落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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今回のあらすじ
爛の捜索を自分達でやってしまうことにした一輝達。椿姫はヴィーナスとの戦いに身を投じる。一輝達は居なくなってしまった爛を探しに走り出す。その途中、颯真に異変が起こる。颯真はある未来を見た。その時に見たものとは・・・。




第43話~覚醒の予兆~

 連れ去られた後、爛が目覚めたのは白い壁一面乃の部屋にいた。

 

「真っ白だな・・・。」

 

 爛はそう言いながら、寝転がされていた床から起き上がろうとするのだが───、

 

「っ!?」

 

 全身に強い電流が流れ込む。

 爛は膝をつき、どういうことなのかを考えていた。

 

(おいおい・・・、こりゃ相当厄介だな・・・。下手に動けば俺が危険だ・・・。にしても、ここであれが使えるのか・・・?いや、物は試しだ。やってみる価値はあるか。)

 

 爛は膝をついた状態から、全身を駆け巡る電流に耐えながら立ち上がる。

 

「っ!・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

 

 立ち上がるだけでも相当な体力を使うため、ここまで鍛え上げていたことには得をしたことになる。

 すると、爛の視界に一つの歪みが現れ、そこから出できたのは、サーヴァントのジャンヌであった。

 

「・・・・・・」

「ジャンヌ・・・。」

 

 爛が顔を俯く瞬間、ジャンヌは持っていた旗槍で爛を突き殺そうとしていた。

 

「っ!」

 

 爛は咄嗟に横に転がり、旗槍の突きをかわす。

 

「ジャン・・・ヌ・・・?」

 

 爛は目を見開いた。ジャンヌの目はドス黒く変色していたのだ。元々、ジャンヌの目はそんな色をしていない。だからこそ、爛は目を見開いていたのだ。

 

(操られてるのか・・・?沙耶香と同じような・・・、いやでも、沙耶香はそんな目をしてなかった。どういうことだ?)

 

 爛の思考はジャンヌの目の変色のことで埋め尽くされていた。

 爛はハッと我に戻った瞬間、気絶させられる。そしてそこには、見たこともない『何か』を見ながら。

 

 爛が何処にいるかも分からない中、一輝達は爛のことを探していた。

 

「爛・・・。」

「・・・闇雲に探しても意味がありません。理事長に言って探してもらった方が・・・。」

 

 一輝達の間の空気は、先程よりも重くなっていた。爛が何処にいるかも分からず、椿姫がどういう状況になっているかも分からない中、珠雫は一輝達に提案してきた。しかし───、

 

「それは・・・、できないよ・・・。」

 

 六花は珠雫の提案を否定したのだ。六花は顔を俯かせながら、話し始めた。

 

「爛は僕を助けるときに言ったんだ。「俺を探しに来い。」って。だから僕は、爛を助けにいく。もう、失いたくないから・・・。」

「六花ちゃん・・・。」

「リッカさんの言う通りです。」

「リリーさん・・・?」

 

 先程から何も話に参加しなかったリリーがやっと話に入ってきた。そして、リリーは六花の言ったことに賛成した。

 

「マスターは、私がこの姿で生きられる限界になり、倒れそうになったときに助けてくれました。だから、私はこの姿で居られるのです。私はまだマスターに恩を返せていません。マスターの助けになると誓ってから、その役目は果たせていません。ですから、私はマスターを探しにいきます。マスターを助けるまで、この身が朽ち果てようと・・・。」

 

 リリーの意志は大きなものだった。話を聞いているだけでも、簡単には揺らぐこともなく、壊れることなどないということが分かる。

 

「・・・?」

 

 颯真は話を聞きながらも、自分の体が不自然に感じていた。その瞬間、頭に激しい痛みが襲い掛かった。

 

「・・・っ!」

 

 颯真はすぐに頭を抑えた。頭の痛みはより一層強くなり、颯真の視界は少しずつ霞んでいっていた。

 

「颯真!」

「大丈夫!?」

 

 最初に気づいたのはルームメイトの明。すぐ傍に駆け寄る。一輝達も気がつき、心配しながら颯真の傍に行く。

 

「くそ・・・!頭痛が・・・。」

 

 颯真の視界は霞んでいき、そして霞んでいた視界が急に暗くなる。

 自然と頭痛が治まり、颯真は顔を上げると、辺りは暗く、一輝達や明は居ない状態だった。そんな暗闇の中、後ろから光が現れる。

 

「・・・?」

 

 颯真は不思議に思いながら、その光のところへと向かっていく。

 その光は何かを映し出していた。

 

「何だ・・・、これは・・・?」

 

 颯真は様々な思いをしながら光に触れる。すると、光はより一層強くなり、颯真を包み込む。

 

「っ!」

 

 颯真は咄嗟に目を庇った。

 やがて光が消えていき、颯真は顔をあげた。すると、颯真が立っていたところは先程まで一輝達と居たところではなく、山の奥の方に立っていた。

 

「何処だ・・・?」

 

 颯真は何処なのかを考えながら歩きだす。すると、頭の中に声が流れ込んでくる。

 

『爛・・・、爛!!』

「この声、六花の声か・・・?」

 

 颯真は六花の声に近い物を聞き、聞こえた方に歩き出す。

 すると、六花の声とは違い、別の声がまた聞こえてくる。

 

『六花・・・、俺は・・・。』

「爛の声か・・・?どういうことだ?」

 

 爛の声が聞こえてきたため、さらに颯真の疑問は深くなっていく。颯真は声の聞こえた方に歩いていくと、ボロボロになり、血だらけの爛が居たのだ。六花は涙を流しながら爛を見ていた。

 

「っ!?」

『悪いな六花・・・、これは生きられそうにない・・・。いつもいつも、迷惑かけてるな・・・。』

『そんなことないよ。でも・・・、爛が居なくなるのは・・・、嫌だよぉ・・・。』

 

 六花はボロボロの爛を抱き締めていた。それを見ていた颯真はあることに気がつく。

 

(これは・・・、未来・・・?未来にしてもそんなに後の事じゃないぞ。破軍の制服を着てるってことは・・・。爛が・・・、何かのことで・・・、死ぬってことか・・・?)

 

 颯真は自分は未来を見ていると、そう感じた。爛が死ぬことは天地がひっくり返るほどあり得ないと言ってもいいほどだったのだ。

 すると、またもや颯真は光に包まれていく。

 

(今度は何だ!?)

 

 颯真はすぐに目を庇い、光が無くなると同時に顔をあげた。すると今度は全員が居た。誰かが居ないという状況ではなかった。

 

『爛・・・、本当に良いのかい・・・?』

『あぁ、いいんだ。俺の存在意義っていうのはこういうことだったんだよ。あの頃から分かってたことだった。』

『じゃあ・・・、貴方は・・・。』

『悪いな珠雫。元々俺は、破軍を卒業したらお前達の前から姿を消すつもりだった。絆は簡単に切れるものじゃないのは分かってる。でも分かってくれ。お前達じゃこれは止められない。』

 

 爛は一輝達に背を向け、前へと進んでいく。爛はふと、何かを忘れたかのように振り返り、笑顔を見せ、

 

『これからの事は、自由にやれ。もう、縛られることはないからな・・・。』

 

 そう言い、少しずつ魔力の粒子となり、完全に消滅していった。

 

(何てことだ・・・。これじゃ、まず六花には話せないぞ・・・。どうすればいい・・・?)

 

 颯真の思考は全て堂々巡りだった。

 すると、またもや光は颯真を包み込む。颯真の視界は暗転し、そのまま気を失う。

 

「颯真・・・、颯真!!」

「・・・っ。」

 

 颯真が目を覚ますと、明が目の前に居り、心配そうに颯真を見ていた。

 

「あぁ、よかった。いきなり倒れたからビックリしたよ。」

「悪い・・・。」

「何かあったのかい?」

「いや、何もない。」

 

 颯真は何もないと一輝達に答える。だが、颯真の思考は先程の事で一杯だった。

 

(どうするべきなんだろうな・・・。こんなとき、お前ならどうする?爛・・・。)

 

 一輝達が爛を探している同時刻。椿姫はヴィーナスと対峙していた。

 

「っ!」

「ガァァァァァァァァ!!」

 

 ヴィーナスは咆哮し、何かを纏う。

 

「もう纏い始めるのかしら。面倒になる前に早く決着をつけないとね。」

 

 椿姫はそう呟くと、一気に踏み込み、ヴィーナスの後ろに回り込む。

 

「ハァァァ!」

 

 魔力を纏った左拳を降り下ろす。ヴィーナスはすぐにそれを察知し、椿姫の左拳の攻撃を避ける。

 

「くっ!」

(前よりも早い!)

 

 椿姫はすぐに後退し構える。そして、両拳に魔力を纏わせ、一気に駆け出す。

 

「グオオオオォォォォォォォォォ!!!」

 

 ヴィーナスは咆哮し、椿姫に魔力とは違う別の何かを使い、椿姫に向かって弾幕を放つ。

 

「くっ!」

 

 椿姫はその弾幕を避けながらも、接近していき、止まることはしなかった。

 

「遅い!」

 

 椿姫は一歩足を前に出し、両拳を雷の力で魔力を増幅し、目にも止まらぬ乱打をヴィーナスに繰り出す。

 

「ハァァァァァァァァァァァァァ!!!」

「ガァァァァァァァァ!」

 

 椿姫は乱打を止めると、右拳を後ろに下げ、最大の一撃を加えるため、その右拳をヴィーナスに突き出す。

 

「《激・闘乱拳(げき・とうらんけん)》!!!」

 

 ヴィーナスは訓練場の壁に打ち付けられ、魔力の粒子となって消えていく。

 椿姫は緊迫した戦いが終わったことにより、疲労が重くのし掛かった。

 

「一輝君達なら大丈夫よね・・・。」

 

 そのまま、椿姫は倒れ、意識を投げた。

 一輝達のところでは六花を除いた全員で颯真からの話を聞いていた。

 

「未来を見たなんて・・・。」

「あり得ないと言うしかないのは当たり前だ。でも、それが起きてしまった。因果の流れから俺は外れたことになる。」

 

 どうするべきかと考えていた一輝達のところに何処からか声が聞こえる。

 

「ほう。未来が見えるとな。その力、是非とも(オレ)の物にしたいものだ。」

「この声は・・・?」

「まさか、この声は・・・!」

 

 一輝達の目の前に降り立ったのは、サーヴァント。黄金の鎧を身に纏った男だ。

 

「『英雄王』ギルガメッシュ・・・!」

「気を付けて!あいつからは相当な魔力を感じる!」

「六花さん!?いつの間に!」

「とにかく、今はあいつに気を付けて!」

 

 六花が一輝達の傍にいた。六花はギルガメッシュから膨大な魔力を感じ取っていた。

 

「セイバーの聖剣ではないか。こんなところで何をしている?」

「貴方には関係のないことだ。ここに来たのは何のようだ。」

 

 ギルガメッシュは余裕ある笑みをしながらリリーに話しかけるが、リリーはギルガメッシュがここに来た理由を聞こうとギルガメッシュにそう返した。

 

「何、未来が見えると言った雑種の力を見たいと思ってな。どれ程未来が見れるのか。試してみると良さそうな気がしてな。」

「・・・・・・」

 

 颯真は答えることもなく、顔を俯かせていた。そして、何かを決意したのか、顔を上げると、ギルガメッシュに言った。

 

「分かった。良いだろう。『英雄王』。」

「どれ程のものなのか、採点させてもらうぞ。」

 

 ーーー第44話へーーー

 

 




慢心せずして何が王か!!byAUO

はい、結構遅れました。すみません・・・。この話はIFルートがあります。・・・また遅くなるのかぁ。AUOがうるさくなるので早めに書き上げます。

それでは、次回をお楽しみに!

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