落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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最近、最弱無敗の神装機竜を書きたいと思うことごろ……どうしようかな……。


第56話~魔術師の少女~

 突然のフラッシュバックに、爛は頭を抑える。その中に出てきた少女に、爛は見覚えがあった。

 

「………もしかして………『聡美』……?」

 

 爛はそう呟くと、意識的にとある方向に歩いていった。

 爛が向かった先にあったのは、とあるビルの屋上。爛が屋上にかけ上がると、屋上に一人の少女が佇んでいた。

 

「………マスター。」

 

 爛がそう言うと、少女は爛の方を向く。

 いつ見ても、久し振りに見たとしても、爛は忘れることがなかった。

 誰もが恐れる災厄と契約を結んだ、爛の拠り所の一つ。

 

「待ちくたびれたわ………。セイバー。」

 

 マスターと呼ばれた少女は、爛のことをセイバーと言った。

 

「………久し振り………か……。」

 

 爛はそう言うと、少女の方へと歩いていく。少女は何も言うことはなく、拒むことはしなかった。

 

「そうだろう?マスター。」

 

 爛はそう言いながら、少女の頬に触れた。繊細な手使いは、少女に優しく接する。

 

「そう………ね………。」

 

 少女は爛に会えたことに、嬉しいのか涙目になっていた。

 

「ねぇ……セイバー………。」

「ん?どうした?マスター。」

 

 少女は頬に触れていた爛の手に自分の手を添えると、嬉し涙を流す。

 

「また……あの時みたいに、優しく抱き締めて……。」

「……あぁ。分かった。」

 

 少女がそう言うと、爛は承諾し、少女を優しく包み込むように抱き締めた。

 

「フフ………♪」

「?どうかしたのか?」

 

 爛の体温を久し振りに感じたのか、自然と笑みが溢れたようだ。

 

「貴方と会えたことが嬉しくて、体温を感じることができて、嬉しいのよ♪」

 

 少女は爛のことを強く抱き締める。

 

「マスター、俺は帰らないといけないところがある。………マスターも来るか?」

 

 爛は少女と顔を見合わせると、笑みを浮かべて話す。

 

「ええ。行くわ。もう離れ離れは嫌だもの。」

 

 少女は爛と同じように笑みを浮かべてそう言った。爛は抱き締めるのを止めると、手を差し出す。

 

「それじゃあ、行こうか。」

 

 少女は爛の手を握る。爛は少女の手を握り返すと、少女と肩を並べて歩き始める。

 

 

 

 

 明け方。破軍学園にて。寝ていた六花たちは、一番始めに起きたジャンヌが、爛がいない事に気づく。

 ───が、六花たちは何かに反応する。

 

「むぅ……。また、女の誰かを連れてくる気だね……。爛は……。」

「マスターはいつも……、誰かをつれてきて……。私たちの気持ちも考えてくださいよ……。」

 

 六花たちは爛が女性を連れてくると感じとり、目のハイライトを消す。

 

「ただい………うぉぉ!?」

 

 噂をすればなんとやら。爛がドアから出てきた瞬間に、六花たちは爛の目の前に現れる。

 

「……やっぱり連れてきたんだ………。」

 

 六花はジト目になり、爛の後ろを見る。その後ろには、爛が連れてきたであろう少女がいた。

 

「仕方ないだろう。俺の………マスターなんだから。」

「えっ………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘘!?」

 

 爛から言われたことに、リリーは驚いて目を疑った。

 

「本当だ。」

 

 淡々と答える爛を見て、嘘はついていないと見えてしまう。

 

「………誰ですか?」

 

 タマモはすぐに連れてきた少女が誰なのかを尋ねる。

 

「あぁ、彼女は『曙 聡美(あけぼの さとみ)』。実質、俺のマスターだ。」

 

 聡美は爛の腕に抱きつくようにする。それを見た六花たちは嫉妬のオーラを放つ。

 

「………………(じぃ~)」

「どうした?」

「………………(じぃ~)」

「だから、どうしたんだ?皆して。」

「………………(じぃ~)」

「いや、言ってくれないと分からないんだが………。」

「………………(じぃ~)」

「……俺にくっつくか?」

「うん。」

 

 爛が六花たちに屈した時であった。

 六花たちは爛をベッドに座らせると、全員で爛を囲んでくっつく。

 

「~~~~♪」

 

 六花たち(聡美込み)は機嫌を良くして、爛に抱きつく。爛は、自分の招いた事であることが分かっていたため、何も言うことはなく六花たちに体を委ねていた。

 

「………ひゃぅ!?」

 

 次の瞬間、爛は誰かに首筋を噛まれる。爛は女性っぽい言い方で驚くと、首筋を噛んでいる人を見る。

 

「………狐夜見?」

「……ご主人様………。」

 

 爛は首筋に甘噛みをした狐夜見を見る。狐夜見は首筋から唇を離す。

 これで終わったと思った次の瞬間。

 

「んっ………。」

「ん、んん!?」

 

 狐夜見が身を乗りだし、爛にキスをする。爛は驚いて、狐夜見の肩に手を置いて離そうとするのだが、何故か力が抜けて、上手く離すことができない。

 

「ん、ちゅ……、んんっ。ちゅる……、んはぁ………。」

「ハァ………ハァ………ハァ………。」

 

 ディープキスをされた爛は蕩けたような顔をして、力のない目で狐夜見を見つめる。

 

「ご主人様ぁ……。大好きですぅ……♪愛してますぅぅ…………♪」

 

 狐夜見は同じように蕩けながらも、爛を抱き締めて爛への愛を耳元で囁いていた。

 

「………!!!!」

 

 爛は狐夜見からの甘い息が耳にかかり、体を震わせる。

 

「……あれ?もしかして、ご主人様って………Mなんですか?」

「な訳ないだろ!」

 

 タマモから言われたことに、爛はすぐに反論する。

 

「冗談ですよ~。ご主人様がそんな訳ないのは知っていますから♪」

 

 タマモはクスクスと笑いながら爛の耳を舐める。

 

「ひゃっ……、止めてくれ……。」

 

 爛は快感から逃れるために体を捻らせる。だが、六花たちに体を抱き着かれているため、体を捻らせようとしても満足にすることもできず、六花たちは動く爛をがっちりと止める。

 

「ひぁ……くすぐったいって……言ってるじゃないか………。」

 

 爛はそう言うものの、六花たちは赤面しながらそう言う爛が可愛くて仕方なく、止めることができない。

 

「ぁぅ……。止めてくれよ………。ひゃぁ……。」

 

 爛は何度も六花たちを止めようとするが、六花たちは止まることを知らずに、どんどんとエスカレートしていく。

 

「ひゃっ!?」

 

 爛は六花たちの行動に驚く。服の中に手を入れられ、その感触に驚く。

 

「爛の体って温かいよね♪」

「そうだな!奏者はいつも優しいからだろうな!」

「それ、どういう意味だよ!?」

 

 六花がそう言うと、同じように爛の体に触れているネロも六花に同意して言うと、爛はネロの言ったことに、意味がわからずにツッコミを入れる。

 

「もう、いいか?………流石に、朝なんだから、朝食とらないと……。」

 

 時間を見れば、今は朝の七時。ほぼ一日起きている爛にとっては空腹であるのは確実だ。

 

「そうですね。マスターにもあまり苦労かけるわけにもいきませんし………。」

 

 総司は爛から離れ、ベッドから立ち上がる。それと同じように、六花たちも爛から離れていく。

 爛から離れていくと、爛はそのままベッドに倒れ込む。

 

「ハァ……、今日の朝食は頼むよ。眠いし……、俺は寝る。」

 

 爛はそう言うと、ベッドに横になったまま、寝息を立てて寝てしまった。

 

「あ、先輩も寝てしまったので、私たちは先輩がいつ起きてもいいように食事は作っておきましょう。」

 

 桜はそう言うと、タンスに片付けてあったエプロンを取り出すと、それをつける。

 

「じゃあ、私も手伝います。」

 

 タマモも桜とは違ったエプロンを取りだし、それをつける。

 二人がつけているエプロンは買ったものではなく、爛が編んだものである。この二人以外にも、欲しいと言った人には要望を聞いたあと、一日で編んでしまうほど、爛は裁縫が得意であるのだ。実際は魔力の糸をを使い、魔力制御の練習としてやっていたのが裁縫であり、いつの間にか得意になっており、様々なものまで編むようになったのだ。

 

「それでは、作りましょうか。」

 

 桜とタマモはその一言で料理を作り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある夢を見た。

 酷く、既視感のある夢だった。

 海の底での聖杯戦争。

 英霊として、サーヴァントとして呼び出された自分は、セイバーのクラスとしてマスターから呼び出されたからこそ、参じたが、彼がそこで見たのは思っていたのはまったくといっていいほど違う風景だった。

 目の前にいる自分を呼び出したマスターはそれほどの年齢ではない少女。

 

「貴方が、私のサーヴァントなの?」

 

 少女から聞かれたのはその事だけだった。彼が答えられるのはただひとつだけだった。

 

「あぁ。私は君のサーヴァントだ。君の身に令呪が有る限り、この身は君の剣であり、また盾でもある。そして、私はセイバーのクラスで召喚された。」

 

 彼は、そう答えた。いや、サーヴァントとして召喚された以上、彼はマスターには従うと決めていた。彼が嫌うことがなければの話だが。

 

「そう。なら、セイバー。頼みたいことがあるの。」

「何だ?マスター。」

 

 少女から頼みたいことを引き受けようとする彼は、少女からの頼みを聞いて絶句した。何故ならそれは───

 

「父さんと母さんを……殺して。」

 

 少女の家族を殺めなければならないということだからだ。

 

「……一つ尋ねるが、君はあの聖杯に何をかける?」

 

 彼は少女にそう尋ねた。聖杯は何でも叶う願望器。この聖杯戦争に参加すると言うのは、それほど聖杯を欲しいと思っているからだろう。

 だが、彼の思っていたこととは、違うものだった。

 

「妹が、幸せになってほしいと思っているの。」

 

 ただその一言だけだった。

 次の瞬間、光が放たれて、その夢は終わりを告げた。

 

 

 ーーー第57話へーーー

 

 


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