Alternative Ending Final Fantasy XV   作:ナタタク

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Alternative Ending チャプター4

星の病が消え、レスタルムでノクトがイリスと再会してから、半年が過ぎた。

レスタルムでは相変わらずメテオを動力源とした工場を稼働し続け、たくましい女性たちはこの暑い土地の中でも極めて暑いその空間で力強く勤労に励む。

そして、そこの南部にある、イオス各地に点在するホテルチェーンのリウェイホテル最上階でも…。

「おい、ノクト。ここの文章、おかしくないか?」

「んー…?」

書類とファイルの山に挟まれた状態で椅子に座るノクトが机に顔を突っ伏したまま、イグニスの言葉を聞いている。

暑いためか、2人とも上着なしの王都警備隊の服を着用している。

「まったく…。明日はレスタルムにできた、アーデン戦役の慰霊碑の除幕式典だぞ?そこでお前が演説をすることになっている。これでは…」

「はいはい、わかってるよ。これから書き直す」

イグニスから演説用の文章が書かれた紙を強引にとり、再びそれとにらめっこし始める。

なお、アーデン戦役は40年前のニフルハイム帝国による侵略戦争の開始から半年前の星の病の消滅までの一連の事件の総称で、名前はノクトが決めた。

この暗黒の時代の原因を作り、ルシス王家を世界もろとも滅ぼそうとした男の名をあえて入れることで、この不幸な歴史を忘れないようにできればと考えたのだ。

「そういやぁ、イグニス。王都復興計画はどうなってる?」

「ああ。先日、協定を結んだアコルドからの支援もある。1週間後には工事の主な計画を練り始める。だが、シガイと帝国による襲撃で受けたダメージは大きい、復興が終わるまでは…」

「最低でも、10年だろうな…」

「ああ…」

ノクトが第114代国王として、再びルシス王国は復活を果たした。

しかし、王都インソムニアは廃墟と化し、現在現存している大きな都市はこのレスタルムだけだ。

そのため、現在はこのホテルの一室で政務をとっている。

残っている問題はこの王都の復興だけではない。

10年前に研究所で発生した事故により、皇帝を含めた要人が死亡し、帝国はあっけなく崩壊した。

そして、シガイがいなくなったことで今まで隠れていた祖国奪還の声が大きくなった。

その結果として、いち早くアコルドとテネブラエが独立を果たした。

ただ、問題なのは帝国の本領に住んでいるニフルハイム人だ。

一度の政府要人を失っただけでなく、シガイによって人口の半数が死亡している。

そのため、現在は無政府状態となっており、どうにか皇帝による独裁制の廃止は一致したものの、他国と強調する道を取るか、それとも皇帝の遺志を継ぎ、世界の覇者となるために動き出すかで意見が二分している。

そして、それによる内戦で難民となった人々はアーデン戦役の原因を作ったニフルハイム人として、受け入れられず、もしくは受け入れられたとしても社会の最底辺で生きていくことが余儀なくされる。

星の病がなくなったとしても、すべてが元通りになることはない。

なお、ルシス王国はアコルドだけでなく、テネブラエとも協定を結んでいる。

世界を救った星の王と神凪に深い縁を持つ国家同士が互いに助け合い、復興を進めていくという内容だ。

テネブラエについては、帝国から例外として自治が認められていたため、独立後の統治機構の基礎作りは比較的容易だった。

しかし、ここを統治していたフルーレ家はルーナとレイヴスの死により、相続者不在という状態となった。

一度は婚約者であるノクトがテネブラエ国王を兼任してもらおうという意見もあったものの、ノクトは即刻拒否した。

テネブラエのことを考えるのであれば、テネブラエで生まれ、生きる人々が決めるべきであり、縁があるとはいえ、別の国の出身である自分が決めるわけにはいかないというのが理由だ。

なお、フルーレ家は遠縁にあたる少女が相続することになり、ゲンティアナが後見人となることで調整されることになった。

ただし、神凪は国家の象徴として扱われ、政務は新しく作られる議会で行われることになるとのことだ。

アコルドはリヴァイアサンが原因で街に被害が出ているものの、幸運にも比較的にシガイによる被害が小さく、ある程度復興支援については余裕がある。

ルシスとテネブラエとは異なり、国のトップである王家が機能していたためだろう。

ほかにも、食糧問題や予算づくり、そして大臣の選出など、問題は盛りだくさん。

その中でも、ノクト達を悩ませているのは…。

「王の剣をどうするか…」

帝国によって滅ぼされた国の難民たちによって結成された王の剣。

その体調であるドラットーによって、レギスは殺されたという情報は王の剣の生き残りから伝えられた。

彼の話によると、ルーナから王都から連れ出してくれたのは彼と彼の盟友であるニックスだ。

なお、ニックスは歴代王と取引をし、その力でレギスの敵を討った。

そして、その力の代償はニックスの命で、彼は夜明けと同時に死亡した。

彼はその後、王都を離れてまるで死に場所を求めるかのようにハンターとして無茶なシガイ退治を繰り返し続けた。

そして、先日ノクトの元を尋ね、王都で起こったすべてを話し、自分にけじめをつけてほしいと言ってきた。

この対応によって、ルシス王国の中での難民たちに大きな影響を与えることになる。

王の剣がルシス王国の自営に大きな影響を与えたこともまた事実なのだから。

「ふうう…」

悩んでも答えが出ないため、ノクトはスマートフォンをいじり始める。

プロンプトの誘いによって、ノクト達が全員やり始めた『キングスナイト』というゲームだ。

普段なら注意をするイグニスだが、今回だけは見逃していて、書類の山から何かを探すふりをしてくれている。

しかし…。

「こらー!仕事中にゲームをするなー!」

「痛っ!?」

頭を殴られたノクトはスマートフォンを置き、頭をさすりながら自分を殴った女性を見る。

彼女はちょっと困った表情を見せながら、右手には方の崩れたクッキーが乗った小さな皿を持っている。

「イリス…」

「もう…せっかく疲れているノクトを元気づけようとクッキーを持ってきたのに」

「はぁ、わかった」

「クッキー、俺ももらっていいか?」

「だめだ。俺の喰う分が減る」

「ふっ、そうか…」

メガネの位置を直し、笑みを受けべる。

そして、ノクトはゆっくりとクッキーを食べ始めた。

「オヤジだったら、どうしたんだろうな…」

机の上に置かれている写真立てに入っているレギスとルーナの写真を見る。

彼はすでにあの男をどうすべきか、選択肢を絞り切っていた。

あとは、その選択をするかどうかだけだ。

「ノクト、本当にいいのか?」

ノクトの目を見たイグニスは彼から答えを聞こうとせず、ただ確認するかのように尋ねる。

幼いころからの知り合いである彼にはその選択肢がわかっているのだ。

「ああ…。イリス、クッキーありがとな」

「ノクト…。うん、また作るから」

笑みを浮かべたイリスを見つめ、ノクトも笑みを浮かべた。

 

そして、翌日…。

レスタルム展望台北西部に新しく作られた広場に多くの人々が集まっていた。

展望台だけでは入りきれないのか、駐車場や路上にも人がいて、そのため道路は交通規制がかけられた。

そして、新しい広場にはいくつか白い幕で隠されたものが列となって並んでいて、その前にはノクトとグラディオ、プロンプト、イグニス。

イリスやコルなど、ノクトの旅にかかわった人々がいる。

その1人であるシドニーの手にはシドの遺影が抱かれている。

シドはノクト達がレガリアでレスタルムに戻ったのを見送って、すぐに亡くなったと戻っていたシドニーがノクト達に伝えた。

アーデン戦役の終結、そして再び上ってきた太陽を見て、ノクト達を見送ったためか、とても満足げな死に顔だったという。

ちなみに、最近になってプロンプトとシドニーが交際を始めたとのこと。

また、元帝国軍で現在は傭兵部隊を率いているアラネアにもノクトは連絡を入れたものの、堅苦しいのは苦手だという理由で欠席した。

そして、ノクトは設置されている演説台に立つ。

「ルシス王国の皆、そして難民の皆。俺は第114代ルシス王国国王、ノクティス・ルシス・チェラム。長きにわたるアーデン戦役が終わり、こうして皆の前でこうして話すことができること、俺はとてもうれしい。そして、アーデン戦役を終えることができたのは、ここにいる皆、そして遠くへ行ってしまった人たちのおかげだ。1人でもかけていたら、きっとあの暗黒の時代は永久に続いていただろう。だから…ありがとう」

集まっている人々に向けて、ノクトはゆっくりと頭を下げる。

しばらく頭を下げた後、ノクトは演説を続ける。

「そして、俺たちがこのアーデン戦役で失ったものはあまりにも多い。父であるレギス・ルシス・チェラム。神凪の一族であるルナフレーナ・ノックス・フルーレ、レイヴス・ノックス・フルーレ。ニフルハイム帝国皇帝イドラ・エルダーキャプト。敵味方関係なく…。そして、シガイによって絶滅してしまった生物もいる。今、ここにいる皆にも、失ってしまったものがあるだろう。その中にはまだ取り戻せるものがあるかもしれない、だが…もう取り戻せないものもあるかもしれない」

ノクトを含め、演説を聞く一人ひとりが失ったもののことを思い出す。

親や兄弟、子供、恋人、恩師や友人、故郷…。

思い出している人々の中には涙を流す人もいる。

「しかし、俺たちはまだ生きている。俺たちはこれからもこの太陽が戻った世界で生き続ける。そして、もう2度とあの悲劇を繰り返さないために、そして平和な世界を築くために、歩み続けることをやめないとこの墓碑銘に誓う!」

白い幕が一斉に外される。

そこにはいくつもの石碑があり、それらにはこのアーデン戦役で亡くなった人々すべての名前が刻まれている。

帝国、ルシス、アコルド、テネブラエ、そしてそのほかの国の犠牲者の名前も誰一人差別することなく刻まれた。

ノクトは後ろに振り向き、墓碑銘に向けて敬礼する。

グラディオ達もノクトに倣う。

敬礼を終え、再び人々に目を向けた。

「だが、それを為すには俺たちの力だけでは不可能だ。皆も知っての通り、俺はルシス王家の受け継がれてきた力をすべて失った」

そのことはノクト達がレスタルムに戻った後、すぐに公表されている。

当初は国防などに心配する声が上がったものの、現在ではある程度受け入れられている。

「いや…たとえ力が残っていたとしても、不可能だということは変わりない。だから、皆にこの誓いを果たすための力を貸してほしい。ほんのわずかでもいい。ほんの一粒の砂が集まって砂漠となるように、一滴の水が集まり海となるように、微力でも集まることで巨大な力となる。その力で平和な世界を作ることが…ただ、それだけがいなくなってしまったやつらに対する供養だ!」

演説が終わり、疲れ果てたのか、ノクトはハアハアと息を整える。

そして、群衆の中から小さな拍手の音が聞こえ始める。

それに反応するかのようにまた別の人が拍手をし、さらにまた別の人もそれに倣う。

「ノクティス様ー!」

「俺の力も使ってくれー!」

「私も恋人を失いました…。彼の分も力を尽くします!!」

「このおいぼれの力でもよろしいのなら…」

ノクトに賛同する声も拍手の中から聞こえ始め、最終的に全員が拍手をする。

「みんな…」

「ノクト!!」

台から降りたノクトにイリスが抱き着き、その勢いで彼はあおむけに倒れてしまう。

「イ、イリス…!?」

「かっこよかった!さすが、私たちの王様!」

「ちょっとはマシになったんじゃねえか?」

「上出来だ、ノクト」

「けど最後にこれはかっこ悪いなー」

「るせー…ってか写真撮るな、プロンプト!!」

ノクト達の声は群衆の拍手と歓声によってかき消される。

そして、それは数分間やむことはなかった。

 

そして、とある平和な一日の王都北部…。

「爺さん。ここが俺のご先祖様の墓…?」

そこにある歴代ルシス王の墓の入り口にたどり着いた一人の青年が、真っ白な髪で左肩に盾、右肩に剣を模したエンブレムが刻まれた黒い服を着た、真っ白な坊主頭をした80代近い年齢の老人に尋ねる。

青年も老人と同じ服装をしていて、髪形はノクトと同じで、両腕にはリストバンドをつけている。

「そうじゃ、ここには100年前、世界に平和をもたらした王が眠っておられる」

懐のポケットから鍵を出した老人がゆっくりとカギを開け、扉を開く。

そこには3人の男の像と2つの棺が置かれていた。

それらの棺はそれぞれ、男性と女性を模した像のような形となっており、男性の棺の右手中指には水晶のように透き通った指輪がはめられている。

彼は歴代王子の慣例として、20歳の誕生日を迎えると同時に各地の歴代王の墓をめぐる旅に出ることになっている。

その時は父親の愛車を借り、信頼する仲間と共に各地を回る。

しかし、それ以外に渡されるのは武器と王都警備隊の服、そしてわずかな路銀(現在、王都と王都の外の通貨制度は統一されていて、共通通貨のギルが採用されているが)だけで、金を得るためには仕事を請け負う必要がある。

彼自身も、仲間と共に各地の歴代王の墓をめぐってきて、最後にこの墓にたどり着いた。

仲間を家族のもとへ帰らせ、ここには幼いころから教育係として自分を成長させてくれた老人と一緒に来ている。

「第114代国王、ノクティス・ルシス・チェラム様…。彼は星の王として、世界からシガイを消滅させた後、廃墟と化した王都を復興させ、更には王都内と外の交流を円滑化し、王都の技術を外に伝えるだけでなく、外の新しい発想を取り入れて、新たな技術革命の時代をもたらした。また、かつて父であるレギス・ルシス・チェラムを殺した王の剣の罪を許し、王の盾と王の剣を統合した新たな部隊である王の騎士を作り、ニフルハイム帝国によって滅ぼされた国々の復興にも力を入れ、奪われた領土も取り戻した。それと同時に、たとえ一般市民であっても、実力があれば重役として取り立てることができるシステムを作り上げた」

「で、その第1号が…この人かい?」

銃を持った男の像、プロンプト像に青年は指をさす。

彼はルシス王家直属の技術開発部に入り、障壁に代わる新しい国防のシステムの構築に尽力した。

そして、引退後は王都を出て、妻と共にハンマーヘッドで商売をする傍ら、未来の科学者たちの指導に取り組んだ。

グラディオは王の騎士の2代将軍となった。

初代であるコルの指名という形だ。

ルシス国民と難民の混成部隊をまとめ上げ、新しい国防の歴史の1ページを刻み、復興した国の軍事指導のために各地を飛び回り、生涯現役を貫いたという。

イグニスは宰相となり、常に王のそばで献策し続けた。

また、引退後はレストランを開き、アーデン戦役中に知り合い、結婚した一般市民と共に、孫や近所の子供に料理を教え、ささやかだが幸福な日々を過ごした。

「レギス王の時代まで、王は障壁を張るために命を削っていたことは知っておるね?」

「はい」

「だが、ノクティス王は星の王としての務めを果たすと同時に、歴代王家の力を失った。そのおかげか、彼はこれまでの王の中では最も長生きな84年の大往生を遂げ、そしてこれまで不可能であった息子への譲位まですることができた。そして、ノクティス王の隣で眠るのは…」

「イリス・アミスティア・チェラム…ですね」

そっと彼女が眠る墓を青年は撫でる。

彼女はアーデン戦役終結から3年後に結婚し、夫であるノクトの王としての仕事を陰で支え続けた。

夫の死後は彼の生涯を本にまとめ、90歳で愛する彼のもとへ旅立った。

そして、ノクトの墓の指輪に目を向ける。

「じいさん、どうしてノクティス王だけ、ファントムソードが武器じゃなくて、指輪なんですか?」

「彼は終生、他者とのつながりを大切にしてきた。本来なら王だけが眠っているこの墓に、妻と共に眠っている…。それ自体、当時は異例の話じゃった。そして、兵士の彫刻を多く掘るのではなく、共に戦った3人の仲間の像を3つ置かれた。彼らに守られたほうが安心して眠ることができる、といってなぁ」

懐かしそうに笑いながら、老人はタッパーを開け、その中にあるお菓子を青年に渡す。

それは幼少期にノクトがテネブラエで食べた、あのお菓子だ。

「ノクティス王は生きている人だけでなく、死んだ人との絆も大切になさっておった。特に父親や最後の神凪であらせられるルナフレーナ様に対しても…。このお菓子を食べるときは、いつも2人のことを思い出すとノクティス王はおっしゃっていた」

「そっか…。確か爺さんは…」

青年は彼が老年のノクトの時代から王家につかえているということを思い出した。

老人はノクトの息子の友人となり、そして彼の子供と孫の教育係となった。

そして、孫がこの青年だ。

「ノクティス様は世界を救うだけでなく、ルシス王国の新たな基礎を築き上げた。それも、多くの人々と力を合わせることで…。じゃから、ノクティス様のファントムソードは武器ではない。人との絆を象徴する指輪、絆王の指輪なのじゃ。ヴィーテ・ルシス・チェラム」

「絆…か…」

指輪をじっと見た後、ヴィーテと呼ばれた青年は出口の前に立つ。

「…。パーチム・ハスタ爺さん。俺…ノクティス王のような王になりたい」




かなり駆け足になりましたが、Alternative Ending Final Fantasy XVの本編はここまでになります。ここからいろいろとサイドストーリーをかいてみたいと思っています。まだまだ未回収の設定もありますので…。

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