颯真は突如として目の前に現れたサーヴァント、『英雄王』ギルガメッシュとの戦いに望む。
颯真とギルガメッシュは依然として動くこともなく、相手を見据えていた。
「一輝、先に爛を助けにいくんだ。」
「え、でも、そしたら颯真が・・・。」
「良いんだ。奴の狙いは俺。戦いに巻き込むわけにはいかない。」
颯真はギルガメッシュとの戦いに一輝達を巻き込むわけにはいかず、一対一の真剣勝負へと持ち込もうとする。しかし、それはそれで得策ではない。相手はどれ程の力量なのかも分からない相手。しかもサーヴァント。苦戦を強いられるのは必須の出来事。
その考えを視野に入れていた一輝は颯真の言ったことに反論しようとするが、颯真はそれを論破。ギルガメッシュの目的事態は自分であることであり、一輝達は関係のないことだ。
「・・・わかった。」
一輝は颯真の思いを汲み取り、二人の戦いから背を向け、走り出す。六花達も同じように一輝の跡を追うように走り出す。
そんな中、一人だけ残っている人物がいた。
「明?行かないのか?」
そう、明である。
「颯真、私はすぐに一輝くんの跡を追わなくちゃいけない。でもこれだけ約束して。」
明は願うかのように颯真に言いながら、約束を伝える。
「絶対に、帰ってきて。」
「・・・わかってるさ。爛を死なせないため、お前達を死なせないために、俺はここで死ぬわけにはいかないからな。」
「うん。信じるから、帰ってきて。約束だよ。」
「あぁ。行ってこい。」
颯真の声を聞くと、明は颯真に笑みを見せ、一輝達の跡を追った。
「さ~て、負けるわけにはいかないんでな。早々に帰ってもらおうか。」
「フン、調子にのるな雑種。
「負けられないさ。俺は。あの時に誓ったんだ。絶対、後ろは振り返らないと。逃げないと。行くぞ、英雄王!」
そして、颯真はギルガメッシュに向かって走り出した。
一輝達のところでは颯真とギルガメッシュのところから離れるために走っていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
「このくらい距離をあけていれば、すぐにこちらに攻撃はできないはずよ。」
アリスがそう言い、後ろの方を向くと、颯真とギルガメッシュは戦っていた。
本当ならば助けにいきたい。颯真自身を死なせるようなことはしたくない。そう思っている明だが、その考えはすぐに捨てた。約束したのだ。帰ってきて。と。ならば、こちらは彼を待てば良い。そう考える。
「でも、爛はどこにいるだろう?」
「確かに、連れ去られてるとしたら、連絡は不可能だと思いますし・・・。」
爛の居場所はどこだろうかと考えている一同。そこに、六花の生徒手帳に電話が入る。
「ん?こんなときに・・・って理事長から?」
来ていたのは黒乃からの電話であった。
どういうことなのか。そう思いながら、六花は電話に出る。
「理事長?」
『全く、帰ってこないものだから少し焦ったぞ。』
黒乃はタバコを吸いながら、電話をしている。
六花達からすれば、どうしてタバコを吸いながらで焦ることという考えに辿り着くんだろうという考えに至った。
『で、状況はどうなってる。
「まぁ、その通りです。爛が連れ去られて、どこにいるかも分からない状況で。」
六花からの説明により、黒乃は少し考え始める。しばらくすると、黒乃が話始める。
『そこに、香を送ろうと思っている。しばらく香が来るまで待っていてくれ。香は師匠の場所を先程調べたため、分かっている。香についていくと良い。』
「ありがとうございます。理事長。」
そして、黒乃との通話は終了。一輝達は香が来るまで待つということになった。
颯真とギルガメッシュのところでは、ギルガメッシュは自身の宝具《
颯真はそれを自身の異能の風、
ギルガメッシュは様々な時代で起きる聖杯をかけた戦争。『聖杯戦争』にて聖杯を勝ち取った王者。実力は折り紙つき。油断をすることはできない。
「っ!」
颯真は集中力を途切れさせることなく、次々に宝具の宝具を切り捨て、凪ぎ払い、ギルガメッシュの元へ一歩ずつ踏み出していく。
「まだまだ、それぐらいでは我の元へとたどり着けんぞ!」
宝具を射出するスピードが上がる。それを感じ取った颯真は避けるということを捨て、全てを切り捨てていくという行動に出る。
「っ!はぁ!」
次々に射出される宝具。しかし、それは一つ一つが脆く、弱く、魂にとっては相手ではない。しかし、それが何十にも重なり、それを続けられてしまえば、不利なのには代わりない。だが、
「ほう、自身の武器を使い、我の宝具を打ち落とすか。」
「ま、他にも考えはあるんだけどな!」
颯真は走りながら、ギルガメッシュ宝具を打ち落としていく。
そこで颯真は、一つの未来を見た。
『雑種ごときにこれを使うのは気が引けるのだが・・・、未来が見えるという貴様には、我のもう一つの宝具を見せてやろう。』
すると、ギルガメッシュは一つの剣を手に取る。
持ち手が黄金色であり、刃の部分は黒を基調にし、赤の線が入っている。
一度、颯真は噂を耳にしていた。
英霊の中に、恐ろしい強さを持つ魔剣を持っている英霊が居ると。
それを聞いていた颯真は、一瞬でわかった。ギルガメッシュが、その魔剣を持っていると。
すると、刃の部分が回りだし、大きな風圧が発生する。
『ぐっ!』
颯真は異能を使い、堪えようとするが、あまりにもギルガメッシュの持つ魔剣が放つ風圧は、想像を絶する物であると分かる。
颯真は負荷に耐えれなくなり、そのまま木へと打ち付けられる。
『ぐっ、かはっ・・・。』
少し、吐血をした。
ギルガメッシュは魔剣を手放す。魔剣は先程ギルガメッシュが颯真に使ってきた宝具。《王の財宝》の中に戻っていった。
『中々楽しかったぞ。その戦いぶりに敬意を表して、我の宝具で葬ってやろう。』
ギルガメッシュは《王の財宝》を展開する。
そしてそのまま、容赦なく、颯真に射出した。その宝具の数々は颯真の体に突き刺さり、そして颯真は、死んでいった。
そして颯真は現実へと戻る。
まずギルガメッシュの魔剣を避けるには、彼が未来を見たときに言った言葉を聞いたとき、瞬時に下がるということ。
そして、その魔剣が放つ風圧は一定の距離を保てば、その風圧は弱まり、自身の負荷を抑えることができる。
最後の《王の財宝》の全方位掃射。これには風を遺憾なく発揮するしかない。自分の出せる最大の風力で、彼の宝具を凪ぎ払う。
颯真は一番最初である、ギルガメッシュが魔剣を使うのか使わないのか、ギルガメッシュの行動で颯真の行動も変わる。ギルガメッシュの行動をしっかりと見ていなければ、死ぬ可能性は高い。
「っ!」
颯真はギルガメッシュの行動、射出される宝具。そして自分の行動。全てに目を向けながら、颯真はギルガメッシュの宝具を打ち落としていく。
「雑種ごときにこれを使うのは気が引けるのだが・・・、未来が見えるという貴様には、我のもう一つの宝具を見せてやろう。」
ギルガメッシュは颯真が未来で見た、魔剣を取り出す時に言ってきた言葉を実際に現実で言ってきた。それを聞いた颯真はバックステップ。
「ほう、すぐに危険だと分かったか。」
(な、何だ・・・。あんなの見たことがない・・・。何か、禍々しい何かがある・・・。)
颯真は動きを止めてしまった。ギルガメッシュが持つ魔剣から感じられるものが、どれ程のものなのか。見ただけでもわかってしまう。
(これは、結構マズイ・・・。あの剣の本気を喰らったら、生きられるように感じねぇ・・・。)
颯真は自分の身に迫っている危機をすぐに感じとった。
(約束、もう守れないのか・・・?)
颯真は思い出す。ギルガメッシュと戦い前、明と約束したことを。しかし、この相手にはそんなことは通用しないと、知らされた。
(いや、負けられない・・・。明との約束を守るために。爛が『あの時』に俺の家族を守ろうと必死にしてたのを、俺は知っている。だから・・・、今度は俺が、あいつらを守る!)
颯真の中から、魔力が溢れ出す。元々颯真が持っているような魔力の量ではない。溢れ出している魔力だけでも、颯真が所有できる魔力量を超えている。
「今、ここで退く訳にはいかない!」
颯真はギルガメッシュに向かって走り出し、襲いかかるギルガメッシュの宝具を次々に打ち落としていく。しかし、颯真が持っている霊装、飛鷹は、もう折れかかっていた。そして───、
「っ!」
───バキン!
その音と共に、飛鷹は折れてしまった。しかし、颯真は倒れることなく、走っている。魂が壊れてしまっては、倒れるのが常識。しかし、颯真はそれでも走っていた。
───られない。
───られない!
───負けられない!
───今ここで、負けるわけにはいかない!
「ウオオォォォォォォォォォォォ!!!」
颯真は雄叫び、颯真の右手に、蒼白の魔力が宿る。そして、その蒼白の魔力が作るのは、武器。
赤い装飾を宿し、その武器に刃はなく。しかし、光の刃にて、全てを切り捨てる。───その武器の名を、
「覚悟は良いか!英雄王!英剣よ煌めけ!エクソシスト!」
英剣、エクソシストと言う。
曰く、その剣は想像上の物でしかない。
曰く、その剣の使い手は、落ちこぼれの英雄のもの。
曰く、その剣は全ての力を源とする。
曰く、その剣は───、
とあるものを殺すために作られた剣である。
ーーー第45話へーーー
颯真、まだ本当の覚醒にあらず。
本当の覚醒はもう少しあと。
颯真VSギルガメッシュ、次回終了!
お楽しみに!