落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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今回のあらすじ・・・は普通ルートの方と同じ・・・、ではなく、少しだけ違います。何が違うかって?それは本文を見ればわかることですよ!




第43話~覚醒の予兆IF~

 連れ去られた後、爛が目覚めたのは白い壁一面乃の部屋にいた。

 

 

「真っ白だな・・・。」

 

 

 爛はそう言いながら、寝転がされていた床から起き上がろうとするのだが───、

 

 

「っ!?」

 

 

 全身に強い電流が流れ込む。

 爛は膝をつき、どういうことなのかを考えていた。

 

 

(おいおい・・・、こりゃ相当厄介だな・・・。下手に動けば俺が危険だ・・・。にしても、ここであれが使えるのか・・・?いや、物は試しだ。やってみる価値はあるか。)

 

 

 爛は膝をついた状態から、全身を駆け巡る電流に耐えながら立ち上がる。

 

 

「っ!・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

 

 

 立ち上がるだけでも相当な体力を使うため、ここまで鍛え上げていたことには得をしたことになる。

 しかし、誰も来ておらず、魔力で感知をしているのだが、誰もいないことに気づいた爛は、正面に立っているドアに手をかけ、開ける。

 

「ん?館・・・、って感じだな。」

 

 爛は周りを警戒しながら、部屋を出るが何も感じないため、一応警戒をしながら館らしきものから脱出した。

 

「おー、結構な大きさだな。ってか、ここは何処だ?」

 

 爛は自分のいる場所が知らないところだと言うことに気づき、生徒手帳を開ける。

 

「ん、破軍からは、結構近いな。じゃ、行くか。」

 

 爛は破軍学園へと戻るために歩き出した。

 

 爛が何処にいるかも分からない中、一輝達は爛のことを探していた。

 

 

「爛・・・。」

「・・・闇雲に探しても意味がありません。理事長に言って探してもらった方が・・・。」

 

 

 一輝達の間の空気は、先程よりも重くなっていた。爛が何処にいるかも分からず、椿姫がどういう状況になっているかも分からない中、珠雫は一輝達に提案してきた。しかし───、

 

 

「それは・・・、できないよ・・・。」

 

 

 六花は珠雫の提案を否定したのだ。六花は顔を俯かせながら、話し始めた。

 

 

「爛は僕を助けるときに言ったんだ。「俺を探しに来い。」って。だから僕は、爛を助けにいく。もう、失いたくないから・・・。」

「六花ちゃん・・・。」

「リッカさんの言う通りです。」

「リリーさん・・・?」

 

 

 先程から何も話に参加しなかったリリーがやっと話に入ってきた。そして、リリーは六花の言ったことに賛成した。

 

 

「マスターは、私がこの姿で生きられる限界になり、倒れそうになったときに助けてくれました。だから、私はこの姿で居られるのです。私はまだマスターに恩を返せていません。マスターの助けになると誓ってから、その役目は果たせていません。ですから、私はマスターを探しにいきます。マスターを助けるまで、この身が朽ち果てようと・・・。」

 

 

 リリーの意志は大きなものだった。話を聞いているだけでも、簡単には揺らぐこともなく、壊れることなどないということが分かる。

 

 

「・・・?」

 

 

 颯真は話を聞きながらも、自分の体が不自然に感じていた。その瞬間、頭に激しい痛みが襲い掛かった。

 

 

「・・・っ!」

 

 

 颯真はすぐに頭を抑えた。頭の痛みはより一層強くなり、颯真の視界は少しずつ霞んでいっていた。

 

 

「颯真!」

「大丈夫!?」

 

 

 最初に気づいたのはルームメイトの明。すぐ傍に駆け寄る。一輝達も気がつき、心配しながら颯真の傍に行く。

 

 

「くそ・・・!頭痛が・・・。」

 

 

 颯真の視界は霞んでいき、そして霞んでいた視界が急に暗くなる。

 自然と頭痛が治まり、颯真は顔を上げると、辺りは暗く、一輝達や明は居ない状態だった。そんな暗闇の中、後ろから光が現れる。

 

 

「・・・?」

 

 

 颯真は不思議に思いながら、その光のところへと向かっていく。

 その光は何かを映し出していた。

 

 

「何だ・・・、これは・・・?」

 

 

 颯真は様々な思いをしながら光に触れる。すると、光はより一層強くなり、颯真を包み込む。

 

 

「っ!」

 

 

 颯真は咄嗟に目を庇った。

 やがて光が消えていき、颯真は顔をあげた。すると、颯真が立っていたところは先程まで一輝達と居たところではなく、山の奥の方に立っていた。

 

 

「何処だ・・・?」

 

 

 颯真は何処なのかを考えながら歩きだす。すると、頭の中に声が流れ込んでくる。

 

 

『爛・・・、爛!!』

「この声、六花の声か・・・?」

 

 

 颯真は六花の声に近い物を聞き、聞こえた方に歩き出す。

 すると、六花の声とは違い、別の声がまた聞こえてくる。

 

 

『六花・・・、俺は・・・。』

「爛の声か・・・?どういうことだ?」

 

 

 爛の声が聞こえてきたため、さらに颯真の疑問は深くなっていく。颯真は声の聞こえた方に歩いていくと、ボロボロになり、血だらけの爛が居たのだ。六花は涙を流しながら爛を見ていた。

 

 

「っ!?」

『悪いな六花・・・、これは生きられそうにない・・・。いつもいつも、迷惑かけてるな・・・。』

『そんなことないよ。でも・・・、爛が居なくなるのは・・・、嫌だよぉ・・・。』

 

 

 六花はボロボロの爛を抱き締めていた。それを見ていた颯真はあることに気がつく。

 

 

(これは・・・、未来・・・?未来にしてもそんなに後の事じゃないぞ。破軍の制服を着てるってことは・・・。爛が・・・、何かのことで・・・、死ぬってことか・・・?)

 

 

 颯真は自分は未来を見ていると、そう感じた。爛が死ぬことは天地がひっくり返るほどあり得ないと言ってもいいほどだったのだ。

 すると、またもや颯真は光に包まれていく。

 

 

(今度は何だ!?)

 

 

 颯真はすぐに目を庇い、光が無くなると同時に顔をあげた。すると今度は全員が居た。誰かが居ないという状況ではなかった。

 

 

『爛・・・、本当に良いのかい・・・?』

『あぁ、いいんだ。俺の存在意義っていうのはこういうことだったんだよ。あの頃から分かってたことだった。』

『じゃあ・・・、貴方は・・・。』

『悪いな珠雫。元々俺は、破軍を卒業したらお前達の前から姿を消すつもりだった。絆は簡単に切れるものじゃないのは分かってる。でも分かってくれ。お前達じゃこれは止められない。』

 

 

 爛は一輝達に背を向け、前へと進んでいく。爛はふと、何かを忘れたかのように振り返り、笑顔を見せ、

 

 

『これからの事は、自由にやれ。もう、縛られることはないからな・・・。』

 

 

 そう言い、少しずつ魔力の粒子となり、完全に消滅していった。

 

 

(何てことだ・・・。これじゃ、まず六花には話せないぞ・・・。どうすればいい・・・?)

 

 

 颯真の思考は全て堂々巡りだった。

 すると、またもや光は颯真を包み込む。颯真の視界は暗転し、そのまま気を失う。

 

 

「颯真・・・、颯真!!」

「・・・っ。」

 

 

 颯真が目を覚ますと、明が目の前に居り、心配そうに颯真を見ていた。

 

 

「あぁ、よかった。いきなり倒れたからビックリしたよ。」

「悪い・・・。」

「何かあったのかい?」

「いや、何もない。」

 

 

 颯真は何もないと一輝達に答える。だが、颯真の思考は先程の事で一杯だった。

 

 

(どうするべきなんだろうな・・・。こんなとき、お前ならどうする?爛・・・。)

 

 颯真は爛ならばどんな行動をするのかと考えていた。そして、颯真は行動する。六花を除いた全員で颯真からの話を聞いていた。

 

 

「未来を見たなんて・・・。」

「あり得ないと言うしかないのは当たり前だ。でも、それが起きてしまった。因果の流れから俺は外れたことになる。今は、椿姫さんのところに行かないといけない。俺が見た未来の他に、別のものも見た。それには、椿姫さんの力が必要だ。俺は、椿姫さんのところに行く。」

 

 颯真は強い意志で、まっすぐな眼差しでリリーを見ていた。六花やリリーは爛を助けに行くべきだと言っていた。しかしそれは、自分達を死なせるために言っているようなものであると、颯真は言ったのだ。その行動は、自分達だけでなく、爛も死なせてしまうことでもあると。

 

「分かりました・・・。」

 

 リリーは渋々、颯真の提案を受け入れる。リリーは爛の剣霊。爛と契約しているリリーは爛を死なせるようなことはしたくはない。

 爛の恋人でもある六花も同じだろう。爛のことを近くで見ている六花ならば颯真の話は分かってくれるはずだ。

 

「六花にも話そう。彼女なら、分かってくれるはずさ。」

 

 六花は颯真の話を聞き、それを承諾。一輝達は颯真の言葉を信じると、破軍学園へと戻っていった。

 

 椿姫はヴィーナスと対峙していた。

 

 

「っ!」

「ガァァァァァァァァ!!」

 

 

 ヴィーナスは咆哮し、何かを纏う。

 

 

「もう纏い始めるのかしら。面倒になる前に早く決着をつけないとね。」

 

 

 椿姫はそう呟くと、一気に踏み込み、ヴィーナスの後ろに回り込む。

 

 

「ハァァァ!」

 

 

 魔力を纏った左拳を降り下ろす。ヴィーナスはすぐにそれを察知し、椿姫の左拳の攻撃を避ける。

 

 

「くっ!」

(前よりも早い!)

 

 

 椿姫はすぐに後退し構える。そして、両拳に魔力を纏わせ、一気に駆け出す。

 

 

「グオオオオォォォォォォォォォ!!!」

 

 

 ヴィーナスは咆哮し、椿姫に魔力とは違う別の何かを使い、椿姫に向かって弾幕を放つ。

 

 

「くっ!」

 

 

 椿姫はその弾幕を避けながらも、接近していき、止まることはしなかった。

 

 

「遅い!」

 

 

 椿姫は雷の力を身体に纏い、ヴィーナスに連続で攻撃を仕掛けていく。

 

「フッ!ハァ!せい!せや!とりゃ!」

 

 椿姫は五連続で攻撃を繰り出し、一歩後ろに下がると、眼を閉じ、ヴィーナスの正面で構える。

 

「ガオォォォォォォォォォ!!!」

 

 ヴィーナスは咆哮をあげ、椿姫を潰そうとする。ヴィーナスの足が椿姫の頭に来ると同時に、椿姫は動き出す。

 

「ハァ!」

 

 椿姫は右の掌でヴィーナスの足を止め、そのまま上げるだけでヴィーナスの足を戻してしまったのだ。

 そして、椿姫はすぐさまヴィーナスの背後に回る。左拳に雷の魔力をため、ヴィーナスの真上には魔方陣を形成する。

 

「《雷神の雷拳(らいじんのらいけん)》!!」

 

 椿姫が真上に振り上げた左拳を降り下ろすと同時に、形成されていた魔方陣から、巨大な拳が雷を纏いながらヴィーナスの上に落ちてきていた。

 

「グォォォォォォォォォォォ!!」

 

 ヴィーナスは抜け出そうと必死にするのだが、それは叶わず、魔力の粒子となって消えていった。

 

「・・・ふぅ・・・。」

 

 椿姫が一つ息を吐くと、どこからか声が聞こえてくる。

 

「椿姫さ~ん!」

「ん?」

 

 ーーー第44話IFへーーー

 

 




やっとあげられたーー!

・・・もうその一言しかないですwはい
次回のIFは爛の捜索です。次回をお楽しみに!

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