一枚チップを出す。
五枚のカードが配られ、それぞれカードを手に取る。
「二枚チェンジだ」
男がチップを一枚出し、二枚捨てる。
それを確認した少年は、二枚カードを配る。
「───────────」
爛は手札を見る。
八が二枚。この時点でワンペアは確実。
だが他が六、十、二を一枚ずつしかない。
賭けで三枚を交換するか、それともどれか一つを残し交換するか、二つ残して交換するのか。
どの可能性にしろ、二つ残して交換はないだろう。
「三枚交換」
爛は三枚手札から捨てる。
同じように三枚配られる。
手札は、八が二枚、五が二枚、七が一枚。
それを見た爛は男を見る。
「お〜、怖い怖い。その目を見ると、何かいい手が揃ったのかな?」
男はそう言いつつ、自身の手札を見ていく。
「そうだな。ここは様子見で、コールだ」
チップを一枚出す。
「同じくコール」
爛もチップを一枚出す。
降りない限り、チップは三枚も消費するのか。これはよく考えなければ意味が無いぞ、爛!
颯真はチップの数を見てそう思った。
六枚手元にあったチップも、今は三枚になっている。
「いいだろう。勝負」
男は手札を表の向きにして、自分の手で覆った。
「八と五のツーペア」
爛はそう言って、手札を表にしながら、テーブルの上に出した。
「お〜確かにいい手だが。残念だ」
男はニヤけた顔で手札を広げていく。
そこに見えるのは、ジャックとクイーンのツーペア。
「私も同じくツーペアだ。だが、私の方がカードが強いな。私の勝ちのようだ」
男はそう言い、チップを取っていく。
爛の残りチップは三枚。
次のゲームに負ければ爛の魂は取られる。
「NEXT,GAME」
爛はそう言って、チップを出す。
「これがラストゲームにならないことを祈るがね」
男はそう言いながらチップを出す。
それを確認した少年は五枚二人に配る。
ククク、甘いな。少年よ。カードを配っている少年も、見ている全員も、全て私の仲間。イカサマは既に始まっていたのだよ。
男はほくそ笑んだ。全て思い通りに行っているような笑みだったのだ。
だが爛は全く動じない。寧ろ、のんびりしている。
「? 何をしている。さっさと手札を確認しろ」
男は爛にそう言った。
だが、爛は手札を確認しない。
「確認しなくていい。このまま全てのカードを交換だ」
チップを一枚出し、驚くようなことを言い放つ。
手札の中身を確認もせずに、全てのカードを交換する。それがどれほど危険なものなのか。
「ん? 聞き間違いかな? さっき、このままでいいと聞こえたのだが」
男はもう一度尋ねる。
「同じことを言わせるな。確認しなくていい。このまま全てのカードを交換だ。そうと言ったはずだが?」
爛はそれでも変わらない。
自信のある目でそう言った。
「早く変えろ」
少年を急かすようにそう言うと、少年は急いで五枚を配る。
「何故そんなことが出来る!?自分の魂がかかっていると言うのに!」
「ところで颯真、六花頼みたいことがある」
男は叫びながら言うが、爛は気にもせずに颯真と六花に話をする。
「あぁ、何だ?」
「お前達の魂を賭けに出す。俺の魂もな」
爛はそう言い放った。
だが、爛の意図が分かった二人は頷いて、爛に全て任せることにした。
「ついでにレイズで俺の魂のチップを上乗せ、そして六花と颯真の魂のチップ十枚を賭けに出す!」
爛はそう言うと、十枚のチップと自分のチップを前に出す。
「なっ──────!」
男は驚く。
するべきではないことを口にしたからだ。
「どうした?早くしろ。手札をチェンジするじゃないのか?それとも、このままやるのか?」
余裕の笑みで爛は挑発をする。
その笑みはハッタリとしか言えないだろう。
手札も見ていないのに、余裕な笑みを浮かべていることは出来ないはずだ。
「く、いいだろう。その挑発に乗ってやる!三枚チェンジ!」
三枚を捨て、配られた三枚を見る。
手札はキング四枚、クイーンが一枚のフォーカード。エースではなかったのが残念と言ったところだ。
「そして、レイズ!私も同じように全てを賭けよう!」
男はチップ全てを前に出す。
その数は二十五枚。
爛の方がチップの量が足りない。
「たったのそれだけか」
爛はそう吐き捨てると、新たなチップを出す。
「──────────!」
「俺の家族全員の魂を賭ける!」
爛はそう言うと、家族全員の名前を紙に書き始める。
「おい!良いのか爛!?ここにいない人の魂なんて……」
「俺は、それを賭けても負けないという自信がある。手札は伏せてあるが、俺には手に取るように分かる。貴様の手札もな」
爛は椅子の背にもたれ掛かり、言っていることを変えようとする気はないように見えた。
「カードの中身が分かるだと?ハッタリは止せ!」
「ハッタリでもなんでもない。貴様の言うハッタリはイカサマのことかな?」
「────────────!」
男はテーブルを叩きながらそう言うが、爛はような笑みを浮かべて、肩をすくめながらそう言うと、男は何も言えなくなる。
「んじゃあ、さっさと終わらせようか。
俺はコールだ」
爛はそう言いながら、手札を表にするが、自らの手で隠す。
「爛、そのカードを信じていいんだな?」
「────────────」
颯真はそう尋ねるが、爛は答えない。
「俺と六花は信じてるからな」
颯真はそれだけを言うと、六花のそばに行く。
「いいだろう!コールだ!」
男も手札を見せれるようにする。
「私のカードは、キングのフォーカードだ!」
そう言いながら、男は手札を見せていく。
それを見た瞬間、爛は体を震わせる。
「爛?」
体の震えを抑えるように体をうずくまる爛を見た颯真は、恐る恐る肩に手をかけようとする。
「ア、アハハハハハハハハ!」
爛は狂ったような笑みをする。
「キングのフォーカードォ?確かにいい手だな。だが残念!」
爛は手札を広げる。
そこに写るのは、エース四枚にジョーカーが一枚。この役は。
「エース四枚にジョーカーが一枚!ファイブカードだ!」
爛は大きくカードの役を言った。
それを聞いた瞬間、男は絶望した。
「な、な、な、何故だ!?何故、私より強い役を揃えたのだ!?」
確かにそうだ。五枚変えて、役が揃う確率は低い。それも、ファイブカードとなれば。
「神の技といったところか。貴様なんぞには到底分かり得まい」
爛は椅子から立ち上がる。
「貴様は賭けたな。自身の全てを」
「──────────」
男は息を呑んだ。
そして、苦汁を飲まされた。
「貴様の賭けたものは返す。だが、代わりに一つだけ聞きたい」
「な、何だ?」
男は酷く怯えた目で爛を見る。
正に蛇に睨まれた蛙。逆らえば爛の手が動くだろう。
「ここから帰る方法は?」
爛は剣を取りだし、男に切っ先を向けながら尋ねる。
「ヒッ!そ、そこに入ってランダムに出てくる出口を探せばいいです!」
男はそう言うと、爛の剣が動こうとする。
「そうか。分かった。ご苦労。精々、あの世で魂を抜き取ったものに謝るんだな」
爛はそう言うと、剣を横に振るい、男の首を撥ね飛ばす。
「行くぞ。二人とも」
「あぁ。分かった」
「爛~………」
爛はそう言うと、剣を背負いながら歩き出す。
颯真はその跡を追うように走りだし、六花は爛の背中に抱きつく。
「うわっ!六花!?」
「怖かったんだよ~!爛~僕は怖いの!」
突然重さがかかり、爛は何とか六花を落とさずにバランスを保つが、六花は離れる気がなさそうだ。
「仕方ない……よいしょっと」
爛は仕方ないと割り切ると、六花を背負う。
「大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫。なれてるからな。姉とか妹とか背負わなくちゃいけなかったりするから」
颯真は爛のことを心配するが、爛は笑みを浮かべながらそう言うと、六花をしっかりと背負いながら歩き始める。
爛の背中、やっぱり暖かい……♡
このまま寝ちゃおうかな?
──────────────────────
「最後のやつ、いらなくない?」
一輝は苦笑いをしながらそういう。
「いやまぁ、爛がそれだけ六花に愛されてるのは、分かっての通りだと思うけど、この頃から愛されていたって言うのは知らないと思ったからな」
颯真は肩をすくめながらそう言う。
「ま、続きの話を聞いてってくれ。
アイツが
その時に、ファイブカードが成功した種明かしがされるから」
ーーー第67話へーーー
続けて投稿しました!意外とぬるぬると書けたので。