「シッ!」
総司が一瞬にして六花の背後に回り、刀を振るう。
「ジャマダァ!」
六花は刀を振り向き様に振るい、総司を斬ろうとするのだが、総司は六花の刀よりも低い体位でやり過ごすと同時に刀を振るう。
「遅い!」
総司は刀を振るうとバックステップで距離を取る。
「そこだ!」
ネロが総司と入れ替わりで六花を攻撃する。
「ジャマダッテェ!」
六花は地面に刀を突き刺し、魔力を高める。
「イッテルンダヨォ!」
六花の叫びにより、辺りは一瞬にして崩れる。
「ッ!?」
「えぇ!?」
リリーたちは落ちることはなかったが、周りにいた総司とネロが巻き込まれてしまい、落ちてしまった。
「コワセナイノナラ…………サキニコイツカラコワシテヤル…………!!!」
「ッ!六花……。」
六花は意識を失って倒れている明の方を向く。爛は己の体が戦慄したのを感じると、明を抱き締めたまま、神経を集中させていた。
(いや、これは先にやった方がいい。でないと、ネロたちが……)
明を横にさせ、爛が立ち上がろうとしたとき、崩れた穴から二つの影が出てくる。
「二人とも!無事だったか!」
爛は二人が戻ってこれたことに、安堵したが、暴走している六花やその六花と戦っているリリーたちのことも心配していた。
(俺は……どうすれば……。)
爛が迷っている間、ネロたちは明のところへと行かせないように、六花を止めていた。
次の瞬間、ネロと総司が動き出す。
「我が才を見よ!万雷の喝采を聞け!」
「一歩音超え…、二歩無間…、三歩絶刀!!」
ネロは詠唱する。総司は一歩ずつ進み、詠唱する。そして、三歩で六花の目の前に辿り着く。
「《
「座して称えるがよい……黄金の劇場を!」
総司が宝具を使用し、六花を穿つ。ほぼ同時ではなく、まったく同じタイミングで突きが三回六花を襲う。
穿つと、ネロの詠唱が終わったのか、周りの景色が変わり、赤と黄金の劇場が見える。
「すぐに決めるぞ!」
ネロは赤い剣を構え、六花に向かって突撃する。
「《
交錯すると同時に、ネロは赤い剣を振りきり、六花を切り裂く。そしてそのあと、六花の下側から、炎が吹き出る。
「アァァァァァアアアアァァァァァァァ!!!」
「六花………!」
爛はこれ以上、六花が傷つくのを見ていられなくなってしまっていた。
そして、爛は決心する。自分の手で、六花の暴走を止めると。
「明……、少し、待っててな。」
応急処置で腕を傷を抑えた爛は、明の頭を撫でると、横にさせ、立ち上がる。
「みんな!時間をとらせてすまない。ここから先は、俺一人でやる!」
『ッ!?』
爛から発せられた言葉に、全員が驚く。
「マスター、本当に大丈夫なのですか?」
リリーは爛の辛さを知っている一人でもあるため、爛を心配する。だが、爛はリリーに笑みを見せて話す。
「大丈夫だ。……でも、辛いと思ってるよ。だけど、俺はやらなくちゃいけない。」
爛は真剣な表情になり、六花の前に立つ。
「なぁ、六花。俺はお前に刃を向ける。お前は……いや、聞いても意味がない……か……。まぁ、いいさ。来てくれ、ゲイ・ボルク。」
爛はゲイ・ボルクを顕現させると、それを握り、体勢を低くする。
「その心臓刺し穿つ………。」
爛はそう呟くと、魔力を高める。ゲイ・ボルクに魔力を送り込む。その瞬間、ゲイ・ボルクが赤黒く光る。
「《
爛はゲイ・ボルクを握り込み、一瞬にして六花を穿つ。しかし、幻想形態で突き刺したため、六花は意識を失うこととなった。真っ白な肌は元に戻り、黒い力は消えていった。
「六花……。次…目が覚めた…ときは、いつもの…六花だと…いい…な……。」
爛はそう呟くと、魔力切れを起こして、六花と同じように意識を失い、倒れる。
「マスター!」
リリーが一目散に駆け出し、爛の状態を見る。
「良かった。意識を失ってるだけですね。」
リリーは爛が死んでいるわけではないのを知ると、爛を抱きかかえる。
「とにかく、ここから出ましょう……。」
リリーは周りからの視線が気になっていた。……いや、気になっていたと言うよりも、イライラするように感じていた。
周りからの目線…、それはやはり、ランクだけで人を見下すような目線でしかなかった。
好意を寄せているリリーたちからすれば、本当にイライラする目線でしかなかった。
「えぇ、早く行きましょう。私…ここにこれ以上居ると、人を殺してしまいそうです…。」
ジャンヌは六花を抱えると、暗く重い声でそう言った。
この感情はジャンヌだけじゃない。ネロもタマモも総司も…誰もがそう感じた。
総司が明を抱えて、訓練場から出ていく。
「……マスター……、貴方は、どうして私たちを庇うのでしょうか?苦しいことも、悲しいことも、様々な負のものを貴方は背負ってきました。ですが、どうして貴方だけなのですか?私たちは、どうしたらいいのですか?マスター……。」
リリーはそう呟き、涙を流す。その涙は抱きかかえた爛の胸に落ちていた。
「……え!?」
明を運んでいた総司が驚く。リリーたちは総司の方を見るが、全員が明の状態に驚いていた。
「右腕が……!」
右腕が、もとに戻っていたのだ。切断されていた訳でもなく、薄皮一枚すらないような状況なのに、右腕がもとに戻っていると言うことはほぼあり得ない。
「もしかして……。」
タマモは明の右腕が治ったことに、何か分かっているようだった。
「とにかく、マスターたちをベッドに寝かせないと…。」
リリーたちはすぐに自室の方へと向かい、爛たちを横にさせる。
爛たちをベッドに寝かせてから、三時間後。
「ぅ……ぁ……。」
「マスター!」
爛が目を覚ます。ジャンヌはそれにいち早く気づき、爛の側に行く。
「ジャン…ヌ…?ここは……。」
「マスターの部屋ですよ。」
「あぁ……、そうか……。」
爛は目を覚ますと、まだ意識がはっきりとしていないのか、自分がどこにいるのかが分かっていなかった。近くにいたジャンヌの存在に気づくことができたため、ジャンヌに場所を聞く。
場所を聞くと、爛は安堵したような顔をした。
「ありがとう………。」
爛は小さな声でジャンヌに礼を言う。
「マスター?何か言ったんですか?」
爛が呟いたことに、ジャンヌは聞き返すが、爛はジャンヌに微笑むと、何も言わなかった。
「…………。」
爛はジャンヌをじっと見つめる。
「マスター?」
「ん……ジャンヌ。」
爛は両手を広げる。その姿は可愛らしく、顔を赤くしながらジャンヌを待っていた。
「マ、マスター?一体、どうしたんですか?」
「ん…ジャンヌたちに構ってなかったから…、今ぐらいなら、構ってやれるから………。」
爛は消えてしまいそうな声で、理由を話す。その理由を聞いたジャンヌは、爛と同じく顔を赤くする。
「じゃあ…お言葉に甘えて……。ん……。」
ジャンヌはベッドの上へと上がり、爛を抱き締める。爛も同じようにジャンヌを抱き締める。
「やっぱり、マスターの上に上がっても、まだ低いのですね……。」
「ん、まぁ、それだけ身長の差はあるからな……。」
ジャンヌの言っている通り、ジャンヌの身長は159㎝。爛の身長は174㎝。結構な差があるのは確かだ。
「………………。」
「……………あの…、マスター?」
爛が何も言わずに、ジャンヌを抱き締めていることに、ジャンヌはその事に驚きと疑問が隠せなかった。
「……ん?」
「どうして……、強く抱き締めるんですか?」
ジャンヌはその事を聞くと、爛は先程よりも強く抱き締める。
「マ、マスター……。」
ジャンヌは驚いているが、爛が自分を構っていてくれていることで、幸福感を感じていた。
「だって………。」
「?」
爛が小さく呟く。ジャンヌは至近距離に居たため、聞こえていた。
「失う夢を見たんだよ………。ジャンヌたちを失う夢を……。だから、現実で失いたくないから……。」
爛の声は消え入りそうな声で、悲しい声だった。
「マスター。」
「ジャンヌ………?」
ジャンヌは爛を強く抱き締めた。
「私たちはここにいます。確実とは言えなくても、私はここにいます。」
「あぁ………うん……ありがとう。」
ジャンヌの言葉で、爛は安心したのか、抱き締める力を弱めた。
「ジャンヌ……やっぱり……、まだこのままで……。」
爛は弱めた力をまた強くした。ジャンヌは何も言わずに、爛を抱き締めた。
「ジャンヌ…、ありがとう……。」
爛は自分の体をジャンヌに委ねた。ジャンヌは爛が自分に体を委ねて、眠ってしまったことに気づく。
「寝てしまいましたか……。私ももう少し、このままで。」
ジャンヌはしばらく爛を抱き締めることにしたため、着けていた鎧を外す。
鎧を外すと、爛を抱き締め、ベッドに横になる。
「お休みなさい。マスター。」
ジャンヌは爛の額にキスをすると、そのまま眠りについた。
ーーー第55話へーーー
題名を考えるのが……w
コラボ回のネタが辛い……。
次回はほのぼのしたのかな?