爛の危機を救ったのは六花の姉である椿姫。一輝達は爛をすぐに助け、
爛を殺そうとしていたアーチャーを吹き飛ばしたのは、爛達がよく知っている人物だった。
「お姉ちゃん!?」
そう、六花の姉である椿姫。
椿姫は金と銀の手甲をつけ、魔力をまとわせていた。それが、椿姫の
アーチャーは吹き飛ばされたものの、すぐに受け身を取り、構えることはなく、自然な体勢で居た。
「早く爛を助けてあげて。」
「あ、はい!」
一輝達はすぐに爛の傍に駆け寄る。しかし、素直に助けさせるわけでもなく、アーチャーは一輝達を爛のところに行かせないようにするのだが・・・
「っ。」
「悪いけど、私を倒してもらってからにしようかしら。」
椿姫はアーチャーの前に立ちはだかる。
「フッ、まぁ良い。彼が死ぬのは時間の問題だ。」
「どういうこと?」
「それは私との戦いが終わるか、彼のところに行けば分かることだ。」
椿姫にはアーチャーが言っていることは分からなかった。しかし、それは一輝達から聞かされたことに、分かることでもあるのだった。
一輝達のところでは、安全なところまで運び、iPS
「すまない・・・。」
「余り喋らない方がいいよ。爛。」
「・・・アーチャーが言っていたことは・・・、強ち間違えってないんだ。俺がずっと黙ってただけだな・・・。」
「どういう・・・こと?」
六花が足を止めて爛に聞いた。爛は顔を俯かせ、六花の方を向こうとはしなかった。
しばらくした後、爛は俯いたまま、口を開いた。
「それは・・・、俺の体を見れば───」
爛が最後まで言うのを止め、俯かせていた顔を上げる。爛の視線の先には、銀の鎧に青い衣を纏った女性がこちらの方を向いていた。
「・・・・・・」
「爛?」
爛は何も言わず、その女性を見ていた。
「・・・ジャンヌか?」
もう一度口を開いた時に言った言葉は、見ていた女性の名前だろうか。
「・・・・・・」
「帰れ。ここは、お前の来るような場所じゃない。」
ジャンヌは爛の言葉に耳を向けず、その場に立っていた。すると、ジャンヌの姿が消える。
「ッ!」
「・・・え?」
「ら・・・ん・・・?」
一輝と六花は素っ気ない声をあげた。爛は一輝を右手で突き飛ばし、六花を蹴り飛ばしたのだ。そして、爛は六花を蹴り飛ばすときに───、
「頼む・・・。俺を探しに来い・・・。」
そう言った。そして、爛の居るところは煙に包まれ、煙が晴れたときには、爛の姿は消えていた。
「爛・・・?」
颯真は目を疑った。何故、爛は一輝と六花を離れさせ、自分は巻き込まれてしまったのか。その答えはすぐに出ていたのだ。
爛は負傷をした状態。しかし、爛からすれば関係のないもの。動く片方の手足で一輝と六花を突き放した。そして、自分を盾にし、二人を助けたことになる。
「どうして・・・?」
明は涙を流しながら、疑問を口にしていた。
「いつもいつも、お兄ちゃんは私達を庇うの?どうして自分だけを犠牲にするの?」
そんな疑問だけが、明の中に残っていた。いや、全員に残っていた。
「爛・・・、どこに居るの?」
「・・・・・・」
六花の呟きだけが聞こえる。
その時、何処かで何かが聞こえた。
「?」
「今の音は・・・?」
ポタン───、ポタン───、
ポタン───、ポタン───、
何かが垂れる音。水か何か。しかし、その音の他にも聞こえてくるものがあった。
それは足音。誰かが此方に来ている音であった。
「・・・!」
「あ、あれは・・・!」
「な、何で・・・!?」
一輝達は目を疑った。一輝達の視界には、右腕を抑えながら此方に歩いてきているアーチャーの姿だった。
一輝達が爛を運んでいる最中、椿姫とアーチャーは戦っていた。
椿姫はアーチャーに拳を振るい、一撃一撃が重く鋭く、そして何よりも速い。アーチャーは防ぐのに精一杯だった。
「フッ!」
「ッ!」
アーチャーは一瞬の隙を突き、持っていた二つの武器ーーー、曲刀を振るっている。曲刀の形姿からするに、アーチャーの持っている曲刀は二本一対の曲刀であるものと見ることができる。
「《
椿姫はすぐに距離を取り、魔力を拳に集中し、拳をつきだすと同時に魔力を放つ。それを何度も繰り返し、九つの魔力がアーチャーに迫る。
《狐撃》は不規則の魔力を拳や武器に乗せ、放つ
「ッ!」
「やっぱり、これには当たるわけないわよね。」
アーチャーは跳躍し、右に大きく動き、椿姫の《狐撃》をかわす。
椿姫は分かっていたかのように言った。そして、椿姫はすぐに構え、一気に踏み込み、アーチャーの懐に潜り込む。
「ッ!」
「《
右拳の鋭い一閃がアーチャーの胴体を目掛けて繰り出される。
しかし、ここで当たるほど、アーチャーも負けてはいない。驚異的な反射神経を用い、横に回避する。
「惜しいわね。少しあるものを含ませていたんだけど。」
(《閃撃》は内側から相手を壊す伐刀絶技。一撃でも与えることができればこっちのものなのだけれど・・・。)
椿姫はアーチャーを睨むようにしながら見据える。
アーチャーは少し息を吐くと、楽しむような笑みを見せ、椿姫を見ながら話す。
「簡単には通してくれないか。」
「当然よ。貴方が爛を殺そうとしている限り、私は通すわけにはいかないの。」
「当然のことだな。こちらも急いでいる。早く終わらせることにこしたことはない。」
アーチャーはそう言うと、持っていた二つの曲刀を解除し、右手を前に出す。
椿姫も魔力を右拳に纏わせ、限界まで魔力を集中していた。
「───I am the bone of my sword.」
「《
「───《
アーチャーは薄紫に淡く光る七つの円を顕現する。
椿姫は魔力が金色に光り、獣のような外見をする魔力の拳を一直線に走りながらつき出す。
「ハァァァァァァァ!」
椿姫の伐刀絶技はアーチャーの《熾天覆う七つの円環》を少しずつ破っていく。
「くっ!」
アーチャーは苦虫を噛んだような顔をしながらも、椿姫を止めようとしている。
そして、椿姫はアーチャーの最後の防御を破ると同時に、伐刀絶技が最後の一枚で相殺されたの感じ、すぐに後退する。
「どういうこと?」
「何がだ?」
アーチャーの右腕は動かないものとなり、傷だらけになっている。
「私の技を防ぐこと事態が謎よ。破壊力であれば、誰よりも高いはずなのに。まさか、あの技も受けきったの?」
「その通りだ。私はランサーの必中の槍、《
アーチャーは笑みを浮かべながらそう言う。しかし、この状態であれば椿姫が優勢。
「っ!?」
「彼の異質な気配、そして魔力。ここから消えたな。」
アーチャーはすぐに感じ取った。それは、椿姫も同様に。つまり、爛は破軍学園から居なくなった。
「さて、なら私は戻るとしよう。ここに居るだけ面倒だからな。」
「待て!」
椿姫が止める声に振り返ることなく、アーチャーはすぐに消えていった。
「逃がした・・・!一輝君達が危ない・・・!」
椿姫はすぐに走り出す。椿姫は分かっているのだ。あの状態であったとしても、勝ち目はないと知っているのだ。
「?」
椿姫は立ち止まった。何処からか視線を感じるのだ。しかし、感じた方向を向いたとしても、誰から感じたのかは分からなかった。
何も感じなかったため、そのまま歩き始めるのだが、歩くと同じように視線を感じ始めた。椿姫はそれを気にも止めずに歩き続ける。
「この感じ、間違いない・・・。」
椿姫が振り向こうとした瞬間、何かの咆哮が聞こえる。
「グオオオオオォォォォォォォォォ!!!」
「やっぱり・・・!あの時以来ね・・・。」
椿姫が見ている先には、何と言っていいのか分からない物であった。言うなれば、化物と言ったところだろうか。
「ヴィーナス・・・、さぁ、私と踊りましょ!」
椿姫はすぐに構え、ヴィーナスに向かって走り出した。
「・・・っ。」
一輝達が爛を探しているなか、椿姫が戦っているなか、爛が目を覚ましたのは、ある場所だった。
「ここは・・・、何処だ・・・?」
ーーー第43話へーーー
今回は短め。
投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした!都合などがどうにも悪くて書くことができませんでした!
次回、爛の脱出。ヴィーナスとの戦い。そして、覚醒の予兆・・・!?
お楽しみに!