落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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今回はIFはないんだな!




第48話~再びの災難、また英霊、過去~

「待ってください!ご主人様ー!」

「待てるかぁ!服を脱ぐことに躊躇わないお前達がある意味怖いし、凄いからな!」

 

 爛を追いかけるタマモは、爛にそう言いながら、どんどんと迫っていく。爛は、反論しながら、全速力で走っていた。

 そう。逃げ続けるのか、捕まるのか、爛は追いかけてきている彼女達が何を仕出かすのかを分かっているからこそ、逃げているのである。

 

「よっと!」

「あぁ!ご主人様!」

 

 残念そうに言うタマモを放って、どんどんと走り続ける爛。休んでいる暇は、無いようだ。

 

(・・・これが彼女だったらな・・・。大変な目に遭ってそうだ。)

 

 爛は『彼女』という存在に苦笑いをしながら、そう思うのであった。

 

「ふぅ・・・。この辺りは安全そうだな・・・。まったく、あいつらは限度を知らないのか・・・。」

 

 爛はそう呟きながら、壁伝いに歩いていく。

 すると、爛は何かに気づいたのか、ぴたりと足を止めた。

 

(この感覚・・・、まさか彼女か?)

 

 爛は自分の中にある感覚と、先程感じたものが同じであることに気づくと、とある可能性に行き着いた。

 爛はそれを確かめるのか、感じている感覚を頼りに、歩いていく。

 

「・・・!」

(間違いない!彼女だ!)

 

 爛は距離が近づくにつれ、感覚の強さが増していく。自分の感覚に確信を持ち、爛は駆け足で彼女のところへと向かった。

 

「・・・居た!」

 

 爛が声に出しながら、目を向けた先には、青い衣と銀色の鎧を纏った女性。

 しかし、爛の中には、まだ警戒があった。自分が連れ去られたとき、彼女と同じものを身に纏っていた女性が居たからだ。だからと言っても、彼女と、同じような彼女は違う。それを信じて、爛は彼女に近づく。

 

「・・・ジャンヌ。」

「・・・!マスター・・・?」

 

 爛は彼女をジャンヌと呼び、ジャンヌと呼ばれた彼女は、振り返り、自分を呼んだ爛を見て、マスターと呼んだ。

 ・・・つまり、ジャンヌは英霊・・・つまりサーヴァントであり、爛と契約していると考えていいだろう。

 二人は顔を見合わせると、同時に笑みを浮かべる。

 

「久しぶり、ジャンヌ。」

「はい・・・、お久しぶりです。マスター・・・。」

 

 ジャンヌはそう言いながら、爛のところへと歩いていき、彼を抱き締めた。

 

「・・・!ジャンヌ?」

「あぁ・・・、マスターの体温・・・。私を、温めてくれる・・・。離れたくありません・・・。離したくもありません・・・。私は、マスターに触れられるだけで、幸せです・・・。」

 

 爛はいきなりジャンヌが抱きついてきたことに驚くが、受け入れており、ジャンヌは爛を体温を感じると、目のハイライトを消して、ブツブツとそう言うのであった・・・。

 しかし、爛にはまた、ジャンヌとは別の感覚が来ていた。それも、嫌な予感と共に。

 

「見つけましたよ、マスター!」

「嫌な予感だけは当たるんだな、俺!とにかくジャンヌ、離してくれないか!」

「あぁ、マスター。マスター、マスター・・・。」

(ダメだこれ!・・・仕方ない。実力行使だが・・・。)

 

 爛は手っ取り早くジャンヌから抜け出すために、乗り気ではないが、ジャンヌの頸動脈に向かって、チョップで強打し、ジャンヌを気絶させると、爛はジャンヌを担ぎ、そのまま走り出した。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・!」

(まったく、こんなタイミングでジャンヌと会うとはね・・・。)

 

 爛はジャンヌと会ったことに、苦笑いをしながらも、自分を見つけて追いかけてくる狐夜見から逃げていく。

 

(・・・ん?窓が開いている・・・。)

 

 爛は奥に、開きっぱなしの窓を見つけ、後ろを見ると、相変わらず追いかけてきている狐夜見を見て、爛は奥の方へと走っていく。

 しかし、まだ爛は何も知らない・・・。その開いている窓が罠だということに・・・。

 

「これは好都合だな。じゃあ、ジャンヌをこう持って・・・、よっと!」

 

 爛はジャンヌをお姫さま抱っこに持ち変え、窓から飛び出すのだが・・・、それが悪手となった。

 

(げ、これはマズイ・・・。)

 

 爛が下を見たさきには、下で六花達が待ち構えていること。

 

(これはどうしようにもならんな・・・。仕方ない・・・、諦めるか・・・。)

 

 爛はすぐに諦めることにし、すぐに下に下りた。

 

「いつまで逃げてれば気がすむのさ~・・・。」

「何で私達から逃げるんですか~・・・。」

「分かってるって・・・、その・・・、悪かった・・・な・・・。」

 

 爛に迫ってくる六花達に謝ると、六花はジャンヌを抱えているのもお構い無しに爛の腕を掴み、自分達の部屋へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気絶しているジャンヌは、とあるものを見ていた。普通ならば夢に出てくるようなもの。だが、ジャンヌが見ていたのは、別れだった。

 

「すまない・・・、俺はここで別れないといけない・・・。」

「え・・・?嘘・・・ですよね・・・?」

 

 これはジャンヌ主観の夢。第三者の目線ではなく、ジャンヌ目線のものである。そして、目の前に居るのは爛。自分達と契約してくれたマスター。

 しかし、爛は別れないといけないということを言い出した。・・・これは、ジャンヌ達にとって、傷をつけられたようなもの。そう・・・、一生残るものの傷を。

 

「だけど・・・、いつか会える・・・。俺はそれを信じてる・・・。」

「マスター・・・。」

 

 爛は涙を少し流していた。自分達と会えなくなることに、悲しんでいるのだろう。それは、ジャンヌ達もまた同じ。

 

「例え、───には戻れなくとも、お前達とは俺の世界で会える。」

「奏者・・・。」

「ご主人様・・・。」

「「マスター・・・。」」

「本来ならば、俺と総司は居ないはずの存在なんだ。でも、俺という異常な存在は、その居ないはずの存在。という因果を壊した。それが、総司にも影響を与えたんだ。だから、流石に次も壊したくない。総司だけならば問題ないんだが、俺がいるとどうしようもない。だから俺がここから出ていくんだ。」

 

 ───という場所は、本来ならば爛は入ることなどできないのだ。英霊である総司ならば何にしろ。爛は『アレ』に参加していない。つまり、爛はいらない存在であるのは明らかであることだ。

 それを知っている爛は、元居た場所へ戻ると決めたのだ。これ以上、彼女らに影響を与えないために。

 

「分かってくれるか?」

「余は分かることができぬ!どうして奏者でなければならないのだ!余のために契約してくれた奏者が!どうして・・・、こうなるのだ・・・。」

 

 ネロは爛を元の場所に戻したくないと思い、そう言うのだが、爛が戻らないといけなくなったことに、同じように悲しみ、膝から崩れ落ちてしまった。

 

「私も、分かることができません。ご主人様を手離すなんて・・・、どうなろうが、行かせたくありませんし、行ったとしたら、呪いますよ?因果であったのならば、それも呪います。絶対に・・・、ご主人様が遠くに行ってしまわれるのは、見たくないのです!」

 

 タマモでさえ、爛に対してそう言ったのだ。互いに、知ってしまっているのだ。同じものを愛しているが故に、その相手がどういう感情なのかを、知ってしまうことができるのだ。

 

「お前達の気持ちはわかる。でも、これもお前達のためなんだ。これで俺がここに居続けたのなら、消滅を開始し始めるだろう。だから、俺がここから離れることで、お前達に安全にここで暮らすことができる。」

 

 そう爛は説明をするが、爛もここに残りたいと思っているのだ。しかし、爛には他にも大切な人がいる。ここにいる間にも、ネロ達も、他の大切な人も危ないことは確かなのだ。

 

「・・・今、俺ができる能力の中では、一人だけしか元に戻ることができる。だが、それ以外になると、確率は0になる。・・・だけれども、俺はお前達を忘れることはしない。お前達にも、忘れてほしくない。」

 

 爛は自分の服のポケットから何かを取りだし、ジャンヌ達の前に差し出す。

 

「手を出してくれ。」

 

 ジャンヌ達は爛の言った通りに手を出すと、爛はそれぞれの手の上に青い結晶のようなものを渡す。

 

「これは?」

「それは、俺の神領への切符みたいなものだ。神領っていうのは、神力を持つ者だけが持てる世界のこと。それがあれば、その持ち主の神領へと入ることができる。興味があれば来るといい。まぁ、神領は俺が居ないことが多い。その結晶が光を放つのであれば、神領に俺がいる。」

 

 爛はそう言う。すると、爛の足下から黄金に輝くものが出てきていた。

 

「・・・そろそろ時間のようだ。今ここではお別れだ。またいつか会えるときがくる。・・・さよなら。」

 

 爛は笑顔で別れの言葉を言うと、サーヴァントが消える時と同じように、消えていった。

 

「マスター・・・。」

 

 ジャンヌは爛から貰った結晶をみながら、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、爛は自身の煩悩とひたすらに闘争中である。その理由はほとんど分かるだろうが、六花達が爛にくっついているからである。爛が思っていることはただひとつ。

 

(誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)

 

 因みに、爛に好意を持っている組だけが爛の部屋に居り、一輝達はそそくさと自身の部屋に退散していったのだ。爛からすれば、これ以上にない拷問部屋。自身の声を聞いてくれることもなく、ただただ手錠をつけられた状態で六花達がくっついている状況。変態ならば喜んでいるのであろうが、爛は健全な男子だ。

 まだもうひとつだけ、爛には戦わないといけないものがある。それは恥ずかしさだ。くっついてくるのは自分に好意を持っている乙女であり、一人は恋人。自身もそれなりに好意を持っているのだが、爛の顔は今にも沸騰するかのように真っ赤に染め上がっているのだ。

 ・・・ただまぁ、彼がまだ良い方だな。と思っているのには訳がしっかりとある。それは───、

 

(うん。まだあの四騎が居ないだけ、マシな方なのか。あの四騎は・・・、下手するとヤバイことになってるから・・・。)

 

 爛は心の中でそう思いながら、煩悩と恥ずかしさに戦っていたのであった。

 その四騎をお目にかかることは出来るのであろうか?

 

 ーーー第49話へーーー

 

 




一週間たってしまいました・・・。ずんまぜん・・・。

因みに、爛があの四騎と心の中で言っておりましたが、一体誰なんでしょうか!

・・・意外と分かるものなのかもしれません。

それと、IFはどうしようにも、あのあと珠雫戦に入るので、通常ルートが珠雫戦に入るまでお待ちください!IFの日常は、ご自分の妄想でどうぞ♪

それでは、次回をお楽しみに!

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