落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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何か最近、他の作品のネタが多いよなぁ………。
因みに、今回も他作品の要素があります。あれをやっている方なら多分。レタスの店長さんとか分かると思いますよ。はい。


黒の章~暁学園襲撃~憎しみと暴走と絶望
第59話~選抜戦終了、動き出すもの~


 選抜戦が終わり、団体戦となるため、人数が足りないのを確認していた黒乃は余っている席を埋めるために、一発勝負のトーナメントを開催した。

 爛、一輝、ステラ、六花、アリス、颯真、この六人の他に、あと二つの席を埋めなければならなかったのだ。その席を埋めたのは、完全な実力から一発勝負に強制に近いが、参加することになったリリーが一つ目を埋め、次に埋めたのは破軍学園最強と謳われた刀華だった。

 

「……まさか、強引にリリーを引っ張るとはな。黒乃。」

 

 爛はタバコを吸いながら、理事長室で黒乃にジト目になりながらそう言った。

 爛の目の前には、一発勝負に強制に近い方法で参加することとなったリリー。

 

「それはそうでしょう。星の聖剣、カリバーであり、しかも師匠(せんせい)の折り紙つき。これはもう出さない手は無いですよ。」

 

 完全な実力主義者でもある黒乃であればそうかと、爛は納得してしまう。リリー本人には了承を得ているらしく、本人も出たいと言っていた。

 

「まぁ、リリーが出たいって言ってたならいいが……。」

 

 爛は納得をしていないような顔をしながらも、本人が言っていたならと、渋々納得をする。

 

「アハハ………。」

 

 リリーは苦笑いをするしかなかった。悪巧みをするような笑みをしている理事長の黒乃と、それに振り回されるマスターである爛。どう考えても爛が苦労人としか考えられなかったからだ。

 

「……分かったから、良いとして。………俺は戻る。」

 

 爛はリリーに一言だけいい、理事長室から出ていく。

 ただ、爛は一つだけ引っ掛かっていることがあった。

 

(あの時………、アリスがいなかった。そして、あの時から感じ始めた殺気……。感じ慣れていた気配もその一つ………。………そういうことか………。)

 

 爛は自分の部屋に戻ろうとしているなか、突然立ち止まる。

 

「マスター?」

 

 リリーは突然立ち止まった爛を見て、疑問に思い尋ねる。

 

「すまない。用事があったのを思い出した。リリーは先に部屋に戻っていてくれ。」

 

 爛はそう言うと、リリーが尋ねようとしていたことを聞かずに、要件だけ伝えると、一瞬にして姿を消してしまった。

 

「……要件だけなんですかマスター………。」

 

 急いでいるように見えたため、何も言わないでいたが、走る様子もなく、能力で姿を消して居なくなったことで、言わなかったことをつい口にしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爛は破軍学園の外に出ると、人気のつかない所へと行った。

 人気のつかない所につくと、爛は常人では気を失うほどの殺気を放つ。だが、爛にとってはまだ序の口でもあり、この程度の殺気でも怖じ気づくことはないだろうと感じていた。

 

「いつまで俺の跡を追っている。そうまでして六花と俺を殺したいのか、『葛城翼(かつらぎつばさ)』。」

 

 爛は冷静な口調で、しかし感情的な行動には走らなかった。

 爛の後ろには、翼と呼ばれた男と、アリスが立っていた。

 

「あぁ、そうさ。俺はお前と六花を殺す。絶対にな。そして、お前はなんで、六花を生かし続けて(・・・・・・)いるんだよ!」

 

 翼は感情的になってしまったのか、爛に対してどう言うことなのかと怒鳴る。

 だが、爛はそれを聞き流しており、涼しい顔をしていた。

 

「そうだな。俺は六花を生かし続ける。人としての生を、彼女が終えるまでな。」

 

 爛は笑みを浮かべながら、翼とアリスの方を向いた。端から見れば、邪な笑みでしかない。だが、それは爛が隠し続けている歪んだもの。

 

「……正直な、俺は別にいいんだよ。彼女が幸せであれば、俺という人間が不必要であるというのならば、俺は彼女の目の前から消える。」

 

 彼の自分の本望がわかり始めた。彼は、自分のためになんか動いてはいなかった。全て自分が愛している彼女のためのものでしかなかった。

 六花が爛に依存しているのは爛によるものではく、彼女自身のものであるのは間違いない。だが、爛はそれ以上に六花に依存していた。それが、爛の歪んだもの。歪んだ愛情そのものだった。

 

「可笑しいと考えるか?結構、何とでも言うといいさ。俺は変わらない。それだけは貫き通す。そうするほどの覚悟がなければ、六花を助けられない……。」

 

 爛は今まで以上に殺気を放つ。感じ取れるのは憤怒。どこまで苦しめるのかという怒りでしかなかった。

 

「何故、俺があそこまで六花に拘るのか……。あそこまでやっているのには意味がある。あぁ。……あの繋がりがあったからこそ、俺はそこまでやっている。」

 

 爛の悲しい顔は、嘘偽りではなく、本当のものであった。あの繋がりとは何なのか。そして、あそこまでの六花に対する歪んだ愛情は、その繋がりから来ているものと考えられた。

 

「あまりにも遠い………。今ここで失えば、それも全てが崩れていく………。遠い………。遠すぎる道だった……。誰かに助けを求めるわけでもなく、ただ一人で、歩き続けるのは、疲れてくる……。だけど……、やっと見つけられたんだ………。」

 

 爛は闇の力を持つ左目を発現させる。黒い剣は爛がよく使うものではなく、見たこともない剣だった。

 

「……だから……、今ここで……、脅かすものは殺す……!」

 

 爛は駆け出す。一つの思いだけで、刃を向ける。

 

「…………!」

「今は逃げるわよ!」

 

 翼はアリスに襟首を掴まれ、爛の目の前から消えていく。

 

「逃げるなぁ!」

 

 黒い剣に闇の力を注ぎ込むと、可視された闇の刃が形成される。

 

「っ、今は影のあるところに!」

「…………………。」

 

 アリスは影のあるところにと駆け出していた。翼は何も言わずにアリスについていく。

 

(……それが、本当にあった。お前と俺の妹の繋がりなのか………。あまり、認めたくはない。ただ………、今のでわかった。お前は黒だ。闇だ。そして、邪悪だ。……けど、それでもお前は白を持っている。光をつかむ者だからこそだ。………それを、六花は知っているのか………。六花はそうなると白だ。光だ。そして、希望でもある。それだけだ。)

 

 翼の頭の中では、最悪の展開が描かれていた。もし、あの力が既に発現していたのであれば……。自分たちには勝機がない。そう、既に感じていた。

 

(急いで、計画を始めるようにと伝えておかないと………。)

 

 翼はアリスの影の中にはいると、アリスと翼は影の中に沈んでいく。

 

「……………遅かったか………。」

 

 爛はそれを呟く。剣を解除すると、左目から一筋の血が流れ出る。

 

「………………………。」

(黒と白の伝承には、確か………。あぁ、そうだった。あの時と同じように自分の身を犠牲にしたのか………。)

 

 爛の思考の中にあった黒と白の伝承。そこには、こう書かれていた。それが、爛の昔から続く………償うことの叶わない………たった一つの罪だ。

 

「……………っ!?」

 

 爛に頭痛が襲う。頭の中で、何かが蘇る。

 

(これは……、記憶………?)

 

 黒髪の少年が、爛と同じ黒い剣を持っていた。そして、たった一言だけ、言った。空にある………『光の王国』に向けて。

 

『それで、みんなを救えるのなら………。』

 

 黒髪の少年はそう言うと、そこで、映像が停止したかのように止まり、そこで、蘇った記憶は終わった。

 

「……終わった……?」

(でも、今のは……。この記憶は……?まさか、あれは黒の………)

 

 爛が黒の先を言おうとしたとたん、全身が痺れる。

 

「ぐっ……!?」

(な、なんだ今のは……。言わせまいと力が抵抗してるのか…………。)

 

 爛は自分に起きたことを冷静に判断する。だが、力が抵抗しているのではなく、『黒の』、その先を言おうとした時に起きたことだった。

 それだけしか起きなかった。それだけは事実だ。

 

(これからは禁句だな……。多分、あっちの方にも………。)

 

 爛は破軍学園の方を向いた。爛は自身の右手を握りしめる。

 

(あの時みたいに………、ならないようにな。)

 

 その手には、償えることのないたった一つの罪と、僅かな希望を感じながら。

 

 

 ーーー第60話へーーー




はい、他作品要素がわかった人は感想で教えてください。まぁ、当てられると思いますよ。はい。

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