『サタン様、ビーデル御嬢様行ってらっしゃいませ。』
「ああ、行ってくる。」
「みんな行ってくるね。」
サタンとビーデルは家の前に並んだ門弟たちに見送られ天下一武道会に向かった。
天下一武道会はパパイヤ島の武道寺で行われる世界一の武道会である。第21回までは5年おきに、22回からは3年おきに行われてきた。しかし23回に何らかの事故があり武道会が行われた町まるまる一つ破壊されそれにより武道会が行われることはなくなっていた。
今回は武道会場が新設されたことにより再開されることになった。そして再開されるにいたって目玉選手として、無差別級格闘技の王者ミスターサタンが参加することになった。
「おい、ミスターサタンがやって来たぞ。見に行こう。」
サタンが会場に到着すると同時に人だかりができる。
観客であったり、報道陣であったりだ。
「ミスターサタン今日の意気込みをお願いします。」
報道陣の問いかけと共に、なん十本ものマイクがサタンに向けられる。
「皆さんが熱狂できる戦いをお見せしよう。」
『ウオーーーサタン、サタン、サタン。』
サタンが若干押さえぎみに話すだけでもどこからともなくサタンコールが沸き起こる。サタンが天狗になるのも頷ける状態である。
「私はこれから準備があるのでな、インタビューはここまでだ。サインなら私が優勝したあとに皆にしてあげよう。さらばだ。」
サタンがそう言い、去っていく。報道陣は追おうとするが係りの僧に止められその場は収まった。
その後はつつがなく進んでいった。
サタンがパンチングマシンで139を記録し本選出場が決まった。(ブウは触れるだけで500を記録したが壊れているということで記録にはならず)
その後行われた少年の部でもビーデルが優勝した。
「パパ、カーシさん見ててくれた。私優勝したよ。」
ビーデルは満面の笑みを浮かべてサタンとカーシの元に走ってきた。
「よくやったぞビーデル。さすがわしの娘だ。わしもこれ以上ないくらい嬉しいぞ。今度はわしの番だ、応援頼んだぞビーデル。」
「ほんとによくやったぞビーデル。」
サタンはビーデルをべた褒めし、頬擦りをし、カーシは頭を撫でている。
「パパ優勝してね。カーシさんが二位でね。」「わかった任せてくれ。行ってくる。」
「任せておけ。」
サタンとカーシは本選会場に向かった。
――――
「第24回天下一武道会を始めたいと思います。」
天下一武道会といったらこの人、サングラスをかけ、背広を着たアナウンサーが開会の挨拶をする。
「新しい会場の幕開けに館長から一言挨拶をお願い致します。」
台に乗る犬の館長。緊張感により会場が静寂に包まれる。
館長がゆっくりと口を開く。会場の観客が固唾を飲んで見つめる。
「ワン」
「ありがとうございました。」
観客すべてが転けた。お決まりのイベントがあり、本選の幕が降ろされた。
「本選出場者は16名、事前に行われた籤引きで対戦相手は決まっております。」
アナウンサーが対戦表が用意されたことを確認し、読み上げる。
「第一回戦ミスターサタンVSスポポビッチ。」
「いきなりサタンかよ。すげえな。」
サタンの名がでた瞬間会場はヒートアップする。
アナウンサーの声がかきけされるほどだ。
「第8回戦カーシVSヤムチャ」
「悟空がいない天下一武道会なんて楽勝だぜ。毎回一回戦敗退なんてことはもうない。1000万ゼニーもいただきだぜ。」
意気込むヤムチャは勿論あとで地獄を見ることになる。
この対戦相手は全てカーシが超能力で決めたものである。サタンがスポポビッチと戦いたいと言ったことと、サタンとは決勝までカーシと当たらないようにしたこと、飛び抜けた強さを持つヤムチャを即敗退させる等の思惑が存分に込められた物となった。
(これからスポポビッチとの戦いか。前までであればビーデルの仇としてスポポビッチを還付なきまでに叩きのめしていただろう。しかしわしは晩年になり気づいたのだ。わしがスポポビッチを簡単に倒したあとヤツをさらに言葉で傷つけてしまった。それによりヤツは強さを求め非道の道を進んだのだ。わしはここでビーデルが傷つく未来をなくして見せる。)
ミスターサタンは覚悟を決めて武舞台にあがった。
会場は沸き上がっているが、サタンは全く気を許していなかった。
「スポポビッチ君、お互いの全力で良い試合にしよう。」
「あ、ああ。(サタンは驕り高ぶったヤツだと思っていたが、イイヤツみたいだな。)」
サタンへの印象が上がり掴みは成功した。
太鼓がならされ始めた。
「第一回戦始めてください。」アナウンサーの声とともにドラが響き渡った。
「はっ。」
サタンは構えをとる、いたって真剣な。以前の戦いではバカに仕切った態度で、力の差を見せつけるようにおちょくりながら倒したのだが今回は違った。
(サタンは真剣だ。俺にたいして全力できてくれる。俺もそれに答えねば。)
スポポビッチはすでにサタンとの間には天と地との差があることは悟っていた。しかしそんななかでも本気できてくれるサタンに感謝しながら答えなくてはならないと思い始めていた。
「うおおーー!!」
スポポビッチはサタンに突進する。大きさではスポポビッチのほうが遥かにデカイがスポポビッチにはサタンがとてつもなく大きく見えていた。
サタンも避けることなく真正面から相手をする。
「ふん。」
スポポビッチの突進を両手で受け止める。
「素晴らしい突進だ、こちらもいかせてもらうぞ。」
サタンの渾身の正拳突きがスポポビッチの腹にめり込んだ。
スポポビッチの体が崩れ落ちる。すでに意識がとんでいた。
「スポポビッチ選手戦闘不能、ミスターサタンの勝ちです。」サタンの勝ちが宣言されると会場は沸き上がりサタンコールが鳴り響く。
その横でスポポビッチが担架によって運ばれていった。
スポポビッチは後に目を覚まし、自分が負けたことを知ったが顔には悔しさなど微塵もなく、満足仕切った顔であった。
会場を去るときにも清々しい顔をしてサタンのサインを買って帰っていったという。
ビーデル大怪我フラグはサタンによって処理され、スポポビッチも死ぬことはなくなった。
サタンの戦いは清々しいものであったが、そうでないものもあった。
そう第8回線である。
この時点の悟空を遥かに越えた力を持つカーシとあたってしまった(目をつけられ仕組まれてはいたが)のが運の付きであった。
「変な気をしているが俺の敵じゃないな。狼牙風々拳。」
常人では消えたと思うほどのスピードでカーシに向かっていく。
「ハイ、ハイ、オー。」
ヤムチャの拳がカーシの体にめり込む。カーシはサタンと同じ胴着であるのでヤムチャの拳がめり込んでいるのは見えていないが、ヤムチャは確かに手応えを感じていた。
「万年一回戦敗退とはもう言わせないぜ。」
ヤムチャは興奮して拳をふるい続けた。
「ハア~ア。ほい。」
「ぶあ~~~ぁぁぁ………」
大きなアクビをし、伸びをし、カーシはヤムチャに楽しそうにデコピンをした。その途端とてつもない速さでヤムチャは遥か彼方に飛んでいった。
「あ…。えーと、ヤムチャ選手はふっとんでしまいましたが。私の記憶ではヤムチャ選手は空を飛べますので帰ってくるかもしれません。ということで少しヤムチャ選手を待ってみましょう。」
アナウンサーが制限時間の30分をまったが当然ヤムチャが帰ってくることはなかった。
24回の天下一武道会はスポポビッチ、プンター、ジュエールしかいなかったのでヤムチャ特別参戦です。ひどい扱いですが、私はヤムチャは好きですよ。