落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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「手向けとして受けとれ。死兆に煌めけ、死相の槍!」
形態変化(モードチェンジ)(バスター)!」
「《突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)》!!」
形態技(モードアーツ)、《桜花鬼神斬(おうかきじんざん)》!!」




第46話~激突!英剣の使い手VS英霊憑依者!~

「ハァ!」

「フッ!」

 

 二人の剣撃は幾度となく繰り返される。精神世界で二人は、ただ単に殺すように見えた。

 二人の剣は互角。颯真の英剣、エクソシスト。爛が持つ二つの曲刀───、陽と陰の剣、干将(かんしょう)莫耶(ばくや)

 

「ハッ!」

「ッ!」

 

 颯真がバックステップ。すぐさま爛は干将を颯真に投げる。颯真はそれを弾き返し、エクソシストを構える。

 

「実力は分かるだろう。私とお前では、比べても意味がないと。」

 

 リリーは気づいていた。爛が憑依させた英霊の話し方をしていることに。しかし、それはしなくてもいいことなのだ。その力だけを持つことなのだから、そこまですることはない。

 ならば何故、彼はそこまでするのだろうか。

 そんな疑問が、リリーの頭の中にあった。

 爛は干将を剣製すると、一瞬姿を消し、颯真の懐まで一気に移動し、干将と莫耶を振るう。

 

「ッ!」

 

 颯真は遅れながらもその攻撃を防ぐ。しかし、魔力を乗せた剣であったか、勢いを殺し切れずに、体勢を大きく崩してしまう。

 

「ハァッ!」

「クッ!」

 

 体勢を戻すことを爛は許してくれることもなく、すぐに追撃に移る。

 

「何処まで付いてこれる。この剣の五月雨に。」

「ッ!?」

 

 颯真が空に顔を向けた先には、幾百、幾千とも及ぶ剣が颯真に切っ先を向けて、刺さんと構えていた。

 颯真の額に汗が伝う。この状況を誰よりも一番分かるからだ。

 そう。自分が殺させるかもしれないということを恐怖しつつも戦っているということに。

 人間誰しも、生に、生きることにすがり付く。死を求める人間など、何かがあるからこそである。

 

「いいじゃないか。その剣、すべて打ち落とす!」

「フッ、行くぞ!」

 

 爛は颯真に向けて、剣製した剣を射出する。颯真は走りだし、次々に襲いかかる刃を打ち落としていく。

 

「まだまだ行くぞ。追い付けるか?」

 

 爛は剣を精製しては颯真に射出し続ける。颯真もまた、同じように落としていく。

 

「ウオオォォォォォォォォォオォォオォ!!」

 

 咆哮とも言える颯真の雄叫びが、爛の精神世界で木霊する。爛は干将と莫耶を構えると、颯真に向かって走り出す。

 

「ハァ!」

「ッ!せい!」

 

 二人の剣撃がまた始まる。しかし、爛の動きになれてきたのか、颯真は爛の動きについてきており、また反撃にもすぐに移っている。

 

「フッ!」

「タァ!」

 

 一進一退の攻防。しかし、どちらも硬直状態であることは間違いない。ここからは持久戦。どちらかがバテてしまえば、そこで敗北が決定する。そこで勝者が決まる。

 

「お前は、その剣で何を思う!」

 

 爛は颯真に問う。その剣が、何なのかを。その剣が、何のものなのかを知っているからこそ、颯真に問うのだ。

 

「そんなことは、まだ考えたこともない!ただ、この力が、前を向くための支えとなって、誰かを助けられるというのであれば、俺はこの剣に、すべてを託す!」

 

 颯真はそう言いながらも、爛にエクソシストを振るう。本当の答えではない。だが、颯真のその考えは、確かなものだとわかる。

 

「その考えが可笑しい。お前が考えたその思考は、元々はあの事が起きてからの話だろう!」

「ッ!だったら何だ!俺は、お前の言葉だけじゃ曲げられるわけがない!」

 

 爛の言ったことに、颯真は反論する。

 爛の言っていることは、確かにその通りでもある。別のところから引き込まれた物は、自分自身で生み出したものではない。

 だが、颯真にはそれを反論することができる。颯真の知っている親友の彼は、その思いで目指しているのだから!

 

「確かにお前の思考は固い。だが、それを実現することが不可能に等しい!ごく僅かな可能性を信じて動くのか!」

 

 爛はそれを否定するかのごとく、気迫のこもった声で反論する。しかし、颯真とて、負けているだけではない。

 

「だったら、お前はどうなんだ!お前も俺と同じだ!」

「知らん。私は絶望した。あの時に、何もかも失って、絶望した。」

「ふざけるな!その絶望を無くそうと、お前は強くなろうとした!最強は求めなくても、誰かを守る力を求めた!これの何処に違いがある!」

 

 どちらも正しいのだ。

 ただ、それは理想であり、叶うはずもない思い。

 絶望した人間は、理想を追いかけることを捨て、現実的な考えを持つ。

 つまり、今の彼は、現実的な考えを持ってしまったということになる。

 だが、それはあくまで操られているからであり、実際の爛は違う。

 親友の自分に出来ることは、彼を助けることであり、また支えることでもある。

 

「なら、俺が無理矢理にでも助け出す。その果てが機械的なものであったとしても。」

「・・・スタート地点に立ったのか・・・。そこから先は地獄だぞ。」

「構わない。それでも俺は、お前の味方であり続ける。」

 

 颯真はそう言い放つ。濁りもしていない真っ直ぐな瞳で。誰もが美しいと感じるほどの、綺麗な瞳で。

 

「フッ、ならば、その覚悟、その決意、何を以て伝えるのか、お前にはその答えが見えているはずだ。」

「あぁ、分かってるさ。それくらい。」

 

 颯真は過去を思い返す。

 自分が信じて歩いてきた道は間違いではなく、その道は茨の道。しかし、そこを歩いていたのは、颯真の親友である爛。

 颯真は、先を行く爛を見て、過去を見て、自分も同じように助けたいと思った。

 その心が例え、偽善であったとしても。自分の道の先を行く爛は、それを分かっていたはずだ。だけど、それを信じて、他人の評価に屈することなく、前に進んでいた。

 颯真にとって、それは光のような存在であった。

 だからこそ、颯真はそれを信じた。

 

「お前に、剣でそれを証明する!」

 

 そして颯真は、駆け出す。己の剣にて、爛を助け出すために。

 

「ッ!ハァ!」

「フン!」

 

 二人の剣がぶつかる。何気ない剣のぶつかる鉄の音。しかし、騎士にとって、それは大切なものでもある。意味のない剣なんて、何処にもない。剣を振るう人間は、理由があってこそ振るうのだ。

 

(チャンスは一度きり・・・。決して外すことのできない一撃になる。・・・失敗してしまえば・・・、もう俺の敗北は決まっている。)

 

 颯真はとあるチャンスを探していた。一撃にて、爛を戦闘不能に追い込むことが出来るほどの一撃を。

 だが、先程からの形態変化(モードチェンジ)の使用により、体力が減っているのは確かなこと。

 外してしまえば、ここで颯真の敗北になってしまう。

 

「フッ!」

「チッ!」

 

 颯真の一振りで、爛は隙をつかれたのか、苦虫を噛んだような顔をすると、すぐに後ろに下がる。

 

「ここだっ───!」

「ッ。まだまだ───、」

 

 颯真は一気に踏み込み、爛の懐まで行く。爛は瞬時に把握するが、その時には遅かった。

 

「もらった───!?」

 

 しかし、爛を斬ったはずだった───。

 手応えは、それほどになく、花弁を斬ったかのような感覚しかなかった。

 そして次に襲ってきたのは───、

 

「グァッ!?」

「甘いな。」

 

 痛みだった。

 反撃に出れない状態であるはずの爛がどうしてすぐに反撃に出られるのか。それは、六花とリリーはわかるものであった。

 

「まさか・・・《天衣無縫(てんいむほう)》!?」

 

 そう、《天衣無縫》だ。

 後の先・・・、それを主軸に剣を振るうは綾辻一刀流の最終奥義。

 森羅万象すべてに魂を散じ、すべてを感じとることで僅かな体捌きだけで敵の凶刃を受け流す無双の構え。

 しかし、そう易々とはできない。

 

「クソッ・・・。」

 

 あの状態で反撃に出られるものではない。そう考えられたからこそ、颯真は追撃に出たのだ。しかし、それはすぐに覆された。

 未来も見えることなく。

 

(まだ本当の力じゃないのか・・・?)

 

 エクソシストの力をまだ自由に扱えていないことに、颯真は疑問を持つ。

 ───が、そうとは一概に言えるわけではない。自身の技量が足りないのも、一つの理由になる。

 

『君の剣は、選定された剣だ。その事の意味は、君がその剣の持ち主だと言うことだ。』

 

 何処からか、声が聞こえてくる。

 だが、頭の中に直接語りかけてきているの間違いない。聞こえているのは、自分自身のみ。

 

『───変えたいかい?』

(・・・え?)

『未来───。』

 

 間を置かれた後に聞かれたのは、その事だった。突然の事に、颯真は驚いたような表情をする。

 

『エクソシストは、君の意に従う。だけど、その力は本来の力ではない。』

(どういうことだ・・・?)

『真のエクソシストを手に取れば───、それは分かることさ。』

 

 その声を聞いたときには、もう頭の中に語りかけてきている声は無くなっていった。

 ただ、颯真の頭の中は、疑問でしかなかった。

 

「───さて、そろそろ終わりとしようか。」

 

 颯真の意識が呼び戻されたのは、爛の声だった。爛は颯真から距離を取り、手に持っていた干将と莫耶を投げ捨てる。

 

「お前の全力で来い。来なければ死ぬだけだ。」

 

 爛はそう言うと、右手に赤い槍を剣製する。その赤い槍は、死を連想させるような外郭をしていた。

 

「クッ・・・。」

 

 颯真は痛みを堪えながら、立ち上がる。颯真の瞳は、諦めることを知らないような瞳でもあった。

 

「臨むところだ・・・!そう易々とは死ねないからな・・・!」

 

 颯真は、覚悟のこもった声でそう言うと、エクソシストを水平に、横に向ける。

 

「ならいい・・・。」

 

 爛は赤い槍を投げ槍のように持ち、目を閉じて、声を発する。

 

「手向けとして受けとれ。死兆に煌めけ、死相の槍!」

形態変化(モードチェンジ)(バスター)!」

「《突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)》!!」

形態技(モードアーツ)、《桜花鬼神斬(おうかきじんざん)》!!」

 

 爛は天高く跳躍すると、魔力を最大限に溜めた槍を颯真に向かって投げ飛ばす。

 颯真は体を捻るようにし、エクソシストを後ろ側で構えると、そのまま抜刀斬りのように、逆袈裟斬りで投げ飛ばしてきた槍に刃をぶつける。

 

「ウオオオォォォォォォォオォォォォォオォオォォオオォォォオオォォォオォォォォォォォォォオォォォオ!!!!」

 

 二人の力がぶつかり合った瞬間、重い気圧は一気に二人の体を打ち付ける。

 

「例え、偽善に満ちた人生であろうと───。」

 

 颯真は、襲いかかる槍を、死を目の前にしながらも、声を発していた。

 

「その人生が、誰にも理解されなくても───。」

 

 その言葉には、颯真の決意があった。

 

「俺は、正義の味方を張り続けるっ!!」

 

 誰かを助けたいと思った。ただ、それだけのこと。それでも、その道だけは、逸れることは絶対にしないと。そう言っているようでもあった。

 

「ォォオォォォオオォォォォォオオォォオォオォォォオオォォォォォォォォォォォオオォォオオオォオォォォオオォォオオォオォォォォォオオォォォオ!!!」

 

 絶対に負けることはしないという思いも感じ取ることができた。

 颯真の思いは、爛に届くのだろうか・・・。

 

 ーーー第47話へーーー

 

 

 




やっと上げれた・・・。
リアルが忙しいとこんなに投稿スピードが落ちるのか・・・。頑張らねば!

次回、颯真VS爛 ついに決着!そして、一輝のところは・・・。

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