落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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お久し振りです。久しぶりすぎて自分のスタイルを忘れております。
二ヶ月近く投稿ができず申し訳ないです。
既に一周年経ってますね。クリスマスと一緒にして書いておきます。


第67話〜異世界〜

「ここは……?」

 

 辺りを見回す。

 灰色の雲が空を包み込んでいた。

 

「これって……もしかして……」

 

 背中に張り付いている六花が驚きの声を出していた。

 それもそうだろう。辺りに見えるのは、発展していたはずの街が、廃墟と化しているからだ。

 

「こんなところを通っているって言うのか。あの男たちは……」

 

 辺りの光景に、唖然とするしかない。

 ここから、手探りで出口を探していくしかない。

 

「……なぁ、爛。神領に行くことはできないのか?」

 

 颯真は手探りで出口を探すより、爛の神領を通り、元の場所へと戻った方が早いのでは。と考えて提案をするが、爛は首を横に振った。

 

「いや、神領に行けない。さっきから、門を呼び出しているが、いっこうに来ない。

 もしかしたら、移動した際に、何らかの原因があって呼び出せないのかもしれない」

 

 未だに混乱している頭を振り絞りながら、状況判断するために周囲を見ている爛は冷静に話す。

 

「とにかく、ここで立ち止まるわけにはいかない。

 手当たり次第、進んでみるしかない」

 

 爛はそう言うと、一歩踏み出す。

 その一歩を踏み出し、地に足をつけたとき。

 

 ピチャ……

 

 水溜まりに一粒の水が落ちたような音がした。

 

「爛、あれって……」

 

 六花が指をさす。

 その先には、赤いものが滴っていた。

 

「廃墟と化したのは、何かが起きたからだろう。

 そして……それに巻き込まれた人達は数えきれないほどいる可能性がある。

 ……この見渡す限り廃墟のこの場所ではな」

 

 滴っていた赤いものは人の血(・・・)

 この見渡す限りの廃墟の山では、巻き込まれてしまったであろう人達は、数えきれないほどいる。

 これがどのようにして起きてしまったのかは、爛の頭の中では二つほど浮かび上がっていた。

 

 それは災害。災害は、この突発的に起きたりする場合もある。そう考えるならば、これに巻き込まれてしまった人達は、

 逃げることができなかった。(・・・・・・・・・・・)

 或いは、逃げていた(・・・・・・・・・)が逃げ切れなかった。(・・・・・・・・・・)

 ということが考えられる。

 

 もうひとつは、誰かによる無差別な爆破。

 ありとあらゆる建物に、爆弾などを仕掛け、同時に爆破していたならば、この廃墟が出来上がり、尚且つ人が死ぬということがあり得る。(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「……どうしてこんなことに……」

 

 六花も考えられる可能性を導きだしたことで、疑問に思ったことがあったのだろう。

 そう言うしかなかったとも、言えるだろう。

 

「……この世界は、俺たちの知っている世界じゃないはずだ……。

 ……こんなところ、俺たちはなにも知らない」

 

 颯真はそう言い切った。

 確かに、こんなところは知るはずもない。

 

「ッ!」

 

 爛が何かに気づいたのか、足を止める。

 

「どうした?爛」

 

 颯真は爛の方を向いて尋ねてくる。

 

「……何だ……」

 

 爛は自身の感覚を研ぎ澄ます。

 足音を耳で聞く。その足音は、此方に歩いて来ていた。

 

「……誰か来る……」

 

 だが、その足音とは別に聞こえる物がある。それは、爛が誰が来ているのかと見ようとしたときだった。

 

「グォォォォォォォォ!」

 

 マズイ。本能的に爛はそう感じ取った。獣に近い雄叫び。

 足音が聞こえてきた方向とは逆の方だ。

 雄叫びで消されている足音は、徐々に音の出るテンポが速くなっていき、此方に走ってきている。

 

「ッ、颯真。走り抜けるぞ!絶対に振り返るなよ!」

 

 爛はそう言うと、六花を背負ったまま走り抜ける。颯真もまた、遅れながらも走る。

 

「何……あれ……」

 

 六花が振り返った先に見たものは、人を軽く超えている化物と、それに立ち向かう人間。

 考えられる可能性を全て消し去り、新たな考えが生まれる。だがそれは、本当なのかは分からない。

 

「爛……!」

 

 六花は目を背け、爛にしがみつく。

 

「大丈夫だ……!俺が守る……!」

 

 爛は走りながら、そう言うしかなかった。

 爛たちは振り向かずに走り続け、森へと入った。随分と走り続け、二人は疲れてしまう。

 

「ここまで来れば……」

 

 爛は六花を下ろし、木へともたれ掛かる。

 

「……あれが、廃墟になった原因だろう……」

「だろうな……」

 

 爛と颯真は冷や汗をかいていた。あれほど巨大な獣はいない。

 

「これから……どうするの?」

 

 六花はあんな化物が他にも居たりするのであれば、ここも安全とは言えない。早く出口を見つけなければ、自分達は死んでしまう。

 

「……出口を探すしかないだろう。……いや、ここを知らない俺たちには、誰か案内人的なのが欲しいな」

「と、なると……」

 

 爛の言いたいことは、二人とも察した。他に人が居ると言う確証が無い。

 先程、獣に立ち向かっていった人間が生きているかどうか。

 つまり、爛は───

 

「もし、あの人が生きているのであれば、その人を頼りにするしかないだろう」

 

 その事を考えたのであった。

 一応、三人には対抗することはできるだろう。六花と颯真は既に伐刀者(ブレイザー)なのだ。それに、爛は伐刀者(ブレイザー)ではないが、対抗する策はある。問題はない。

 

「……また、戻るのか?」

 

 颯真は分かっていながらも、確認をしてきた。爛はそれに頷き、肯定する。

 

「それしかないだろう。さっきは逃げることしかできなかったが、分かってしまえば、此方も対抗することはできる。それに賭けるしかない」

 

 爛は瞳を閉じて、自身の中にある力に集中する。自身の中にあるのは力の塊。その塊は動くことを知らず、揺らぐこともせずに、どっしりと腰を下ろしたようにいる。そして、主を認めているかのように、暴走をすることもない。

 

「よし、行こう」

 

 颯真がそう言うと、爛は何も言わず、六花は爛の背中にしがみつこうとはしない。

 

「怖かったら、無理しなくていいからな」

 

 爛は一言だけ言っておくと、微かに六花の返してきた言葉が聞こえる。

 

「それはもう無いもん」

 

 爛はそれを聞くと、笑みをこぼすだけだった。

 

 

 ーーー第68話へーーー




短めとなりましたが、一つだけ報告をします。
色々とやるやらないと言っている自分ですが、本気でやろうと思っているものがあるので、楽しみにしていてください。
これから、執筆を全力で頑張っていくので応援お願いします。

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