───傷ついて欲しくなかったから、
───自分を変えるしかなかった。
※後書きにて、大事な事をお知らせしています。
桜と再会した次の日。爛は理事長室にいた。
「で、呼び出した用件は?」
「とある事について、聞かせてほしいのです。」
「・・・・・・。」
爛は黒乃からとある事を聞かせてもらいたいと聞いたとき、爛は目を閉じて、黙ってしまう。
「・・・刀華があれだけ理想的な考えを持った事について・・・。違うか?」
少し間をあけると、刀華の名前と、その理由をを口にする。
黒乃は刀華の妹の愛華から話を聞いたのだろう。爛の言ったことに、何も言わずに頷いていた。それを見た爛はため息を深くついた。
「聞くのはいいが・・・、まずあの事件について、話さないといけないが、いいか?」
「ええ。」
爛の問いに一声で返すと、爛は懐のポケットから煙草を取りだし、吸い始めた。
「・・・私から言うのも何ですが・・・、余り吸いすぎないようにしてくださいね。」
「何、元より吸いすぎるなってのは、香姉と明、六花とリリーに桜と、結構釘を刺されているからな。それに、吸うのは1本程度だ。安心しろ。」
爛はそう言うと、煙草に火をつけ、口にくわえる。
爛の実家は新潟にあり、刀華と愛華とは、離れた親戚になる。幼い頃から三人は一緒に居たためか、宮坂家と東堂家は仲のよい親戚であった。
「また負けた~。」
「まぁ、前よりは強くなってるから、そんなにならなくてもいいけどな。」
刀華と爛は、竹刀で打ち合いをしていた。剣の基本を一から鍛えるように、二人とも竹刀でやっていたのだ。
「少し休憩しよう。流石にぶっ続けは危ないぞ。」
「爛君の言いたいことは分かるけど・・・、まだ鍛えさせて。」
「どうして?」
いつもならば、爛の言ったことに賛同し、休憩をするはずなのだが、刀華はそれを否定した。
「もっと・・・強くなりたいから・・・。」
刀華の答えはそれだけだった。普通ならば納得の行くはずの答え。しかし、爛には思うところがあった。
「まぁ、いいんだけどさ。・・・刀華。何か焦ってないか?」
「焦ってる?そう、爛君には見えるの?」
「あぁ。何か、焦らないといけないような事があったのかと。・・・まぁ、大体は予想がついてるけどな。」
爛には刀華が焦っているであろう理由には、爛にも、同じような事があったからだ。
「・・・この前の事件からだな。お前が焦ってるように見えたのは。」
「そう・・・。」
爛が暗い顔になりながら話すと、刀華もその事を知っているのか、同じように暗い顔になってしまった。
そう。あれはつい最近起きてしまった事件。
爛は刀華たちに会いに行こうと、『若葉の家』というところに来ていた。そこは、孤児が暮らす施設であり、様々な理由でここで住んでいる孤児がいる。
そして、刀華と愛華も、その孤児の一人であった。東堂家は刀華と愛華を残し、亡くなった。
そのすぐ後に、爛が来た。爛は血相を変えて、刀華と愛華を引き取るところを探した。
そして、刀華と愛華を引き取ったのが、貴徳原財団が経営している若葉の家。
そこには、若葉の家には泡沫が居たのだ。そしてこのとき、刀華たちは泡沫と知り合った。そして、カナタも。
初めは、ここに慣れるのが大変であったと、爛は記憶している。刀華たちが若葉の家に住むようになってから、時々顔を見せに行っているからだ。
ただ、問題があった。それは、若葉の家を狙っての事件。若葉の家に、親に見放された孤児がここに来ていたのか、それを狙って殺し屋が来たのだ。
しかし、
だが、現実はそこまで理想的なものではない。その殺し屋は拳銃を持っていたのか、死に間際に引き金を引き、その孤児の頭を貫いたのだ。
それも幼い子供。一瞬にして生きることができなくなってしまったのだ。
刀華たちは悲しみにうちひしがれた。爛は、その時居たのだ。だが、若葉の家のみんなが好むものを買いに行っていたため、爛が戻ってきたときには、若葉の家の前に、死体が二つあった。
・・・その時に、刀華が言った言葉は───、
「・・・ごめんね。爛君。守れなかったよ。」
その言葉だけだった。爛は刀華の側に行くと、刀華を優しく抱き締めた。刀華は泣きじゃくった。涙が枯れるほどに。
刀華の涙が止まると、爛は若葉の家で二人に話をした。
「・・・なぁ、二人に聞いてもらいたい話がある。」
「何?爛くん。」
「とある少年と、英霊の・・・生き残るための話だ。」
爛は一息つくと、リラックスした状態で、その物語を話始めた。
「少年は、とあるものに憧れていた。
それは、人を助けること。
だけど、それは現実で言ってしまえば甘すぎる考え方だった。
とある日、少年の住んでいるところで、戦争が起きた。神話なんてものを読んでるのならわかるだろうが、その戦争は、『聖杯戦争』・・・と呼ばれていたよ。
その少年は、英霊と共にする、マスターと呼ばれる存在となった。だが、その少年に、魔術の才能なんてどこにもなかった。
けどそれは、一時だ。少年は魔力回路という物を手にいれている。少年は、一から生成することで、魔術を手にいれた。
それが、見たものの剣を再現、本物に近いものを剣製する魔術。
だだ、それは自分を殺すようなものでしかなかった。一から生成する度に、自身の身を傷つけるようなものだからな。
少年はそんな危機的状況でも、諦めずに戦い続けた。
戦い続けていくなかで、少年は地獄を見た。いずれ必ず辿る、地獄を見た。
そして、少年の前世である英霊は、その地獄を必ず辿ると。そう言った。このまま正義の味方を張り続ければ辿ることになる。」
物語を語っている爛の顔は、何処か懐かしむように感じた。
何故か、この物語を見たような言い方をして。
「けれども、少年は諦めることをしなかった。
・・・まだ、話は続く・・・。
この後の話は、俺の過去と秘密、全てを知ったとき、俺は、この続きを話そう。
・・・
「爛・・・くん?」
爛は立ち上がり、若葉の家を出ようとした。
刀華は爛が最後に呟いたことに、疑問を持った。
「待って。」
「ん?」
「その少年は、最後にどうなったの?」
「・・・・・・。」
愛華が爛を止め、少年の最後について聞こうと爛に尋ねるが、爛は黙ってしまう。
「・・・・・・いつか話す。
「また何か言った?」
「いや、何でもない。とりあえず、話の続きは今度だ。」
爛はそう言うと、本当に若葉の家から出ていってしまった。刀華と愛華は、爛の呟いたことが気になってしまった。
「爛くん、私は、どうすればよかったのかな・・・?」
刀華は虚空に呟くだけであった。
「・・・まぁ、話についてはこの程度だ。他にも理由はあるけどな・・・。ただ、彼女を変えたのは、守れなかったことだ。誰よりも優しく、誰よりも強き者であろう。誰よりも、その考えを持ったんだろう。
・・・それが、東堂刀華の強さであり、その源泉でもある。だからこそ、去年の一輝が受けていた扱いには、気づけなかったんだろうな・・・。」
爛は悲しい顔をしていた。彼女と同じような感情をしていたのであろう。
ただ、爛は彼女と同じで、彼女のような考え方をした人間がすぐに散っていくのを見てきた。いや、知っている。
「彼女が心配なのは確かだ・・・。妹の愛華にも、気を付けろとは言っているが・・・、中々気づけないことも、姉妹の中である。」
爛は必ず彼女の心配をしていた。表面上では何もないように見えるのだが、実際は物凄く心配している。遠い親戚の身ではあるが、彼女を思う気持ちもあるということだ。
「・・・そういえば、椿姫さんはどうしたんだ?見ていないが・・・。」
「あぁ、椿姫なら───。」
爛は、暗い話題を変えようと、前々から疑問に思っていたことを口にした。
確かに、椿姫は爛が救出されてからも、姿を見ていない。
「・・・いや、いい。」
「いいんですか?」
「あぁ、大丈夫だ。」
爛は黒乃の言葉を遮るように前言撤回をする。
爛は少し笑みを作ると、後ろを向く。
「話は終わりだ。特にないなら、俺は戻らせてもらう。」
「えぇ、もう大丈夫です。」
爛は黒乃の声を聞くと、理事長室から出ていった。爛は理事長室を出ると、誰にも聞こえないような小さな声で、こう呟いた。
「・・・椿姫さん、もう準備できてるな・・・。」
爛はそう言いながら、自室へと戻っていった。
椿姫は、とある人物と共に、極秘裏の資料を読み漁っていた。
「本当に、情報が載ってるんですか?」
とある女性は、そう言いながら資料を椿姫の元に持ってきていた。
「静かに。でも、間違いなく、その情報は極秘裏の物よ。・・・あった。これで間違いないはず・・・。」
椿姫は手元にある紙を取り、それを開くと、読んでいた資料と照らし合わせた。
「当たりね。大正解よ。」
椿姫は何かを書くと、自身の服のポケットの中に紙をいれた。
「それは本当ですか!?早く、早く見せてください!」
「まぁまぁ、まずは落ち着くことよ。『貴女』が『彼』に会いたいというのであれば、しっかりと協力してもらうからね。」
「えぇ、もちろんです!」
女性は意気揚々としていた。それを見た椿姫は、微笑ましそうにその女性を見ていた。
「さて、すぐに退散しましょう。」
「撤退には任せておいてください!」
「元から、貴女に頼んでるの。よろしくね。」
「ええ!」
椿姫と女性は、魔力の粒子となり、極秘裏の資料庫から居なくなった。
「彼も、大変な人よね・・・。」
椿姫は、誰にも聞こえない声でそう言った。
彼とは一体誰なのか、そして、椿姫と極秘裏の資料庫に居た女性は誰なのか。
それは、物語を変えていくことになる。そして、爛たちが住んでいる場所で、とある争いの前兆が、起きようとしていた・・・。
ーーー第47話IFへーーー
これで46話IF終了です!
いやぁ~疲れた・・・。
あ、それと、重要なお話について。
この小説の番外編、及びそれに関する物を消去させていただきました。
いやね。理由が、ね。
全くネタが思い付かないんですよ・・・。
そして、僕はとあることに気づきました。
そんなこんなら、誰かとコラボとかしてもよくね?と。
まぁ、誰かしてくれるって人がいれば、感想やメッセージでお知らせください。いなければやりませんけどね・・・。
次回・・・は、特に何も考えてませんね。通常ルート次第ってところでしょうか。
お楽しみに!