落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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少年と青年の一つの過去。
同じ影の師の弟子だった二人の過去。
二人は、力を求めていた。

双子は双子でも、性格は真逆。そんな二人に振り回されている少年。


第62話~二人の師と颯真の恋人~

「むぅ………。」

 

 どうしたものかと頭を悩ます爛。

 

「………………………。」

 

 その理由は何も言わずに、ただただ爛に抱きついてきている六花たちが離れてくれないからだ。

 オルタを解除した後に、六花たちのところへと戻るのだが、六花と会ったときに、六花は何も言わずに、爛の手をつかみ、六花の部屋へと連れられ、ベッドの上に押し倒され、抱きつかれているのだ。

 

「……………爛………。」

 

 六花が小さな声で爛の名前を呼ぶ。

 

「ん?」

 

 爛はそれに反応し、何を言ってくるのかと考える。

 

「………爛はどうして、そんなに力を持っているの………?」

「………そう………きたか………。」

 

 六花が今まで謎に思っていたこと、爛が何故そこまで力を持っているのか。

 

「………う~ん、どう話したら良いものかな……。」

 

 爛はそう呟き、頭を悩ます。何故そこまでの力を求めていたのか。それをどう話せばいいのかと。

 

「私も、気になります。」

 

 リリーが隣で爛の腕をずっと離さないまま、気になっていたことを言った。

 

「余も気になるのだ。どうして奏者がそれほどまでなのか。余はすっごく気になるのだ!」

「大声を耳元で出さないでくれ。耳が痛くなる……。」

 

 ネロは空いている爛の右腕を抱き締めたままそう言う。

 ただ……、爛にとっては、それを話すことは別に平気なのだが、どうしてもこの状況を何とかしたいのだ。

 

「……どうにもこの体制が辛い………。」

 

 そう、体制が爛にとってキツいのだ。何故なら、体を抱き締めている六花と、腕を離すことなく抱き締めているリリー、ネロ。それだけならば平気なのだが、タマモか爛に膝枕をし、清姫が爛の下に居るのだ。それでいて抱き締めている。

 

「この状態じゃ、とても普通に話せるようには思えないしね……。」

「他人事のように聞こえるけど実際、俺も同じようなやつが居るからな。」

「颯真は既に恋人持ってるだろう。確かに、あれは辛いからな。最悪、俺よりもな。」

 

 一輝が苦笑いをしながらそう言うが、颯真は爛の状態を見て、爛から視線を外してそう言った。爛は苦笑いをしながらそう言う。

 

「というか、何とかしてくれ。清姫が潰れてしまう。六花、抱きついてもいいから、普通に座らせてくれ………。」

「……………ん………。」

「後、リリー達も。」

 

 爛は話題を変え、六花たちに退いてもらうようにそういうと、六花は爛から離れる。

 

「………ん………。」

「はいはい。」

 

 六花は爛に両手を広げると、爛は六花を持ち上げ、自分の膝の上に乗せる。

 

「……清姫、大丈夫か?」

「はい。大丈夫ですますたぁ♪私のことを思ってくれてありがとうございます♪」

「ハハハ……。」

 

 清姫の隣に座っている爛は、先程まで体重がかかりやすいところに居たため、爛は心配だった。

 

「それにしても、颯真の恋人って……?」

「ん?あぁ、双子。」

「ちょっ……、それを言うなよ……。」

 

 どういう人なのか、そう一輝が聞こうとしたときに、爛がすぐに答えると、颯真は苦虫を噛んだような顔になり、爛にそう言った。

 

「……結構性格が違ったよな。」

「あぁ………。」

 

 爛が確認するかのように聞くと、颯真は重く頷く。

 

「誰なの?その人って。」

 

 ステラが颯真の恋人である双子に興味があるのか、誰なのか尋ねる。

 

「……妹の方だったら、颯真に何かあると飛んで来るよな……。」

「あぁ……。それで、姉の方は妹を連れ戻しに来るから、結果的に皆して来るんだよな………。」

 

 爛と颯真は頭を抑えながらそう言う。どうやら二人は、その双子に振り回されているのだろう。

 

「彼女たちのこと?」

 

 六花が爛に抱きつきながらそう言う。どうやら六花も知っているらしい。

 

「あぁ。名前はまだな。」

 

 爛は人差し指を六花の唇に当てる。六花は察したのか、口を閉ざす。

 

「……それに、あの二人だし……。特に、ステラ辺りの性格だと……。」

「あぁ……そうだな……。特に、姉の方に関係するだろうな……。」

 

 二人は苦笑いをしながら、ステラの方を見る。

 

「え?どういうこと?」

「姉に色々と言われそうだ……。」

「……何かある度に、俺たちは二人に振り回されて……。」

(き、気の毒すぎて何も言えない……。)

 

 ステラは何も分からず、二人はがっくりと項垂れていた。一輝は、そんな二人が気の毒すぎてしまい、何も言えない状態だった。

 

「因みに、その双子の特徴は?」

 

 一輝は嫌な予感もしていたのか、話題を変える。

 

「………確か、誕生日に関係のある名前だったな。」

「……それで、二人とも14歳で……。」

「姉は冷徹って言葉が似合って………。」

「妹は元気って言葉が似合って………。」

「二人とも颯真に素直になれなくて……。」

「二人ともお互いに素直になれなくて……。」

「「ちょっと仲が悪いように見える……。」」

 

 心を失いながらあげていく二人を見ていると、こちらが悪いことをしてしまったと考えてしまう。

 

「……まぁ、仕方ないと思うよ。俺は。」

「……まぁな……。そうだよなぁ………。」

 

 爛は颯真の方を見ると、颯真は思い返すように、爛に返す。

 

「…………で、爛………。」

「………分かった。分かったって。しっかりと話すよ。………それには、アイツが居ないとな……。」

 

 六花が爛の顔を見ると、爛は苦笑いをしながら返す。

 爛は真剣な表情となり、一つの名前を呼ぶ。

 

「来てくれないか?『クー・フーリン』。」

「……え……?」

「……嘘……でしょ……?」

「………………。」

 

 爛が呼んだのは、英雄の名そのもの。その名を聞いた一輝たちは、それぞれ反応を見せる。ただ、存在を知っているものたちは、驚くことはなかった。

 

「真名で呼ぶなって。ったく、呼んだと思ったら、それかよ。」

 

 青い装束を着ていた男、クー・フーリンは諦めた顔をして、一輝達の前に姿を現した。

 

「いいじゃないか。お前のこともいつかは話さないといけない。……俺に、協力してるならな。」

「……わかったよ。」

 

 爛が言ったことを察したのか、クー・フーリンは渋々頷く。

 

「と、言うわけで話そうか。一つめをな。」

 

 爛は六花の頭を撫でながら、そう言った。真剣な表情となっていた。一輝達も、真剣に聞こうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、一つ目だかな。俺とアイツが同じようにこの赤い槍を持っている理由だ。」

 

 爛は赤い槍を顕現し、突き立てる。

 

「突き立てて大丈夫なの?」

「大丈夫だ。爛の家って、華楠さんが建ててるものだからな。直してもらえるのさ。」

(まぁ、母さんも何かと世話好きな人だからなぁ……)

 

 ステラが謎に思っていたことを話すと、颯真がそれを返す。それを聞いていた爛は華楠のことを考える。

 

「……こいつは、俺と……あいつの師が持っていたものだ。」

 

 確かに、クー・フーリンも爛と同じような槍を持っていた。それが、二人の師の槍だった。

 

「と、こいつの名前はゲイ・ボルク。そこまで聞いて、何か思い当たるところはないか?」

 

 爛は赤い槍の名前を出し、思い当たることはないかと問う。

 

「………もしかして……、ケルト神話にある。確か、クー・フーリンにしか使えない槍としか……。」

 

 一輝が爛の問いにそう答える。その答えを聞くと、爛は頷く。

 

「あぁ、確かにケルト神話に出てきた槍だ。けど、それは伝えられている話でしかない。どういう形でこの槍があったのかは謎だ。」

 

 爛はゲイ・ボルクを一輝に渡す。

 それを持った一輝は驚くことがあった。

 

「………そんなに重くないね……。」

 

 そう。クー・フーリンにしか扱えないと言われているゲイ・ボルク。

 その理由は重さにあった。

 だが、爛が持っているゲイ・ボルクは異様に軽い。

 

「そうだろうな。俺の師の槍も軽かった。となると、重さはどうにも考えられない。」

 

 爛は「それに………」と続けていく。

 一輝は槍を爛に返すと、爛はゲイ・ボルク置いた。

 

「………俺とクー・フーリンは、この槍でやることがあるんだ。」

「………………………。」

 

 爛が重く言うと、クー・フーリンは俯く。

 二人の師には何があったのか、爛が重く言っているということは、余程のことがあったと考えられる。

 

「…………それは?」

 

 今まで口を開かなかったアリスが口を開き、爛に尋ねた。

 

「………師を……この槍で……。」

 

 それ以上は言えないのだろうか。爛は何も言わなかった。

 

「……そう……。」

 

 アリスは察することができたのか、その一言だけを言うと、同じように黙りこむ。

 

「………まぁ、俺たちの師は、これだけ話せばわかるだろう。」

 

 爛達の師。それは、ゲイ・ボルクを完全に操り、武術に長けているもの。

 また、クー・フーリンと関係のあるもの。

 答えは行き着く。

 颯真と一輝が口を開く。

 

「「………スカサハ………。」」

 

 二人が出した答えは同じだった。

 それを聞いた爛は、驚いた表情をした。

 

「まさか、二人同時に出るなんてな。正解だ。俺とクー・フーリンの師はスカサハ。影の国の女王だ。」

 

 スカサハ

 クー・フーリンにあらゆるものを教えたとされる人物。影の国と呼ばれる死霊が徘徊する国の女王。

 死霊が徘徊する影の国は、冥界に一番近いため、人間などが入れば生命が吸いとられる。

 二人がその影の国に居られたのは、超人的な力があったからだろう。

 

「……俺には力が色々とある……。」

 

 爛が真剣な表情でそう言った。何かを決意した顔だった。

 

「この辺りで、俺の力を話そうと思うけど……。」

 

 爛が全員の顔を見る。何かを聞こうとしているのだろうか。

 

「どうする。聞くか、聞かないか。最悪、俺に対する見方が変わる。………それでも聞くか。地獄をな……。」

 

 爛は力を話そうとしている。爛の近くにいる以上、知らなければならない。それも、自分達を巻き込むことになるかもしれないからこそだろう。

 こちらが返す言葉は決まっている。

 

「あぁ、僕は聞くよ。爛の友達だから。」

「えぇ、アタシも。」

「私も聞くわ。」

 

 一輝、ステラ、アリスの返した言葉は聞くことだった。

 爛は六花を見る。

 酷く、心配をしている目だった。

 

「大丈夫。何時かは言わないといけないから。それぐらい、覚悟はできているよ……。」

「…………分かった。僕は爛を信じるよ……。」

 

 爛は笑みを浮かべて六花に返した。

 六花はやはり心配していたが、爛を信じることにした。

 

(話している間………、気を付けておかないとな……。何時また、あんなことにならないように、な……)

 

 

 ーーー第63話へーーー

 




さぁ、颯真くんの謎の一つであろう。恋人がいるのかどうか。

実はいました。しかも双子。

知ってる人は知ってるだろうな……。

あ、オリキャラじゃないです。ゲーム……ですね。しかもスマホアプリゲーム。

さぁ、これがわかる人がいるのかどうか!多分わかる人はいる。
そのゲームをやっている人ならば!

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