落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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第4話です!あと、報告なのですが、UAが2000人を突破し、お気に入りが30件近くも・・・そして、1話のUAが1000人を越えました。(((((゜゜;)ありがとうございます!これからも頑張りますのでよろしくお願いします!それでは、どうぞ!


第4話~落第と天才~

 突如、理事長室で決まった模擬戦。『落第騎士(ワーストワン)』黒鉄一輝対『紅蓮の皇女』ステラ・ヴァーミリオンがぶつかり合う。この模擬戦はすぐに、学園中に広がった。一輝と爛、理事長の黒乃は先に第四訓練場に居た。

 

「よし、そのコンディションだったら大丈夫だ。しっかりやれよ。」

「ああ。」

 

 爛は一輝を励ますと脚に力を溜め、跳躍し席に座る。会場の設定をしながら、それを見ていた黒乃は少し、ため息をつく。

 

師匠(せんせい)は本当に面倒くさがるな。」

「そこが、逆に長所になるんじゃないんですか?」

「まあな、それと、本当に受けるとは思わなかったぞ。」

「いずれ、戦うことになりますし、彼女もそして、彼も必ず選抜戦にも出るし、七星剣武祭にも出る。戦うのが遅いか速いかですよ。それに、僕は勝たなくちゃいけない。七星剣武祭で3位以内に入れたら、能力値が低くても卒業資格は与えてやると言ったのは貴方ですよ。」

「勝つ・・・か。彼女は強いぞ?」

「でも、負けられませんから、彼に参ったと言わせるには、彼女には簡単に勝たないといけないから。」

 

 一輝と爛の卒業資格。七星剣武祭で3位以内に入れたら、卒業が出来るというもの。爛にとってはそれの方がやる気が出ると言い、それを受け付けた。だが、一輝にとっては、自分が3位以内に入れるのかどうか、凄く悩んでいたのだが、爛が背中を押してくれたことにより、一輝もそれを受け付けたのだ。

 ところ変わり、観客席のところでは、爛は席に座っていたのだが、そこに近寄る二つの影があった。

 

「お隣、良いですか?」

「どうぞ~って、まさか姉妹で来るとは思ってなかったな~」

 

 爛の近くに来たのは、校内序列(ランク)一位の二人。『雷切(らいきり)』の異名を持つ双子の姉。『東堂刀華(とうどうとうか)』。『麒麟(きりん)』の異名を持ち、刀華の妹である、『東堂愛華(とうどうあいか)』。二人は、爛が住んでいるところの遠い親戚であり、爛が小さいときにたまに二人と遊んだそうだ。爛曰く、『遊びって言っても、剣を一緒に振るったりしただけだ。』とのこと。

 

「まぁ、爛くんの事を見に来ただけだからね。」

「ふーん、てっきり、泡沫がくるんじゃないかって思ってたけどな。」

「うた君もそうだけどね。本当は爛君にあることを言いに来たんだ。」

「何だ?刀華。」

「ーーーーーーーーーーー。」

「はいはい、分かった、相手してやる。」

「やったー、ありがと、爛君。」

(刀華があんなになるのは、久しぶりだっけな。)

 

 刀華と爛の話しは、刀華と爛、そして、妹の愛華しか分からない。一輝のところを見やり、愛華は爛に話す。

 

「あれが、爛くんの認めた人・・・」

「まぁ、お前たちだったら仲良く出来るんじゃないのか?」

「そうかもね。いつか、戦えるかな?」

「速ければ選抜戦で戦える、一輝も出るからな。」

 

 それを話したあと、準備運動をしている一輝を見ていると、ふと、愛華が話す。

 

「爛くん。」

「ん?」

「何で、Fランクなの?」

「まぁ、気になるわな。」

 

 爛は少し考え込み、ため息をつくと、一輝を見ながら、話し始める。

 

「Fランクのことについて、ちょっとだけ・・・な。」

「今じゃダメってことね。」

「そうなるな。悪いな、迷惑掛けちまって。」

 

 刀華や愛華からすると、爛がFランクだということに、疑問を持つのだ。実際、二人は爛と剣を交えたことがある。結果、二人の完敗。しかも爛は、異能を使わずに、剣術だけで二人を倒したのだ。能力値が高いとなると、爛はBランク、自分達と同じか、一番高いAランクになると思っていたのだ。しかし、爛はFランク、何かがあると思い、爛に話しかけたのだ。

 

「ま、仕方ないか。」

 

 刀華は仕方ないと思い、一輝の方を見る。しばらくすると、ステラが出てくる。

 

「やぁ、ステラさん、準備はいいかい?」

「噂は聞いたわ。アンタ、能力値が低くて留学したそうね。魔導騎士を目指すのを諦めた方が身のためだと思うわ。」

「確かにそうだね。でも、この試合は止めないよ。」

「アンタも『努力すれば才能に勝てる』口かしら?」

「そうありたいとは思っているよ。」

 

 努力すれば才能に勝てる。ステラは良く聞いてきた言葉だ。結果的に皆、口を揃えてこう言う。『努力しても才能には勝てない』と。ステラにとっては嫌なことだった。自分はここまで力を手に入れるのに努力をしてきた。だが、周りの人達は才能しか見なかった。努力はいつも影に隠れるもの。ステラはこの事に嫌気が差していた。ステラは小さく呟く。

 

「まるでこっちが、努力してないみたいじゃない。」

「え?」

「何でもないわ。さ、始めましょ理事長先生。」

「では、これより模擬戦を始める。分かってるとは思うが模擬戦は肉体的ダメージを与えず、体力だけを削ぐ。」

 

 黒乃の説明が終わると、二人の立っているところに特殊フィールドが出来る。

 

「来てくれ、『陰鉄(いんてつ)』!」

「傅きなさい、『妃竜の罪剣(レーヴァテイン)』!」

 

 一輝が顕現するのは、鋼の太刀。ステラが顕現するのは、黄金の大剣。リーチで言えば、ステラが有利、取り回しなどで言えば、一輝の方が有利なのだが、それは重さなどを含んだときであり、固有霊装(デバイス)は重さなどを無視できるため、どれが有利かはしっかりとは言えない。

 

Let' s Go Ahead!(試合開始)

 

 試合が開始されると、駆け出したのはステラ。『妃竜の罪剣』に炎を纏わせ、一輝を唐竹割りで斬ろうとする。短期決戦で決着をつけようと考えたのだ。一輝は、それを防ごうとするが、不味いと思い、後ろに退く。

 

「いい判断ね。私の『妃竜の息吹(ドラゴンブレス)』は摂氏3000度。触れたらただじゃ済まないわよ!」

 

 一気に畳み掛けるステラ。一輝は反撃をするわけでもなく、防御に徹していた。この状況になるのは、分かっていた。まだ、切り札を切るつもりはない。なら、一輝がやることは一つだった。一輝は一度後退し、ステラに向かって走る。

 

「真正面から向かってくるなんてね。その自信、叩き斬ってあげる!」

 

 そう言いながら、霊装を振るうステラ。一輝はそれを紙一重で避けながら、陰鉄を振るう。しかし、それは防がれ、陰鉄が止められてしまう。しかし、一輝にとっては想定の範囲内だった。それを見た爛はこんなことを言った。

 

「これで、ステラの負けは決まったかな。」

「端から見れば、ステラさんの有利に見えるけど?」

「百聞は一見にしかず、ってな。あいつの力の一端が見れるかもな。」

 

 爛は微笑みながら、一輝を見る。 刀華と愛華は不思議に思いながら一輝とステラを見る。

 一輝とステラの剣の対決は、どう見てもステラが有利と見えるが、ステラは自身の剣から伝わる手応えは軽く、そこから導き出される答えは一つだった。

 

(受け流してる!?アタシの剣を!?)

 

 ステラは受け流されなかった自身の剣が、受け流していることに驚いた。剣を受け流すのは、高等技術なのだ。簡単には出来ないのだが、爛は、一輝の剣。相手の剣をすべてを受けず後ろに退く、逃げの剣。それが一輝の剣なのだ。爛は、それを利用して、受け流すことで、逃げの剣でも、攻めの剣にもなるようにしたということ。一輝は、ステラの剣におされ、後退する。

 

「どうやら、逃げるのは上手いようね。」

「いや、と言ってもギリギリだよ。ステラさんが磨きあげてきた剣術。感じるよ、凄い努力だ。」

 

 一輝にこの事を言われたステラは、少し驚く。そして平静を保ちながら話す。

 

「なかなか目がいいのね。でも、そんなので見切れるほど、アタシの剣はお安くないわよ!」

「いや、もう見切った。」

 

 一輝が攻勢に出た時に振るわれた剣。これはステラの剣にそっくりだった。これには試合を見ている刀華と愛華も驚く。

 

「凄いね。相手の剣を模倣するだなんて。」

「模倣だけじゃない。相手の剣の欠点まで潰すからな。相手の剣より、引き出しの数が多いのさ。これを打ち破るには、それと同等の剣か、それより上の剣。後は速さでなんとかするしかないな。」

 

 爛たちが話しているなか、一輝の方は・・・

 

「アタシの剣、何でアンタがそれを?」

 

 ステラは、自分の剣を模倣されていることに驚き、一輝との距離を取る。

 

「どうして、アタシの剣を・・・まさか、この試合で盗んだって言うの!?」

「僕は誰にも教えられなかったから、こう言うのばかりは得意になっちゃってね!」

 

 そう言いながら、ステラに剣を振るう一輝。ステラは自分と同じ剣でありながらも、即席で作られているにも関わらず、押されていく。それは、ステラの剣と、一輝の剣とでは、同じ剣術ではあるが、質と引き出しの量が、一輝の方が上なのだ。一輝はステラより、ステラの使う剣術、『皇室剣技(インペリアルアーツ)』の力を理解していると言っていい。一輝が振るった剣を受けながら、後ろに下がるステラ。爛は、ステラの使う皇室剣技の簡単な力はもう見えていた。

 

「なるほどな。」

「どうしたの?」

「ステラが振るっていた剣技だが、ありゃ間違ってるな。」

「どう言うこと?」

「皇室剣技。これは、相手に攻撃をさせない技だ。取り回しのいい一輝のような霊装の方が使いやすさはあるだろうな。自分の霊装と合ってない剣技は、自分の体に相当の負担を強いる。俺も一撃必殺を要にしている剣技を使ったけど、俺には合わない。一撃必殺の剣技は重い武器の剣技だ。重さを無視できるって言うのが裏目に出たな。ただ、剣技でステラが勝ったとしても、いつの間にか知らず知らずに疲れが溜まっていくはずだ。ステラはもう少し、多様性のある剣技だったらな。」

 

 爛は、ステラの使っている剣技の力を見、ステラに見えない疲れが溜まっていると見た。彼女が疲れてないと言っても、いざと言うときに体が動かなくなると思っていた。これには、爛の話しを聞いていた二人も納得する。事実、爛は二人の使う剣技を読み取り、メリットとデメリットを挙げ、デメリットの改善にも協力し、二人の剣の腕を上げていたのだ。それが出来る理由としては、彼がどれだけ剣にこだわっているかである。彼は、さまざまな剣技を自分で試したり、その剣技の特性などを学んでいたのだ。彼が学んだ量は、ちょっとやそっとじゃない。数えたら切りがない量の数を学んでいたのだ。普通なら脳がオーバーヒートするのだが、彼は自身の異能で補ったのだ。

 一輝の方では、一輝が陰鉄を振り上げ、ステラのガードも壊すつもりで降り下ろしたが、ステラは防ぐことはせず、後退した。

 

「これが僕の剣技、模倣剣技(ブレイドスティール)。」

(見切ったですって?ならフェイントで!)

 

 ステラは、一輝に剣を振るうと見せかけ、一輝が剣を右に振るうと、体勢を低くし、一輝の剣をやり過ごし、剣を振るう。しかし・・・

 

「太刀筋が寝ぼけているよ。」

「なっ!?」

 

 そう言いながら、ステラの剣を止める。止めたところは、陰鉄の柄の部分。この事にステラは驚く。どれだけの動体視力があるのかと聞きたくなるほどに。

 

「こんなのは君の剣じゃない。この曲げた剣は致命的だ!」

 

 一輝は、無理矢理陰鉄を押しやり、ステラの妃竜の罪剣を弾き、ステラの右肩に陰鉄を振るう。

 

 ーーー第5話へーーー

 




第4話終了です!さすがに5000字以上は読む方も大変なので、分けさせてもらいました。それに、独自解釈入りましたね。第5話でお会いしましょう。それでは!

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