pixivの方であげた短編小説です。

至らぬところが多いと思いますが
温かい目で見て頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

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授業終えると突然結衣に呼び出され
屋上に向かう八幡。
そこで彼女から衝撃の言葉を浴びせられる..


「ずっとヒッキーのことが好きでした」

「ヒッキー、ちょっといい?」

 

 

授業が終わって、ようやく昼休みに入ろうとして机を立った時、

由比ヶ浜がふと隣に来て声をかけてきた。

なんだよ..これからお昼&お昼寝タイムに

入ろうとしていたのに...

 

「なんだ?手短に頼む」

 

「うん..あ、でも短くってのは無理かも」

 

「そんなに長くなりそうな話なのか?」

 

「うん..てかここじゃ言いにくいから

場所変えてもいい?」

 

由比ヶ浜が顔を赤くしながらチラっと横を見る。

おいおい...そんな顔したら

すでに殺気立っている男子共の目線が

さらに激しくなるのでやめてくれ。

このままだと視線だけで俺、殺されそうだ。

 

「わかった..じゃあどこいく?」

 

「屋上でいい?」

 

「部室じゃダメなのか?

どーせ雪ノ下しかいないだろうし」

 

「うん..てかゆきのんに聞かれるのが

一番まずいかも..」

 

 

何で聞かれるのがまずいのかは分からないが

とりあえず気にしたら話が進まないので、

代わりの場所を指定することにした。

 

「じゃあ屋上はどうだ?あそこなら誰も来ないし平気だろ」

 

「それ私が先に言ったじゃん!」

 

あれ?そうだっけ?すでに眠気が半端ないからごめんね。

 

 

「まあいいや、先行ってて。ちょっと寄るとこあるから」

 

「わかった、じゃあまた」

 

「うん、あとでね」

 

由比ヶ浜は告げ終わると、すぐに教室から出て行った。

忙しそうだな、あいつ。

さて、俺もこのままいるともう視線やら嫉妬やらで

居心地悪くて気持ち悪い。

 

とっとと消えるとしよう。

 

 

 

 

× × ×

 

 

屋上に着くと、やはり誰もいないため

俺はそのまま横になった。

日差しがちょうどよく当たるし風も強すぎず弱すぎずと

ベストな感じで気持ちいい。

 

 

「ヒッキーお待たせ」

 

そんな気持ちよさもあっという間だった。

後ろから由比ヶ浜の声が聞こえ、

起き上がると由比ヶ浜が立っていた。

てかめっちゃ汗かいてるし、息あがってるけど大丈夫か?

 

「ごめんね、いきなり呼び出して」

 

「いや。それで話ってなんだ?」

 

「...ヒッキーは誰が好きなの?」

 

「..は?」

 

唐突に言われた爆弾発言はかわすことが

できず、発した本人は顔を赤らめて、こっちを

チラチラ見ている。

 

「いきなりなんだ」

 

「いや...どうしても聞こうと思ったから」

 

「だからって何で今、聞くんだ?」

 

「その...今じゃなきゃダメだから」

 

 

なんで今なんだ?

わからないけどひとまず好きな人は

まずいない、よしそのまま言えばいい。

 

「何考えてるか知らんが今は好きな人いない」

 

「本当?ゆきのんとかいろはちゃんとか

好きじゃないの?」

 

「いやあいつらはなんつーか..うまく言えないけど..その..」

 

友達..いや雪ノ下には断られているからそれはないな。

一色は...後輩、それでいいな。

雪ノ下はなんて表せばいいんだ?知り合い?部活仲間?

そんな困惑した俺を見て、由比ヶ浜が微笑みながら

一歩、一歩と俺の方に歩み寄ってきた。

 

「な、何?」

 

「....ヒッキー、私、言いたいことが」

 

 

「待て、ちょっと待て」

 

 

この流れはもうあれだな。

いやもしくはドッキリでしたと看板を持った

雪ノ下がいるのか?

もしかして先、言っててってそういうことか?

いや、そんなことはしない...よね?

 

「ヒッキー?何考えてるか知らないけど

そんなことしないよ」

 

「お、おう」

 

どうやら考えが読まれてしまったようだ。

考えれば3年になっても同じクラスで、もう一年半以上の

付き合いになる。そんだけいればある程度考えていることとかも

わかってくるものだろう。

 

「あのさ...ヒッキーにはずっと言いたかったけど

 

なかなか言い出せなくて..でも!今日言わなかったら

一生後悔するから言わせてほしいんだ、だから...聞いてくれる?」

 

上目遣いで俺の方を見ながら、不安そうな顔の由比ヶ浜の問いを

断れば、あとから雪ノ下からどんな罵倒を受けるかわからない。

 

「わかった」

 

覚悟を決めて、俺も由比ヶ浜の目を見る。

どういう返事を答えるかわかんないし、俺が期待してるようなことを

言うと決まったわけじゃない。

でも、色々ありながら奉仕部はこれまで3人の関係を

保ってきた。それを壊すような形にはしないことが、俺にできることだろう。

 

 

さて、それじゃ聞くとしようか。

 

 

 

 

「...ずっと...ヒッキーのことが...好きでした」

 

「...ああ」

 

 

それから由比ヶ浜から何も言葉を発しなかった。

ただ沈黙とした空気が俺たちの周りを包む。

えーと...何か言えばいいのか、これ。

 

 

「...それだけ!じゃあね、ばいばいヒッキー」

 

 

それだけ言うと彼女は出口に走って行き、

俺の視界から姿を消した。

俺はただ唖然としてその場に立っているしかできなかった。

 

けど、なぜだろう。

彼女が走り際に、涙を浮かべていたのは気のせいだろうか。

 

 

 

 × × ×

 

 

「よう」

 

「...来たのね」

 

「なんだ、俺が来ちゃまずいのか?」

 

「いえ、むしろ来てくれて助かったわ。

あなたに聞きたい事があったの」

 

 

放課後になり、部室に入った途端、雪ノ下から

意外な態度を見せられ困惑する。

今日は...どうしたんだ?一体。

 

「あなた、由比ヶ浜さんの告白を受けたそうね」

 

「おい、ストレート過ぎるぞ」

 

「今更回りくどく言う必要もないでしょう」

 

 

どうやらすでに雪ノ下には連絡済みなのね..しばらく弱みとして

色々と利用されそうだ、つか何かいつもと違って、何でそんな

寂しそうな顔してるんだ?

 

「何て答えたの?」

 

「答えるも何も...好きとしか言われなかった。

それだけ言ってあいつ消えるし、

しかも午後の授業にあいつ出ずに帰ったらしいし」

 

「...やはりあなたには言えなかったのね」

 

「何がだ」

 

雪ノ下は視線を俺の方から窓に向け、

思い更けるように口を開いた。

 

「由比ヶ浜さんは転校するのよ」

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

由比ヶ浜が転校...?

 

「信じられないでしょうけど、お父様の仕事の都合で

地方に引っ越すことになるらしいわ」

 

「え、ちょっと待て。そんな...急すぎないか?」

 

「急ではないわ。

私は1ヶ月前に彼女から聞かされたの」

 

「は...あいつ、俺には一言も..」

 

「...あなたには黙ってほしいと言われたわ。

いつも通りの私でいたいから..もし言えば..

きっと離れたくなくなるからと..」

 

 

 

何でだよ...

 

何で...

 

 

「...ずっと...ヒッキーのことが...好きでした」

 

 

..好きでした?

 

 

 

「由比ヶ浜さん..

あなたに告白する前に私のところに来たのよ。

そして..頼まれたわ」

 

「頼まれた..?」

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「ゆきのん、やっはろー!」

 

「由比ヶ浜さん...こんにちは」

 

「..ゆきのん、私、言ってくるよ。

これが最後だから..これで終わりだから」

 

「..わかったわ。ちゃんと..悔いのないようにね」

 

「うん...あのさ、ヒッキーと仲良くしてね。

私がいなくなっても、ゆきのんがいればきっと

ヒッキーはゆきのんと一緒にいてくれて、

笑ったり、喧嘩したり..困ったら助けてくれるから」

 

「...どうかしら..私と彼は..友達でもないし」

 

「それでも..助けるよ。

ヒッキーはいつだって私達を..みんなを助けてくれるから」

 

 

「由比ヶ浜さん..」

 

「..泣かないでよ、ゆきのん。

ゆきのんはいつもらしくカッコイイままお別れしたいから

だから..泣かないでよ」

 

「..でも..あなたがいなければ...」

 

「大丈夫、ゆきのんは一人じゃないから。

だから..安心して、じゃあね!ゆきのん」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「...彼女はあなたのことが好き。

けど、もうあなたの近くにいることが

できないから、最後に思いを伝えたかったのよ」

 

「...雪ノ下、俺は...」

 

 

「...あなたはどうしたいの?」

 

 

俺がどうしたいか。

俺は...

 

 

× × ×

 

 

 

 

部活が終わり、家に帰るなり俺はベットに飛び込んだ。

現実から逃げたくなる時は一人になるしかない。

 

 

由比ヶ浜がいなくなる。

俺、いや俺と雪ノ下を何度も救ってくれた由比ヶ浜結衣。

その彼女がいない日常なんて..考えられない。

 

 

 

「お兄ちゃん、入るよ」

 

 

ノックと共に部屋の扉が開き、小町が入ってきた。

小町は俺の様子を見た途端、深くため息を吐いた。

 

「雪乃さんから全て聞いたよ..」

 

「そうか..なあ、小町、俺はどうしたらいいんだ?

俺はやっぱり..会うべきなのかな..

あいつの想いに気付けなかったのに

会わなきゃだめなの」

 

言葉を言いかけた途端、小町は俺の頬を思いっきり引っ叩いた。

 

「痛..!」

 

「馬鹿じゃないの!そんなのわかってんでしょ!?

お兄ちゃんがそういう態度を取ってる時点で、結衣さんと

離れたくないってことじゃん!そんなにいじいじしていても

何も解決しないよ!」

 

小町は言い切ると..目に涙を浮かべ、俺を見下ろしていた。

全く...俺はいつもそうだ。

誰かに言われなきゃ気付けないし、動かない。

どうしてそうなんだろうな..情けないよ、ほんと。

 

 

 

「...」

 

「...あとはお兄ちゃんが考えなよ。

あと結衣さんは明日の飛行機で行っちゃうらしいから

会いに行くなら早めにいったほうがいいよ」

 

 

言い終えるとそのまま振り返って部屋を出て行った。

 

再び沈黙とした時間が流れる。

会いに行くのは簡単だ、けど俺はあいつの気持ちに

どう答えればいい?

あいつはもう俺のことを好きだったと過去として

割り切っている。

それを今更、現実に引き戻すのか..俺は..

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

考え込んでいたらいつの間にか寝てしまい、

時計を見ると時刻は午前4時を指していた。

 

 

 

答えは出てない。

けど、行かなければ後悔する。

俺は急いで着替え、コートを羽織って外に出る。

しかし、

 

「何だよ、これ..」

 

 

 

不幸という言葉が本当に似合う。

今日の天気予報は大雪で、すでにあたり一面雪で真っ白だった。

当然、交通機関も麻痺している可能性があり

間に合うかわからない。

それに由比ヶ浜が何時の便に乗るかも聞いてないし、

呆然とする他なかった...いや

 

「とにかく行くしかないだろ..」

 

 

決意がついこぼれるくらい、俺は今、由比ヶ浜に会いたい。

会って..話したいんだ。

答えはまだ見つかってないけれど..それでも会いたい、あいつに。

俺は携帯を取り出して、電話帳から名前を見つけるとコールボタンを押す。

電話の相手はすぐに出てくれた。

 

 

「...何だ、比企谷」

 

「先生..すいません、その..」

 

「..君のことだから連絡は来ると思ってたよ。

この大雪だがまだ道路は大丈夫だ、もうすぐ君の家の近くに

着くから乗りなさい」

 

「はい、わかりました....先生、あの」

 

「話はあとで聞く」

 

そう言って電話は切れた。

そのすぐ後に先生の車は現れ、俺が乗った途端

一気に空港に向けて走り出した。

 

 

「雪ノ下から言われてたんだ、

比企谷には由比ヶ浜のことは秘密にしとけと。

ただ、彼が助けを求めれば助けてほしいとな」

 

「そうか..あいつが..」

 

帰ってきたらちゃんと感謝の言葉を

言わないとな..。

その為にも今は急ぐしかない。

 

「さてと..少し飛ばすか」

 

「え、あの..そんなに無理は」

 

「無理はしないと間に合わないだろう。

ちゃんと法定速度は守るから大丈夫...さ!」

 

 

そう言ってアクセルを踏み、車は一気に加速した。

いや..運転少し荒くないですか、先生..

 

 

 

 × × ×

 

 

「着いたぞ、早く行け!」

 

「ありがとう..ございます..」

 

とても車酔いしたなんて言える状況では

ないので俺はそのままロビーの入口に入る。

おそらくこの雪のせいで多少は遅れているはずだ。

時刻は六時三十分。

まだ飛行機が離陸する時間帯じゃないと思われる。

 

どこだ...どこにいるんだ..

 

 

 

 

 

「ヒッキー...?」

 

 

その声は聴きなれた声だった。

けどその声を聴きたかった。

俺は振り返ると、そこには..

そこには由比ヶ浜結衣が立っていた。

 

 

「由比ヶ浜..」

 

「何で..ここに..」

 

驚きの由比ヶ浜と

少し後ろでその様子を見守っているのは

由比ヶ浜のお母さんだ。

 

「..じゃあママは手続きしてくるから

結衣はヒッキー君と話してなさい」

 

そう言って、スーツケースを引っ張って、

手続きの窓口の方へと向かって行った。

 

「..なんでここにいるの?」

 

「..俺がお前と会って話したかったからだ」

 

「私はもう..ヒッキーと話すことなんてないよ。

だから、帰って」

 

「お前がよくても俺があるんだよ」

 

「何で..ヒッキーとはお別れしたはずだよ?

なのになんで..なんで来ちゃうの..」

 

ぽろぽろと涙が落ちる由比ヶ浜の顔を

直視するのは難しかった。でも目を逸らしてはいけない。

 

「..お前は俺の事を好きだったって言ったよな?」

 

 

「..うん」

 

 

「そのことに関しては謝りたい。

俺はずっとお前の気持ちに気付けなかった..

いや気付いていないふりをしてたのかもしれない。

もしそれを受け入れて、答えを出せば

俺達の関係が壊れてしまうかもしれないから」

 

「..うん、でもヒッキーは

私達の為に答えを出そうとしなかったんだよね..」

 

「..ああ、お前達の為でもあるし自分があの場所を

壊したくないから出さなかったかもしれない。

 

正直、今だってどう答えればいいかわからない。

だけど..だけどそれを伝えないでいるのは

違う..違うんだ!」

 

自分の吐く息の音が大きく聞こえる。

由比ヶ浜は目に涙を浮かべながら、今にも

泣き崩れそうな顔でこっちを見ている。

 

「..ずっと向こうにいるのか?」

 

「わからない..また転勤になれば

こっちに帰ってくるかもしれないし..

ずっと向こうかもしれない」

 

「そうか..なら今度は俺が行く」

 

「え?」

 

「答えを出せるようになれば

俺がお前にそれを伝えに行く。

だから..それまで待っててくれないか?」

 

「え..でも..」

 

困惑した由比ヶ浜だがどうやらタイムリミットのようだ。

手続きを終えたお母さんがこちらに来て口を開く。

 

「結衣、そろそろ行くよ」

 

「ママ..で、でも..」

 

「..行って来い、必ず行くから」

 

由比ヶ浜を俺の顔を見て一歩ずつ近づいて

俺の肩に顔を押し付ける。そして両手を俺の首に巻いて

強く寄り掛かる。

俺はそんな彼女を自分の手で強く抱きしめる。

 

 

「..待ってるから、絶対」

 

「ああ..待っててくれ」

 

 

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 

 

 

 

「..うう、寒い」

 

 

大学一年目の冬が訪れようとしている11月。

この日は久々の大雪だった。

俺は待ち合わせの場所に急ぐべく、

駅から少しでも小走りで向かうが

雪が靴の中に染みてきて、思うように走れない。

それにしても寒いな...

そんな思いをしつつ、待ち合わせの場所に着くと、

そこには彼女が自分の息を手にかけて温めていた。

 

「悪い、待たせた」

 

「あ、大丈夫..私も今来たところだから」

 

 

嘘着け。コートにも少し雪がかかって

震えてるじゃねえか。

全く..何で俺はこういう時ぐらい早く来れないんだろうな、俺。

 

 

「..ずいぶん待たせたな、悪い」

 

「ううん、ちゃんと考えてくれてたんだね。

ゆきのんからもずっと悩んでたって聞いてたし」

 

「..ああ、なかなか答えが出なくてな..」

 

「じゃあ..聞いていい?ヒッキーの答え」

 

 

俺はすうっと息を飲む。

そして目の前にいる...俺が好きな女の子に向けて口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「....由比ヶ浜、おれは..お前の事が好きだ。

俺と付き合ってほしい。

過去じゃなくて..これからお前と一緒にいたいんだ」

 

 

そう言って俺は手を伸ばす。

由比ヶ浜結衣はその様子を見てニコっと笑って、答えてくれた。

 

 

 

 

「うん..私もヒッキーのことが好き!」

 

 

 

 

今年の大雪はいつにもまして早い。

でも恥ずかしくて赤くなってくれた俺達を

冷ますのにちょうどいい雪だった。

 

 

 

 

 





遅くなりました。
まだまだ至らぬところがございますが
よろしくお願いします。


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