落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

51 / 105
───頑張らないといけなかった。
───傷ついて欲しくなかったから、
───自分を変えるしかなかった。

※後書きにて、大事な事をお知らせしています。




第46話~刀華の異変、その事件IF~

 桜と再会した次の日。爛は理事長室にいた。

 

「で、呼び出した用件は?」

「とある事について、聞かせてほしいのです。」

「・・・・・・。」

 

 爛は黒乃からとある事を聞かせてもらいたいと聞いたとき、爛は目を閉じて、黙ってしまう。

 

「・・・刀華があれだけ理想的な考えを持った事について・・・。違うか?」

 

 少し間をあけると、刀華の名前と、その理由をを口にする。

 黒乃は刀華の妹の愛華から話を聞いたのだろう。爛の言ったことに、何も言わずに頷いていた。それを見た爛はため息を深くついた。

 

「聞くのはいいが・・・、まずあの事件について、話さないといけないが、いいか?」

「ええ。」

 

 爛の問いに一声で返すと、爛は懐のポケットから煙草を取りだし、吸い始めた。

 

「・・・私から言うのも何ですが・・・、余り吸いすぎないようにしてくださいね。」

「何、元より吸いすぎるなってのは、香姉と明、六花とリリーに桜と、結構釘を刺されているからな。それに、吸うのは1本程度だ。安心しろ。」

 

 爛はそう言うと、煙草に火をつけ、口にくわえる。

 

 

 

 

 

 

 

 爛の実家は新潟にあり、刀華と愛華とは、離れた親戚になる。幼い頃から三人は一緒に居たためか、宮坂家と東堂家は仲のよい親戚であった。

 

「また負けた~。」

「まぁ、前よりは強くなってるから、そんなにならなくてもいいけどな。」

 

 刀華と爛は、竹刀で打ち合いをしていた。剣の基本を一から鍛えるように、二人とも竹刀でやっていたのだ。

 

「少し休憩しよう。流石にぶっ続けは危ないぞ。」

「爛君の言いたいことは分かるけど・・・、まだ鍛えさせて。」

「どうして?」

 

 いつもならば、爛の言ったことに賛同し、休憩をするはずなのだが、刀華はそれを否定した。

 

「もっと・・・強くなりたいから・・・。」

 

 刀華の答えはそれだけだった。普通ならば納得の行くはずの答え。しかし、爛には思うところがあった。

 

「まぁ、いいんだけどさ。・・・刀華。何か焦ってないか?」

「焦ってる?そう、爛君には見えるの?」

「あぁ。何か、焦らないといけないような事があったのかと。・・・まぁ、大体は予想がついてるけどな。」

 

 爛には刀華が焦っているであろう理由には、爛にも、同じような事があったからだ。

 

「・・・この前の事件からだな。お前が焦ってるように見えたのは。」

「そう・・・。」

 

 爛が暗い顔になりながら話すと、刀華もその事を知っているのか、同じように暗い顔になってしまった。

 そう。あれはつい最近起きてしまった事件。

 爛は刀華たちに会いに行こうと、『若葉の家』というところに来ていた。そこは、孤児が暮らす施設であり、様々な理由でここで住んでいる孤児がいる。

 そして、刀華と愛華も、その孤児の一人であった。東堂家は刀華と愛華を残し、亡くなった。

 そのすぐ後に、爛が来た。爛は血相を変えて、刀華と愛華を引き取るところを探した。

 そして、刀華と愛華を引き取ったのが、貴徳原財団が経営している若葉の家。

 そこには、若葉の家には泡沫が居たのだ。そしてこのとき、刀華たちは泡沫と知り合った。そして、カナタも。

 初めは、ここに慣れるのが大変であったと、爛は記憶している。刀華たちが若葉の家に住むようになってから、時々顔を見せに行っているからだ。

 ただ、問題があった。それは、若葉の家を狙っての事件。若葉の家に、親に見放された孤児がここに来ていたのか、それを狙って殺し屋が来たのだ。

 しかし、伐刀者(ブレイザー)として覚醒していた刀華と愛華は、若葉の家のみんなを守ろうと、その殺し屋と戦った。

 だが、現実はそこまで理想的なものではない。その殺し屋は拳銃を持っていたのか、死に間際に引き金を引き、その孤児の頭を貫いたのだ。

 それも幼い子供。一瞬にして生きることができなくなってしまったのだ。

 刀華たちは悲しみにうちひしがれた。爛は、その時居たのだ。だが、若葉の家のみんなが好むものを買いに行っていたため、爛が戻ってきたときには、若葉の家の前に、死体が二つあった。

 ・・・その時に、刀華が言った言葉は───、

 

「・・・ごめんね。爛君。守れなかったよ。」

 

 その言葉だけだった。爛は刀華の側に行くと、刀華を優しく抱き締めた。刀華は泣きじゃくった。涙が枯れるほどに。

 刀華の涙が止まると、爛は若葉の家で二人に話をした。

 

「・・・なぁ、二人に聞いてもらいたい話がある。」

「何?爛くん。」

「とある少年と、英霊の・・・生き残るための話だ。」

 

 爛は一息つくと、リラックスした状態で、その物語を話始めた。

 

「少年は、とあるものに憧れていた。

 それは、人を助けること。

 だけど、それは現実で言ってしまえば甘すぎる考え方だった。

 とある日、少年の住んでいるところで、戦争が起きた。神話なんてものを読んでるのならわかるだろうが、その戦争は、『聖杯戦争』・・・と呼ばれていたよ。

 その少年は、英霊と共にする、マスターと呼ばれる存在となった。だが、その少年に、魔術の才能なんてどこにもなかった。

 けどそれは、一時だ。少年は魔力回路という物を手にいれている。少年は、一から生成することで、魔術を手にいれた。

 それが、見たものの剣を再現、本物に近いものを剣製する魔術。

 だだ、それは自分を殺すようなものでしかなかった。一から生成する度に、自身の身を傷つけるようなものだからな。

 少年はそんな危機的状況でも、諦めずに戦い続けた。

 戦い続けていくなかで、少年は地獄を見た。いずれ必ず辿る、地獄を見た。

 そして、少年の前世である英霊は、その地獄を必ず辿ると。そう言った。このまま正義の味方を張り続ければ辿ることになる。」

 

 物語を語っている爛の顔は、何処か懐かしむように感じた。

 何故か、この物語を見たような言い方をして。

 

「けれども、少年は諦めることをしなかった。

 ・・・まだ、話は続く・・・。

 この後の話は、俺の過去と秘密、全てを知ったとき、俺は、この続きを話そう。

 ・・・(話すことなどなければいいが)・・・。」

「爛・・・くん?」

 

 爛は立ち上がり、若葉の家を出ようとした。

 刀華は爛が最後に呟いたことに、疑問を持った。

 

「待って。」

「ん?」

「その少年は、最後にどうなったの?」

「・・・・・・。」

 

 愛華が爛を止め、少年の最後について聞こうと爛に尋ねるが、爛は黙ってしまう。

 

「・・・・・・いつか話す。(本当に、そんなことがないといいが)・・・。」

「また何か言った?」

「いや、何でもない。とりあえず、話の続きは今度だ。」

 

 爛はそう言うと、本当に若葉の家から出ていってしまった。刀華と愛華は、爛の呟いたことが気になってしまった。

 

「爛くん、私は、どうすればよかったのかな・・・?」

 

 刀華は虚空に呟くだけであった。

 

 

「・・・まぁ、話についてはこの程度だ。他にも理由はあるけどな・・・。ただ、彼女を変えたのは、守れなかったことだ。誰よりも優しく、誰よりも強き者であろう。誰よりも、その考えを持ったんだろう。

 ・・・それが、東堂刀華の強さであり、その源泉でもある。だからこそ、去年の一輝が受けていた扱いには、気づけなかったんだろうな・・・。」

 

 爛は悲しい顔をしていた。彼女と同じような感情をしていたのであろう。

 ただ、爛は彼女と同じで、彼女のような考え方をした人間がすぐに散っていくのを見てきた。いや、知っている。

 

「彼女が心配なのは確かだ・・・。妹の愛華にも、気を付けろとは言っているが・・・、中々気づけないことも、姉妹の中である。」

 

 爛は必ず彼女の心配をしていた。表面上では何もないように見えるのだが、実際は物凄く心配している。遠い親戚の身ではあるが、彼女を思う気持ちもあるということだ。

 

「・・・そういえば、椿姫さんはどうしたんだ?見ていないが・・・。」

「あぁ、椿姫なら───。」

 

 爛は、暗い話題を変えようと、前々から疑問に思っていたことを口にした。

 確かに、椿姫は爛が救出されてからも、姿を見ていない。

 

「・・・いや、いい。」

「いいんですか?」

「あぁ、大丈夫だ。」

 

 爛は黒乃の言葉を遮るように前言撤回をする。

 爛は少し笑みを作ると、後ろを向く。

 

「話は終わりだ。特にないなら、俺は戻らせてもらう。」

「えぇ、もう大丈夫です。」

 

 爛は黒乃の声を聞くと、理事長室から出ていった。爛は理事長室を出ると、誰にも聞こえないような小さな声で、こう呟いた。

 

「・・・椿姫さん、もう準備できてるな・・・。」

 

 爛はそう言いながら、自室へと戻っていった。

 

 椿姫は、とある人物と共に、極秘裏の資料を読み漁っていた。

 

「本当に、情報が載ってるんですか?」

 

 とある女性は、そう言いながら資料を椿姫の元に持ってきていた。

 

「静かに。でも、間違いなく、その情報は極秘裏の物よ。・・・あった。これで間違いないはず・・・。」

 

 椿姫は手元にある紙を取り、それを開くと、読んでいた資料と照らし合わせた。

 

「当たりね。大正解よ。」

 

 椿姫は何かを書くと、自身の服のポケットの中に紙をいれた。

 

「それは本当ですか!?早く、早く見せてください!」

「まぁまぁ、まずは落ち着くことよ。『貴女』が『彼』に会いたいというのであれば、しっかりと協力してもらうからね。」

「えぇ、もちろんです!」

 

 女性は意気揚々としていた。それを見た椿姫は、微笑ましそうにその女性を見ていた。

 

「さて、すぐに退散しましょう。」

「撤退には任せておいてください!」

「元から、貴女に頼んでるの。よろしくね。」

「ええ!」

 

 椿姫と女性は、魔力の粒子となり、極秘裏の資料庫から居なくなった。

 

「彼も、大変な人よね・・・。」

 

 椿姫は、誰にも聞こえない声でそう言った。

 彼とは一体誰なのか、そして、椿姫と極秘裏の資料庫に居た女性は誰なのか。

 それは、物語を変えていくことになる。そして、爛たちが住んでいる場所で、とある争いの前兆が、起きようとしていた・・・。

 

 

 ーーー第47話IFへーーー

 




これで46話IF終了です!
いやぁ~疲れた・・・。

あ、それと、重要なお話について。
この小説の番外編、及びそれに関する物を消去させていただきました。
いやね。理由が、ね。

全くネタが思い付かないんですよ・・・。

そして、僕はとあることに気づきました。

そんなこんなら、誰かとコラボとかしてもよくね?と。

まぁ、誰かしてくれるって人がいれば、感想やメッセージでお知らせください。いなければやりませんけどね・・・。

次回・・・は、特に何も考えてませんね。通常ルート次第ってところでしょうか。
お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。