「すぅ……すぅ………」
爛は自分用の寝室にて、体を休めて眠っていた。
だが、後ろの方から、物音が聞こえてくる。
「んむぅ……香姉?」
寝惚けながらも、後ろから物音がした方に顔を向け、その音を出した人物の名を言う。
「あ、起きちゃったんだ。ごめんね?起こす気はなかったの」
物音をたてた人物は香だった。
香は謝りながらも、爛の布団の中に入る。
「待った。何で入ってくるの?」
爛は香の方を向き、尋ねた。
「何でって。そんな事言わないでよぉ」
香はしゅんとした顔でそう言うと、爛は溜め息をつきつつ、香から顔を背ける。
「何でこっちに顔を向けてくれないの?」
香は尋ねるが、爛は何も答えない。
「むぅ~。なら、こうしよっと!」
すると、香は爛を背中から抱きつく。
「か、香姉!」
爛は顔を赤くさせ、離れようとするが、力がとても強く、離れることができなかった。
「撫で撫でもしてあげる~♡」
香はそう言うと、爛の頭を撫で始める。
「あぅ……」
爛は香の手のちょうどいい暖かさに大人しくなる。
「ふふふ、可愛いっ♡」
「あぅぅ〜……」
何も言い返すことができない爛は、香にされるがまま。
香はそんな愛しい弟を可愛がり続けるのだった。
「因みに余談ですが、お姉ちゃんは愛しい爛からの夜這い希望ですよ?」
「ちょっ!香姉!」
耳元で囁くように言ってきたのを聞いてしまった爛は、顔を赤くさせて香の方を向く。
「もらい!」
そう言うと、こちらを向いた爛を思いっきり抱き締める。
「香姉、そんなに力強く抱き締めなくても……!」
「だって、爛がこっちを向いてくれないからでしょ!」
香は爛が自分の方を向いてくれないため、そっぽ向かれないために、力強く抱き締めていた。
「……分かった!分かったって!」
爛は折れて、香にそう言った。
「えへへ~♪じゃあ、爛もギュッてしてくれる?」
嬉しそうな表情で香はそう言うと、爛は何も言わずに抱き締める。
「これで満足なのか?香姉」
「うん!」
爛が香に尋ねると、満足そうな顔でそう言ってきた。
「………………」
爛は悩んでいるような顔をしている。
「どうしたの?」
「あ、いや。最近、六花たちに会ってないから、どうしてるのかなぁ、と」
爛がそう言うと、香は不満そうな顔をする。
「むぅ……」
「ど、どうしたの?」
爛はどういうことなのかが分からずに、驚いた顔をする。
「……私が居るのに、何で他の子のことを考えるの?」
「か、香姉?」
低い声でそう言ってきた香に、爛は驚くしかなかった。
「何で?何で私のことを見てくれないの?どうして?魅力がないから?六花ちゃんたちの方が魅力があるの?あのときにいってくれたのは嘘だったの?それとも興味が私にはなかったの?爛を満足させることができなかったの?不満があったの?見捨てるの?私から離れていくの?自分が満足してただけだったの?もしそうなら私はどうすればよかったの?ねぇ、爛。教えてよ。私はどうすれば爛とずっとずーーーーーーーーっと一緒に居ることが出来るの?教えて?私わからないから教えてもらえないと何もできないの。こんなに爛を愛しているのに、爛に見捨てられたら私、生きていくことなんて出来ないの。だからお願い。六花ちゃんたちじゃなくて、私を見て。私だけを見つめて。私の声だけを聞いて。私のことだけを愛して。私だけを触れて。そうしてくれたら、私は何だって出来るの。愛してくれている爛のためなら、私は何だってするの。命だって捧げることが出来るの。だって、爛の一番が私だって言うんだったら、私はそれだけでも嬉しいの。私、爛を触れるの好きなんだよ?私だってずっと爛のことしか眼中にないし。真っ黒な髪の毛。真っ直ぐな瞳。微笑む顔は可愛いし、体を触れていても飽きない。色々としている手は綺麗だし、体の隅々が好きなの。これは爛だからだよ?」
「━━━━━━━━━━」
目のハイライトを消して、爛の耳元でずっと呟き続ける香に、爛は唖然とするしかなかった。
(あ、愛が重たい……。
六花たちにでも感化されたのか……?)
爛は、ここまで香がこうなるとは思っていなかった。嫉妬程度ならばいいのだが、それを通り越したが故に、爛は驚いていた。
「ねぇ、爛。爛は……私を愛してくれるよね?」
香はハイライトを消した状態の瞳を爛に近づける。爛は、今の香の状態を六花たちから今まで感じることがなかったため、すごく焦っていた。
「う、うん。愛してるよ」
こういうしかなかった。としか言えないだろう。もし、愛していないなどと言った日には、殺されているか、彼女が自殺をするかもしれない。できれば、そのようなことは避けておきたい。
それを聞いていた香は、花が咲いたような笑みで此方を見ている。
「えへへ~♪ありがと~♪愛してるよ。爛」
そう言うと、香は爛に顔を近づけてくる。
「あ、あはは……ッッッ━━━━━!!??」
爛はいきなり唇を塞がれたことに驚く。
香が爛にキスをしたのだった。
「ん……ちゅ……ぢゅる……んぁ……♡」
ただわかることは、いつもよりも積極的であること。
頭の中が徐々に白くなっていく。ぼーっとしていく。甘ったるい電流が頭の中に流れていく。
何も考えられなくなる。弱いところを、全て舐められていく。
快楽に呑み込まれていく。キスは長く、もうしばらく続けられれば、完全に快楽に堕ちてしまう。
「……ご馳走さま、爛♡」
香はそう言うと、未だにぼーっとしている爛の胸に顔を埋める。
「香姉……」
爛は小さな声で香を呼ぶ。
「どうしたの?爛」
埋めていた顔を上げて、爛を見つめている。
「いや、さっきのキスが……病み付きになっちゃって……」
爛は顔を赤くさせながら、香を見つめる。
「……!可愛い!やっぱり爛は可愛い!」
香はそういって、爛は仰向けにさせて、馬乗りになる。
「うぅ~……余りにそういうことを言わないで……恥ずかしい……」
目線を外して、顔を背ける。
とても見せられないような顔だ。
だが、それは関係ない。もう香を止めることはできなさそうなのだ。
「もぅ!爛は天使!このままいただきます!」
「か、香姉~~~~~~~~~~~~~!」
歯止めが効かずに、香はそのまま爛を襲った。
結果、爛は隅々まで香に食べられたのだった(意味深)