落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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さあ!原作とは少しだけ順序を変えます!
今回は、爛と一輝とステラがあの合宿場へと向かいます。因みに、六花達が来れないことについては、理由を考えております。




第49話~悪夢の始まり~

「風が気持ち良いわね~♪」

 

 そう言いながら、爛が運転する車から窓の景色を眺めるステラ。

 因みに、爛が運転している車に乗り込んでいるのは、九人乗っている。車どころかバスに近いもので運転しているのだが。爛、一輝、ステラ、刀華、愛華、カナタ、泡沫、砕城、兎丸でとある場所に行っていた。

 その理由とは、突如、黒乃に呼び出された三人は、奥多摩の合宿場へも向かうことになった。そして、それには生徒会が同行するとのこと。そのことを知った爛は深くため息をつくと、行くことを承諾。そして、今に至る。

 

「自然を近くにすることはあまりないからね。あると言っても、学園の裏側の方だけどね。」

 

 一輝の言う通り、中々自然の景色を見ることなどない爛達。

 

「だな。そんなに見ることがないからな。俺の実家の方は雪景色が凄いけどな。」

 

 爛はそう言いながら、車の運転に集中する。その後も、特に何もなく、奥多摩の合宿場にたどり着くと、ある意味で大変なことが起きてしまったのである。

 

「セェェェェェヤァァァァァァ!」

「おいおい!打ち過ぎだろ!力ぐらいセーブしろ!」

 

 爛はそう叫びながらも、ステラと兎丸から襲いかかってくるバドミントンの羽根を打ち返す。

 それを穏やかにみている生徒会と、少しだけ困惑している一輝である。

 

「何だろう。あのバドミントンじゃない良い感じのスポーツ・・・。」

「いやぁ、何にしても助かる。某達が恋々の相手をせずに済むからなぁ。」

「ホント、体力バカは相手するのに疲れちゃうんだよね~。」

「そうですわね。」

「まぁ、爛君が相手してくれるから私たちも穏やかにいれるんだけどね。」

「お姉ちゃんに同意だよ。私は生徒会に入ってはいないけどね。」

「あれ?そうなんですか?」

 

 一輝は生徒会に入っているであろう愛華が入っていないことに、驚いていた。生徒会の人達と居るからか、生徒会に入っていると思ってしまうのだ。

 しかし、いまだに続いているバドミントンのラリー。だが、あれだけ全力で打っているのにも関わらず、バドミントンのラケットと羽根が壊れていないことに、矛盾さえ感じてしまうのだが、愛華から出た答えは・・・

 

「あぁ言うのはね。何も思わないことが大切だよ。」

 

 と、言われてしまったために、一輝は何もつっこむこともせずに、言われた通りにしたのであった。

 

「ふぅ~、汗はかいたが、中々にハードなものだったな。」

「あれだけやってまだ疲れてないとか・・・、どれだけだよ・・・。」

「でなければ50㎞はやっていけないからな。それなりに鍛えてるわけだ。」

「いや、それを鍛えてるとは言えるのかい?」

 

 爛は汗をタオルで拭きながら、刀華が差し入れてきたスポーツドリンクを飲みながらそう言うと、ステラは素直に爛の体力の多さに突っ込む。爛は平然とした様に答えるのだが、一輝までもが、その事に突っ込んでしまう。

 そして、爛達を奥多摩の合宿場に呼び出した訳・・・、それは───、

 

「合宿場の掃除・・・ですか?」

「はい。奥多摩の合宿場を選手の皆さんが使えるようにと、生徒会でやっていたのですけれど・・・、」

「案の定、人手が足りなくて困ってたんだよ~。いやぁ~、頼り概のある後輩で助かったよ~♪」

「そういうことだったんですね・・・。」

(あぁ~、そういうことなら、連れてこなくてよかったな。あいつらを。)

 

 合宿場の掃除だったのだ。

 何故爛達が呼ばれたのかを、刀華が説明を途中まですると、泡沫が続きを話し、爛達は呼ばれたことに納得をするのであった。そして、爛は六花達を連れてこなくてよかったと安堵するのであった。

 ・・・が、ここから、最悪の展開へと発展していくのであった。

 全員が話ながら、順調に合宿場の掃除をしていくと、誰かの生徒手帳が鳴った。

 

「・・・誰のでしょうか?」

「・・・これは、多分俺のだろう。」

 

 爛がそう言いながら、自分の生徒手帳を取り出すと、黒乃から電話が来ていたのであった。

 爛はなにかと思い、黒乃からの電話に応じる。

 

「黒乃?」

『・・・大変言いにくいことがあるのですが・・・、』

「?なんだ、言ってみてくれ。」

 

 黒乃が躊躇いがちに爛と電話をしている。爛は先程よりも疑問が深まり、黒乃から聞こうとする。

 ・・・それが、爛と一輝の悪夢の始まりであった。

 

『連盟がこちらに来て、貴方の義理の妹である敷波と、黒鉄妹を戦わせようとしているのです。』

 

 それを聞いた瞬間、爛は硬直し、顔を青ざめた。

 

「おい・・・、聞き間違いじゃないよな?桜と珠雫が・・・、戦う・・・?」

 

 爛は聞き間違いじゃないかと思い、黒乃からもう一度聞こうとするのだが、それは───、

 

『・・・嘘ではありません。現在、試合が開始されています・・・。』

 

 根も葉もない嘘。ではなく、本当のことであった。本当のことを知ってしまった爛は、全身から汗を流す。

 

「爛?」

「・・・黒乃、今すぐ試合を止めろ。その試合、必ず死者が出るぞ・・・。」

『無理です・・・。何度も止めようとしているのですが、止めることができません!』

「・・・っっっっっっっっっっっっ!!!!!!!」

 

 爛は奥歯を強く噛み締めた。爛の中で、最悪の展開が描かれようとしていた。

 

「黒乃!今からそっちに行く!絶対に・・・、絶対に桜を攻撃させるな!桜は元々、戦うことができないんだ!できたとしても、それは最悪の事態を招く!」

『分かりました!こちらも、できる限りのことはやらせていただきます!』

「あぁ、頼む!」

 

 爛は黒乃に叫ぶようにそう言うと、通話を切り、ジャージから制服へと着替える。

 

「な、何があったの・・・?」

「すまない。今から破軍に戻らなければならない。急用が滑り込んできた。砕城!俺が居ないときの車は頼む!俺はすぐに出る!」

「分かった。某に任せよ。」

 

 爛は砕城に車のことを頼むと、爛は合宿場から飛び出し、筋肉をフル稼働させて破軍へと目指す。

 

 

 

 ーーー破軍学園、訓練場ーーー

 

(嘘・・・。)

 

 自分は、どれほど目の前の少女を侮っていたのだろうと、珠雫は後悔する。

 目の前にいる少女は黒い刃で自分を引き裂き、圧倒的な力の差で自分を殺そうとして来た。

 なすすべのなく目の前の少女の思い通りに動かされ、そして痛め付けられてきた。何より、自分の兄の過去よりも孤独なものだと感じた。正直、ここまで恐怖を感じたことはないに等しかった。何故なら、自分はどんなことをしても、守られる立場であったからだ。

 覚悟をして来たのは当然だ。だが、それでも超えられないものがあると、このときに珠雫は知った。

 

(私、死んじゃうのかしら・・・。)

 

 迫り来る少女を見て、珠雫はそう思った。颯真達も駆けつけてくれたのだが、想像以上の力の前に、エクソシストを持った颯真でさえ苦戦。そして、そのまま少女の作る闇に落ちていったのである。

 自分もその闇に落ちるのかと思うと、全身から恐怖が込み上げてくる。

 すると、少女は珠雫とは別の方を向いた。

 

(・・・え?)

 

 珠雫は驚いていた。普通ならば、今はこの学園に居ない人物が居たのだ。

 

「爛・・・さん・・・!」

「声は出さない方がいいぞ珠雫。今の桜は、人間が相手を関知する能力・・・視覚・・・聴覚・・・まぁ、感じることはできるであろう嗅覚でさえ、彼女は索敵に使う。まぁ、あとは聴覚の発達のせいでこちらが少しでも動くと、動きがバレてしまうことが面倒だがな。」

 

 爛は珠雫を抱えており、少女───、桜の方を見ながら、冷静にそう言った。

 

「・・・珠雫、ここから離れることはできるか?」

 

 間を開けて言われた爛の一言。珠雫は頷くと、爛は抱えていた珠雫を降ろし、固有霊装(デバイス)を顕現させる。

 

「ここは、俺がやる。」

「・・・分かりました。気を付けてください。」

 

 珠雫は爛にそう言うと、フィールドから離れていく。爛は、珠雫が安全な場所までいったのを感じると、桜に切っ先を向ける。

 

「・・・・・・。」

 

 二人とも何も言わないまま、爛は桜に刻雨の切っ先を向けている。

 桜は、爛に黒い刃を向けていた。

 

「・・・大体分かっていたことだが、やはり仲間の識別ができないのか・・・。」

 

 爛は悲しい顔をすると、刻雨の切っ先を下ろし、地面に突き立てた。

 

「・・・いいや、それとも・・・、聖杯に支配されてい(・・・・・・・・・)るのか?(・・・・)

 

 爛は桜に向かって、そう問うのだが、桜からの返答はない。

 

「・・・答えは返ってこない・・・か。」

 

 爛はこれ以上の問いは意味のないことだと感じると、刻雨を手に取る。

 

「戦いで答えを知った方が早いのか・・・。行くぞ!」

 

 爛は腰を低く落とし、一気に踏み込み、桜に向かって走り出す。

 

 

 ーーー奥多摩の合宿場ーーー

 

 一輝達は爛が出ていってしまった後、掃除を続けていたのだが、話は続くことがなく、沈黙した状態が続く。ただ言えることは、全員して爛のあの焦りように驚いているということだ。

 

(一体・・・、爛はどうしてしまったのだろう・・・。最近はすれ違う程度になってきて、・・・何となくだけど、嫌な予感がする・・・。)

 

 一輝は、これから起きようとする出来事に嫌な感じがしていた。・・・決してそれは、間違いではない。

 

 

 ーーー???ーーー

 

 場所はコロコロと変わり薄暗い部屋。一人の男がナイフを一本手に持ち、ソファーに座っていた。

 

「・・・お前には苦痛が降りかかる。・・・あの事については、私がやってものではあるが・・・、彼女を操り、どれだけお前が揺れるのか・・・。楽しみにさせていただくぞ。」

 

 男は持っていたナイフを部屋にある的の真ん中に投げる。そのナイフは的の真ん中に刺さり、深く刺さっていた。

 

「どれだけ私と『ヤツ』を楽しませることができる?『前夜祭』を楽しみにしているぞ・・・。月影・・・。」

 

 男は不適な笑みを浮かべながらそう言った。そして、一瞬の内に、男はそこから姿を消してしまった。

 

 爛と一輝の本当の苦痛は、ここから始まる。この苦痛が、二人にどれだけの傷を与え、そして何を失わせるのだろうか・・・。

 

 ーーー第50話へーーー

 

 




久々の連続投稿!

これ書いたあとも続けざまに書いていきたいと思っております!はやく進めないと大変なことになりますから・・・。

次回!兄と妹の戦い!そして一輝たちのところでは・・・?

お楽しみに!

カナタ「・・・私、そんなに喋っていませんよね?」

ごめんよカナちゃん・・・。

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