第二回戦が始まるまで休憩時間が取られた。
「おら腹減っちまったぞ、みんな飯食いにいかねえか。」
怪獣の鳴き声のような大きな音が悟空から聞こえ、それと共に悟空がお決まりのことを言い出す。
「いつも思うが、よく戦いの前に食べれるな。ほんとお前の腹には感心するぜ。」
クリリンは呆れながら悟空に話す。
「さっさと行くぞ。」
「父さん待ってください。」
食堂に向かっていくベジータを追ってトランクスもついていく。
「おベジータは行っちまったぞ。クリリン、悟飯、ピッコロ、天津飯も行こうぜ。」
「あ、僕はいいです。」
「俺は水だけでいい。」
「孫先に行っていてくれ。
チャオズや武天老師様やヤムチャも連れてくる。」
それぞれがそう答え、各々食堂に向かっていった。
「なあ悟空、やっぱり悟飯とピッコロピリピリしてるな。なんたって師弟対決だもんな。戦いづらいだろうな。」
クリリンが少し哀れみの隠った感じで悟空に話す。
しかし悟空は
「でえじょうぶだ。悟飯もピッコロも戦いになればそんなことも気にならなくなる。
それに、悟飯は戦いづらそうだが、ピッコロは嬉しそうだぞ。」
「ええっ、そうか。かなり険しい顔してるぞ。」
「おらには分かるメチャクチャワクワクしてるぞ。」
ピッコロの心中はピッコロにしか分かることはない。だが長い付き合いの悟空には何かしら感じるものがあるらしい。
そして、第二回戦の前に食堂でサイヤ人達が、大激闘を繰り広げるのだった。そしてあっという間に第一回戦が始まる時間が訪れた。
既に舞台で悟飯とピッコロが向き合っていた。
共に険しい表情をしているようにも思われる。
「第一回戦、ピッコロ選手VS悟飯選手、始めてください。」
アナウンサーの声で戦いの火蓋が切って落とされた。はずだった。
「悟飯よ。」
「はい、ピッコロさん。」
戦いの前に始まる会話、しかしながら会場の誰にも聞かれることはない。
騒がしいからではない、念話であるからだ。
会場の者には黙って見つめあっているようにしか見えない。
「俺は成長したお前の力を身を持って知る機会を与えられたことを感謝している。
お前は戦いはあまり好まないから嫌かも知れないが、俺は全力のお前と戦いたい。弟子が師匠を越える所を見せてくれ。」
「はい。僕はピッコロさんが対戦相手だと決まった時はどうしようかと、ずっと悩んでいました。ですがピッコロさんの話を聞いて僕も自分の成長した姿をピッコロさんに見てほしい。
だから全力でいきます。」
念話が終わるとピッコロと悟飯は共に清々しい笑顔になる。
ピッコロはターバンとマントを脱ぎ投げ捨てる。
地面にめり込む様子を見て観客達が騒然となる。
「はああああっ」
悟飯が気合いと共に力をいれる。
悟飯身体から黄金のオーラが溢れだし、髪が金髪に、そして瞳は碧に染まる。
それでも悟飯は気を上げることをやめない。
次第に会場が地震でもあるかのように揺れ始める。
観客が慌て始めるが、悟飯は気にする様子もない。
「行きますピッコロさん。」
「こい、悟飯。」
その会話が終るときには共に姿が消えていた。――――
会場のVIPルームではビーデルがその戦いを真剣に見つめていた。
自分と同年代の少年がどのような戦いをするのか興味津々だったからだ。
そして少年の変化によってより引き付けられることになる。
悟飯が超化し、金髪になった時である。
「あの子、どっかで見たような。思い出せない。」
最初に悟飯に対して思ったのはこれであった。
後に高校で合う前にこの大会でビーデルと悟飯が仲良くなるのはまたさらに後の話になる。
――――
「わたわたわたわたーっ」
「だだだだだあっ」
ピッコロと悟飯が点滅を繰り返しながら攻防している。
ピッコロが拳をつき出せば、悟飯が腕でガードし、次の瞬間には、悟飯が膝蹴りを行いピッコロがそれを腕でガードする。まさに攻撃と防御が目まぐるしく変わる戦いである。
「うわっ、すげえ戦いだな。」
「まだまだ二人ともあんなもんじゃねえぞ。」
クリリンが二人の戦いに驚いているが、悟空はさも当然といった様子で見ていてまだまだ二人とも本気ではないという。
つくづく力の差を見せつけられることになったクリリンであった。
しばらくは、轟音と衝撃波が会場に轟きながらも、互角の戦いをしていた二人であるが、少しずつ戦況が変わってくる。
「くっ」
「わたーっ、わたたたーっ」
ピッコロの連打が悟飯に掠り始める。
悟飯はピッコロの一方的な攻撃を掻い潜り攻勢に出る。
しかしピッコロには既に読まれていた。
悟飯の拳に合わせピッコロがカウンターを放つ。
当然リードに大きな差があるためにピッコロの拳が悟飯の顔面に深く捉えていた。
その衝撃はとてつもないもので、悟飯は耐らされず落下し、床にめり込み砂煙が巻き上がる。
「はあはあ(ピッコロさん強い。)」
悟飯はピッコロの強さに驚く。
ピッコロがゆっくりと舞台に降りてくる。
その表情は冷めきったものであった。
戦いの前には嬉々としたものがあったが、今は失せて対極のものが表情に表れていた。
「かなり鈍ったな悟飯。攻撃にきれが全くないぞ。はっきり言ってガッカリだ。
セルゲームの時のお前の方が断然強かったぞ。」
悟飯は悟空と1週間に渡って修行を続けていたが。感覚を取り返すことはできなかった。
気の大きさはさほど変わりはないが、実践勘というものをほとんど失っていたのだ。
「悟空のことだ、かなり甘い修行だったのだろう。
すぐに俺が勝ってしまっても面白くない。久々に稽古をつけてやろう。」
「えっ」
ピッコロは楽しそうに歪んだ笑みを浮かべる。
悟飯は本能的に、今までのピッコロとの修行を思いだし、背筋に冷たいものを感じ身構えるが遅かった。
ピッコロの扱きという名の地獄が悟飯を襲うのだった。
劇場番ではいつも悟飯に甘々のピッコロさんですが、今回と次回は違うのかなということになります。