落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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第3話です!前書きで何を書いたらいいのか分からない状態ですが、UAが1000を越えました、ありがとうございます。それでは、どうぞ!


第3話~始まりはイレギュラーから~

 ここは、理事長室。ここに、左頬に真っ赤な紅葉がある一輝と、ことの内容を知っている、爛と黒乃の三人が居た。

 

「いや、本当にアクシデントが起きるとは思ってなかったけどな~」

「呑気に言うことじゃないよね。」

「それは、あれだ。お前が悪い。」

「サラッと酷いね。」

 

 二人の話しを聞きながら煙草を吸っていた黒乃は、話しの中に入る。

 

「アホだな。お前。」

「理事長もいきなり酷いですよ!?」

「それもそうだろ。相手からすると、見知らぬ男性が入ってきて、いきなり服を脱いだんだぞ。誰だって悲鳴あげるよ、そりゃあ。」

 

 爛と黒乃から容赦ない物言いに、反論が出来なくなる一輝。

 

「まあ、黒鉄に非がある訳じゃないがな。」

「いや、ステラさんには悪いことをしたな~」

「ん、知ってるのか?」

「勿論、テレビで見てたし、ステラさんの能力の話しも知っているよ。」

 

 前に話したことだが、ステラは十年に一人が持つ力を持っている。その代わり、その能力を使いこなすには、それ相応の時間が必要になるが、使いこなせれば、相当の力の持ち主となる。

 

「まあ、彼女は才能と能力があるからな。それに破軍学園では、Aランク(ナンバーワン)だからな。能力が低くて留年した師匠(だれか)落第騎士(だれかさん)とは違ってな。」

「それ、俺も入ってるのか。」

「ほっといてください。」

「責任はとってもらおう、男の力を見せてやれ。」

「どうしてこんなときには、男が不利なのかな?」

「そうぼやくな。」

 

 黒乃と一輝が話していると、理事長室のドアがノックされ、黒乃が部屋の中にいれると、怒り心頭と言っていいくらいの形相で一輝を睨む。

 

「ごめんね、ステラさん。僕も驚いてしまって、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。」

「潔いのね。なら、ーーー」

 

 ステラが言った言葉は、爛の頭の中にカチンとさせる言葉だった。

 

「ハラキリで許してあげるわ。」

「っ!?」

 

 これには一輝も驚いており、慌てて手を振る。

 

「いや、流石に腹切りは勘弁してよ!」

「ハラキリは日本男子では、名誉なんでしょ?本当なら死刑だけど、これで許してあげるの。」

 

 ステラが上から目線の言い方に、痺れを切らした爛が理事長室の机を叩く。

 

「腹切りが名誉だと・・・?」

「っ!?」

 

 爛から放たれる物凄い殺気に、ステラと一輝はおろか、理事長の黒乃さえ、一歩身を引いてしまう。

 

「ここが何処の国か分かって言ってるんだよな、ステラ・ヴァーミリオン・・・あんたの国じゃないんだよ。」

(すごい殺気だ。爛には見えない。)

 

 爛から放たれる殺気に、一輝は爛が別人のように見えた。

 

「自分の国と同じような言い方は止めてもらおうか・・・これ以上、それを止めないのなら、模擬戦であんたをボコボコにするぞ・・・」

 

 ここに居る誰よりも爛を見てきた黒乃だが、これほど、怒りを露にする爛を初めて見た。

 

「腹切りはな・・・命差し出せって言ってるようなもんなんだよ・・・俺はな、人を殺すような言い方は、嫌なんだよな・・・ましてや、一国の皇女が平気で人を死なせるような物言いをしたら、国の示しがつかないんじゃないのか・・・?」

(何!?このあり得ない量の魔力!?)

 

 ステラは自分に向けられている殺気と同時に、あり得ない量の魔力を向けられているのを感じ取っていた。

 

「どうなんだ、ステラ・ヴァーミリオン・・・」

「確かにそうだけど、いきなりドアが開いたら、彼が入ってきたのよ!?」

 

 ステラの言葉を聞いた爛は、怒りを露にしながら、黒乃の方に顔を向ける。

 

「おい、黒乃・・・あれほど言ったよな・・・相手に誤解を招くようなことはするなって・・・それが出来ないのなら、黒乃・・・お前を二度と戻れない空間に放り込むぞ・・・」

 

 黒乃には爛が悪魔のように見えているのだ。まるで、禁忌を犯した自分に、悪魔が制裁を下すような感覚に陥ってしまう寸前なのだ。

 

「はい、すみません・・・」

 

 黒乃が謝ると、爛は怒りを抑え、いつものように振る舞う。

 

「まあ、黒乃はあとでやるとして、まずはお二人さんからだな。久しぶりだな~初対面、いや、会ったことのある人に殺気を向けたことには。」

 

 爛は平気な顔をしているが、一輝とステラが、黒乃の方に顔を向けると黒乃は、冷や汗を思いっきりかいており、爛が改めて恐ろしいことを思い知らされることとなった二人であった。

 

「二人が言い争うのはわかった。黒乃。二人の部屋と、今後のことについて説明してやれ。」

「分かりました。」

 

 爛が黒乃に言うと黒乃は、一輝達の方に向き、しっかりと話す。

 

「黒鉄、ここは二人一寮なのは知っているよな。」

「勿論です。」

 

 黒乃は一輝に寮の人数の確認をとると、黒乃は当初のことについて話し出す。

 

「そして、何のためにここに来たのか・・・分かるよな?」

「破軍学園を立て直すため、ですよね。」

「あぁ、全国の学生騎士が集まり、日本一の学生騎士を目指す、武の祭典。『七星剣武祭(しちせいけんぶさい)』では、ここの学園は余り良い成績がない。ここ数年は優勝者0。それを立て直すために、私の選抜で選ばせてもらった奴も居る。」

「それが、俺ってわけ。」

 

 黒乃が、立て直しのために選んだ人材が自分だと、爛はそう言う。爛から見れば、自分に言わせたがっているようにしか、黒乃が見えないのだが。

 七星剣武祭とは、黒乃が説明した通り、日本全国の学生騎士が集まり、日本一の学生騎士を決める、武の祭典。破軍学園は前までは良い成績があり、優勝者も居たのだが、黒乃の前理事長は七星剣武祭の出場の資格をランク制にし、強制的に下のランクの人間が払われていった。まあ、そのせいでもあるのだが、数年は成績が振るわないのだ。優勝者も0。黒乃はそれを覆す為にここの理事長をしているわけだ。

 

「それで、黒鉄。私の方向はわかるな?」 

「ええ、完全な実力主義。なのは分かります。ですが、僕みたいな落第生に、Aランクの人が居ていいのですか?」

「ア、アンタ落第生なの!?」

「そうだよ。異能も身体能力強化だけだし、おまけに総合評価(ランク)もFだしね。」

「F!?」

「能力値もほとんどが最低ランク、退学ギリギリのところを保っている。黒鉄に付いた二つ名は落第騎士(ワーストワン)。」

「ワ、落第騎士(ワーストワン)。」

 

 一輝の質問に驚いたステラは、一輝が落第騎士なのを知り、さらに驚き、また、Fランクを知ると、驚きを通り越して、呆れが来るほど驚いていた。爛は頭をかきながら、ステラに話す。

 

「まぁ、その話しなんだがな、実際、俺もFランクなんよ。」

「アンタも!?理事長先生の選抜で来たのに!?」

「ま、ホントは違うけどな。」

「表向きは、黒鉄と同じ落第騎士だ。彼に付いた二つ名は、予測不能の騎士(ロスト・リール)。」

「表向きは?」

「これは彼が望んだことなんだ。」

「でも、こんなことは出来ないはず。」

「あー・・・ま、いいか。実際、俺は黒乃の師だ。」

「ウソっ!?」

「嘘じゃないしな~、それと、ステラ。まだ腕に術式は残ってるのか?」

 

 爛がステラに聞いてきたことに、ステラは何故こんなことを聞いてきたのか、そして、何故術式のことを知っているかと聞こうとするが、ステラは爛の話し方と聞き方にある、一つの答えにたどり着く。

 

「もしかして、アンタ。アタシの力の暴走を止めてくれたの?」

「正解。その術式は俺がお前に施した物だ。」

「事実、師匠(せんせい)はFランクなんかじゃない。Aランクを越えている。ましてや、Sランクでさえ、越えている。Mランク(マスターランク)なんて物があったら、師匠はそこまで行っている。」

「おい、俺はそこまで行ってないぞ。」

「師匠なら行ってます。」

 

 一輝とステラは、あり得ない話しを聞くことしかできず、ステラは自分の暴走を止めてくれた人が目の前に居ることに、驚いていた。

 

「話しが逸れたな。言うのが面倒だからな。簡潔に言おう。黒鉄もヴァーミリオンも部屋は間違えていない。君たちはルームメイトなんだよ。」

 

 黒乃から言われた言葉は、今までではおかしいと言えるほどだった。

 

「「え、」」

 

 ステラと一輝は、顔を見合わせ再び驚いた声をあげる。

 

「「えええええええええ!?」」

 

 ステラと一輝は驚き、理事長室の机を叩く。爛は呆れながら三人を見ており、黒乃は面白そうに見ていた。

 

「男女が同じ部屋だなんて聞いてない!」

「それは、私が入る前までの話しだ。」

「もし、間違いが起きたらどうするんですか!?」

「ほう、どんな間違いだ?」

「おい、黒乃。」

 

 黒乃は冗談だと言いつつ、煙草を吸う。爛はそろっと二人が同じ部屋という理由について、話しそうだなと思っていた。その予想はすぐに当たった。

 

「話し忘れていたが、二人が同じ部屋の組み合わせなのだが、それについては師匠から話してもらう。」

「丸投げは止めてもらいたかったな~ま、いいや。」

 

 爛は自分に来るとは思っていたかったため、言いたいことを黒乃に言い、真剣な表情になる。

 

「黒乃が言った通り、黒乃は実力主義だ。で、今回の場合は、同じ者同士だって言うのは知ってるよな。一輝。」

「うん。それで、僕とステラさんのことについては?」

「まあ、簡単に言ってしまえば、能力値の違い、一輝ほど劣った人間も居れば、その逆もあり得る。と言うわけで、一輝とステラが同じ部屋になったというわけ。」

「成る程。」

 

 一輝とステラが納得すると、ステラは一輝の方を向いて、人間には不可能な事を言う。

 

「部屋で暮らすなかで、この三つは守ってね。」

「え?」

「目を開けないこと、話しかけないこと、息をしないこと。それが出来たら暮らしてもいいわ。」

「せめて、息だけでもさせてよ!?多分その一輝君死んでるよね!?」

「嫌よ!アタシの吐いた息を嗅ぐつもりでしょ!」

「じゃあ口呼吸するから!」

「それも嫌よ!アタシの息を味わうつもりでしょ!この変態!」

「「はぁ~」」

 

 ステラの斜め上どころか、完全に真上に上がっている被害妄想に爛と黒乃はため息をつく。黒乃が何か思い付いたのか、言い合っている一輝とステラに案を出す。

 

「なら、こうしろ。騎士らしく力で決めようじゃないか。勝った方が部屋のルールを決める。それでいいな。」

「あ、それは公平で良いですね。」

「ハァ!?アンタ、自分が何言ったか分かってるの!?」

「自分では分かってるよ。」

「天才騎士でAランクの私と、落第騎士でFランクのアンタに勝てることがあるとでも?」

(あ、これはもう決まったな。)

「確かに。でも、やってみなくちゃ分からないじゃないか。」

 

 一輝の言っていることは、正しい。ただ、常人の考えでは、FランクとAランクの戦いでは確実にAランクが勝つという考え方を持っている。しかし、爛はこの戦いでは、一輝が勝つという考えを持っていた。

 一輝の言葉を聞いたステラは、頭にきたのか今後のことも考えてない事を言う。

 

「なら、ルール決めだけじゃないわよ。」

「え?」

「負けた方は勝った方に絶対服従!どんなに恥ずかしい命令であろうと、犬のように付き従うの、いいわね!」

「え、ちょっと!?」

「覚悟してなさい!」

「決まったな。」

「爛!?」

 

 ステラは、理事長室から出てしまい、残った三人は、ただ見てるだけだった。

 

「勝っても負けても嫌なんだろ?」

「ああ。」

「ただ、勝たなければ、お前の夢は達成されないぞ。」

「お前の言いたいことは分かる。だてにルームメイトをやってる訳じゃないし。でもこれは、勝ってこい。」

「分かった。」

「ギャフンと言わせてやれよ。」

 

 爛の言葉を最後まで聞くと、一輝は、理事長室から出ていった。

 

「今回のは面白そうだ。」

 

 そう呟く爛の考えは誰にも分からない。

 

 ーーー第4話へーーー

 

 




第4話終了です!模擬戦の時も4000字とか行きたいなぁって思ってます。それでは、第4話でお会いしましょう。それでは!

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