落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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力の説明があるといったな、

あれは嘘だ

次回になりそうです。

後書きにて、重要なのかな?お知らせがあります。


第64話~天衣無縫の極み~

 《天衣無縫の極み(てんいむほうのきわみ)》を発動した爛は、動体視力が常人を超えている一輝の目を持ってしても見えることがなかった。

 

「速いッ───!」

 

 速いのには代わりない。

 だが、使用者の爛に、何も害がないというわけではない。

 

(クソ───!《無我の境地(むがのきょうち)》を使った後だから、体への負担が大きいッ!

 短期決戦じゃないと、こっちが持たない!)

 

 体への大きな負担が、爛にはかかっていた。

 減速せずに走り続け、一輝を翻弄はしている。

 だが、ここぞというときに限って、この男はしぶとさを出してくる。

 

「チッ───!」

 

 爛は体への負担を持ちつつも、一輝に剣を振るう。

 

「フッ───!」

 

 一輝は刃先に爛の刃を当て、そこから回転し、剣を真一文字に振るう。

 

「しまっ───」

 

 体を戻そうと足に力を入れようとするが、力が入らない。

 体への負担が大きすぎた。

 このままでは、一輝の刃に当たる。

 

「第三秘剣《(まどか)》!」

 

 一輝のオリジナルの秘剣、《(まどか)》。

 相手の力を自らの刃先に乗せて振るう。

 

(余り、あれを見せることはしたくない!

 幸い、腕なら力が入る!)

 

 真一文字に振るってきていると言うのであれば、上に軌道を変えることができる。

 それなら、下から衝撃を加えればいい。

 

「ハァ───!」

「ッ───!?」

 

 右拳を上へと打ち上げ、一輝の刃に当てる。

 一輝の刃は、爛の頭上を通る。

 

「ッ───」

 

 一輝はバックステップし、爛から距離をとる。

 

「ハァ、ハァ───」

 

 肩で息をしている爛を見て、一輝は絶句する。

 爛の体に異変が起きていたからだ。

 

「爛ッ!それは───」

 

 六花が声を荒くして言った。

 今の、爛の体の異変について知っているようだった。

 

「『神力』を解放したのかッ………!」

 

 同じく、颯真もそう言った。

 爛の今の姿は、髪の色が金色へと変わっており、赤と青の雷を纏い、鎖のようなものが巻き付いていた。

 

「《無我の境地(むがのきょうち)─での体の負担が大きかったのでな。

 此方の姿へとならせてもらった。

 《天衣無縫の極み(てんいむほうのきわみ)》の技を見せてやろう。

 構えておけ。一輝。

 この技を見切ることはできるか?」

 

 爛が踏み出すと同時に、その姿が消える。

 踏み出しただけなのに、超加速で姿が消えた。

 

「行くぞ!一輝!《サムライ・エッジ=β(ベータ)(ソニック)!》」

 

 加速の力によって、ただの剣の振りで斬撃が生まれる。

 その斬撃は生半可なものでは切り捨てられる。

 化物であろうとも、その斬撃を操るものが人を超えた者なら、化物であろうが切り捨てる。

 

「ッ───!?」

 

 その斬撃は速い。

 そう感じた瞬間には、斬られている。

 だが、これくらいで倒れる男ではないと言うのを知っている。

 

「───!」

 

 避けた。

 あの斬撃を男は避けて見せた。

 普通の人間なら、斬撃すら見えていない。

 なら、もう切られていて当然。

 動体視力が常人を超えている一輝は、避けることができた。

 

「一回ならまだしも、複数こられたらどうだ!」

 

 爛は斬撃を放つ。

 

「ッ───!?」

 

 逃げる先を潰すように、斬撃が放たれている。

 

「くっ───!」

 

 大体の斬撃の想像が出来るのだが、その全貌が分からない。

 幸い、上空に斬撃は来ていなかった。

 なら、そこに向かって跳ぶだけ!

 

「ッ───!」

 

 上空へと行ったが、そこに爛が瞬時に現れる。

 

「やぁ───!」

「あ───」

 

 一瞬の刹那に振るわれた刀。

 止めることはできず、そのままブラックアウトで、一輝が倒れる。

 爛はそれを抱え、地面に着地する。

 

「ハァ、ハァ───やっと、か───」

 

 爛はそう言うと、仰向けで倒れていく。

 

「爛───!?」

「お兄様───!?」

 

 六花の珠雫は、二人の傍へと駆け寄る。

 体力がなくなった二人は、家の中へと六花達が抱えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

「う、う~ん………」

 

 目が覚める。

 目の前がボヤけてはいるが、赤い色の服が目に入る。

 雪蓮だろうか。

 目を擦り、視界をしっかりと確保する。

 

「あ、起きた?」

「雪蓮──────うがっ!?」

 

 起き上がり、ここはと言おうとした瞬間、爛の体に重みが掛かる。

 

「ダメよ。

 そんなに時間は経ってないし、六花から聞いたけど、『神力』を解放したんだから、安静にしてないと死ぬわよ」

 

 雪蓮が倒れ込んできた。

 それで、爛はまた横になる。が、よくよく感じると、何か柔らかいものが頭に当たっている感覚がした。

 それがどう言うものなのかと、爛が頭を上へと向ける。

 

「………冥琳(めいりん)か?」

「あぁ……。」

 

 爛に膝枕をしていたのは、冥琳と呼ばれる女性だった。

 冥琳は、雪蓮と同じく呉に居り、軍師として居る。

 病に侵されている身であったが、医者としての知識を持っていた爛に、病を治してもらっている。

 

「ここは……?」

「ここは空いている一室だ。

 本当なら爛の部屋で寝かせようとしたのだがな。

 六花達が五月蝿いのでな。

 そうなってくると、爛の眠ってられないと思ってな」

「だから、この一室を使わせてもらったって訳よ」

「そうか………」

 

 爛は冥琳と雪蓮が言ったことに苦笑いになりながらも納得する。

 

「っと!ちょっと待った。雪蓮」

「何よ」

 

 爛の耳に顔を近づけている雪蓮を見た爛は、それを止める。

 

「いや、何で俺の耳に顔近づけてるの?」

「何でって言われても………」

 

 爛は焦った顔をしながら雪蓮に尋ねると、雪蓮は少しムスッとした顔で───

 

「いいじゃない。別に」

 

 そう言い放ってしまった。

 

「いやいやいやいや!それはおかしいから!」

 

 爛は反論をするが、雪蓮には効果がないとしか言えない。

 爛の耳に、息を吹き掛ける。

 

「ひゃっ!?」

 

 爛は体を震わせる。

 

「フフフ♪爛って本当に反応が可愛いわよね。

 ねぇ?もっと見せて?」

 

 雪蓮は爛の耳に唇を当てる。

 

「やぁ………。雪蓮ぅ………。そんなこと……しないでぇ……」

 

 まるで女性かのごとく声に出す。

 

「……………………」

 

 雪蓮のことを羨むように見ている冥琳。

 それが目にはいった雪蓮は、笑顔で冥琳を見て、

 

「冥琳もやるかしら?」

 

 たったその一言ですませてしまった。

 

「私もやらせてもらおうか♪」

 

 同じく、冥琳も一言ですませてしまった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 余りの出来事に、爛は叫んでしまい、家全体に響き渡った。

 

「爛!?どうしかしたの!?」

 

 六花が一足早く、爛がいる部屋へと行く。

 

「「「あ」」」

 

 三人の声が揃う。

 爛にとっては一番来てほしくなかったとも言えるし、雪蓮や冥琳にとっても来てほしくなかったとも言える。

 

「……………………爛?」

 

 目のハイライトを消し、押し潰すような殺気を放つ六花。

 

「………………………!」

 

 体を震わせながら、六花を見る爛。

 

「僕が恋人なのに……どう言うこと……?

 もう限界だよ………?リリーも同じみたいだし……」

「マスター…………」

「ぅ………………」

 

 六花がそう言うと、ドアから顔だけを出したリリーも押し潰すような殺気を放っていた。

 爛はガタガタと震えながら、少しずつ下がっていく。

 

「爛?逃げずに……来てくれるよね?」

「アッハイ」

 

 爛は雪蓮と冥琳からするりと抜け出すと、六花の方に行く。

 

「ふぇっ?」

 

 その瞬間、爛の肩が掴まれる。

 

「一輝くんたちに言わなくていいの?」

 

 六花は先程とは違い、心配するような表情で爛を見つめる。

 

「…………続きを話さないとな……」

「神力を解放したんだから、流石に話さないと疑われちゃうよ?」

 

 爛は頷きながらそう言うと、六花が爛の力の事で疑われてしまうと言う。

 

「分かってるよ……。見せた時点で、あいつらも共犯射的存在だもんな………」

 

 爛はそう呟くと、ステラとの模擬戦をする前に話していた部屋に戻る。

 

「………もう起きていたのか……」

 

 一輝とステラがベッドから身を起こしていることに爛は少し驚く。

 

「ついさっき、二人して起きたばっかりだけどね」

「そうか……」

 

 一輝は苦笑いをしながらそう言うと、爛は一言だけで済ました。

 

「ところで……ステラとの戦いで使った《無我の境地(むがのきょうち)》と、僕の時に使った《天衣無縫の極み(てんいむほうのきわみ)》、そして、僕の剣を払ったときに全身に纏っていたあれは………」

 

 一輝は先程での戦いで使った《無我の境地(むかのきょうち)》と《天衣無縫の極み(てんいむほうのきわみ)》と、最後に一輝の秘剣を払ったときに溢れでていた力について聞こうとする。

 

「……ま、話そうとは思っていたよ。特に、最後に見せたあれを、お前達が見た時点で、共犯者に近いからな」

「─────!」

 

 爛は椅子に座り、真剣な目でそう伝えると、ステラは驚いた表情をする。

 

「どう言うことなの!?リッカとソウマから話は聞いていたけど、二人は何も話さないし、いきなり話してきたと思ったらそれなの!?」

 

 ステラは非難の声を出す。

 爛はただ何もせずに、ステラの言葉を聞き続ける。

 

 本当ならば、『ノヴァの騎士』でさえ危険だというのに、一輝との戦いの最後に見せたあれは、それを上回るほど危険なものだ。

 

「どれだけ危険なのか、あの時の模擬戦で知った!

 アンタは!本当に人間なの!?普通ならあり得ない力を持って!

 知ることがないようなこともすべて知って!

 アンタは、本当はなんなの!?

 まさか、バケモノだなんて───!」

 

 一輝も爛も止めることはしない。ただ聞き続ける。

 

「ステラ、爛は───」

 

 バケモノじゃない。

 そう言おうとした瞬間、肌を逆撫でするような寒さがした。

 

「一輝、少し静かにしててくれ。

 言いたいことがあっても言わないでくれ。

 六花とリリーは他のみんなを読んできてくれ。

 これに関しては、俺から真剣に話させてもらう」

 

 六花とリリーは何も言わずに、部屋から出ていき、他のみんなを呼びに行く。

 一輝は顔を俯かせ、何も言わない。

 それから、数分がたつ。

 

「爛、呼んできたよ………」

 

 六花が暗い一言でそう言う。

 

「入ってきてくれ」

 

 爛は、その一言で返す。

 

「すまないな。

 本当なら、出来るだけ温厚に済ませたかったが、これだけは知ってくれ」

 

 爛は全員に目を向ける。

 ほぼ全員が、爛から目を背けない。

 ただ、目を背けていたのは、ステラと颯真と六花だけだった。

 

「これから話すことは全て………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『国家機密』のものだ」

 

 爛から放たれた言葉。

 国家機密の情報を爛は持っている。

 

「そして、これを知ったお前たちは、俺と同じ

『犯罪者』だ」

 

 告げられた一言。

 ただ、それを言って学園にいることができると言うのは、『犯罪者』として知られていないということになる。

 

「ですが、爛さんが犯罪者なら、どうして連盟が動かないんですか?」

 

 珠雫は気になったのか、爛に尋ねてきた。

 

動かないんじゃない。(・・・・・・・・・)動けないんだ。(・・・・・・・)連盟は動くことができない状態にあるんだ」

 

 爛はそう言い放つ。その存在が、連盟を動かさずに爛を守り続けているということになる。

 

「世界最高の犯罪者って知ってるよな?」

 

 爛は確かめるかのようにそういう。

 ただ、世界最高の犯罪者となれば、その名は知れているだろう。

 

「確か、比翼のエーデルワイスと片翼の赤き翼を持つ光黒の騎士─────

 

 

『ヘルベルティア』」

 

 ヘルベルティア。

 エーデルワイスと同じく世界最高の犯罪者。

 北海道の大半が死の領域と化している。その領域を作ったとされているのがヘルベルティアだ。

 それ以外の情報は極一部の者しか知らないという。

 

「でも、それが爛くんと何の関係が………」

 

 刀華が疑問に思ったところはそこだ。

 爛にしろ、ヘルベルティアにしろ。

 ただ、修行に各地を旅したという事実を知っていれば、彼が誰と繋がっているというのかは、話を聞けばわかることでもある。

 

「俺と彼女は知り合いだとなれば、話は変わるだろう。

 彼女にも指導してもらっていたんだ」

 

 爛は笑みを浮かべながらそう言うと、全員が驚いた表情をする。

 

「─────?

 何か、変なことでもいったのか?」

 

 何故全員して驚いているのかとキョトンとした表情で爛は首をかしげる。

 

「最強とまで言われているエーデルワイスさんは前に聞いたけど、まさかヘルベルティアさんもだなんて…………」

「意外か?」

「意外だよ!」

 

 一輝は驚いた表情をしながらそう言うと、爛はまるでこれが普通かのように思いながらそう尋ねると、颯真からツッコミを受ける。

 

「意外だよな。

 まぁ、彼女のお陰で、俺はこうして居られるってわけだ。

 彼女には感謝しているよ」

 

 爛の言ったことは嘘ではない。

 嘘であったなら、既に焼き殺されているだろう。

 

「ま、しっかりと話すよ。

 まぁ、理解できないだろうがね」

 

 ーーー第65話へーーー




お知らせになりますが、このヘタレな火神零次、完全なオリジナルストーリーを書こうと現在意気込んでいます。

題名もなにも決まっていませんが、十月の終わりまでには、それを出したいと思っています!

これを投稿すると、書いているのが三つになりますね!

失踪なんてしてたまるか!俺はこの物語を完結するんだ!の勢いで頑張っていきたいと思います!

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