグラディオの特訓を受け続けた。

シフトや武器召喚、魔法といった力をすべて失ったノクトは最初、グラディオに一本入れることすらできなくなっていた。

しかし、引退を考え始めていたコルを巻き込んで、2,3年がかりで粗削り気味だった剣技を磨いていき、最近では全力のグラディオと互角で戦えるようになるまで成長した。

「それに、イリスを嫁にもらうんなら、少なくとも俺に勝てるくらい強くなっておけっていってただろ?グラディオ!」

「当たり前だ。俺より弱え男に大事な妹を託せるかよ!」

何度も刃をぶつける互いの表情は明るく、笑っていた。

2人がこうして特訓をするようになったから、すでに20年以上経過している。

旅の間も、何度か仲間と一緒に標でこうして特訓を繰り広げていた。

時にはイグニス、プロンプトと3人がかりでノクトに挑む、というとんでもない内容もあったが…。

そして、今こうして刃を交えて実感するノクトの力。

最初に会った時はわがままで不真面目、殴りたくなるほどのドラ息子で、そんな彼のことが大嫌いだった。

しかし、ある時にそんな彼の中にある根性を見た。

そして、彼自身も強くなりたいという願望があることを知った。

だから彼を強くしようと決心した。

そして今、ノクトは全力の自分と互角に戦えるくらいになっている。

それも王家の力抜きで。

だが、自分も王の盾であるアミシティア家当主。

王を守る盾であることへのプライドにかけて、負けられないものがある。

「おおお!!」

グラディオの蹴りがノクトの腹部に直撃する。

「ぐぉ!?そんなのありかよ!!?」

「武器ばっかに頼ってんじゃねえ。拳や足だって、立派な武器になるんだぜ」

「ちぃ!!」

距離を取ったノクトは剣を構えなおす。

「…そういやぁ、死んだシドが言ってたな。仲間に頼れって。俺はお前にとって頼れる仲間の一人だって思ってた。だが、そうじゃあなかったかもしれねえ」

「はぁ?何を言って…」

「ルナフレーナ様の死、そして指輪のこと、イグニスの失明…。それを整理するのでいっぱいいっぱいだったお前に…ひどいことをたくさん言っちまった」

ファントムソードの1つである闘王の刀が眠るケスティーノ鉱山へ向かう電車に乗っていたとき、そして鉱山を探索していたときのことを思い出す。

ルーナやレギス、数多くの人々の思いを託されたノクトが感じるプレッシャー、そして愛する人を守れなかったことへの無力感と悲しみ。

それに押しつぶされそうになっているのがわかっているのに、自分はノクトに発破をかけることしかできなかった。

グラディオにとって、あの旅の中で残った大きな後悔がそれだ。

「イグニスと違って、頭のデキがよくねーから…なんて、言い訳はできねえ。俺があの時やらなきゃいけなかったのは…お前が抱えた重荷を一緒に背負って、お前の決断を待ち続けることだったんだ」

「…。別にもう気にしてねーし。それより、俺に対してできなかったことを俺の子供にやってくれねーか?弱気なのはお前らしくねーぞ、グラディオ」

「ノクト…」

「そうやってグヂグヂしてるのはお前らしくねーよ、グラディオ。そんなんじゃ、今回の勝負は俺の圧勝になっちまうぜ?」

「…だな。それはアミスティア家当主として、許されねーな!」

後悔を振り切り、笑顔を見せたグラディオはラグナロクを構えなおす。

「次の一合で、決着だ」

「ああ…今回は俺が勝ってやる!」

父王の剣をグラディオに向けたノクトはそのまま彼に突っ込んでいく。

それにこたえるように、グラディオも直進した。

父王の剣とラグナロクがぶつかり合った。

「な…!?」

今まで感じたことのない、鈍い衝撃を感じたグラディオの目が大きく開く。

その衝撃を感じてすぐに、ラグナロクの刀身が根元から折れてしまった。

「うわっ…まっじ!!」

折れたラグナロクを見て、顔を青くしたノクトは父王の剣を鞘に納め、それの刀身を手にする。

鍛冶屋にもっていけば、修復できるかもしれないが、まさかアミシティア家の家宝ともいえるラグナロクを折ってしまうとは思いもよらなかっただろう。

「グ、グラディオ…」

「あーあ、こいつは俺の負けみてーだな」

ラグナロクの持ち手をその場に置いたグラディオは背伸びをする。

大切なものが折れてしまったにもかかわらず、その表情は穏やかなものだった。

「悪いグラディオ!これ、親父さんから受け継いだ大切な…」

「それだけ、お前が強くなったってことだろ。気にすんな、こいつは直せる」

「けどよぉ…」

「それより…」

動揺するノクトの胸ぐらをつかんだグラディオはじっとにらみつけるように彼の目を見る。

「ぜってーイリスを幸せにしろよ。あいつは俺のたった1人の家族だからな」

「…言われるまでもねーよ、グラディオ」

ノクトの言葉を聞き、安心したグラディオは手を放した。

 

「悪いな、親父…。ラグナロクを折っちまって」

その日の夜、アミシティア邸の庭でビールを飲みながら、月に目を向けて語り掛ける。

小さいころ、死んだ人間は空へ行くと両親から教わった。

大人になり、そんなことはないと知ってはいるものの、今日はどうしてもこういう形で死んだ父と話したかった。

「ルシス王国はこれからも続くぜ。アーデン戦役の悲劇を乗り越えてよ…。だから、ゆっくり休め!」

空になったビールの缶を捨て、新しいビールを開け、一気に飲んでいく。

ビールを飲む彼の眼には涙があふれており、そのまま酔いつぶれて眠り、グラディオを心配して帰ってきたイリス

にたたき起こされるまでここに居続けた。


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