落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

73 / 105
お久しぶりです。
この話はあるゲームをやったことがある人は帝王の方がわかるかな?


第68話〜二人の鬼神と一匹の帝王~

「……居た!」

「数が増えてないか…!?」

 

 六花は化物と戦っている人を見つける。

 颯真は辺りを見回すと、化物の数が増えていることに驚きの声を出す。

 

「やるしかないだろう……。俺だって、六花を危険に晒したくないさ……」

 

 爛は剣を手に取る。既に、爛は殺気を向けている。

 

「それは分かってるけどさ……でも、やるしかないのか…」

 

 颯真は顔を俯かせるが固有霊装(デバイス)を顕現すると、顔をあげて真剣な表情になる。

 それもそうだろう。油断すれば殺される可能性がある。

 

「僕も戦うよ……爛に守られてばかりじゃ、強くなれない。怖いけど……やるしかないから」

 

 六花も同じように霊装(デバイス)を顕現する。

 

「……行くぞ……!」

 

 爛は一言だけ二人に言うと、一気に加速して化物たちの中に切り込んでいく。

 

「六花、あんまり無茶をするなよ。爛が悲しむからさ」

「分かってるよ。僕だって、爛や颯真が傷ついてほしくないし」

 

 颯真は六花を気遣うようにそう言うが、六花は首を横に振って走り出す。

 

「ッ、退けぇ!」

 

 爛は化物たちを斬り伏せながら、駆け抜けていく。鮮血が飛び散り、爛を汚していき、赤く染め上げる。

 

「チッ!邪魔するなぁ!」

 

 自分を狙って走ってきた化物を、一瞬にして切り刻み、化物が倒れる。

 

「消え失せろ!」

 

 爛は周囲にいる化物たちを一掃するために、剣に力を溜める。

 

「オオオォォォォォ!」

 

 爛の加速は光の速さと同等となり、周囲の化物たちを確実に、絶命させる。

 

「ハァ!」

 

 颯真も化物を斬り進めていく。その目には慈悲など無く、彼は既に恐怖という概念をなくし、機械が決められたことを何も考えずにやることと同じように、ただ化物たちを殺すためだけに『殺す』という概念だけを残して、そこにすべてを注ぎ込む。

 それが出来ないというのは、爛と六花、颯真にとっては有り得ない。

 何故なら、元々感情という概念を無くすことができるからだ。

 これが、元々の存在であるかのようにできる。

 

「ッ、せい!」

「シッ!」

 

 足を止めるということはしない。時間はかけないのだ。かければかけるほど、数で不利である爛たちは最速で助け、この場を離れることが、今の状況で最善だからだ。

 

(あと少し………!)

 

 爛はここで戦っている人物が、近くに居ることを察知した。

 彼方も完全に戦いに集中しており、此方に気は止めていないようだ。

 化物たちから鮮血が飛び散り、その影響で服が赤く染められていくが、気に止めることなどしない。

 

「ぐっ!?」

 

 突然現れた黒い何かが、爛の目の前に振るわれる。

 咄嗟に剣の腹で直撃を防ぐが、下からすくいあげられるように体は地面から離れ、まだ崩れていない建物へと吹っ飛ばされる。

 

「ガッ…ハァ…!」

 

 爛は打ち付けられた衝撃で吐血するものの、衝撃を受け流すことで最小限のダメージで済ませる。

 爛が睨んだ先には、黒い獣。顔は人の顔に近いものの、到底人とは思えないような顔だ。

 黒い外郭に、黄金のマントのようなもの。そして、虎のような尾をもつ。

 

(正に『帝王』……か……)

 

 爛は地面へと降りるが、黒い化物から目は離さない。

 一瞬でも隙を晒せば殺されるからだ。

 

「……ッ!?」

 

 黒い化物は爛の目の前に現れる。爛の動体視力を超えたのだ。

 

「チッ!」

 

 爛は潜るように黒い化物の下を通り、壁を背につけないように立ち回る。

 

「……おいおい、何だよ……あれ……」

 

 爛は目を疑った。黄金のマントのようなものは無くなり、そこからは翼のようなものが生えてきていた。

 しかし、翼というには言い難いものの、攻撃に特化していることは見てとれる。

 

「……っ……っ……」

 

 爛は後退るものの、化物にとっては数歩でしかない。

 

「ッ!」

(怖じ気づくなァ!この程度で怖じ気づいて何を守るって言うんだよッッ!!)

 

 爛は恐怖を拒絶し、その概念を殺す。

 一気に駆け出し、距離をつめようとする。

 

「……ッ!」

(もっと速く……もっとだ!)

 

 化物は後ろに下がり、距離をとるが、爛はそのまま距離をつめていく。

 

「ッ!?」

 

 何処からか視線を感じる。

 殺意を向けられている。

 直感でそう感じ取った爛は即座に、足を止めて後ろに下がる。

 

「ふざけるなよ……こんな量、俺が捌ききれるか……」

 

 目の前に現れたのは、先程まで対峙していた化物とは違い、青いマントのようなものに、女性のような顔をした化物が10匹、守るかのように爛の前に居た。

 

「チッ、おい、逃げるぞ!此方にこい!」

 

 その声を聞くと、爛は六花と颯真が声のした方にいるのを確認すると、警戒をしながら走り出す。

 追いかけてくるのを感じた爛は、あるものをひとつ投げる。

 

「前向いて走れ!」

 

 3人に届くように叫び、それを聞いた3人は爛と同じ方を向いて走り出す。

 後ろの方では光が発せられ、化物たちは呻き声をあげ、あらぬ方向を向いている。

 

 化物たちの姿形が見えなくなるほど走り続けると、爛の先を走っていた3人は爛を待っていた。

 

「よくあの中を生きられたな……驚きだよ」

「あんたは……」

 

 ひとりの男のような人物は爛に手を差し出す。

 爛は男の顔を見ながら、誰なのかと問う。

 

「俺か?俺は、『爛』だ。『宮坂爛』」

「なっ……!?」

「えっ……!?」

「………………」

 

 男のような人物は、爛と同じだったのだ。

 颯真と六花は知らなかったのか、驚きの声をあげて、『爛』の方を見る。

 爛は何かを察していたのか、顔を俯かせて『爛』の顔を見ようとはしなかった。

 

「お前さんは、何となくわかってるようだな」

「あぁ、あんたも分かっていただろうに。居るとは信じたくもなかったし、こんな世界があることも知りたくはなかった」

 

 『爛』は笑みを浮かべて、爛の方を見つめてくる。

 爛は差し出された手をつかみ、『爛』の顔を見つめて、何かを考え始める。

 

「……世界が違うから、必ずしも俺が居るとは限らない」

「何か言ったか?」

「いや、何も」

 

 爛は『爛』の存在に疑問を持つが、そのような世界もあるのだと思い、微笑をして『爛』から尋ねてきたのをやり過ごす。

 

「そうか。なら、話がある。長く話さないといけないから、ついてきてくれ」

 

 『爛』の話に3人は頷き、彼の後ろをついて歩く。

 3人は彼の話を聞き、そして、この世界の絶望を知る。

 

 ーーー第69話へーーー




なんか、ほぼクロスオーバーだよねw
一番長くしてるのはfateだけど。
今回は短め。
次回への伏線みたいなものです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。