落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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第50話~爛の怒り、連盟の策略~

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

 

 爛は肩で息をしながら、桜の方を見ていた。桜はこちらに向かって歩いてきており、その周りから、黒い触手のようなものまで出てきている。

 

(もう・・・あれしかないのか?)

 

 爛は最終手段であり、最悪の手段であるものをしなければならないと、脳裏によぎる。

 

「っ!」

 

 爛は、はっとし、すぐにバックステップ、桜との距離を稼ぐ。

 

(・・・でも、それ以外で止める方法は・・・。)

 

 爛は思考を巡らす。最終手段を使わずに、桜を助ける方法を考え出す。

 しかし、桜はその隙を与えさせない。

 

「・・・!しまった!」

 

 桜の黒い触手は爛の足首を掴み、爛をそのまま壁の方へとぶつける。

 

「ガッ・・・ハァ・・・。」

 

 爛は口から血を吐き出してしまう。そのまま何度も触手に叩きつけられたりする。

 

「グッ・・・。」

「アハハハ!先輩、もっと耐えて!もっと叫んで!」

 

 桜は狂ったように、爛にそう言う。しかし、爛はその通りにはならない。叩きつけられてもなお、爛は思考を巡らす。

 

「・・・来い!ゲイ・ボルク!」

 

 爛は魔力を代償に血の色のように赤い槍を生成する。

 

「《突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)》!!」

 

 爛は魔力を纏ったゲイ・ボルクを桜に投げる。

 ───が、それは効果的な攻撃にならず、避けられてしまい、逆に爛が傷つくことになる。

 

「グッ・・・ガァ・・・。」

 

 爛は触手に投げられ、壁にめり込むように激突する。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

(これは・・・、想像以上だ。)

 

 ここまでの力を出すことは桜にはできない。

 ・・・であるとすれば、別のものに頼っていることであると、爛はすぐに気づく。となれば、それを破壊すればいい。それが二度と使えないものにすればいいのだ。

 

「・・・仕方ないか・・・。助けるために、幻想形態(刃引き)はしておかないとな・・・。」

 

 爛はゲイ・ボルクを手に取り、集中力を高めて、桜に向かって構える。

 

「すまない桜・・・。一度だけ・・・、お前を穿つ・・・。」

 

 爛はそう言うと、魔力を高めて、ゲイ・ボルクに纏わせる。

 

「突き穿て・・・!」

 

 爛はそう言うと、桜に向かって走り出す。桜は触手を用いて、爛を止めようとするが、爛はそれを見切り、次々と避けていく。

 ・・・そして・・・

 

「《内より出でし(ゲイ・ボルク)・・・」

 

 爛は突きの体勢のまま、桜を穿つ!

 

朱槍の槍(ロストミニゲル)》!!」

 

 すると、桜の身体から、ゲイ・ボルクが突き出てくる。それを受けた桜は、意識を失い、黒い気配が消えると同時に、床に倒れる。

 

「・・・・・・。」

(許さない!許すわけにはいかない!桜を・・・道具として扱ってきた貴様らには・・・、)

「絶対に・・・、許さなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」

 

 爛の怒りの叫びが木霊した。桜を道具として扱ってきたことを。爛は許せるわけがないのだ。いや、許すわけがない・・・!

 爛はすでに気配で察知していた。周りに連盟がいることを。

 だから・・・、ここで全てを殺す・・・!

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 爛の叫びにより、爛の体は変わった。髪は黒から金に、纏った雷は赤と青に変わり、体の至るところにはチェーンのようなものが巻き付いていた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・!」

 

 爛はゲイ・ボルクを手に取り、それを天へと投げた。そして、それは訓練場の天井をぶち破り、天へと向かっていく。それが、戻ってくるときは、なんと複数もの槍が、爛が投げたところに戻ってくる。

 

「詠唱なんぞ言わなくとも伐刀絶技(ノウブルアーツ)は使える!貴様らは・・・、死へと沈めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 爛の叫びにより、槍はさらに強い魔力を纏い、急加速で落ちてくる。

 

「《刺し貫き穿ち全てを死へと沈ません(ゲイ・ボルク・レイン・デッドエンド)》ォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 槍は次々に訓練場に突き刺さる。爛の意により、意識を失っている桜たちには当たらないようにしている。

 ・・・爛が目を向けた先には、血だらけになって複数もの赤い槍に突き刺されているニンゲンであったものを見る。

 

「・・・ぁ・・・。」

(ここで、失うわけにはいかない・・・!)

 

 爛は膝から崩れ落ちるが、意識を失ってしまって行かないと、自分自身に鞭を打つ。

 

(〈鬼神・・・解放〉・・・!)

「《三度、生死の瀬戸際に立ち続けても》・・・。」

 

 爛は〈鬼神解放〉を発動し、解放することで使える特殊な伐刀絶技を発動する。

 すると、爛を緑色の光が包み込み、爛の体を治癒していく。

 

「クッ・・・、早く、桜たちを運ばないと・・・。」

 

 爛は自身の体を無理矢理立たせ、桜たちを抱える。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

(クソ!こんなときに黒乃は何をしている!)

 

 爛は、この事態をすぐに察知しているであろう黒乃が来ていないことを感じていた。

 

 

 ーーー理事長室ーーー

 

 黒乃はすぐさま動いていたのだが、連盟の言葉により、足止めを食らっていた。

 

「何故です!生徒が危険だと言うのに、我々を動かさないのです!」

 

 何度も黒乃が行こうとするのだが、相手も中々通そうとはしない。

 すると、理事長室のドアが開け放たれる。そこに立っていたのは、服が血に染まっており、赤い槍を持っている爛であった。

 

「散れ。《刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)》。」

 

 赤い槍から放たれる生命を必ず奪い取る。黒乃を通さないようにしていた連盟を刺し殺していく。

 

「・・・・・・。」

 

 爛は何も言わずに、ただ立ち尽くしていた。

 

師匠(せんせい)?」

「・・・黒乃、言ったはずだ。俺は、桜を止めろと。寧々達はどうしたんだ?」

「寧々は・・・。」

 

 黒乃が爛の問いの答えに詰まっているのに気づくと、爛はため息をつく。

 

「そうか・・・。何も言わなくていい、黒乃。俺はすぐに奥多摩の方に戻る。後始末、頼んだぞ。」

「・・・わかりました・・・。」

 

 爛は奥多摩に戻ると言うと、すぐに部屋から出ていってしまった。

 黒乃は、爛の気配が感じられなくなると、理事長室の床に座り込んだ。黒乃の額には、冷や汗が流れており、震えていた。

 

(・・・あれだけの殺意を放っている師匠は初めてだ・・・。一体・・・、どれだけの怨みを、連盟に持ってるのだろうか・・・。)

 

 黒乃は、震えていた。恐怖していた。あれほどの殺気を放っている爛に。一体どれだけの怨みを持っているのだろうかと、どれだけ連盟の人間を殺せば、爛の怨みが晴れるのだろうかと、考えてしまうと、自分が殺されるかのように生々しいものとなっていく。

 

「・・・とにかく・・・、こっちは後始末をしないとな・・・。」

 

 こうしていられないと考えた黒乃は立ち上がり、訓練場の修理などをしていく。

 

 

 ーーー奥多摩の合宿場ーーー

 

 一輝達は、奥多摩の合宿場の近くにあった山を登っていたのだが、途中で謎の岩人形に襲われ、合宿場まで戻ってきていた。

 

「はぁ・・・とんだ災難だったね・・・。」

 

 一輝は疲れながらも、合宿場の中に入ろうとする。

 ・・・が、また新たな災難が、一輝を襲う。

 

「黒鉄、客のようだ。」

 

 砕城が見た先には、黒い高級な車が止まっており、そこから出てきたのは、黒鉄家の分家の身であり、支部連盟倫理委員会委員長の赤座守。それを見た一輝と刀華と愛華は一瞬にして、内心で怒りに近いものを感じていた。

 それはなんといっても、爛の存在である。爛は、力というものだけで狙われ、そして妹を殺されたことを、それをやったのは連盟であると、三人は聞いていた。だからこそ、その感情が赤座へと向けることが出来るのだ。

 

「・・・何のようです?」

 

 刀華は怒りを覚えながらも、赤座に問う。

 すると、赤座は胡散臭い声を発すると、とあるものを見せてきた。それは、一輝とステラのことについて書かれている記事であった。

 しかし、全員して、このときに気づいた。この男が裏で策略を起こし、一輝を底辺へと叩きつけた一人の男であることを。

 

「・・・なんのためにここに来たのです?」

 

 刀華と愛華は、今すぐにでも、赤座を切り刻みたいと思っていた。しかし、そんなことをやってしまったら、学園を退学しなければならないことになる。連盟そのものを潰してしまわなければならなくなる。

 

「それは、一輝くんを連盟でお預かりするためですよ。ムッフッフ~。」

(このクソ男が・・・、爛君を・・・!)

 

 刀華は自身の掌を握りしめた。それこそ、爪が食い込んで血が流れてしまうほどに。

 ・・・すると、何処からか気配を感じることが出来る。それは・・・、空からだ。

 

「一撃で仕留める!」

 

 爛はゲイ・ボルクを構え、一気に赤座へと投げる。

 

「っ!」

 

 赤座はこれに気づき、すぐにそこから離れる。

 

「チッ!」

 

 爛は舌打ちをしながらも、ゲイ・ボルクが地面に突き刺さったことで赤座を離すことができた。

 爛はすぐに地に降り立つと、ゲイ・ボルクを構える。

 

「爛!」

「用事を早く済ませてきた!とにかく、一輝!ステラ!絶対に捕まるな!」

 

 爛はそう言うと、周りへと視線を向ける。一輝たちも同じように視線を向ける。

 すでに、一輝達は囲まれていた。

 

「おやおや、すぐに片付けてきたのですか。」

「俺が手加減(刃引き)するとでも言うのか?まぁいい。死んでも・・・俺は知らん。」

 

 爛はゲイ・ボルクを地面へと突き立てる。すると、爛たちを囲んでいた連盟の人間を串刺しにしていった。

 

「・・・六花ぁ!今だ!」

 

 爛は六花を呼ぶ。すると、雷鳴と共に、六花が上空から現れる。

 

「お待たせ!爛!それじゃ・・・行くよ!《雷よ、道を照らせ(プラズマジック・ネクト)》!」

 

 六花が伐刀絶技を使うと、辺りは閃光のように眩しく光る。

 

「よし!行くぞ!」

 

 一輝達は爛の気配が動いたのを感じ、爛の気配を頼りに、奥多摩の合宿場から離れていく。

 

 

 ーーー???ーーー

 

 爛とは別のところで、一人の男が動き出す。

 雷を纏い、海を渡る。

 それは、誰もが知っている人物である。

 常識はずれな行動を平然と起こす男は、一人しかいない。

 全てを雷で切り裂くことができる男。

 今、とある作戦のために動く。

 

 

 ーーー第51話へーーー

 

 




最近、ここに書くネタに困ってます。

あ、でも、一つだけ。fgoで十連ぶんまわしていたら、メルトリリス来ました!やったぜ!

以上です。次回、謎の男が動き出す。

お楽しみに!

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